中華圏以外の映画

大阪アジアン映画祭とこれからの中華電影上映

今年の第17回大阪アジアン映画祭(以下OAFF)では、昨年末に香港で公開されて話題になったアニタ・ムイの伝記映画『アニタ』がスペシャルメンションと観客賞を、昨年の香港亞洲電影節で上映された香港映画『はじめて好きになった人』が後日関西ローカルでTV放映されるABCテレビ賞をそれぞれ受賞したそうです。恭喜!

 

 

OAFFは、10年前に参加したのが最初で今のところ最後。そういえば4年前にもnoteこんな記事を書いていました。
この時期のTwitterのTLによく流れてくるのが「OAFF、東京でも開催すればいいのに」といったような東京近辺からのtweet。
すいません、大変申し訳ございませんが、田舎モンが以下太字にして言っていいですか?

「おめだづなに寝言ゆうとんだ、イベントは今のままでも東京一極集中しすぎてるでねーの。TIFFもフィルメックスも台湾巨匠傑作選もシネマート中華祭りも未体験ゾーンも国立映画アーカイヴ特集上映もあんのにはあ、ごだごだ贅沢ゆうでねえ!」

はい、失礼いたしました。正気に戻ります。

北東北の地方都市在住の映画ファンとして、地元で十分な映画館とスクリーンの数が揃っていても、小規模な配給会社によるアート館のみの上映が多い中華電影は滅多に映画館でかからないので、それがフラストレーションになっていました。地元で観られない映画は仙台に遠征したり、帰省中なら東京まで観に行ったりもしていました。だけど今はコロナ禍。昨年も一昨年も映画祭には行けてません。
もちろん、以前も書いた通り配信でカバーして観てはいるのですが、それだけではやはり物足りません。映画は映画館で観る習慣を25年以上続けているので、どうしても小さな画面での鑑賞に満足できません。

そんな不毛な状況ですが、それでも最近は少し希望を感じています。それはOAFF上映作の日本公開と、地方まで回ってくる作品が少しずつ増えていることです。

50f2f8d12906420dbd1d7aed6763d678

OAFF2020で上映されたサミー・チェン主演の香港映画『花椒の味』は、昨年11月に新宿武蔵野館で上映されましたが、そこから半年以上経った6月に中央映画劇場略して中劇で上映されます。やったあ!
(前回感想を書いたこれも中劇で上映。実はこの館のスタッフさんに熱烈なニコファンがいらして、上映時のblogが半端なく熱いのでぜひぜひご一読ください)昨年は同年上映の『少年の君』や『夕霧花園』も地元で上映がありましたし、さらに一昨年は2019年上映の『淪落の人』も上映されました。花椒と淪落は武蔵野館の配給部門武蔵野エンタテインメント配給。東京公開開始後半年でソフト化されることが多かった単館系作品が、時間をかけても全国公開で持ってきてもらえるのって本当にありがたいです。

映画祭でいち早く観て、みんなで盛り上がれることは楽しい。その場でしか上映できない映画を観られるのも本当に貴重な体験。
だけど、中華電影迷としての一番の願いは、イベントに参加したみんなが楽しんだ映画に配給がついて、それが日本全国の映画館にかかってくれることなんです。
私が住む北東北の地方都市に上映が回ってきて、地元の同好の士の皆様に観てね観てねとアピールしながら映画館に通い、鑑賞後は地元のカフェやレストランで食事しながら一人でかみしめたり、あるいは友人とあれこれ話し合ったりできることは本当に楽しいです。

これからも日本で中華電影が上映され続けてほしいので、地元で上映される映画はもちろん、できれば遠征でも観て、支えていきます。
あとはこちらに来なかった映画の上映会も行いたいです。そのためにはどうすればいいか、いろいろと策を練っています。

このコロナ禍が早く収束して、また映画祭で関東や関西の同好の士の皆様にお会いして一緒にもりあがれる日が来ますように。
そして、また香港や台湾に行けますように。

そうそう、これも言わなきゃね。
『アニタ』の日本公開を強く願います。

| | | コメント (0)

我的中華電影ベストテン2021

2016年まで「funkin'for HONGKONG十大電影」と銘打ってその年に観た中華電影のうち、気に入ったものを10作選んでいたのですが、17年以降は映画の長文の感想がなかなか書けなくなってしまいました(twitterには感想は書いているのですけどね)
ここ2年は県外の映画祭などには行けなくなり、鑑賞本数も減少気味ですが、配信で何本か観ることができたし、地元の上映も徐々に増えてきているので、今年は題名を改めて、久々にまとめてみました。
なお題名に、Twitterで書いた感想をリンクしておきます。

理大囲城

これまで25年以上東北で暮らしているのに、なぜか行く機会が全くなかった山形国際ドキュメンタリー映画祭でのオンライン上映で鑑賞。これに先立って、地元では上映がなかった『乱世備忘 僕らの雨傘運動』もオンラインでやっと鑑賞。
2019年の初夏から始まった反送中デモのうち、最も大きな動きとなった11月の香港理工大学ロックダウンでのデモ参加者と警察との攻防を記録したドキュメンタリーで、スタッフは全員匿名。かつてよく散歩した尖東の歩道橋や近くを通ったことがある理大キャンパスがこの攻防の舞台になっていることには衝撃を受けたし、大学内部に閉じ込められたデモ参加者(高校生もいた)の焦りや意見のすれ違い等も緊迫感をもって観た。当時は日本のSNSでも武力行使を是としない意見をよく見かけたけど、このデモが決して暴力に訴えたものではなかったことはよくわかるし、理解が及ぶところである。
3年前の春に行ったのが結局今のところ最後になる香港だが、新しい建物や普通話の会話がやたらと耳について気になってはいた(かくいう自分も一応普通話スピーカーだが、香港では片言の広東語か英語を使って過ごしている)直後に反送中デモが始まり、それを受けて政府や中央からのさまざまな締め付けがコロナ禍に乗じて始まってしまい、現在の状況になったことに非常に驚いている。この映画も『時代革命』も、現在香港では上映できなくなってしまった。現在の香港の状況については、近日別記事でも書いておきたいのだが、暗黒の時代に入った香港でも、決して自由を死なせてはいけないし絶望してはいけないという気持ちを持っていたいものだ。

1秒先の彼女

D2074fe89f4d4657810d6f0f0e0bfa67

《健忘村》を除くこれまでの陳玉勳作品はいずれも映画祭上映から一般公開になっていたので、今回も金馬受賞後にOAFFで上映されるのかと思っていたら、いきなり一般上映が決まって驚いた。幼いころに出会っていたアラサーで風変わりな二人のおかしな邂逅の物語。確かに初期作の『ラブゴーゴー』に通じるところは大きいけど、原点回帰というよりも進化だよね?と全ての陳玉勳作品が好きな自分は思うのであった。ついでに《健忘村》も今ならもうちょっと評価されてもいいと思うんだけどなあ…。

少年の君

7a9779d9dee94ae49798f0928711bdbd

アカデミー賞国際長編映画賞ノミネート、そして20年の金像奬作品賞を受賞した香港映画。だけど舞台と俳優は中国、言語は普通話。10年代後半に『十年』や『大樹は風を招く』などに賞を与えていた金像奬がなぜ中国が舞台のこの映画に賞を与えたのか、疑問であった。香港映画で俳優としてキャリアを重ねてきたデレク・ツァン監督の作品は『恋人のディスクール』のみ観ている。この前作の『ソウルメイト/七月と安生』で単独監督デビューしているのだけど、これも舞台は中国。
これまで取り上げてきたテーマは友情やいじめと、普遍的なものである。そして鮮烈。中国製作なので、あの検閲済みの龍のマークはついているし、ラストには政府によるいじめ抑止対策の、クレジットもついていたのでプロパガンダ的にも見られそうだが、ここしばらくの中国映画が持つどこか忖度めいたものは感じられないし、制限のありそうな中でしっかり自分の描きたいことを描き切っている。周冬雨とジャクソン・イーの主演2人も、痛々しいほどの熱演を見せてくれた。
デレクの次回作はあの『三体』のnetflixドラマ版だそうで、これも楽しみである。第1話を担当とのことだが、そうするとあの場面から始めるのか…>あえてなにかは書かないでおく(読んだ人はわかっていると思うけど)

2b2571ddc2fe40c4899ce813f85257b8

↑これは公開時に劇場で掲出されていたスチール。地元の映画好きにも好評な作品でした。
それなら『七月と安生』も上映してほしかったなあ…配信で観るしかないのか。

日常対話

Dc540012ee10433aa54c5eb18140a6db

リンクはTV版の感想で失礼します。クラウドファンディング特典のトーク付き限定配信で観たのですが、なぜか感想をtweetしていなかった…

ホウちゃんのプロデュースでTV版が先行して製作され(NHKBS1で放映された『母と私』2015年製作)その後長編劇場版として製作。独立映像制作者の黃惠偵監督が、 葬儀業を営むレズビアンの母との修復を試みるためにカメラを回して自らと母の姿を撮ったドキュメンタリー。これまでの恋人たちが語る母の姿が興味深く、やがて語られる女性の抑圧に衝撃を受ける。今でこそLGBTQ+の権利を守り、多様性を重んじる台湾でも、かつての女性の扱いはやはりどこの国とも同じようなもの。監督が母との関係や彼女の過去を振り返ることで、台湾の個人史が現代史と重なるし、そこから知ることも大きいし、いろいろと考えられる。

