台湾映画

恭喜新年 萬事如意@2025

  題名通り、あけましておめでとうございます。
今年初の記事ですが、まさか元宵節まで全然書けなかったとは…
昨年も多忙のため年間10本も書けませんでしたので、今年はもう少し頑張ります。

さて、本blogでもここしばらくTOPで告知をしておりました台カルシアター『赤い糸 輪廻のひみつ』上映会@岩手県公会堂ですが、先日無事に終了いたしました。ご来場いただいた皆様、サポートしていただいた皆様、誠にありがとうございました。

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当日会場に飾った紅聯。3年前のものなので年号変えました。

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この上映会については、noteに書きました。読んでいただければ幸いです。
台カルシアターは今後も続けていきます。これまで地元で上映できなかった台湾映画を少しでも多くの人に観てもらえるように頑張ります。

そして、昨年の東京国際映画祭で観てから、なんとか感想を書こうと思いつつもここまで来てしまった『トワイライト・ウォリアーズ』ですが、予想を超えるヒットで驚いております。まさか応援上映まで行われるとは…

 

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シネコンメインの上映展開なので、地元映画館での上映はもう少し先(3/28~2週間限定)でも待ちきれなかったので、隣県のシネコンまで観に行ってしまったのでした。ああもう面白かった…

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映画を観た後には食べたくなる叉焼飯。
自作してみたがなんか叉焼飯には見えない…

そしてついでに仙台で『ゴールドフィンガー』も鑑賞。

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この2作品の感想はいずれ。
次の香港映画ZINEに先行して書き、ダイジェストをこちらに掲載します。
はい、昨年に引き続き、今年もZINEを作ります。    

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そして今年もこの季節がやってまいりました、盛岡台湾Happyフェス
今年度は盛岡市と花蓮市が友好都市提携5周年ということで、様々な実践がありました。こちらもできれば書く予定。

以上、近況報告&予告的にまとめましたが、中華圏の本も読んでいるし、今年もいろんな中華ネタについて楽しく書いていきたいです。
とりあえず、来月のZINEマーケットに向かって新作のZINEを頑張ります。以上。

 

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1秒先の彼女(2020/台湾)1秒先の彼(2023/日本)

「台湾(香港)映画のリメイク。私の苦手な言葉です」

と、『シン・ウルトラマン』のメフィラス風につぶやいてこの記事を始めたい。
申し訳ない。

近年はアジア圏でのドラマや映画のリメイクが盛んで、何も知らずに観ていた民放のドラマの原作が韓国ドラマだったというのも珍しくなくなった。21世紀に入ってからこれまでずっと中華圏の映画を追いかけて見まくり、感想を書いて騒いできたこのblogだが、その間香港映画のリメイクと称する作品にも多く出会ってきた。しかしオリジナルを知っていると、それが妙な具合にローカライズされてしまうことに違和感はあったし、さらにはリメイクばかりがもてはやされてオリジナルが尊重されないものを多く見てきた。
もう実名で書いてしまうが、『星願』が『星に願いを。』、『つきせぬ思い』が『タイヨウのうた』として日本でリメイクされてきたが、それらにはオリジナルへの敬意が感じられずにがっかりしたものだった。なお『タイヨウのうた』のWikipediaを見たら「当初は1993年の香港映画、『つきせぬ想い(新不了情)』のリメイクとして企画されていたが、古い映画でありそのままのリメイクでは今の時代に合わないとの判断」とあり、なんじゃそりゃ、となった…最終的にはリメイク云々は消えたと思うのだが、それでもいい気分はしない。
日本だけでなく、ハリウッドも同様で『インファナル・アフェア』が『ディパーテッド』になってオスカーとか受賞してるが、それもまたオリジナルへの敬意が微塵も感じられないどころか、インタビューでマーティン・スコセッシが香港映画に何の思い入れもなく乱暴だ云々と抜かしていたので、返す刀で彼が大嫌いになった。世界中から賞賛される名匠であっても未だにディパの恨みは根深い。
(後にTVドラマ『ダブルフェイス』として日本でリメイクされたが、もうディパで底を見ていたから、オリジナルへの敬意はかなり感じられてよかった。でも放映時のSNSで「韓国映画のリメイク」と流れてきたときにはもう頭を抱えるしかなかった…)

台湾映画のリメイクとしては、『あの頃、君を追いかけた』がある。オリジナルは台湾で観ていてなぜか地元上映してくれないことを今でも恨んでいるのだが(マジで)リメイクは主演の人の人気もあってしっかり上映した。

という前置きはさておき、2018年の中台合作《健忘村》が中台関係悪化のあおりを受けて興行的に失敗した陳玉勳が、長年温めていた脚本を基に作り上げ、原点回帰と高評価を受けて2020年の金馬奬でキャリア初の最優秀作品賞を受賞したのが《消失的情人節(消えたバレンタインデー)》という原題の『1秒先の彼女(以下イチカノ)』で、日本では翌年夏に公開。さらにその翌年の2022年、舞台と主人公の設定を変え、山下敦弘監督、宮藤官九郎脚本でリメイクされたのが『1秒先の彼(以下イチカレ)』。
あまりにも素早い動きだったので当時は大いに驚いたのだが、滅多にない機会なので一緒に感想を書きたい。

