海外の映画祭

第58回金馬奬受賞結果について、いろいろ考える。

11月27日に台湾で実施された第58回金馬奬。
その受賞結果の詳細はアジアンパラダイスさんをご参照ください。

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長年blogを書いてきましたが、実は今まで金馬奬についての記事を書いたことがありませんでした。
香港映画を中心にblogを運営してきたので、金像奬は気にしても金馬までカバーする余裕がなかったというのが一番の原因でしょうか。
ここ数年来、金馬奬のストリーミング中継を観ているのですが、今年は、というかここ何年かは受賞結果も非常に興味深いものがあったので、今回は初めて金馬奬について書いてみます。 

今年の金馬奬のトピックとして、個人的に次の3つを挙げます。

  • 鐘孟宏(チョン・モンホン)監督最新作『瀑布』が最優秀作品賞他最多6部門受賞
  • 『十年』のキウィ・チョウ監督のドキュメンタリー『時代革命』の最優秀ドキュメンタリー賞受賞
  • 俳優デビュー30年の張震(チャン・チェン)4度のノミネートを経て『The Soul:繋がれる魂』で遂に最優秀主演男優賞受賞

Changchen

澤東電影SNSより

2019年までは東京フィルメックスと金馬奬が中心イベントとなる台湾最大の映画祭・台北金馬影展の開催時期が重なってので、webで中継される授賞式は、当日に映画鑑賞等が入ってしまうと見られないことが多かったのだが、2020年からフィルメックスがTIFFの協賛企画になって日程が繰り上がったことで、20年と21年の授賞式はリアルタイムで鑑賞できました。TIFFとフィルメックスにはノミネート作が出品されることもあり(今年のノミネート作では『瀑布』がフィルメックスに、『アメリカン・ガール』『テロライザーズ』がTIFFに出品)さらにここ数年は公開後にnetflix等でも配信されるので、一般公開決定前にノミネート作を観ることも可能になった。
加えて今年は、ラジオではおそらく初めて本格的に金馬奬が紹介(TBSのアフター6ジャンクションに江口洋子さんがご出演)されたり、ここ数年の金馬奬の傾向が変わったこと、後日記事に書く予定の香港映画の状況など注目に値するトピックが多かったため、今年は例年に増して受賞結果が気になったのでした。

 

 

『瀑布』は今年のヴェネチア映画祭オリゾンティ部門でプレミア上映された長編第6作。前作『ひとつの太陽』も19年に作品賞を受賞。
コロナ禍の現在を舞台に、母(アリッサ・チア、主演女優賞受賞)と娘(王淨/ワン・ジン、主演女優賞ノミネート)の関係をみつめた物語とのことで、フィルメックスで鑑賞された方々にも好評だった様子。モンホンさんは自分で撮影する人で、これまで「中島長雄」名義で撮影監督を務めていたのだけど、今作ではその名前を使わないほか、作風にもこれまでとかなり変化が見られるということなので、そこが気になるところ。昨年の台湾映画の興収成績では7位だそうです(アジアンパラダイスより)
『ひとつの太陽』はTIFF上映後、Netflixで配信が始まったのですが、この作品も今年初めに配信が始まるそうです。
(…netflixにまだ加入していないのだけど、これを機に加入してしまおうか考え中。なお過去作品はJAIHOで『ゴッドスピード』が期間限定で配信、プロデュース作の『大仏+』も期間限定配信
なお、アリッサ・チアはドラマ『悪との距離』で知りました。


 

張震が主演男優賞を受賞した『The Soul:繋がれる魂』は『目撃者 闇の中の瞳』(未見)の程偉豪監督作品で、こちらもNetflixで配信中。
張震といえば、昨年はかつて出演していたサントリー烏龍茶のCMスチールを撮影した上田義彦氏が監督した『椿の庭』や、18年にカンヌで共に審査員を務めたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『デューン 砂の惑星』など中華圏以外の出演作品が続けて公開されたけど、ホームグラウンドである台湾ではこれまでは無冠の帝王だったのが意外でした。
受賞スピーチではヤンちゃんに感謝の言葉を送っていたのが印象的でした。出会いの作品であった『牯嶺街少年殺人事件』ももちろん最優秀作品賞受賞作。

香港映画勢で最優秀脚色賞を受賞した《濁水漂流》は、TIFFで『トレイシー』が上映されているジュン・リー監督の新作。

金馬影展でも上映された《花果飄零》で監督賞を受賞したクララ・ロー監督は、マカオ出身で現在はオーストラリア在住。日本では『あの愛をもういちど』が紹介されています。あとは『アジアン・ビート(香港編)オータム・ムーン』も。11年前にTIFFで上映された『香港四重奏』の1編「レッドアース」を観ていました。香港とマカオを舞台にしながら、どちらでもまだ上映されていないという作品。
そして『時代革命』は納得の最優秀ドキュメンタリー賞受賞。サプライズでのワールドプレミアはカンヌ、シークレット上映だったフィルメックスを経て影展では3か国目の上映で、毎回満席だったようです。かつて18年に『私たちの青春、台湾』が同じ賞を受賞した時、傅楡監督のスピーチにあった「台湾独立」に対して大陸からの審査員団が抗議して翌年から作品出品を取りやめさせ、現在のノミネート及び受賞状況に至っていることから、政治的なメッセージが強い作品も優れていれば賞を与え、危機的状況にある香港に対して文化を守ろうとする姿勢を取ってくれたのは本当に嬉しいものです。
もともとこの賞には、中国大陸の影響下にない映画の製作促進を目的として1962年に創設されたというので、ここ2年ほどの受賞状況は当初の目的にかなったものでしょう。また中国語圏で作られた映画(合作含む)をノミネート対象としていることもあるので、ここ10年ほどのマレーシアやシンガポールで製作された中国語映画がよく受賞しているのもその影響にあることもわかります。
しかし、大陸の映画がノミネート対象として追加された26年前は、中国との合作やロケも多かったし、大陸でも政府の干渉を受けながらもメッセージ性の高い映画を作る同志のような映画人も多かったのに、と思うと、政治的な力が背景にある意味も考えてしまうものです。