血観音

JAIHOの配信で鑑賞。これも台湾の現代史に考えが及ぶ映画。舞台となる年代はちょうど自分が留学していた頃であった。戒厳令解除からしばらく経っていたが、まだ国民党が実権を握っていた頃だった。TVでたまたま観た省議会中継の議員の暴れっぷりにあきれた記憶がある。そして劇中での暗殺や怪死事件が当時実際にあった複数の事件を基にしているというのに闇を感じた…
JAIHOではOAFFやTIFFで上映された作品が観られてうれしいけど、だいたい期間限定配信なので、いつも最終日ギリギリに観てしまう癖を直したいところである。

私たちの青春、台湾

61be8e42313545ad910ee778be85e74e

先の記事でも触れたとおり、金馬奬で長編ドキュメンタリー賞を受賞した時の傅榆監督のスピーチが大陸側で物議を醸した作品。オードリー・タンのインタビュー本『オードリー・タンの思考』でもこの映画が紹介されていた。
14年の太陽花学運に参加した学生たちの栄光(と言っていいのか)と挫折、そして彼らを追った監督自身の心情も語られ、セルフドキュメンタリー的な面もあった。学生たちがジョシュアとアグネスに面会する場面があったが、二人の現在を思ってしまって胸が痛かった。2014年からの香港と台湾が現在こうなってしまうとは。そして今後はどう変わっていくのか。

羊飼いと風船

4c3d78a24229494b99fc7c0f0de00c40

祝、ペマツェテン作品日本初公開!
フィルメックスの常連で、ソンタルジャと共にチベット映画を確立した彼の作品が地元の映画館で観られるのは実に素晴らしきこと。
中国映枠に入れてはいけない気もするけど、王家衛が過去作をプロデュースしてるし、中華圏という枠で観られる作品だから、ということで。

坊やの人形

B62f9dfe6f2640df8415ce2729c3b354

風が踊る

D1a765a3b8dc49c2ab74e9aab2a05aee

今年はホウちゃんの過去作品をまとめて観られたのも実に有意義だった。

映画 真・三国無双

Df6ac1ee23244ba49b91ca92eec947c4

元ネタのゲームは全く知りません。ゲームだから三国の英雄たちがびしばし超能力を発揮するってことですよねそうですよね。
古天樂の呂布はいい感じの貫禄でカッコえかったけど、ハンギュンの関羽…それでいいのか、セクスィー関羽…
まあそれでも日本公開の意義はあったと思う。最近日本で作られた劉備がぼやきまくる某三国志映画に比べたら百倍も千倍もいい。
そして東京と大阪の他、唯一の地方公開を果たしてくれた地元の劇場・盛岡中央劇場には大いに感謝しております(なおこの劇場で近日『レイジング・ファイア』が上映されます。中劇のニコファンの方による熱いレコメン記事をみんな見てあげて)

番外 シャン・チー テン・リングスの伝説

52f6bbefd4544ce8949987ae0936e69f

はい、番外です。昨年唯一このblogで感想が書けた映画だけど、番外です。
中華電影へのリスペクトが込められていてもやっぱりマーベル映画だし、久々にトニーへの愛も激しく確認できたけど、まあいろいろあるし。(そして勢い余ってこんなファンフィクションまで書いてしまったので、よろしければ読んで脱力してくださいませ)
続編製作が決定したのは嬉しいけど、次のキャストには噂されているあの人よりも四大天王クラスを出してほしいなあ。

| | | コメント (0)

シャン・チー テン・リングスの伝説(2021/アメリカ)

サンフランシスコのホテルで駐車係をしている華人の青年ショーン(シム・リウ)。同僚で10年来の親友ケイティ(オークワフィナ)とカラオケで歌いまくって朝まで遊び歩いたりと、自由気ままな生活を謳歌していた。ある日、マカオに住む妹シャーリン(夏令/メンガー・チャン)から便りが届き、それと時を同じくしてショーンの周りに怪しげな男たちが出没するようになった。彼らは千年の永きに渡り世界の裏で暗躍してきた犯罪組織「テン・リングス」のメンバーで、その首領シュー・ウェンウー(徐文武)はショーンことシャンチー(尚氣)の実の父親だった。テン・リングスからの刺客から逃れたシャンチーは、ケイティと共にシャーリンの待つマカオに向かうが、そこには数多くの罠が仕掛けられていた…

アイアンマンやキャプテン・アメリカなど数多くのヒーローを生み出し、2010年代は彼らがチームとなって強大な敵に挑むさまを『アベンジャーズ』シリーズとして製作してきたマーベルスタジオ。ディズニーの子会社となって今や米国を始めとした世界のエンタメの頂点に上り詰めた感もあるこのスタジオが作り続けたマーベル・シネマティック・ユニバース(以下MCU)も、2019年の『アベンジャーズ・エンドゲーム』をその集大成として一区切りを迎えた。
2020年代を迎え、ポスト・アベンジャーズの新フェーズに入ったMCU。エンドゲームで何人かのキャラクターが退場し、また新たなキャラがそこに加わることとなったが、その先陣を切ってデビューしたのが、マーベル初のアジア人ヒーロー『シャン・チー』
監督は『ショート・ターム』『ガラスの城の約束』『黒い司法』を手掛けたハワイ出身のデスティン・ダニエル・クレットン(ちなみに彼の作品の常連俳優であるブリー・ラーソンは、現在のMCUの中心をなすキャラクターのキャプテン・マーベルも演じている)タイトルロールを演じるシムは中国生まれカナダ育ちの新人俳優で、実質上の初出演映画が初主演というラッキーボーイ。
しかし、この映画で最も驚かされたのが、近年「香港のレジェンド」と称されるようになったトニー・レオンが、御年59歳にしてハリウッドデビューを飾ったこと。役の名はウェンウー。トニーにとっては初の本格的な悪役(ヴィラン)で、初の成人した子供がいる父親役である。

 Ac41f23dc47945b0b028fb26409a4aad

ジョン・ウーが『フェイス/オフ』を監督し、チョウ・ユンファがハリウッドデビューを控えていた1997年。『ブエノスアイレス』が世界的に高い評価を受ける中、当時のトニーは日本の雑誌のインタビューで「ハリウッドに行く気はない。アジア人にはどうしても悪役が回ってくるから」というようなことをコメントしていたのをふと思い出した。共演したレスリー・チャンも別の媒体で同じようなことを言っており、両者ともその発言通りに中華圏で活動を続け、国際映画祭やアーティスト活動で知名度を広げていった。
『花様年華』『ラスト、コーション』『レッドクリフ』二部作に『グランド・マスター』と2000年代のトニーは次々と国際的な話題作には出演していったが、2010年代後半は出演作も減少した。さらには2018年には長年マネジメントを委託していた澤東公司との契約を終了し、実質上フリーになっていた。今後どのような作品に出演するのかと思っていた頃に2019年にマーベルから発表されたのが、『シャン・チー』への出演だった。長年のトニーファンとしては、これは喜ばしいというよりも意外性と驚きに満ちたニュースであった。

「ハリウッドに行く気はない」発言から24年、花様年華でカンヌ映画祭最優秀男優賞を受賞してから21年。この間の様々な変化を考えながら、なぜトニーがハリウッドに行ったのか、ということを考える一方、MCU作品の変化等も考えながら、今回は感想を書いていきたい。

★ここから先は『シャン・チー』本編及び複数のMCU作品の内容に触れています。
なお、タイトルは『シャン・チー』ですが、中国人名は音で日本語表記する場合は名前に「・」を入れないので基本的に「シャンチー」と表記します。


1・自分の知識内だけで試論的に述べてみるMCU映画としてのシャンチー

私は香港映画を始めとする中華電影迷を名乗ってはいるが、実質上は洋邦及び公開規模を問わず、地元の映画館で公開される映画は何でも観る傾向にある。MCU映画も例外ではなく、いくつかのシリーズを見落としてはいるが、8割方は観てきたと思う。お気に入りのキャラクターであった『アイアンマン』でも、の公開時に別のblogでかなりふざけまくった感想を書いているくらいなので、参考としてリンクを貼っておく。

スーパーヒーロー映画といえば、どうしても勧善懲悪と思いがちである。世界各国のメディアで多くのヒーローが誕生した20世紀は、冷戦構造で敵味方がはっきり分かれていたこともあり、それでも問題はない実に牧歌的な時代であった。
そんなヒーローたちに囲まれて、我々は成長してきた。
21世紀になり、冷戦の終了から世界の対立が変化し、過去10年間でも新たな分断と対立が表面化してきた。そんな時マーベルが製作した映画は、一癖も二癖もある多種多様なヒーローたちの物語であり、社会状況の変化とともにその内容をアップデートさせてきた。2010年代後半のハリウッドで問題提起されたダイバーシティ(多様性)やインクルージョン(属性の包括)、metooムーブメントを受けてブラックパンサーやキャプテン・マーベルが新たに登場したり、ブラックウィドウの初登場時からの大きな変化や、アントマンと共に戦うワスプの登場など前線で戦う女性キャラクターも増え、時代の変化をうまく読み取ってシリーズを広げてきた。
また、MCU以外に目を向けると、ハリウッドでは主要スタッフもキャストもすべてアジア人という『クレイジー・リッチ!』の大ヒットが起こり、さらに中国での映画市場が世界2位の位置につけるなど、米国内外的にもアジア(特に中国語圏)の存在が大きくなってきていた。(それはつい最近発生した国内でのアジア人差別というネガティブな動きも含んでの話でもあろう)
全宇宙の人口半減という企みを持った最大の敵サノスを迎え撃ったインフィニティ・ウォー&エンドゲームで2010年代のフェーズを一区切りし、トニー・スタークやスティーブ・ロジャース、ナターシャ・ロマノフなどのアベンジャーズ初期メンバーが「退場」した後、次に語る物語には世界の流れも見据えた多様性や多文化共生が必要と見たのだろう。それで、ブルース・リーがアメリカを始め世界を席巻していた1970年代生まれのこのカンフーヒーローが満を持して登場することになった。もちろん、先に挙げたような中国市場を狙っていることもあるだろう。