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人よりワンテンポ行動が速い30歳の郵便局員曉淇(リー・ペイユー)がダンスインストラクター文森(ダンカン・チョウ)に恋をした。旧暦の七夕に行われる市主催のサマーバレンタインイベントに一緒に参加しようと約束をし、当日の朝、彼女はルンルン気分でバスに乗り込む。しかし気づくと既に翌日の朝。彼女は「その日」が消えてしまったのに気がついた。覚えのない日焼け、覚えのない写真、そして突然に思い出した私書箱の鍵。消えたバレンタインデーの謎を探るため、彼女は実家の新竹、そして私書箱のある嘉義縣東石に向かう。その鍵を握るのは、人よりワンテンポ行動が遅い同世代のバス運転手阿泰(劉冠廷)。

 

物語の構想自体は『ラブゴーゴー』の頃に既にあったとか(そしてこの構想のリメイクもプロットの段階で動いていたらしい)
途中16年のブランクはあるものの、『熱帯魚』からの映画監督25年のキャリアで、陳玉勳の作風は基本的にあまり変わっていないのかもしれないと思ったのは、最近25年以上ぶりに熱帯魚を見直したからだったりする。
どこか冴えない主人公が突然降りかかった出来事に翻弄され、悪戦苦闘する姿はとにかく笑いを呼び起こすが、どこかしらに切なさを残す。
『熱帯魚』では誘拐、『ラブゴーゴー』では恋がそれにあたるし、『祝宴!シェフ』でいうなら元カレの逃亡&宴会料理選手権出場。曉淇を翻弄するのは自分自身の恋と、自分が思いを寄せられる恋。しかも自分のワンテンポ速いタイミングが更に彼女を翻弄すると共におかしな奇跡を生む。加えて行動がワンテンポ遅いと、その分遅い1秒が溜まっていつか1日分のアディショナルタイムが生まれるという設定は誰も思いつかないであろうイベントであったが、そのくらいはあっても文句は言わない。だって映画だから(アバウト)。

阿泰が得た「その日」を、子供の頃に出会った曉淇と使いたいという気持ちはよくわかる。ワンテンポ遅いというだけでなく、恋に奥手そうなタイプだからなおさらだ。そこで彼女をバスに乗せて東石に向かい、二人だけの時間を過ごす様はかわいらしく見えた。だから台湾公開→全世界配信後にその場面が「女性の身体権を侵害している」と批判されたことを知って驚いた。自分が身体権に対して鈍感だったから気づきもしなかったのは当然のことだが、そういう観点で見たら、確かにあの場面はもう少し控えめにできたのかもしれない。(そういえば別の映画でも昏睡状態の女性に恋をした男がどうのこうのするというプロットがあって、それが結構な巨匠の作品なので萎えた>それ以外の作品は観てるけど)そんな欠点があったとしても、恋することに対する思いをうまく描いているから、そこで許したいものである。阿泰が曉淇に変な気を起こして一線を超えなかったのだから、それを良しとしてあげて(あれで超えたらもろに変態の世界だからねえ)

曉淇を演じるペイユーも、阿泰を演じる劉冠廷も、ただただかわいいだけではなく、どこかにちょっとした陰を感じさせる二人をうまく演じている。これが先に書いた「笑った後に残る切なさ」。曉淇は子供の頃に父親が蒸発しており、阿泰は交通事故で両親を失っている。そしてそれぞれ人よりはみ出ていることを自覚している。彼ら以外にはみ出したまま生きていたのが他ならぬ曉淇の父であり、「その日」の終わりに阿泰と彼が出会い、これまでの空白を埋めるように蒸発前に頼まれていたお使いの緑豆豆花を阿泰に託す場面には、曉淇が失い、父が手放した彼女への愛の切なさを感じた。エンディングはサクセスやハッピーエンドでなくていい。どんなにトラブルが起こって踏んだり蹴ったりであっても、愛と切なさを抱いてちょっとでも幸せになれるようにあればいい。そんなことを思う。

原題:消失的情人節(My Missing Valentine)
監督&脚本:チェン・ユーシュン 製作:イエ・ルーフェン リー・リエ
出演:リー・ペイホイ リウ・グアンティン ダンカン・チョウ ヘイ・ジャージャー リン・メイシウ マー・ジーシアン

そんなオリジナルを基に、舞台は京都に、主人公の二人は男女逆転と大胆に設定を変えたのが『1秒先の彼』。
宮藤官九郎(以下クドカン)は脚本作品として『あまちゃん』や『いだてん』が好きだけど、面白くはあるが諸手を挙げて支持しているわけではない。テイストも陳玉勳というよりむしろギデンズやパン・ホーチョンの方が近いのではと思っていたので、リメイクに手を挙げたのは意外だった。山下監督も多作な方で、近年では野木亜紀子脚本の『カラオケ行こ!』や実写演出を担当した共同監督作のアニメ『化け猫あんずちゃん』が面白かったけど、すでに評価も定まっている彼がリメイクに(以下同文)となったのは言うまでもない。