と、ついついシリアスな方に考えがちになりますが、近年の台湾および香港映画の動向を知るには大いに参考となる金馬奬。
ノミネート及び受賞した未公開作品はこの春の大阪アジアン映画祭でも上映されるのでしょう。
最後に、個人的に観てみたい作品を2作挙げます。

 

ギデンズ監督第3作《月老》は、『あの頃、君を追いかけた』以来のタッグとなるコー・チェントンと『私の少女時代』のヴィヴィアン・ソンが主演。視覚効果賞等受賞。突然死んでしまった青年が月老(縁結びの神)となって地上に戻り、悪戦苦闘するファンタジー…のはずだけど、ホラー味ももちろんある様子。『瀑布』以降売れっ子となった王淨、KANO監督馬志翔も出演。

 

《詭扯》はTVドラマやMVの演出でキャリアを築いてきた許富翔監督の長編第1作で、韓国のホラーコメディのリメイク。富川ファンタスティック映画祭に出品されて審査員賞を受賞。主演はチェン・ボーリン。
昨年日本公開の『1秒先の彼女』で主演を務め、『ひとつの太陽』で最優秀助演男優賞を受賞した劉冠廷がこの作品で2年ぶりに助演男優賞を受賞。彼が演じる老楊、予告編でどこかで見たような衣裳を着て腕にギプスを…と思ったら、無間道三部作の陳永仁にリスペクトをささげた造形だそうで、もうこれは笑えと言われているようなものではないか(メイキングはこちらから)

ラストは授賞式のオープニングフィルムについて。
埋め込みができないのでリンクのみの紹介ですが、『坊やの人形』のオマージュを捧げるようにサンドウィッチマンとして映画館で働きながら、いつか李安監督(今期まで金馬奬主席を務めた)と一緒に映画を撮りたいと夢見る青年(司会を務めた林柏宏)の物語で、全編に五月天の「知足」が流れる(そして林柏宏が熱唱する)かわいらしい短編でした。

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ふたたび、香港映画は死なない。

各国の映画賞レースでも一番遅い開催となる香港電影金像奬。
今年は4月16日に第38回の授賞式が開催され、『インファナル・アフェア』三部作の脚本家として知られるフェリックス・チョン監督、チョウ・ユンファ&アーロン・クォック主演の《無雙》(TIFF上映題『プロジェクト・グーテンベルク』以下グーテンベルク)が最優秀作品賞を始め、監督賞など7冠に輝きました。受賞結果等の詳細はアジアンパラダイスさんのblogをご参照ください。

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グーテンベルクは来年、新宿武蔵野館での日本公開決定。改めて邦題もつけ直されるようです。
上映時には今回の受賞結果が宣伝に使われるのでしょう。

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今年の大阪アジアン映画祭で観客賞を受賞し、現在香港で上映中の『みじめな人』はアンソニー・ウォンの主演男優賞、クリセル・コンサンジの新人俳優賞、オリヴァー・チャンの新人監督賞と3部門受賞。
これは観られなかったので、日本公開希望。

今年の授賞式は、意外にも追悼コーナーから開幕。金庸、レイモンド・チョウ、リンゴ・ラム、西城秀樹(!いや出演作ありますしね)などこの1年に亡くなった映画人を振り返ってから、登場したのはベイビージョン・チョイ始め、『レイジー・ヘイジー・クレイジー』のフィッシュ・リウやアシーナ・クォック、『G殺』のハンナ・チャンなど、ここ数年で登場した香港映画を彩る新世代俳優たち。今年は彼らが司会を務めるという面白い構成でした。プレゼンターも、今年のテーマ「Keep Rolling」の発想の元となった日本の大ヒット作『カメラを止めるな!』の主演俳優コンビ、返還直後の香港映画界を支えたニコラス・ツェー&スティーブン・フォン&ダニエル・ウー&サム・リーのジェネックスコップ4人組、錢嘉樂&小豪兄弟、そしてアンディ・ラウ&ソン・ヘギョfrom韓国など、賑やかな面々でした。

今年のノミネートの特徴は、新人監督による香港ローカルの作品が多数ノミネートされていたこと。グーテンベルクやダンテ・ラムの『オペレーション・レッド・シー』は中国資本の入った合作ですが、障害を負い車椅子生活となった男性と彼を介護するフィリピン出身の家政婦の友情を描いた『みじめな人』、生首だけの娼婦の怪死体の発見から始まる奇妙で過激な青春ドラマの『G殺』(チャップマン・トー&ハンナ・チャン主演)リストラの危機にさらされた中年男子たちが端午節のドラゴンボートレースに人生を賭けるン・ジャンユー主演の《逆流大叔》、TIFFで上映された、男として人生を生きてきた中年トランス女性の目覚めを描く『トレイシー』(フィリップ・キョン主演、音楽は21年ぶりの香港映画参加となる『あまちゃん』『いだてん』の大友良英さん!)など、新人監督による作品が目立ちました。
(トレイシー・G殺・逆流は鑑賞済みなので、別記事で簡単な感想をUPします)
近年の金像奬の流れとして、新人監督の手がける香港ローカルの映画への高い評価があり、特に今年は新人監督の当たり年のようにも感じたので、これらの作品が多く獲ってくるのではないかと思われたのですが、結果としてみじめな人が先に書いた3部門、逆流が中堅バンドのRubberBandによる主題歌とサントラの2部門、そしてトレイシーが両助演賞(カラ・ワイ&ベン・ユエン)の2部門受賞にとどまりました。