一方、マーベルと双璧をなすアメコミブランドであるDCコミックスの作品では『ダークナイト』シリーズや『スーサイド・スクワッド』などで、ジョーカーやハーレイ・クインなどかなり個性の強いヴィランが活躍し、タイトルロールとして独立した作品もある。もちろんマーベルでも、先に挙げたサノス、ソーに対するロキ、スパイダーマンシリーズから生まれたヴェノムなど魅力的なヴィランが登場しているが、DCのジョーカーのように、近年はヴィランにもドラマティックな背景を設定して主人公と対峙させる傾向にある。もともと、シャンチーは父親が英国の作家によって生み出された怪人フー・マンチューの息子としてコミック版で設定されており、やがてその名前が使えなくなったために実際にコミックに登場することはなくなったという。しかし彼はマンダリンと名を変えてアイアンマンに自らの組織テン・リングスを率いて登場することになったため、その設定をさらに映画に生かしたのが、今回のウェンウーとなったという。そして、この役にトニーを迎えるために加えられた設定が、まさに彼にしか演じられない役どころとなっていたのに驚いた。クレットン監督も加わった脚本陣も、そのスタッフも、本当にトニーに惚れ込んで三顧の礼を尽くしたのではないか、と考えてしまった。

2・世界よ、これがトニー・レオンだートニー・レオンによる愛の映画としてのシャンチー

千年不老で権力欲の権化(という表現でいいかどうか…)である犯罪組織テン・リングスの首領ウェンウー。
これまでマーベルコミックに登場したテン・リングスの首領はマンダリン始め様々な名前で呼ばれてきたが、みな彼の偽名で替え玉も使っている(そのうちの一人、偽マンダリンことトレヴァーを演じたのが『アイアンマン3』に続いて登場のベン・キングスレー御大!)ので、正体は謎のままだった。
この謎に満ちた存在であるウェンウーは、常に笑みを浮かべており、何を考えているのかわからないところがある。その一方で妻でありシャンチー&シャーリン兄妹の母であるインリー(映麗/ファラ・チャン)を失ったことで、息子を自分の跡取りとして厳しく鍛え、暗殺者として育ててしまう一種の激しさがある。確かにこれはネグレクトとしか思えないし、シャンチーにとってのウェンウーは毒親と言われるのも大きくうなずける。本当に迷惑な父ちゃんである。
しかし、この映画を「トニー・レオンの映画」として観てみると、シャンチーには申し訳ないが、このウェンウーがトニーが演じるに相応しい、実に魅力的なキャラクターに仕上がっていたのだ。ずるい。こんなキャラクターを生み出してしまうのって本当にずるい。そして簡単に彼をヴィランなどと呼んじゃいけない。とつい感情的になってしまって申し訳ない。

千年間も悪事を尽くしてきたウェンウーが狙った豊かな村での運命の出会い。映画の冒頭で展開される勇敢な戦士インリーとの舞うような戦いには、この男が本当に邪悪な盗賊なのかと疑ってしまうほどの美しさを見出せる。後半の舞台にもなる大羅(ダーロー)村の色彩は実に美しく『グリーン・デスティニー』や『HERO 英雄』を思い出させる。この戦いで彼は打ちのめされ、そして彼女を愛してしまう。千年生きてきた先にウェンウーが見つけたのはこの愛である、という描き方は、トニーが数々の愛に生きる男を演じた姿を何回も観てきた我々には非常に説得力がある。そして、その愛が彼の手から失われてしまったらどうなるか、ということもよくわかる。
すでに30年近くトニーに付き合っている我々にはすっかりお馴染みの展開であるのだが、これをハリウッドの、しかもマーベルコミック映画として堂々と取り上げたのはお見事である。悪に染まった男がこれまでの人生を捨てるくらいの価値観の変換をその愛から得て、彼女を失った故の悲しみと狂気を描くのは、これまでのヒーローものでもあまり見たことがない。作り手もトニーだからこそ演じられるキャラクターとしてウェンウーを設定したことには、心から敬意を表したい。
約10年前に『アベンジャーズ』が公開されたとき、「日本よ、これが映画だ。」という上から目線のコピーが物議を醸したが、それを受けてあえて言わせてもらおう。

世界よ、これがトニー・レオンだ。

Wenwu

3・香港映画は死なないーシャンチーにおける中華電影へのリスペクト

トニーだけではなく、この映画には香港映画を愛する我々にはお馴染みの俳優たちも続々登場する。
闇の力を封じ込めて守る大羅村の長で、インリーの姉でもあるインナン(映南)を演じるのは、25年に近いハリウッドでのキャリアを誇るミシェル・ヨー。彼女と共に村を守り、ケイティを戦士として鍛えるのは、こちらもお馴染みのユン・ワー。香港映画好きならトニーと共に「我らが」と称したくなるレジェンドたちの登場には大いに胸をワクワクさせられて、作り手の香港映画へのリスペクトが強く感じられるのがよい。
先に挙げたインリーとの出会いの場面には『グランド・マスター』での宮二との手合わせも思い出させるし、男女等しく鍛錬に励む大羅村の場面は、キン・フーやツイ・ハークが描く時代劇も彷彿とさせる。インナン&インリー姉妹やシャーリンがともかく武芸に秀でているというのがまさに武侠映画。ついでにテン・リングスが指輪ではなくて腕輪であるというのも『カンフーハッスル』等を彷彿とさせていい。(参考としてtonboriさんの感想もどうぞ)もちろん、序盤でシャンチーがテン・リングスの武闘派レーザー・フィスト(フロリアン・ムンテアヌ)と繰り広げるバス内のバトルは黄金期のジャッキー・チェン作品のようだし、シャンチーの教育係だったデス・ディーラー(アンディ・リー)の仮面は歌舞伎や京劇と同時に『レジェンド・オブ・ヒーロー 中華英雄』に登場する鬼僕も思い出した。その他、シャンチーやシャーリンの部屋を飾るポスターに至るまで見ればきりがないが、ともかく全面的に70年代から2000年初頭までの香港映画および中華電影に対するオマージュとリスペクトが詰まっている。これはもうお見事。シャーリンの髪からハリウッドのバトル系アジアンガールのアイコンでもあった色メッシュが排除されたり、クレジット等に怪しげなオリエンタル的フォントが使われなかったのも「よくわかってる」しるしでもある。

香港映画好きとして、現在大陸が香港に強いている検閲の強化は本当に残念で悔しく、黄金期のような楽しい香港映画が今後登場するのかと考えるとどうしても不安になる。それもあって、個人的には香港映画のテイストを少しでも感じさせるもの(例えば『るろうに剣心』シリーズ)を観てしまうと、もうそれを全力で支持してしまう傾向にある。かつて黄金期の香港映画を支えた人々は去ってしまい、現在は若手監督たちが珠玉の作品を生み出しつつも厳しい状況にあり、一方香港映画人を多く起用した大陸での作品も…といろいろ考えることが多く、香港映画の未来を考えては切なくもなってしまうのだが、華人を始めとしたアジアの映画好きの根幹にある香港映画的なスピリットをちゃんと生かしてくれたスタッフに感謝している。
そして、アクションコーディネーターのひとりが『ゴージャス』を始めとした成龍作品で大活躍したブラッド・アラン。彼はこの映画の公開直前に急逝。ご冥福をお祈りいたします。

4・がんばれシム、ひっかき回せオークワフィナ ニューキッズたちのこととかその他いろいろ

言いたいことはだいたい言ったので、このへんで締めてもいいのだがやはりもう少し。キャストについて。
タイトルロールのくせに今まで全く触れてこなかったシャンチー。シムには大変申し訳ないが(通算二度目)、ティザービジュアルを見て思い切り叫んだ。
「あのトニー・レオンからこの息子が生まれるなんてありえない!」と。
ジャッキーの例を挙げるまでもなく、カンフーヒーローはファニーフェイスである方が親しみが増す(例えば『カンフー・ジャングル』の王寶強もアクションスターであるが、ファニーフェイスを活かした『唐人街探偵』シリーズや『新喜劇王』などコメディを得意とする)のは確かなことだ。それであっても地味である。ほぼ映画初出演が初主演という、まさに朝ドラヒロイン(比喩としては「仮面ライダーシリーズの主演」の方が適しているのだろうが、新人の登竜門としての知名度は朝ドラの方が大きいのであえてこちら)的なサクセスを果たしたとしてもやはり地味である。これだけ地味地味言っているが、決してけなしているのではない。実際演技を見てみると、ちゃんと身体も動くし、本人も意欲的にに取り組んだことがよくわかるし、まだまだ伸びしろはある印象。なによりハリウッドもアジア系の新星を求めているのだろうから(アジア系男優としてすぐ思い出せるのは韓国系のジョン・チョーやマレーシアにルーツがあるヘンリー・ゴールディングあたり。もちろん香港で活躍してきた米国生まれのダニエル・ウーも忘れてはいけない)今後も多種多様な作品で活躍することを望む。
『オーシャンズ8』『クレイジー・リッチ!』等で強烈な個性を発揮するオークワフィナはここでも大活躍。彼女の演技はハリウッドのアジア系女子キャラのステロタイプをどんどん破壊しまくるようで見ていて実に痛快(個人的には繊細さを見せた『フェアウェル』が好きだけど)怖いもの知らずでやかましいけど頼りになるし、シャンチーの運命に付き合ううちに自身も勇敢な戦士として成長する姿は見所あるし、むしろ彼を喰っている。ケイティはMCUの新たなトリックスターになっていくのかな。
その他、やはりこれがハリウッドデビューとなった南京出身のメンガー・チャン(中国名が張夢兒というので、むしろ”メンアル”だと思うのだが、このままの表記でいくのだろう。シムも中国名だと「思慕」らしいし)日本ではJJモデルとしても活躍したという(!)ファラ・チャン等、ニューキッズな華人俳優が一気に登場。
あと、ニューキッズと言っていいのかだが、こんな子も登場。
トレヴァーの相棒にしてインリーに懐いていた(らしい)大羅村の不思議な生き物、モーリス。