タイムラインがざわつき始めたのは、グーテンベルクの各部門での受賞が重なり始めた頃。
日本ではすでにTIFFで上映されており、映画祭で観たファンも多かったようですが、受賞に値するほどの作品か?的なコメントを見かけるようになりました。『インファナル・アフェア』の大ヒットから監督に転身し、この10年で盗聴犯シリーズや『サイレント・ウォー』などを監督してきた(最新作は製作を手がけた《廉政風雲 煙幕》)フェリックスさんは意外にも監督としては初受賞だったのですが、製作には大陸のBONAが入った港中合作であり、ここしばらくの香港で評価された作品から比べると、明らかに大作であったので、先に上げたようなコメントが多かったのかもしれません。
私は昨年のTIFFで観られなかったので、香港でBDを購入してきました。あまり偏見を持ちたくないので、しばらく時間をおいてから鑑賞して、判断したいです。
昨年のこのnoteの記事でも書いたのですが、『十年』(16年)『大樹は風を招く』(17年)の作品賞受賞が中国大陸で報道されなかったのは、いずれも香港人監督がローカルなテーマで取り上げられ、しかも前者が雨傘運動を受けて生まれた大陸批判も込められた作品だったからでした。でもその頃から、意欲的なテーマを取り上げた新人監督の力作も増えてきましたし、これまでショーン・ユー以降の世代がなかなか出てこなかった(特に女優は大陸や台湾出身者がヒロインを務めることも多かった)俳優たちも、べビジョンや『29歳問題』のクリッシー・チャウ、『空手道』のステフィー・タンに逆流始め今年は複数の作品と賞でノミネートされたジェニファー・ユーなど、次世代の俳優たちが頭角を現してきました。
(今年の主演女優賞は中国出身のクロエ・マーヤンでしたが、主演作の『三人の夫』はニンフォマニアックな女性の性的な受難と彼女を愛して共に生きる三人の「夫」の姿が香港の過去から未来を象徴するようにも見えるフルーツ・チャンの会心作で、18キロの増量で大地の女神を思わせるような娼婦を演じて過酷なセックスシーンに取り組んだクロエの女優根性には、境界を超えて感服するしかなかったです)
このようにフルーツさんの新作も含めて、今年はローカルで香港ならではのテーマが多く目立ち、それが香港っ子や我々のような映画ファンにも支持されたのですが、その中でグーテンベルクが最多受賞したのはなぜだろうか?と授賞式の翌日からあれこれ考えました。

ウィキペディア日本語版に受賞作一覧があったので、ここしばらくの作品賞を眺めていると、「香港電影結束」と大陸ネットメディアに言われたのが『ウォーロード』(08年)の頃。ここ10年は『グランド・マスター』(14年)や『黄金時代』(15年)のような大陸を舞台にした大作も多い一方、『燃えよ!じじぃドラゴン』(11年)や『桃さんのしあわせ』(12年)など、香港を主な舞台となる佳作が作品賞を受賞していました。監督賞はツイ・ハークやアン・ホイ等ベテランが多く受賞していますが、新人や若手も賞を獲るようになり『コールド・ウォー』が作品賞を受賞した13年にはこの作品を初めて手がけた監督コンビ(と言っても映画現場ではベテランのスタッフですが)も受賞し、『大樹』の時も『十年』を手かげたジェヴォンズ・アウも含んだ監督トリオも受賞しています。

こういう流れを見ると、香港映画は十年代の初めから様々な試みをしており、15年以降は若手の作り手を集めた特集上映や政府のバックアップを得て商業作デビューを果たした監督たちが、それぞれ結果を出してきたのが今回のノミネートに現れたのではないかと考えます。その中で、2000年代からの香港映画の流れを脚本などで主流となって支えたインファナル・アフェアチームの功績を讃え、返還からの20年での大きな変化に一区切りをつけるための、グーテンベルクの受賞だったのではないか、と思えるようになりました。
作品賞の授与でBONA側のプロデューサーの普通話の長いスピーチを聞いて、「あーこれってもしかして大陸側への忖度?」などと最初は思ったのですが、「謝謝香港電影」と何度も繰り返した姿や、フェリックスさん自身がずっと香港を拠点にしてきたことを考えると、たとえ合作であって中国大陸で受け入れられたにしても、この作品はやはり香港映画であり、大陸でもその恩恵を受けてそれに報いるべく製作に情熱を注いだ映画人がいるのだから、一概に批判的に観てしまってはいけないのだろうと反省しました。
「香港映画結束」から10年。この間様々な出来事があっても、香港映画は規模こそ大きくはないものの、新しい世代が登場し、語られるテーマも多様化しました。これらの作品や若いスタッフやキャストがそのまま世界で評価されるのには、まだまだ時間はかかるかもしれません。プレゼンターのカメ止め俳優コンビが「香港映画といえば、ジャッキー・チェン?」と香港人にとってはもう遺跡みたいなもので、30年くらい変わらずに聞かされてきたことを言っていたけど、そんな認識を一気に払拭させる力作が登場することを期待します。
社会制度の変化で不満や意義も増え、古いものがなくなりつつあり、2047年はどんどん近づいてくるけど、そうであっても香港映画は死なない。それを希望と思って、これからも新作を楽しみにします。

ところで10年代前半は金像奬の中継もなぜか大陸のネットメディア経由で発信されていました。当時は回線も重く、RTHKのネットラジオ中継も併用しながら苦労して受賞結果を得た記憶もあります。しかし『十年』のノミネートに大陸メディアが反発し、中継媒体が変わって全世界対象の最新アプリ(opensky)が導入されて見やすくなって、本当にありがたいです。アジア・フィルム・アワードも同じアプリで配信されたし、日本の映画祭のコンペティションや授賞式もopenskyなどを利用して世界発信してもいいんじゃないかって思うんだけどねー。