Maurice
まさかこの子が山海経に登場する帝江(渾沌)がモデルであったとは。
それに全く気付かない中文系出身者は深く深く反省している。(参考として達而録のこの記事をどうぞ)

ここまでかなり絶賛しているが、それでも不満に思う個所はいくつかあるので、個人的に欠点と思うところをいくつか。
まず、中国市場を狙ったこともあって劇中は中国語(北京語)台詞がほぼ半分という試みは実にいいのだが、トニーの中国語台詞は広東語で聞きたかった。ケイティとおばあちゃん(『007は二度死ね』等に出演したベテラン華人俳優ツァイ・チン)との、英語と北京語の掛け合いがよかったので、ここでは多言語が飛び交う香港映画に倣って、トニーだけでも広東語ダイアログでもよかったと思う(蛇足だが、そういえば多言語会話は現在公開中の日本映画『ドライブ・マイ・カー』でも実験的に展開されていた。演技者のバックボーンを伺わせる表現方法として今後も有効だと思う)
あとは完全ネタバレで書くが、最終決戦となるダークゲ―トの魔物とシュー家の人々と対決場面。最大の危機であるし、ここでウェンウーが退場するのは展開的に致し方ないのだが、その後がどこか間延びしてしまった感もあった。別れの場面はもう少しタメというか情が感じさせられる場面に仕上げてほしかった。それを求めるのはあまりにも贅沢だろうか。あの魔物もここ10年くらいの怪獣映画に見られるどこかキモい(口が悪くて失礼)造形だったのも興ざめであったかな。モーリスを始めとした大羅村の魔物たちやシャンチーが呼び寄せた神龍の造形がなんとかギリギリ中華風味のラインを保っていて感心しただけ、そのあたりは残念だった。

5・とりあえずMCUは脇に置いといて、CEOケヴィン・ファイギに直訴したいこと

運命を変えた大羅村の戦いからサンフランシスコに帰還したシャンチーとケイティのもとにやってきたのは、マカオでニアミスしていたチベット僧のウォン(『ドクター・ストレンジ』の中華系イギリス人俳優ベネディクト・ウォン)。彼が二人に引き合わせたのはキャロル・ダンヴァースとブルース・バナー。兄は父から腕輪を継承し、妹は組織を受け継いだ。「指パッチン」後の地球と宇宙にまた新たな危機が迫ろうとしていることを匂わせ、テン・リングスの再来を宣言してこの物語は幕を閉じる。
こうしてMCUの新フェーズが幕を開け、『ノマドランド』で称賛を受けた華人女性初のオスカー監督クロエ・ジャオの手がける『エターナルズ』(メインキャストに『クレイジー・リッチ!』のジェンマ・チャンと韓国のマ・ドンソクが参加)やトム・ホランド主演の『スパイダーマン』シリーズの新作がこの後に続くとのことだが、あまり事を広げたくないのでMCUは脇に置いておく。

SNSに流れてくる動画や記事を読む限り、ともかくトニーが絶賛されまくっているのだが、クレットン監督やシムたちスタッフやキャストはもとより、マーベルCEOのケヴィン・ファイギまでこんなことを言っていて腰を抜かした。

「たくさんの映画スターや伝説的人物とご一緒してきましたが、セットで彼をお見かけした時、ほとんど言葉を失ってしまいました。まるで空から降りてきた異世界のスターのようだったから」

マーベルのえらい人が、ただのファンになっておる…
というわけで、この1作だけで世界中にトニーのファンを爆発的に広げてしまったのは確かなので、できることならファイギCEOに以下のことを直訴したい。
MCUシリーズからのスピンオフとして、ウェンウーの1000年間の人生を描いた『テン・リングス The Beginning』の製作を。それも配信ドラマではなくちゃんとした映画で。これ以上注文をつけるときりがなくなるので、とりあえずこのことだけは直訴する。どうか前向きな検討を願いたい。

終わりに

最初に提示した「かつてハリウッドに行くつもりがないトニー・レオンがなぜシャンチーに出演したのか?」という問題に対しては、ここまで考えると、全てが良いタイミングが揃っていたということで結論にしたい。先にも挙げたハリウッド及びMCUのアップデート、スタッフ陣の熱いラブコールはもちろん、マネジメントの変更、年齢的なタイミング、そして映画業界の変化など、様々な要因がハリウッド進出にいい方向に向かったということで、『悲情城市』『恋する惑星』から長年ファンをしている身としては、この成功とハリウッドデビューを心から喜んでいる。今後は数本の映画撮影に加え、久々のドラマ参加も控えている(何とかして観たい…)そうで、あくまでも香港を拠点に場所を問わない活動をしていくようなので、コロナ禍明けが待ち遠しくなる。

しかし、若いころから侯孝賢や王家衛といった世界的に評価の高い中華圏の監督作品に参加し、カンヌ映画祭でアジア人として2人目の最優秀男優賞を受け、『インファナル・アフェア』はハリウッドと日本でリメイクされ、日本も資本参加した『レッドクリフ』二部作の主演も務めてきた香港を代表するこの俳優が、たった1本の大作映画(しかもアメコミ原作)で一気に知名度が上がり、言うなれば「再発見」されてしまったことには複雑な気持ちを抱いてしまう。それもまたハリウッドの威力のすごさでもあるのだが。
それでも、新たに彼を知った人には過去作というお楽しみがたくさんある。トニーは1990年代の香港映画黄金期と台湾ニューシネマ最晩期、2000年代の大作中国映画にそれぞれ代表作がある現代アジア映画史の重要人物でもあるし、出演ジャンルも多岐にわかるので、若き頃の彼の活躍に是非魅了されてほしい。そして、いろいろと話ができればとても嬉しい。

 

期間限定公開のようですが、これはやはり載せずにはいられない。
「ネタバレ厳禁!」とのことですが、このblogは鑑賞後に読んでもらうことを想定としていますので、どうかお許しください、ボス。

監督&脚本:デスティン・ダニエル・クレットン 製作:ケヴィン・ファイギ&ジョナサン・シュワルツ 脚本:デイヴ・キャラハム&アンドリュー・ハナム 撮影監督:ウィリアム・ホープ プロダクションデザイナー:スー・チャン 衣裳:キム・バレット 音楽:ジョエル・P・ウェスト
出演:シム・リウ オークワフィナ メンガー・チャン ファラ・チャン フロリアン・ムンテアヌ ベネディクト・ウォン ユン・ワー ベン・キングスレー ミシェル・ヨー トニー・レオン 

| | | コメント (0)

名もなきならず者たち、銀河に新たなる希望をつなぐ。

 2016年もあともう少しで終わり。
 中華電影の上映が減ったり、個人的にもHP本館がなくなったりとここに書けないこともいろいろありすぎて、blog記事も例年になく書けませんでしたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。これが今年最後の記事ですが、予約投稿かけているので、それまでに目標だった今年観た映画の感想が全部書けているかどうかは果てしなく不安です(苦笑)。

 さて、映画界でのこの冬最大の話題といえば、一代宗師以来3年ぶりの出演となるトニー・レオン主演、共演に金城くん、イーソン、angelababyが揃い、王家衛がプロデュースした《擺渡人》!…と言いたいところなんだけど、残念ながらまだ観る機会に恵まれません(泣)。この冬香港や台湾に行くことができないからです。
 と言うのはあくまでも中華圏の話題で、全世界的な話題に目を向ければ、昨年より製作が再開した20世紀が誇る宇宙ファンタジー映画の金字塔、スター・ウォーズ(以下SW)シリーズの初スピンオフ、『ローグ・ワン』が全世界的にヒットしていること。これにアジア人初のSWメインキャストとして、ド兄さんことドニー・イェンと姜文が出演すると1年ちょっと前に発表されたときには、中華電影迷の間に大きな反響を呼んだのは言うまでもない。

 そんなわけで今年最後の記事は、ローグ・ワンについてです。
SWシリーズはエピソード4から6をTVで何度も観て、昨年公開された7(フォースの覚醒)を劇場で観ているけど、熱心なファンでもないし、まさかこのblogで書こうなんて昔の自分なら信じられなかっただろうな…^^;



 エピソード4『新たなる希望』(いわゆる第1作ですな)の開幕に流れる「反乱軍ゲリラが帝国軍から惑星破壊兵器デス・スターの設計図を入手し…」のエピソードを、2年前のハリウッド版ゴジラを手がけたギャレス・エドワーズ監督によって映画化。 

 デス・スター設計を手掛けた父親を持つ札付きのならず者ジン・アーソ(フェリシティ・ジョーンズ)を中心として結成された愚連隊(これが題名の由来)が敵陣に切り込む物語だけど、このローグ・ワンの中心メンバーとなっているのが、ド兄さん演じる盲目の僧兵チアルート・イムウェと、姜文演じる相棒のベイズ・マルバス。



 SWシリーズと言えば、35年以上昔からも全く変わらないクラシカルな宇宙空間に展開する激しいバトルがお約束だけど、今回はそれに加え、緑豊かな惑星を舞台にした激烈なゲリラ戦も繰り広げられる。その共存は実に現代的だし、見ごたえがある。
 そんな中でひと際目を引いたのが、やはりチアルート。
いやもうこっちがどーのこーの言わなくても、とにかく観ればわかるとしか言えないあのアクション。宇宙最強が決して伊達じゃないのがわかる(笑)。そもそもはクロサワリスペクトと言われるSWシリーズに初めて出演したアジア人俳優が日本人じゃないのが残念だとか、今や米国に次ぐ第2の市場となった中国狙いのキャスティングかとかの雑音が多少聞こえてきたけど、ドニーさんのインタビューを基にしたこの記事を読むと、そんなことは決してないことがわかる。ギャレスもまた、ド兄さんを起用したのはアクションだけでなく俳優として見込んだからというのも嬉しい。

 チアルートはただの強者ではない。人をつなぐ力として語られるフォースが消え去ってしまった時代に、その力は持てないものの、存在を信じて限りなくジェダイに近づこうとしている。加えてユーモアも持っていて、若きジンの可能性もフォースと同じくらい信じている。そういうキャラクターができていて、それでいてのあのアクションなのだから説得力があっていい。ホントに嬉しいものである。
 彼の相棒となる姜文のベイズも、思った以上にいいヤツだったのが嬉しい。アジア映画によく見られる(含む日本な)男同士の熱い絆で結ばれている二人なので、なんか一部がザワザワしちゃってるけど(笑)、とかく一匹狼タイプな姜文がこういう無骨な男を演じるわけだし、そーいえばこの二人は関羽の映画こと『三国志英雄伝 関羽』(すいません残念ながら未見です)でも共演しているし、ド兄さんも監督兼任したことがあるから、きっと気は合うんだろうなって思ったりして。

 そんな“ならず者”たちが果たすミッションとその運命は…ってのはここでは言えないけど、一つ言うとなれば、これが見事に『新たなる希望』につながっていくというのも素晴らしい。これが初SWなら、これからエピソード4がどう展開するかという楽しみが味わえるし、ヘヴィなファンもまた楽しめるのがいいよね。
 そして、この映画でド兄さんを初めて知った人もまた幸せだと思う。2月には再びのハリウッド出演作『トリプルX:再起動』もあるし、何と言っても4月には当たり役である『葉問3』がある!もちろん、過去作品もたくさんある。これがきっかけで、アジアンアクションにハマれる楽しさがあるからね。

 というわけで、来年は『葉問3』を始め、たくさんの香港映画が日本でも上映され、たくさん観られますように。
 そして皆様、どうか良いお年を…。May the force be with us! 

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

見習い(2016/シンガポール・ドイツ・フランス・香港・カタール)

 映画祭の醍醐味は、世界の映画がたくさん観られること。ゆえに、アジア映画を多く紹介してくれるTIFFやフィルメックスの存在は本当にありがたい。
 さらに、ここ数年の世界の映画祭ではフィリピン映画が連続して受賞し、それに伴って東南アジア各地の映画が注目を集めているとのこと。今年のTIFFでも、コンペで観客賞と主演男優賞のダブル受賞となったのが、フィリピンの『ダイ・ビューティフル』だった。

  この『見習い』は今年のカンヌの「ある視点」部門にシンガポールから出品された作品。シンガポール映画といって思い出すのは、この作品で製作総指揮を手がけている『TATSUMI』のエリック・クー監督や、カンヌでカメラ・ドールを受賞した『イロイロ ぬくもりの記憶』など。だけど残念ながら両作とも観る機会に恵まれなかったので、これが初シンガポール映画となった。
 クー監督、イロイロのアンソニー・チェン監督、そして本作の監督のブー・ユンファン監督も名前からしていずれも華人なのだが、はたしてシンガポールは中華圏なのだろうか?と一瞬思った。しかし、そういうわけでもないらしい、とこの映画を観終えた後に思った。
 と言いつつも、この映画を観ようと思った一番の要因は、クー監督と共に我らがパンちゃんことパン・ホーチョンが製作総指揮に加わっていたからなのである。
すいませんそんな理由で本当にすんません。

 日本と同じく死刑制度を持つシンガポール。刑務官になった若いアイマンは、ベテラン死刑執行人ラヒムの元で執行人見習いとして働くことになる。アイマンの父は殺人を犯して死刑に処されたが、彼はラヒムが父を処刑していたことを知る。

 アイマンとラヒムはマレー系だが、彼らの同僚の刑務官や死刑囚には華人もいる。シンガポールには他にもインド系も多く住むということだが、華人がマジョリティであることを知ると主人公二人はマイノリティに位置するということか。このへんは監督も初映時のQ&Aで語ったようなのでそちらに譲るけど、映画の中盤で白人のBFと結婚してオーストラリア(だと思ったが)に移住するアイマンのお姉さんのエピソードもあるので、シンガポールがただ華人の多い国というわけではなく、多民族国家であることが明確にわかるように描かれていたのが興味深かった。

 世界的には制度廃止の方向に向かっている死刑だが、日本にももちろん死刑制度はある。そういう背景もあるので、いかに刑が執行されるのかという点でも興味深く観たけど、カンヌで上映されたときにはおそらく観客は衝撃を受けたかもしれないし、批判もあったんじゃないかと思う。現在の日本でもこういうタイプの作品は作れなさそうだ。
 もちろん、ブー監督もそのへんはわかっているようで、死刑制度の是非が主題ではなく、これを媒介にした人間関係を描きたかったということで、脚本の作成に3年(その間東京にも滞在したとか)、母国の多くの執行人や死刑囚の家族たちへのインタビューを重ねて作り上げ、若い刑務官からの視点を主にして死刑執行に新たな視点を当てたかったとのこと。

 死刑までの流れは非常に丁寧で複雑なプロセスを要し、それでいてあっさりと執行される。そこの描かれ方がリアルなので見入ってしまうが、父を死刑で失ったアイマンのようなケースはありうるのだろうか?それは映画ならではの面白さではあるのだけど、肉親を殺された者と殺した者が偶然にも出会ってしまった際の心の乱れは、どんな人間においても共通するものがあるのだなと思った。



 当日のQ&Aでは当然クー監督やパンちゃんとの関わりが質問で出たけど、クー監督はブー監督の長編第1作に引き続いてのプロデュースで、パンちゃんには脚本を読んでもらって資金面でのプロデュースを買って出てもらったそうだ。両者ともTIFFの常連であり、アジアを股にかけて活躍する映画人。特にパンちゃんは昨年のレイジーに引き続いてのプロデュースであると考えると、中国だけでなく東南アジアにも目に向けたよさと、今後の東南アジア映画の面白さは彼らが陰でサポートして発展していくのだろうな、と改めて思った次第。今年の大阪アジアン映画祭で上映されたマレーシア・シンガポール合作の『ご飯だ!』は、パンちゃんの盟友チャッピーの初監督作品であるしね。

中文題&英題:身後仕(Apprentice)
監督&脚本:ブー・ユンファン(巫俊鋒) 製作総指揮:エリック・クー パン・ホーチョン
出演:フィル・ラフマン ワン・ハナフィ・スー マストゥラ・アフマド

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

真夜中の五分前(2014/日本・中国)

 昔から映画は国境を越えるものであり、欧米だけじゃなくて日本もアジアで多く合作を作ってきた。日本の映画会社が香港や台湾でロケしたり、日本の技術スタッフが現地で仕事したり中華圏の俳優を出演させたりと方法は様々だったらしく、そういえば李小龍作品は日本の西本正さんがカメラを回してるんだっけ、と過去記事から改めて気づく。このへんはお詳しい方に負けるので、詳細はググってもらえれば(^_^;)。
 ワタシが中華電影にハマった頃もこういうアジアンコラボは積極的に行われていたけど、当時は日本の俳優や音楽家が参加するくらいって感じだったと思う。それでも好きな俳優やスタッフが香港や台湾で仕事するなら嬉しいものだったけど、そんなに好きじゃないとどーでもよかった。☆月とかな(苦笑)。

 この『真夜中の五分前』は『GO』や『世界の中心で、愛をさけぶ』で知られる行定勲監督が、本多孝好による同名の小説を、上海を舞台に移して映画化したもの。すでに大陸などでは公開済み。驚いたのは完全に日中合作で作られたので、自国映画枠での公開ができたとのこと。そして主演が三浦春馬なので、アミューズ上海が製作に加わっていたことも知って、アミューズが昔香港で合作映画に取り組んでいたのを思い出してたりして。kitchenとかね。

 良(三浦春馬)は上海でアンティーク時計の修理工をして暮らしている。住み込みで働いているので、仕事が終わったら近所の屋内プールに泳ぎに行く。そこで彼は美しい女性若藍(劉詩詩)と出会い、贈り物を選んで欲しいと頼まれる。良が提案したのは、自分の店の時計だった。
 それから、良は若藍と瓜二つの一卵性双生児の妹如玫(劉詩詩)とも出逢う。如玫は女優をしていて、映画プロデューサーの天倫(ジョセフ)と婚約していた。控えめで聡明な若藍と華やかで妖艶な如玫と付き合っていくうちに、良は若藍にひかれていく。
しかし、若藍と如玫は旅行先のモーリシャスでクルーザーの事故に遭う。生き残ったのは如玫だった。間もなく如玫と天倫は結婚する。
 それから1年後、良は天倫から連絡をもらう。彼曰く「如玫はもしかして如玫じゃないかもしれない」と。良は久しぶりに如玫と出会うが、確かにすっかり変わってしまっていた…。