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いまさらながら、今年の金像奨の結果に思ふ。

 いやー、あっという間に6月ですねー。先月の連休は天気が悪かったけど、実家近くのシネコンで『捜査官X』、唯一の晴天だった先週の土曜に六本木に繰り出して『台北カフェ・ストーリー』を観てきました。余裕があれば『王朝の陰謀』も観たかったんだけど、都合により断念。あと『女ドラゴン(後略)』も…。
 2作品とも感想は書けたんだけど、3月に観た《川島芳子》と『運命の子』の感想も早いところ書かなきゃ。とかなんとか言いつつ、今日はこれまた遅いタイミングで金像奨をネタにするのでした(笑)。いや、毎年書いているからね。

 4月15日、今年も香港電影金像奨の授賞式が挙行されました。
この時期に合わせて渡港して、レッドカーペットやTVの生中継を現地で観られた方も多いようです。ああ、いと羨まし。
 受賞結果については、今年ももにかるさんのblogに掲載されていますので、こちらでは感想をはじめどーでもいいこと(笑)をあれこれ書きます。

 昨年のヴェネチア映画祭で最優秀女優賞に輝いたアン・ホイさんの最新作《桃姐》が本命視され、主要賞を独占したのは予想通り。普通はその予想が固いとつまらないのだけど、やはり主演女優賞に輝いたヴェテラン、ディニー・イップさんの熱演や作品の現地での反響を考えれば、今回は当然の結果だと思いましたよ。
 そして、今年の秋にはなんと日本公開も決定しているとかで、非常に喜ばしいものです。

 で、この作品に主演した我らがザ☆スター、アンディ先生が三度目の主演男優賞を得たわけだが、彼のこれまでの受賞作が『暗戦』そして『マッスルモンク』と、考えてみればトーさん作品での受賞ばかりだってことに気がついた。ここ数年は『王朝の陰謀』のようなアクション作品ばかりが目立ったので(もちろんそれ以外の作品もあるけどね)、今回の映画プロデューサー役はその点では異色に見えるのかもしれない。でも、こういう役どころで受賞できたのは本当に喜ばしいよなあ。
 実は本音を言えば、主演男優賞はラウちんに獲ってほしかった。すでに《我要成名》で受賞しているので、無冠の帝王は返上しているのだけど、『奪命金』の愚直なチンピラはよかったからね。でも前作とは全く違う役回りの『盗聴犯』(なんとこれも日本公開決定)こと《竊聽風雲2》でもノミネートされていたので、票が割れちゃったのだろうな。
『奪命金』といえば、この作品からは助演俳優がアベック受賞。「清楚明白!」のおばさんと、悲惨な運命をたどるあのおじさんです。…ってよくかんがえれば、今年の金像の俳優賞ってみんな高年齢なのな。香港も少子高齢化なのか…うーむ。

 技術系&アクション系は《龍門飛甲》対『捜査官X』かな?と思ったら、意外にも前者の圧勝だった。これは前作の『王朝の陰謀』から、本格的に徐克さんが復活しだしたってことだろうか?
 そして、新人監督賞は大阪アジアン映画祭で上映された『ビッグ・ブルー・レイク』のツァイ・ツイシャン監督。おめでとう!もちろん、今年から両岸製作作品を対象とした華語作品賞(後で訂正)の第1回受賞作に選ばれた『あの夏、君を追いかけた』の受賞だって喜ばしい。これも一般公開されないかなー、日本語字幕で観たいんだよなー。

《桃姐》や『盗聴犯』だけじゃなく、どうも《龍門飛甲》も日本公開が決まったらしく、金像で話題になった作品が例年より早く日本で観られることになるのはとっても嬉しい。
 さらに今年の前半は香港映画の一般公開が多いらしい。「らしい」というのは、どれもまだ地方まで来ないから、伝聞調で書くしかないのである。
 いや、好評だってのは分かっている。4月下旬から上映が始まった捜査官も観に行った限りではそんな感じだし、王朝も初日だった先週末は好発進だっていうからね。頼むよー、なんとかわが街で上映できるくらいに動員数を伸ばしてくれよ~。特に王朝!

 だけど…、最近とみに思うことがある。
捜査官にしろ王朝にしろ、最近日本にやってくる香港映画のプロモーションについてだ。
そのことを考えると、思わずこう言いたくなるのだ。

「そんなプロモで大丈夫か?」

 これで「大丈夫だ、問題ない。」なんて相手に言われたら、めちゃくちゃ毒を吐きそうになるけど、いくらアクション映画ばかりが輸入されているとはいえ、その日本向けのプロモーションが「ある層」だけに向けられているように感じるのだ。
 それについては、言いたいこともいっぱいあるので、日を改めてじっくり書きたいと思います。あまりいい気分になれないから、ホントは気が乗らないんだけど、スタンダードにされたくないから、アマチュアの立場でエラそうで生意気なことを言わせてくださいね。
 でもさあ、もっと堂々と売ればいいのに…。だって、この春東京で上映された上記の作品たち、未だに我が街での上映が決まっていないんだよー。このままDVD化されちゃうのかなあ。勘弁してほしいなあ…。

 とやっぱり愚痴っぽく終わってしまって、申し訳ない。
 今後の予告。なんとか『運命の子』の感想が書き上がりそうなので、これは近日中に。
 あと、この前上京した時に香港電影天堂2012で『プリズン・オン・ファイアー2』を観たので、これの感想もね。

 

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ゆくじょぉ、わっがっともよ!

 映画祭の秋ですねー。先週までは釜山国際映画祭が開催されていた。
…なーんか、ネットニュース等で伝わってくる報道を聞くと、あっちこそまさに「アジア最大の映画祭」なんじゃないかと思うのだが。ってこれは10年以上前からすでにそうだったか(汗)。
 ま、そんなことはどーでもよくて、今週末からいよいよTIFF
それと同時期に、毎年香港で開催されている香港亞洲電影節

 今年はオープニングがフィルメックスでも上映される『奪命金』、「セデック・バレ」を含めた台湾映画特集、日本でも話題の『ヒミズ』など、相変わらず豪華なラインナップ。先ごろ公開が始まった《鐡甲萬能侠》こと『電人ザボーガー』を含む、アジア各地のヒーローもの映画を集めた《亞洲超級英雄》なんて特集は楽しそう!さらにオールナイト上映もあって、まるで往年の東京ファンタのようではないですか!

 その映画祭でのクロージングがこれ。ちなみに《亞洲超級英雄》のラインナップの一つでもあります。


 これはTV用CMなんだけど、最初紹介してもらった時には、『ギャランツ』に次ぐ日本語CFか!と驚き、主題歌が80年代初頭のロボットアニメ『宇宙大帝ゴッドシグマ』のカバーで、しかもレスリーが歌っている!ってことにのけぞり、大爆笑した。

 これは、日本では『ベルベット・レイン』『姐御』が公開され、あの蒼井そら小姐を迎えて撮った《復仇者之死》がモスクワ映画祭で評判を呼んだ黄精甫(ウォン・ジンポー)監督の新作、《保衛戰隊 之 出動喇!朋友!》



 劇場版予告はえらいシリアスですが、どーも件のゴッドシグマが大好きな青年が主人公らしく、彼がその精神を胸に抱いて戦うって話でよろしいんでしょうかね?主演は《復仇者》に続いてのジュノ・マックで、王羽さんも登場なさるとか。紹介文を読むとマフィアのボスなのかな。まー、そーなんだろうな。

 しかし、ワタシはかつて先の2作の感想で「スカしてやがる」とか「同じことをやるのは二度も通用せん」とかなんとかいってウォン・ジンポーを貶したもんだったが、はたして今はどんな作風になってるもんだろうねえ。《復仇者》を観てないもんだから、なおさら気になっちゃう。それぞれ日本では…、やっぱり観られないか(苦笑)。

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電影節的秋天已經開始。

 今月は本業でかなり忙しく過ごしていたのだが、それでもネットサーフィンは欠かさず、先月下旬から始まっていたヴェネチア映画祭のレポートなどを楽しんでいた。
 日本では主演二人がマルチェロ・マストロヤンニ賞を受けた園子温監督の新作『ヒミズ』ののことばかりが話題になっていたが、中華趣味的には、アン・ホイ監督の新作《桃姐(Simple Life)》でベテラン、ディニー・イップさんが最優秀女優賞を受けたことが嬉しい。



 ヴェネチアでの記者会見。

 

 予告編。主演はアンディ。映画プロデューサー役なのね。

 で、このヴェネチアでは、『海角七号』の魏徳聖監督の新作『セデック・バレ』や、我らがトーさんの最新作《奪命金》がコンペに出品。そして、この《奪命金》がそのまんま日本でも観られるのである、もちろん東京フィルメックスで!しかもクロージング!



ヴェネチアでの記者会見。

 予告編。

 実は中華電影じゃないんだけど、フィルメックスでコンペ入りしている『東京プレイボーイクラブ』もなんとかして観ようかなーと思っている。一番の理由は自分が主演の人のファンだからってのがあるんだけど(大爆笑)、実はこれもひそかにトーさんつながり作品。この映画の監督さんは、昨年のゆうばりファンタのオフシアターコンペでグランプリを獲っている人なのだが、その時の審査委員長がトーさんだったのよ。そんなところでの注目だったりする。はい、マジで。

 そして、昨年は特集企画で中華電影の上映本数が多く、なぜか余計なトラブルもあった東京国際映画祭では、昨年の反動もあってか上映本数はガクッと減った。うむ、残念だがバランスを取るためにこれはしょうがないような気がする。
 このラインナップではオムニバスの『香港四重奏』2部作を観たい。


↑これはⅡの予告。ちなみにⅠの予告はyoukuで見られる

 そうそう、“伝説の字幕”でお馴染み、2011日本中国映画週間の作品も何か観ようと考え中。今年は平日鑑賞になりそうなので。

 チケット取りを思うとユーウツになりそうだけど、どの作品もなんとか頑張って取りたいものだよ。これまで本業がしんどかったけど、これに参加できることを思えば気も楽になるしね。

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どうもやる気が出ないでいたら、知らぬ間に《武侠》がカンヌでプレミアやってた。

 先週からカンヌ映画祭が始まっております。
  今年も昨年に続き、コンペに中華電影がないのでまたしてもやる気ナッシング気味。いや、確かに審査員には我らの親分、トーさんがいるのであるが、なにか面白いことしてくれるわけじゃないしねえ(こらこら)。

 そんな感じだったし、私的にも忙しかったのでまめにチェックすることなく過ごしていたら、Twitterの金城くん迷の皆さんがにぎやかになっていた。どうも、ピーターさんの監督最新作で、ド兄さん主演の《武侠》に彼が出ているかららしいとわかったのだが、実はこの作品が正式に出品されているとは全然気付かなかったのである。てっきり《赤壁》のようなフッテージ上映だと思っていたのだが…ちゃんとアウトオブコンペでエントリーされたと知ったのは、ワールドプレミア上映が終わってからであった。
 ええ、気がつかなくてすみませんでした。ホントにごめんなさいでした。

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 このメガネ&帽子の金城くんが味わい深い。ド兄さんは辮髪。

 物語はまだ上映前だからパスするとして、比較的詳しく紹介されているのが、毎年楽しみに読んでいる斎藤敦子さんのカンヌレポート@河北新報と、シネマカフェのレポートなのでこっちをリンク。

 先に上の予告編を観ていたので、「これってバイオレンス?確か王羽先生も久々に出てらっしゃるというから、そーゆー方面なのかね?」なんて思ってやや不安になってたのだが、どうもそういう話ではないらしい。アクションメインというより、謎解きの要素もあるというから、物語にも一工夫したのかな、と思った次第。まあ、ピーターさん4年ぶりの監督作だから、ただのバイオレンスでは終わらないはず。