Yukisada
岩手日報2014年12月23日付。この記事、web化されてないのが残念。拡大できます。

 行定さんの作品は割とよく観ている。監督作がかなり多いので(これの前に撮った作品が昨年公開されてたし、ドラマや舞台演出もしている。最近はWOWOWのドラマ『平成猿蟹合戦図』や舞台『ブエノスアイレス午前零時』なども)全部は観てないけどね。『GO』『今度は愛妻家』『パレード』が好きかな。
 『南風』の感想にも書いたけど、行定さんはアジア映画のスタッフやキャストを積極的に作品に起用してきたので、いつかはアジアンコラボを手がけるのだろうと思っていた。フィルメックスでのQ&Aや上の新聞記事(写真)でもわかるように、台湾ニューウェーブや王家衛作品に影響を受けていると言われたら大いに納得する。
 今回は中華圏を代表する録音技術師・杜篤之さんを起用。それを先にわかっていたので、サウンドデザインに注意して聞いてみた。セリフは最小限で、がちゃがちゃしていそうな上海が舞台なのにかかわらず、背景の音はけたたましくはない。ジャンクーやホウちゃんの作品にも関わっている、半野喜弘さんの音楽も画面にすっと入り込むような感じでいい。行定さんの映画はあまりおしゃべりな感じではない(『GO』は例外だろうけど)ので、これがいい効果を上げていて、舞台を移してもちゃんと行定さんの映画だとわかるのがいい。

 幼い頃からお互いを交換して生きてきた双子の姉妹のアイデンティティの揺らぎ。如玫は素直に若藍に憧れ、若藍は無邪気な如玫に嫉妬する。そうやって生きてきたのがよくわかるので、事故で一人になってしまった「彼女」は果たして如玫なのか、それとも若藍なのか、と観ている方も混乱する。二人を演じた劉詩詩は姉妹の演じ分けを意識していたそうなので、生き残ったのがどちらなのかというのは何回か観ればきっと分かりそうなんだけど、そのへんはどちらかと決めずに、曖昧なまま観ても無問題だと思う。かつてはこういう余白を残した作りの映画も多かったし、行定さんの昔の作品も思い出してた。一番最初に観た『ひまわり』がこれと同じ感覚だった気がする。
 彼が朝日新聞のインタビューで言われているように、今はわかりやすい映画が求められているので、こういうのは冒険に思われて企画が避けられるのは残念だなーと思う。実際、感想も生き残ったのがどっちか描いて欲しい的なものもよく見かけたけど、そういう見方はちょっと残念。わかりやすいからいいってわけじゃない。もちろんこの良さもわかっている人もいるだろうからね。

 春馬はあまり好みじゃないんだけど、今回は中国語のセリフも頑張っていたし、控えめな役どころで正解。こういうナイーブな男子が中華圏女子にはどう受け入れられたかはわからないけど。劉詩詩はドラマ『宮廷女官若曦(步步驚心)』でブレイクしたのか、そうか。おしとやかな雰囲気がハマっておりました。この作品から名前を中国名に統一したジョセフ(今後もこう呼びます)も手堅かった。やっぱり短髪が似合うよな。

 今までも、越境する日本/アジア映画はあったけど、監督が越境して撮るというのは久しくなかった気がする。日本映画ならなおさらのこと。香港でも韓国の俳優がメインキャストに抜擢されることも増えてきたし、去年観た『危険な関係』もホ・ジノさんが越境した撮ったので、失敗を恐れることなく、日本の映画監督さんはどんどん外に出て行ってもいいと思う。

 面白いことに、同じ東映系で来月公開される永作博美主演の映画『さいはてにて』は、台湾の新人監督が日本で撮ったという作品。これは偶然なんだろうけど、もしかしたら東映もこういう流れでアジアンコラボの可能性を探っているのかな、なんて思ったりした。国同士のいざこざやら周りの雑音など気にせず、今年はどんどんアジアンコラボが進んでもらいたいなーと思ったのでした。

原題&英題:深夜前的五分鐘(Five minute to tomorrow)
監督:行定 勲 原作:本多孝好 脚本:堀泉 杏 音楽:半野喜弘 録音:トゥー・ドゥーチー
出演:三浦春馬 リウ・シーシー チャン・シャオチュアン(ジョセフ・チャン) チャン・イーバイ 

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

ジャ・ジャンクー フェンヤンの子(2014/ブラジル)

 今年の東京フィルメックスのコンペ部門審査委員長は、ジャ・ジャンクーでした。
 この人です。

Jiazhangke_venice

 これは6年前のヴェネチアでのショットです。
 もうひとつ。

Jiazhangke

 ふざけているわけじゃありません。たまたまこういう写真しかありませんでした。
 agnes bがよく似合う44歳です。「フィルメックスの顔」ともいわれる西島秀俊くんとも同世代ですね。
 映画監督としては『一瞬の夢』で長編デビューし、1998年のベルリン映画祭フォーラム部門に招待されたというけど、その年に金熊賞を受賞したのが、ブラジルのウォルター・サレス監督作品『セントラル・ステーション』。これは確かNHKも製作に加わっていたんじゃないかな。そしてこの年の審査委員にはレスリーがいたはず…。
 そのサレス監督がジャンクーを撮ったドキュメンタリーが、フィルメックスのサプライズ上映としてやってきた。なお、まだワークプリント版とのことで、詳細なスタッフクレジットがなかったのが残念。

 

初映時の舞台挨拶によると、ジャンクーとサレスさんの縁はこのベルリンから続いており、7年前のサンパウロ映画祭で対談した時にドキュメンタリーの製作と本の執筆の構想を打ち明けられたとかで、待望のプロジェクトだったのねってことがわかる。サレスさんの作品は先の『セントラル』の他、ガエル・ガルシア・ベルナルが若き日の医学生ゲバラを演じた『モーターサイクル・ダイアリーズ』を観ているのだけど、生真面目でしっかりした作品を作るイメージがあって、信頼できる監督だと思っている。そんなわけで、しっかりして見やすいドキュメンタリーで飽きることはなかった。

 ジャンクーの旅は、生まれ故郷の山西省汾陽から始まる。親友でもある俳優王宏偉と、『一瞬の夢』のロケ地や生家を歩いて回る。
 彼の長編劇映画はこれと『青の稲妻』が未見。それでも劇中の場面を挿入してくれるので、その頃と現在の風景を比較して興味深く観た。しかし、愕然とするのは、やはり文革の真っ最中に生まれているからということもあって、同世代なのに全く違う少年時代を過ごし、観てきた映画も全く違うものだったことだ。初めて観た映画が50年代の作品と言われて、70~80年代の中国の市井の生活が全く自分の想像に及ばないものだったことに改めて気付かされた。亡くなられたお父様が学校の先生だったってのは、なんだかわかる気がするわ。お母さんとお姉さまがご健在とのことで、家族との場面は微笑ましかった。
 過去作品として最も言及されていたのが『プラットホーム』。これも汾陽を舞台とし、ジャンクーのミューズである趙濤がデビューした作品なので、取り上げられるのはわかるんだけど、観た当時は結構きっつい作品だった記憶が…(苦笑)。ジャンクーたち自身より年代的に上の世代を描いているので、時代背景は理解できても同時代の作品とは受け入れがたかったのが原因かもしれないけど、やっぱりこれと『世界』が彼の代表作なのかな、と思ったりした。まあ、ワタシはエンタメにやや偏った『長江哀歌』『罪の手ざわり』の方が好きだったりするのだが。

 ジャンクーの旅は汾陽から北京へ行き、『世界』の舞台となった世界公園や、いとこの韓三明との会話の合間に、趙濤や余力為のインタビューも挿入される。母校の大学での講義では賞をうけたばかりの『罪の手ざわり』の話題も出て、次回作として『プラットホーム』を再編集し、現代版を作ると決意したところに、『手ざわり』の国内上映禁止の報が伝えられる。その失望を経て、新作にとりかかろうとするところまでをこの映画では映している。
 ジャンクーの作品は、身近なところからテーマが出発して、それが中国全体の問題として発展したところが興味深く観られているのかな、という気もする。実力があるから、その気になればエンタメも撮れるんだろうけど、多分撮りたいテーマはたくさんあるんだろうなという気がする。中華電影やアート系作品がほとんど来なくなっても、なぜか彼の作品はこっちまで来るので(笑)、必然的に観る環境には恵まれている。だから、きっと今後も観ちゃうんだろうな。
 しかし、手ざわりの時にもビックリしたもんだが、ジャンクーがとっちゃん坊や(こらこら)からうまく中年になったのに比べ、王宏偉がかなり変わってものすごいオッサンになったのは驚かされた。趙濤は観るたびに洗練されてきているけど、韓三明が全く変わらないのに妙に安心した。

…こんな感想しか書けないけど、いいかしらん?