 香港及び中華圏では8月公開。ってことはこの夏行けば観られるのかな?
  評判がよければ、TIFFで上映される可能性もあるし。
 ま、楽しみにしていよう。

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 ド兄さんの妻は湯唯ちゃん。ああ、麗しひ…。
 また大陸方面からいじわるされているの?(ソースはこれ
 どうせだから香港映画に頑張って出演して、ハチャメチャやってしまおう(笑)。

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ボンクラ勇者ども、頂点を極めり!-香港電影金像奨の結果に思ふ。

 昨日は、香港電影金像奨の授賞式でした。
結果は今年もまた、もにかるさんのblogをご覧くださいませ、と手を抜かせていただきます。
例によって、個人的な感想などを。
 今年はRTHKのラジオ放送を聴きながら、シナコムのネット中継を観てました。某ちうぶにも動画がアップされているはず。

 昨年『孫文の義士団』が作品賞を受賞した時、「あーもー、何が獲っても文句は言わないよー」って感じでいたのだけど、実は今年も同じ気分だった。だけど、技術系で《狄仁傑之通天帝國》(実は観てます。感想は後ほど)が、助演俳優賞を『ギャランツ』が獲り始めたあたりから、もしかして今年の金像は、「香港電影黄金期を支えて復活したベテラン監督の娯楽作」対「往年の香港功夫電影に愛とリスペクトを捧げまくった若手監督コンビの実験作」の対決か!と思うようになってきた。
 その結果、《狄仁傑》は監督賞と主演女優賞(カリーナ姐!)を始めとした6部門、『ギャランツ』が音楽、助演男女優賞(テディ・ロビン&シウ・ヤムヤム)、そして頂点の作品賞を極めて4部門を受賞。プロデューサーのカートン、ボンクラ勇者ども…もとい監督コンビを始め、製作陣が大騒ぎで登壇し、はしゃいでいたのが印象的。Twitterでのフォロワーさんも、ギャランツ好きが多かったので、みんなで大喜び。

 よく考えれば、今年ノノミネート作は、狄仁傑やギャランツの他は『密告者』も観ていたし、脚本賞を受賞した『恋の紫煙』、助演女優賞にダブルノミネートされていた《月満軒尼詩》、諸事情につき感想が書けない《分手説愛你》と、観ていた作品が多かった。

 今年の金像のキーワードは、やっぱり「新旧交替」かもしれない。
先に書いたように、ベテランの徐克さんが炎の復活を遂げ、同じく復活したテディさんと往年の名女優シウ・ヤムヤムさん(同じくデレクさん作品『野・良犬』で助演女優賞受賞のキャリアあり)が助演賞をアベック受賞はしたけれど、作品賞はギャランツ、新人監督賞に着実なキャリアを築いている無間道組のフェリックス・チョンさん、そして昨年の助演男優賞に続いて今度は主演男優賞を受賞したニコというメンツをみてみると、改めてそれを強く感じるのであった。
 昨年の孫文、一昨年は『イップ・マン 序章』、3年前は『ウォーロード』と、内容がやや中国寄りの作品がここ数年の作品賞の受賞傾向だったけど(それゆえ大陸では“香港電影結束”なんてよく言われていた)、久々に香港ローカルな作品が賞をとったというのは、コテコテな香港映画好きとしては嬉しい限り。去年《歳月神偸》が数多く部門賞をとった時、もしかしてローカル作品が力を取り戻すのかもと思っていたけど、まさにそれが続いていたようで嬉しかった。この傾向は当分続いてほしいものである。

 主演男女優賞はどちらも悲願の受賞といった感じで、非常に嬉しい。
ニコは新人賞を受賞しているわけだけど、デビュー当時の問題児っぷり、自分の道を行こうとしてトラブルを多く起こしてきたワルガキイメージが長く続いていて、当時はもったいないなあと少し思ったこともある。しかし、セシリアと結婚して父親になり、さらに例の事件を経て今の彼をみると、ここ十数年で大きく成長したものだと感慨深いものを感じる。
 キミは確実に現在の香港映画を背負う明星となったのね、ニコ…。

 カリーナ姐さんも初の主演女優賞。ノミネートは多かったんだけど、なかなか獲れなかったんだよね。女優業の傍らビジネスも手掛け、夫となった影帝トニーとともに人生を歩んでいる彼女だけど、これで夫婦ともに影帝&英后カップル。ちなみにニコ&セシも同じ。残念ながら相方と一緒の授賞式じゃなかったけど、豪快に笑いながら受賞のスピーチをし、「多謝、老公(ありがとね、ダンナ)」といった彼女の姿はすがすがしかった。
 よっ、武則天!アナタは見事な女帝だ。(笑)

 その他、ユンファがいい男になって帰ってきたり、名誉賞を受賞したウィリー・チャンさんが喧嘩別れしたと言われていた成龍さんと和解したかのような抱擁を見せたり、コンサート中の學友さんが生中継でウィリーさんに捧げて歌う『My Way』や、音楽賞プレゼンターのクリス・リーのロケンロールでラフすぎる衣裳や、主演男優賞のプレゼンターがらうちん&周迅の《大魔術師》(現在撮影中のトニー主演最新作!)コンビだったり、アジア映画賞のプレゼンターがホウちゃんとヴィッキーという珍しすぎるコンビだったりと、なかなか面白いものが見られて嬉しかった。 

 あ、そうそう、アジア映画賞なんだけど、てっきり『モンガに散る』が獲るもんだと思ってたんだよね。ちょうどこの日に観てきて、非常によかったので。でもねー、2年連続で日本映画が受賞したんだよ。それも『告白』だったんだよ…。
 なんか、そこが個人的にはちょっとアレだったなーと思った次第。といっても、意見には個人差があります(笑)。

 最後に思いっきし蛇足。
 ところでもし、《狄仁傑》の日本公開が決定したら、いったいどんな題名になるのだろうか?『則天武后の名探偵』とかどうだろうか?それで歴史ファンを思いっきし釣る(笑)。
 いかがでせうかね?是非ご検討を>配給会社の皆さま。

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ヴェネチア映画祭、香港電影とウーさんに愛を!

 酷暑お見舞い申し上げます。
こちらもかなり暑くて、しんどいです。
ついでに中華ネタも夏枯れ気味…。更新少なくて申し訳ない。
そろそろ関東に戻るけど、中国映画の全貌のラインナップもかなり渋いころだなあ…。

 さて、先週はヴェネチア映画祭のラインナップが発表されたけど、なんだか例年より発表が早い気がする…と思ったら、2年前も7月下旬に発表されてたか(笑)。
 今年は香港電影迷にも馴染みが深いトラン・アン・ユン監督の『ノルウェイの森』のコンペ入りが発表されて日本では話題になっているけど、それと金獅子を競うのが徐克さん&アンディ先生の《狄仁杰之通天帝国》だったりする。これ、探偵ものだと話は聞いているけど、それしかわからないのでどんな作品なんだかはわからない。ここしばらくは徐克さんも迷走気味だけど、ここでスカッと痛快な作品が観たいところ。楽しみにしてるよん。

 で、それ以上にすごいのがアウトオブコンペ
オープニングナイトには、先日のブルース・リー週間の特集番組でも取り上げられた、ド兄さん&アンドリューさんの功夫大作《精武風雲》が選ばれ、その他にはスタンリーさん久々の新作(胡軍さんが出ている♪)、パン兄弟の3Dの新作(これにはショーンが出演。お得意のホラーか?)、そして、日本でも数人受賞している終身金獅子賞に選ばれたウーさんの新作(といっても共同監督か)《剣雨江湖》の上映が決定している。
 さらに、カンヌで言うところの「ある視点」部門に当たるオリゾンティでは、今年の香港国際電影節で上映された短編集《香港四重奏》のうち、クララ・ロー監督&彦祖主演作品がエントリーされている。他の作品は8月下旬にソウルで開催されるデジタル映画祭に出品されるとか。
 あと、同じオリゾンティに出品されるISAAC JULIEN監督の英中合作中編『BETTER LIFE』のキャストにMaggie Cheung, Zhao Taoとあるのも気になる。これ、ホントにマギーと、ジャ・ジャンクーのところのチャオ・タオ?

 こうやってみると、マルコ・ミュラーのアジア趣味がいつもに増して爆発している感もあるんだけど、このところ日本と世界の映画業界の目がトロント映画祭モントリオール映画祭に向かっていることもあって、このところあまり注目されなくなっているのがちょっと残念。でも、昔からアジア映画には理解を示してくれている映画祭なので、開催時には出来る限りサイバー追っかけできればいいかな。

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これがゼロ年代香港映画の到達点か。今年の金像奨の結果に思ふ。

 昨日は、香港で第29回香港電影金像奨が行われた。
 結果は、もにかるさんのblogをご参照ください。
 と、今年は手を抜かせていただきます(笑)。

 今年はTwitterでハッシュタグを打ちながらの、リアルタイムの実況つぶやきを初体験。時間帯的には毎週観てつぶやいている某大河ドラマとがっつりかち合ってしまったため、一時期つぶやきのタイムラインがかなり混沌としていたので、非中華系のフォロワーさんはビックリしたに違いない(すみません、とこの場で謝るなよ)。RTHKを聴きながらつぶやいたので、中華趣味系フォロワーさんたちとその場にいて大騒ぎしたような楽しさを味わった次第。

 以前ノミネートについて記事を書いたとき、「今年は何が獲ってもいいよ」的なことを書いたけど、後で「いや、やっぱり《十月圍城》の圧勝じゃないの?」と言われ、ああそうかあれがあったか、こりゃ某アバターよりも受賞ラッシュは堅いわけだわね、と思い直した次第。
 そんなわけで結果は《十月圍城》が最優秀作品賞・監督賞(テディ・チャン)・助演男優賞(ニコ)を始めとして、とにかく圧勝であった。この映画は、昨年秋のNスペ「チャイナパワー」でも紹介されていたから、映画や香港に関心がなくても聞いたことがある人は多いんだろうな。
 香港でUFOを設立して90年代に秀作を連発し、その後ハリウッドデビューも果たし、タイや韓国の映画のプロデュースも行ったピーターさんが『ウォーロード』に続いて大陸と組んで作り上げたこの映画、きっとtiffの特別招待かアジアの風で観られるだろうと思って未見なのだけど、かのドキュメントを観る限り、ピーターさんがこの映画にかける意欲に並々ならぬものを感じ、「100年前の香港で、孫文を守るべく立ち上がった人々の群像劇(でいいのか?)」といった内容の映画を、大陸と香港キャストのコラボレーション&各国から集まったスタッフで作り上げるのならば、意地でもヒットさせないと大変だよなあと思ったからである。
 で、実際大陸ではヒットし、香港でもこれだけ高く評価されたのだから、心身的に大変だったテディさんはもちろん、サポートで入ったアンドリューさんやヴィンセントさん、ド兄さんやニコのような香港キャストたち、そして全てのスタッフも感慨深げだろう。

 一見すれば、この作品は赤壁二部作のように、香港映画界が大陸と合作して作り上げた典型的な中華電影大作だが、よく考えてみると、大陸の力をうまく利用しながら、香港映画としてのアイデンティティを失わせることなく仕立てあげた作品じゃないかと思える。ま、観てないから推測でしか書けないけど、もしこの推測が間違っていなければ、ピーターさんって実は相当したたかな人ではないだろうか。いやあ、さすがプロデューサー、流れをうまく読んでいるよってね。