原題:賈樟柯 汾陽小子
監督:ウォルター・サレス
出演:ジャ・ジャンクー ワン・ホンウェイ チャオ・タオ ユー・リクウァイ ハン・サンミン 

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

南風(2014/日本・台湾)

 現在、東北芸術工科大学映像学科で学科長を務めていらっしゃる映画監督の林海象さんが、台湾の映画人と強いつながりを持っていると知ったのは本当につい最近のこと。地元の劇場で海象さんの特集企画があり、濱マイクシリーズの『我が人生最悪の時』を初めて観たのだが、台湾がらみの話だったなんて、ホントに観るまで知らなかったのだよ。バカだよねーオレ。その流れで、1996年に唐十郎さんの脚本・主演で『海ほおずき』という日台合作も撮っているのは知っていたが、観るチャンスなかったのだもの(泣)。しかもヒロインが『ラブゴーゴー』のタン・ナ小姐だし。
 ああ、今度海象さんにお会いする時までに(っていつですか>自分)何とか観ておきたいですわ。ちなみに『KANO』では脚本顧問を務めているとか。

 んで濱マイクを観ていて「ほおー」と思ったのが、助監督にこの冬公開の日中合作『真夜中の五分前』を手がけた行定勲さんがいて、今作の監督の萩生田宏治さんも一緒に務められていたこと。行定さんといえば『GO』やセカチューの印象があるけど、『遠くの空に消えた』で張震をゲスト出演させたり、『春の雪』のカメラにリー・ピンビンさんを起用したりと台湾に縁が深かったわ、今思えば。真夜中では張孝全(今作から日本語表記が「チャン・シャオチュアン」となったジョセフ・チャン)も出演しているしね。
 萩生田さんは『神童』『コドモのコドモ』などが代表作かな。両方ともさそうあきらのマンガが原作。前者は観ているんだけど、小学生の妊娠を扱った後者は結構話題になったよなー。で、彼は先に挙げた『海ほおずき』でも助監督を務めていたそうです。

 そんなわけで『南風』。なんで突然合作?と思えても、こういう背景を見ると、その理由にはなんとなーく納得したのであった。


 風間藍子(黒川芽以)は26歳の編集者。でも、カメラマンの彼氏を年下のモデルに取られ、仕事も配置転換で単発企画に回されるで、早くも崖っぷち状態。そんな彼女が取材するのは、元プロサイクリストの植村豪(郭智博)が台湾・日月潭で主催するサイクリングミーティング。サイクリングが盛んな台湾を自転車で回ろうと企画を立て渡台したが、頼りにしていた在台の先輩は妊娠中。やむなく一人で回ることになる。
 松山で寄った自転車屋で、藍子は冬冬という少女(紀培慧)と出会う。16歳の彼女はファンションモデルを夢見ており、藍子が編集者とわかると、自分は20歳だと嘘をついて、ガイドを買って出る。彼氏を奪ったモデルに瓜二つで、自分をおばさん呼ばわりする冬冬をどうも気に入らない藍子だが、初めての台湾で右も左も分からないのでしょうがない。
 九份、基隆、富貴角と藍子はママチャリ、冬冬はクロスバイクで走る。しかし藍子のママチャはこのハードな道行で壊れてしまう。そこに通りかかったサイクリスト・ユウ(黄河)が助けてくれ、藍子は淡水でジャイアントのクロスバイクを借り直す。彼女も冬冬もユウにゾッコンになり、二人はユウを誘って共に日月潭を目指す。
 北西部の海沿いを走る三人は、時にケンカしたり(藍子と冬冬が)、時に酔っ払って絡んだり(藍子がユウに)、冬冬の幼なじみ健南(ザック・ヤン)が追いかけてきたりと大騒ぎ。目的地に近くなった鹿港の九曲巷で、藍子たちは豪と出会う。そして、豪とユウの思いがけない関係と、冬冬が家出してまで日月潭に行きたかった理由が明らかになる。


 えーと、まあね、物語はものすごーくツッコミどころ満載ですよ(苦笑)。いちいち言ってたらキリがないけど、とりあえず言っとくなら、台北から九份まで行くのに車でも1時間半かかるのに、なんでそんなすぐに自転車で行けちゃうんだよーってのと、藍子と冬冬が共にうざいキャラでイラッとするところか。
 中華電影における日本女子キャラのウザさは、まああれとかこれとか挙げなくても(あえてリンクは貼らない)今に始まった話じゃないが、藍子がアラサーの崖っぷち編集者ってーのはいかにも日本ドラマ的な影響があるのかな、って脚本家はドラマを書かれている人らしいけど。  彼女と冬冬との関係も、噛み合わなくてお互いに頑固だから、バディものには成り損なっちゃってるのが残念なんだよな。冬冬的なキャラも台湾の青春ドラマによくいる元気キャラではあるんだけど、この二人の掛け合いにイラッと来るのはもしかして自分がもう若くないからか>それを言うな。
 ただ、物語はつまらなくても、ロケの選び方は特に中盤が良かった。
 九份や淡水はもう紹介され尽くしている気もするが(鹿港もかな?)、サイクラーじゃなきゃ知らなかったんじゃないかと思われる北西部の沿岸の名所もよかったし、何よりも日台の歴史を無言で伝えてくれる龍騰断橋の風景がすごかった。中部の山間はこういう知られざる遺跡が多そう。機会があったら行ってみたいなあ。ジャイアントの自転車にも憧れるしね。私事ながら、通勤に自転車を使っているので、以前買い換えするときにジャイアントも検討したこともあったりします。

 藍子と冬冬にはイライラしたけど、藍子役の黒川芽以嬢は悪くないですよ。かわいいし、キャリアも長いから。テレサ・チーことチー・ペイホイ、『九月に降る風』も『台北に舞う雪』も未見だったのでこれが初見。ええ、美女度は断然彼女のほうが勝ってる(笑)彼女もルンメイ同様、『藍色夏恋』の易智言監督に見出されたとか。彼女と共演し、映画製作も学んだというのが黄河。リバー・ホアンという英語名があるのに、なぜ日本語表記なのか気になる。
 ドラマや映画では脇役でいい演技を見せている郭智博くん。朝ドラ『カーネーション』で高田賢三をモデルにした青森出身のデザイナー源太を演じたのが印象的だったな。名前からして華僑?と思ったら、父方が台湾系だとか。

 まあ、先に書いたとおり、スタッフもいいしキャストも悪くない。だけどやっぱり話がなあ…。ラストにしまなみ海道のサイクルレースにつなぎ、台湾の旅を経て自転車専門のフリージャーナリストになった藍子が、台湾を代表するサイクリストになったユウと日本で活躍するモデルになった冬冬と再会するといういいエピソードをもってきて、自転車と友情がつなぐ日台の絆というテーマを具現していたのに、そこに至るまでがねえ…。
   そんなこんなで文句ばっかり言ったけど、この試みはよかったとも思うし、ちゃんと映画作品として丁寧に作られていたし、今後の日台コラボでももっといい企画が登場してくれるだろうから、それへの希望として観た作品でした。


 あ、この映画は『山田太郎ものがたり』の原作者、森永あいさんによる連動コミックもあるそうです。これも読んだほうがええのかしらん?

監督:萩生田宏治 脚本:荻田美加 撮影:長田勇市 音楽:赤い靴
出演:黒川芽以 チー・ペイホイ(テレサ・チー) コウ・ガ ザック・ヤン 郭 智博

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・キョウト 浪客剣心續集

 いやあ、ほんとにすいません。この夏ならディー判事シリーズ第2弾『ライズ・オブ・シードラゴン』とか、仙台で上映されたパン兄弟祭りとか、先日新文芸坐で上映された『ドラッグ・ウォー』とか、お盆明けから東京で上映される台湾巨匠傑作選(しかし魏徳聖さんをこのカテゴリに入れるのは早過ぎるんじゃないの?)で大騒ぎしなければならない中華趣味なんですが、説明不要な諸事情につき、2年ぶりでこちらでも騒がせていただきます『るろうに剣心』


素朴な疑問。これ、公式チャンネルからの動画なんだけど、なんで中文字幕が簡体字なの?大陸での上映は確か(後略)

 監督の大友さんと我らがアクション監督谷垣さんが放つ京都編二部作(現在公開中の『京都大火編』、前作も含めた三部作の完結編『伝説の最期編』は来月公開)は、2年前に衝撃を与えた前作よりアクションが3割増し。初見ではもうニヤニヤしちゃってたまりませんでしたわ。
 この2年間、谷垣さんも日本と香港や大陸を行ったり来たりしながらド兄さんとのお仕事や『猿飛三世』や『宮本武蔵』などの日本のドラマでアクション指導をし、剣心を演じたタケルも主演ドラマでキレッキレのアクションを見せるなど、日本のエンタメにおけるアクションの重要性に改めて注目させてくれたのはいいことだなーと思う次第。
 とは言っても、中華古装片のファンタジックアクションと、フィクションではあるけど近代を舞台にした日本の時代劇は明らかに違う。ワイヤーバンバンというわけでなく、俳優たちが肉体を使ってほぼノースタントで限界に挑む、高速で力強いアクションはまさに黄金期の香港映画を彷彿とさせて観ていて楽しい。おかげで昔の香港映画を見直すと、李小龍さんや成龍さんやショウ・ブラザーズ作品がいかにあの映画に良き影響を及ぼしているかがよくわかるアルのよ。

 かつて人斬り抜刀斎として恐れられ、鳥羽・伏見の戦いを境に姿を消した流れ者の元剣客緋村剣心(タケル)が維新以 来10年ぶりに東京に舞い戻り、抜刀斎の名を名乗る剣客他を擁する実業家と対決した第1作から2年。剣心の後を継いで闇の刺客となりながらも、時代の流れ に取り残され、自らが仕えた者に裏切られて全身を焼かれた狂気の復讐者・志々雄真実(藤原竜也)が政府の転覆を狙う京都編二部作では、志々雄を始めとした 新キャラも多く登場すればアクションのバリエーションも広がって、もう観ているだけで狂喜乱舞(笑)。
 だってオープニングの志々雄と斎藤一(江口)率いる警察との対決がもうニューポリ序盤の陳國榮たちとイカれたジョーたちの「ゲーム」の場面そのものだったから(くれい響さん曰く、この場面は大友さんが最初からそれを意識してたと書かれていたのでおおやはり!と)、もうたまらんですわ。

 志々雄の企みを阻止するために剣心は京都へ旅立つのだが、彼がそこで出会う新たなるキャラたちも実に個性豊か。
 中でも京都御庭番を率いる旅籠の主・柏崎翁(田中泯)とその孫・巻町操(土屋太鳳。来年春からの朝ドラ『まれ』の主演に決定)がお気に入り。家族揃って香港アクション映画ファンで、好きな映画に『新少林寺』を挙げている太鳳ちゃん演じる操は、御庭番仲間でほのかな想いを寄せている四乃森蒼紫(伊勢谷友介、以下いせやん)を探す旅の最中に剣心と出会い、思いもよらない大乱闘を繰り広げる。もう身体はよく動くし、開脚キックも確実に決めるしで、キミはマジで谷垣さんにくっついて香港でアクション女優を目指すべきだよ太鳳ちゃん!って感心したもの。谷垣さんも話されていたけど、彼女は現場で自らアクションを提案して実践したというので、ホントに好きだし、この役やりたかったんだねー。まだ二十歳前のお嬢さんだけど、今後は大いに期待しますよ、太鳳ちゃん。
泯さんはもともと舞踏家で、俳優デビュー作こそ剣士を演じた『たそがれ清兵衛』だったけど、大友組作品では寡黙なレンズ研磨の特級技能士や土佐の怪物と言われる天才藩士を演じてきた。だけど、そんな常連でも同じ役どころは二度と回ってこない。しかも柏崎翁は元御庭番だから凄腕の武闘派!
 今年69歳という泯さんと、いせやん演じる蒼紫の対決が用意されているが、これもまさに驚愕もの!ダンサーとしてのキャリアがあるとはいっても、ここまですごいアクションを見せられるとは。いやあ、もう少しで鼻血が出そうでした。そういえばいせやんも、かつて高杉晋作を演じた時は、馬関の戦いのエピソードにてまるで『レッドクリフ』の趙雲のような敵陣突破を鮮やかに決めてくれていました。ただし抱えていたのは赤ん坊じゃなくて三味線だったけどね。

 京都に辿り着いた剣心を狙う志々雄の十本刀の一人、沢下条張を演じるのは、『仮面ライダーオーズ』で主人公の相棒にして元敵方の怪人・グリードのアンク(正確に言えば彼がとり憑いた人間だが)でお馴染みの三浦涼介。俳優の三浦浩一さんの息子さんでもあります。大友さん曰く「大火編の秘密兵器(ちなみに前作のそれは綾野)」だそうで、それゆえ大暴れします。そして剣心とはガチで戦います。しかも神社の境内の下で (笑)。ここは谷垣さん曰く「この境内の下が人が入れるよりもっと低かったら、『酔拳2』のパクリと言われたかも(詳細)」だそうですが…ほー、そうだったのか、と。 『酔拳2』観たのもずいぶん昔だったので、いつか観直したいもの。

 こんなふうにかなーり楽しみ、大喜びしてたので、前作に続いておかわり鑑賞しちゃいましたよ。完結編公開までに、できればあともう1回観たい。公開第1週でトップとったし、夏休み映画ではかなりのヒットだしね。香港映画が好きな方には前作同様楽しめる作品です。
 ただ、一部のガチな香港電影迷の方々の評価は相変わらず厳しいですね。カメラがアクションを撮れてない、編集が悪い、そして大友さんの演出と谷垣さんのアク ション演出が馴染んでないなど。(これは前出のくれい氏の批評にもあり)ええ、監督も好きだし、作品自体も好きなので、批判されたら素直に凹みます。『グランド・マスター』の時もそうだったしな!
 ワタシは大友さんのNHK時代からの熱烈なファンだし、どうしても贔屓が入っちゃうから冷静に観られないし、重箱の隅をつつけない性格です。すいません。でもいいじゃん、アタシが好きだったらそれでいいんだよ!
(こういう主観バリバリで長々と感想書くからダメなんだよなー)

 って、逆ギレはやめなさい自分よ。
気を取り直して。

 香港映画でもないこの映画の感想をここで書く理由は、上記の他にその逆も然りってことだったりします。つまり、るろけんを観てこの激烈アクションにハマった若い映画ファンには、ブルース・リーやジャッキー・チェン等の活躍する往年の名作の他、是非とも谷垣さんの師匠格であるド兄さんことドニー・イェンの出演 作品や昔のショウ・ブラザーズ作品、さらに余裕があればそれらをリメイクした現代の香港映画も観ていただきたいのですよ。ついでに京都編二部作の構成なら、 話の展開やキャラの出し方で『レッドクリフ』も参考になると思う。
 ちょうど前作公開と同じ年に、ド兄さんと金城くんの『捜査官X』も公開されているし(ただし我が街では悔しいことに未上映…) るろけんがきっかけで、ド兄さんの日本での知名度がアップしたらいいのにとか思ったけど、実際なかなか…なのがちと切ないもんで。
 でも、この映画がとっかかりになって、香港映画の広い世界に興味を持ってくれたら、約20年来の香港電影迷としては本当に嬉しいよ。だから自分もあまりマニアックにならないように心がけるよ。

 久々の記事ともあって、長くなって申し訳ない。
ただ、最後にこれを言わせてくれ。

 いっちばん最後に登場したあの「謎の男」、演じているご本人は人気があっても特に好きでもないし、今まで全くそう思ったことがないのに、あの場面でだけイーキン・チェンに見えてしまったのはなぜなんですか?えっ、気のせいだって?そうだったらスマン。あの人に愛がないとは、イーキンのファンの人には申し訳ないですね。
 まあ、おそらく大活躍であろう次作では決してそう見えないだろうね。あはははは。
てなわけでこれで終わりでござるよ。(^^;メ)

 あー、終わりにしたのに、これを忘れてた。
 『伝説の最期編』上映開始2週間後の9月26日(金)より、「バック・イン・シネマ」の企画上映として、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地黎明』が始まります。何度も言ってますが、るろけん三部作のお手本となったのがこのシリーズ。なんと初映時より上映館数が多いという奇跡が起こってます。るろけん後始めて触れる香港アクションとして強力お勧め。
 もちろん、ワタシも観に行きますよ。

  さらに蛇足。
 『ハゲタカ』以降大友組のほとんどの作品を手がけており、前作に続いて音楽を手がけているのは佐藤直紀さんですが、公開が待ち遠しい『KANO』も彼の担当です。

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

死亡遊戯(1978/香港・アメリカ)

 この『死亡遊戯』、4年前にNHKBSの特集で一度観ていて、そのときにすでに感想を書いているんだけど、今回再び書いてるのは、ちゃんと劇場で(BD上映だけど)観たってことと、再見までの間にある程度だが李小龍さんの映画を多少なりとも理解できてきたってことがあるからだったりする。てーか、この映画にオマージュをささげたり、影響を受けた作品って結構あるんだよな、ってのもわかってきたので。


↑予告がなかったのでサントラで。

 ビリー・ロー(李小龍)は国際的なアクションスター。恋人であるアメリカ人の歌手アン・モリス(コリーン・キャンプ)と共に香港で活動している。ある日、ビリーにドクター・ランド(ディーン・ジャガー)がマーシャルアーツトーナメント出場の契約を迫りに来た。ランドがスポーツ選手や芸能人を強制的に契約して拒否した者に手痛い仕打ちをすることを知っていたビリーは当然断るが、それ以来ビリーはたびたび撮影中の事故に巻き込まれるようになる。アンと友人の新聞記者ジム・マーシャル(ギグ・ヤング)と共に策を講じるビリー。
 しかし、ビリーが映画のラストシーンを撮影している時、どこからか銃弾が飛んでくる。一命は取り留めるが、これを利用して自らを死んだことに見せかけ、ランドに直接対決を挑もうとする…。

 以前も書いたが、李小龍さんの英語映画はちょっと乗れないかなーと感じるところがあるかなーと思ったのだが、先にも書いた通り、今回は初見よりも案外楽しんで観られた。
最後のアクションシーンを残して亡くなってしまった(というか、これが本来なら『ドラゴンへの道』に続く監督第2作になるはずだったのか )ので、急遽監督と主演に代役を立てて(その一人がユン・ピョウさんというのもすでに有名か)作り上げたという経緯があるので、いくらなんでもそりゃ苦しいっしょ?とつっこみたくなる場面はいくつかある。序盤の不自然な合成とか、中盤で身を隠した時に顔を整形したって設定じゃないの?と思ったこととか。それも気にならない面白さだった。まあ、スクリーンで香港映画を観ることに飢えていたのも多分にあるかも。70年代香港やマカオの街の様子にはテンションが上がるし、マカオでの試合場面に登場した若きサモハン(アクション監督も兼任)には手を振ったし、序盤に登場した京劇俳優やってるビリーの叔父さんは、お馴染みのロイ・チャオさんだったもんな。

 あと、ラストのダンジョン決戦は今でこそもうあらゆるアクション映画に引用されているけど、あれを見て真っ先に思い出していたのは、もうすぐ続編二部作が公開される『るろうに剣心』(ついでに感想はこっち)での、観柳邸ダンジョンバトルだったな。これまた度々言っているけど、監督の大友啓史さんが黄金期の香港映画がお好きだということで、おそらく演出時にも意識したんだろうなあと思った次第。あっ、というかそれ以前に、映画版『ハゲタカ』でのコメンタリーで、すでに李小龍さんの名前を出されていたんじゃなかったっけなあ? 今度久々にDVD観て確認するか。

と、李小龍さんからいささか脱線したところで、この感想を終わります。
そうそう、るろ剣の名前が出たから忘れないうちに書いておくけど、そのるろ剣実写版が当初お手本にしたと言われている(ってワタシが勝手に言ってるんじゃないよもちろん)『ワンス・アポン・ア・イン・チャイナ』も、この「バック・イン・シネマ」で上映されます。しかもるろ剣三部作完結編「伝説の最期編」上映中の9月に!これはもういいチャンス。るろ剣を観て超絶アクションの虜になった若い観客にはこっちも自信を持ってオススメいたしますよ。

原題:Game of Death
監督&脚本:ロバート・クローズ  製作総指揮:レイモンド・チョウ 撮影:西本 正 音楽:ジョン・バリー アクション監督&出演:サモ・ハン・キンポー
出演:ブルース・リー ディーン・ジャガー ギグ・ヤング コリーン・キャンプ ロイ・チャオ カリーム・アブドゥル=ジャバー

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