 しかし、ここ数年大陸側のネットメディアでは金像の結果が出るたびに「香港映画の時代は終わった!」的な論議がでてくるんだけど、はたして今年も出たのかなあ。
 この大陸側の意見(もしかして香港側も同意見?)に対して、ワタシは「否」と言いたい。
それは、ここ数年細々とした流れでつながれてはいたけど、今年の電影節あたりから、久々にローカルな香港(広東語)映画が復調してきたと感じるところがあるからだ。それを象徴するのが、脚本賞(アレックス・ロー)・主演男優賞(ヤムヤム)・新人賞&主題歌賞(共にアーリフ・リー)を受賞した《歳月神偸》。近日中に感想をアップさせるけど、中心街に現存する古い街並みをロケに使い、再開発ラッシュの香港で古いものを見直そうという動きに同調するかのように作られた映画だと思ったけど(注・意見には個人差があります)、このような香港人のアイデンティティに訴えながらも、映画としてよく作られた作品が高く評価されたのは本当に喜ばしい。しかも香港だけでなく、ベルリンで未来の観客=子供たちにも支持されて賞を受けたという国際的なお墨付きがあればなおさらである…って、これこそこじつけかな(笑)。

 今年の金像奨の結果から考えたのは、《十月圍城》がここ10年ばかりの香港映画が目指してきた道の到達点といえるべき作品であるのに対し、《歳月神偸》は今後のローカル香港映画の未来を示すきっかけじゃないかということ。香港映画をこよなく愛する身としては、経済や産業の急成長でその存在を見せ付ける大陸に、娯楽面で呑み込まれることなく、ローカル作品を積極的に作っていくことでアイデンティティを保たせて、世界に打って出る可能性もないわけではないと思っているので(今回ノミネートが少なかった《復仇》なんてまさにそうだよね)、やっぱり香港電影迷はやめられないなあ、と思いを新たにしたのだった。というわけで、長文は以上。

 最後に、その他の受賞作に対して、二、三思うことがあるので言ってみる。

 ○主演女優賞のクララ・ウェイさんは久々の銀幕復帰だとか。しかも受賞作がマレーシア映画『心の魔』。…ああ、今後チェックすべき国の作品が増えたのはいうまでもないけど、やっぱり去年tiffに行っておくべきだったかしら(泣)。

 ○最優秀アジア映画賞を受賞した『おくりびと』、オスカー外国語映画賞を始めあらゆる映画賞を獲り尽くした感じで「へー、またかよ…」と最初は幾分醒めた目でみてたんだけど、よく考えれば大陸の《建国大業》と《南京!南京!》がもろドメスティックな愛国映画だったので、このへんを選ぶんだったらむしろ日本映画に、でもさかなのこはどうよって感じでノーチョイスだったのかもね。

 ○その映画の監督、滝田洋二郎監督のスピーチは日本語。この監督、最近の仕事があまり好きじゃないのだが、かつてはピンク映画で一世を風靡し、80年代から90年代初旬まで面白い作品を次々と作っていた人。それを思い出させてくれたのが、「ボクがかつて作った《Yen Family(木村家の人びと)》が香港で公開されて大ヒットで…」という言葉だった。そうだ、この方、決して万人受けの映画ばかりを作っているわけじゃなかったんだ。今度ちゃんと木村家観なきゃ!と思わせてくれた。
 で、件の受賞作。うーん、いい映画だってのはわかるんだけど、それでもやっぱり…とモニョモニョ言いたいことはあるんだけど、中華とは全然関係ないのでここは閉じる(苦笑)。

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聞くところによると、ベルリンっ子は奥運會より電影節らしい(嘘)。

 …なんかこの週末、全世界的にものすごいことになっているんですけど。
まずは温哥華奥運會。大陸は相変わらずの大選手団だからどーでもいいとして(笑)、本日、開会式で確認したところ、香港からはショートトラックの選手が一人、台湾からはリュージュとスノボに参加とのこと。みんなで応援しよう!
 そんな中華圏では、旧正月で忙しいため、開会式の放映がないらしい。しかし今年の奥運會はタイミングが悪いねー。さらに情人節も初一にあたっているわけだから、なんとも。

 で、そんな時期にもかかわらず、11日から始まっているベルリン映画祭
毎年この時期開催なので、四年に一度は冬の奥運會とかぶるのはいうまでもないのだが、前回のかぶりでは、コンペに出品されていた『イザベラ』音楽賞を受賞
 今年は香港映画のコンペ出品作はないけど、張藝謀がコーエン兄弟の『ブラッド・シンプル』をリメイクしたクライム時代劇コメディ《三槍拍案驚奇》が入っているので、これをフォローするってことで。…これ、香港&中国合作なのな。
 しかしこの名前、言いにくそう。とりあえず「やりび(ザ・ミッション/鎗火)」にならって、「さんやり」でいい?

 この他、香港&中国合作映画としてのエントリーはアレックス・ロー監督の《歳月神偸》がジェネレーション部門、旧正月映画の《蘇乞兒》がスペシャル部門、そして成龍さん&宏くんの《大兵小将》が特別招待と、探すといろいろあったりする。

 しかし、驚いたのがこれ!王家衛の『天使の涙』レトロスペクティブ上映っすよ!ああ、そうか、これって14年前にベルリンに出品されていたんだ。でも、出品されていたからといって、なんでこれ…なんて言ったら顰蹙ですかねー(笑)。

 あとは台湾からもフォーラム部門に出品されているけど、それは後ほど確認かな。ホウちゃんの『憂鬱な楽園』も上映されるのね。
 奥運會や旧正月の大騒ぎにまぎれないように、しっかりサイバー追っかけしようと思った次第(笑)。中華電影以外にも気になる映画がいくつかあるもんでね。

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