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人よりワンテンポ行動が速く口が悪い京都・洛中で働く郵便局員ハジメ(岡田将生)が、ストリートシンガーの桜子(福室莉音)に恋をした。週末に故郷の宇治で行われる花火大会に行こうと約束をして、ルンルン気分でその日を迎える。しかし気づくと既に翌日の朝。彼は「その日」が消えてしまったのに気がついた。覚えのない日焼け、覚えのない写真。そして私書箱の鍵。彼は消えた日曜日の謎を探るため、宇治と私書箱のある舞鶴の郵便局に向かう。その鍵を握るのは、人よりワンテンポ行動が遅い舞鶴出身の大学生レイカ(清原果耶)。

 

結論として、さすがにベテランかつアジア圏でも評価されてる2人であるからか、オリジナルへのリスペクトが感じられたよいリメイクであったと思う。男女を逆転させたことで、クライマックスのデートの場面はオリジナルで物議を醸したポイントをうまーくスルーできたし、レイカが大学生設定になったら「消えた1日」をつなぐバスは誰が運転するんだ?と不思議に思ってたら、ある事情でそれに巻き込まれたバス運転手(荒川良々)が独自に設定されて、これもいいアクセントになった(その一方、やはり日本オリジナルキャラだったハジメの妹とその相方のギャル&チャラ男ははたして必要だったか?と思ったが)ハジメの速さとレイカの遅さの秘密も独自解釈だったけど、それはお互いの名前の総画数にあったって、いったいどうやったらそんなアホなネタが思いつくんだよ!と頭を抱えながら心で大笑いした。あ、でもこんなことはクドカンしか思いつかないのか。

黙っていればイケメンだが口を開けば毒を吐く、もうわかりやすく残念なイケメンであるハジメ(皇一)役の岡田将生(以下マサキ)の近年の活躍っぷりはすごいもので、カンヌからアカデミー賞までを沸かせた『ドライブ・マイ・カー』は言うまでもなく、今年はドラマ『虎に翼』や『ザ・トラベルナース』、映画は『ゴールドボーイ(原作は中国のミステリーYA小説!)』『アングリー・スクワッド』などでそれぞれ印象的な役どころを演じてきた。恵まれた容姿を持っていながらも決して白馬の皇子様的キャラにはならず、癖が強く陰がある裁判官、仕事に誇りを持つ自信家の看護師、欲望のためには殺人をも厭わない青年、飄々とした天才詐欺師などを演じてきて大いにハマっていた。山下監督とはキャリア初期の映画『天然コケッコー』(未見)、クドカンとは映画化もされたドラマ『ゆとりですがなにか』でコンビを組んでいたけど、ハジメのキャラには『ゆとり』の影響が見えるかな、と件のドラマを楽しんで観ていた身として思う。
マイペースだが意外と頑固で意志が固いレイカ(長宗我部麗華)は13歳でデビューして以来着実にキャリアを重ねてきた清原果耶。朝ドラヒロインも務め、その演技はとかく「すごい透明感」とやらだけで語られがちだが、コメディエンヌとしてもハマるし、桜子との対決場面も見せてくれるので安心して見られる。ここから『青春18×2』のヒロインに起用されるのはなんかいい流れ。今後も台湾に縁のある作品に出演してほしい。

というふうにリメイクも楽しく観られたことは観られたが、それでもやはりオリジナルにはかなわないし、どう突き詰めてもクドカン&山下監督の味わいになるのは仕方がないよね、とも思わされる。でもお互いにリスペクトしあい、尊重もしている点では、理想のリメイクだったと思うよ。

中文題:快一秒的他
監督:山下敦弘 脚本:宮藤官九郎
出演:岡田将生 清原果耶 福室莉音 荒川良々 羽野晶紀 加藤雅也

ところでこの作品のみならず、近年は中華圏と日本映画がお互いにリメイクしあうのが一つの流れになっているようである。
今年の中国映画市場で大ヒットを飛ばした『YOLO 百元の恋』は、安藤サクラが渾身の演技を見せた『百円の恋』(2014)のリメイクであり、ジェイ・チョウの初監督作品『言えない秘密』(2007)は京本大我と古川琴音主演でリメイクされた。
いずれも観たけど、リメイクが(オリジナルを超えはしなくとも)成功するのは作り手がオリジナルを大切にしたうえでのリスペクトであると改めて思ったのであった。というわけでこれらのリメイクについてはあまり触れないでおく。
はい、以上。

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台カルシアター『赤い糸 輪廻のひみつ』上映会@岩手県公会堂

2021年10月に結成した台湾カルチャー研究会は、岩手県をベースに、岩手と台湾をカルチャーで結び、旅やグルメなどからもう一歩進んだ台湾を知り、カルチャーから台湾を深掘りする楽しみを広く伝えることを目的とした小さな同好会。主な活動として台カルZINEの発行、盛岡台湾Happy Fesでのプレゼン発表などを行い、24年9月に「カルチャーゴガク」岩手編を開催しました。

そして満を持して、来年から「台カルシアター」と銘打って上映会を行います。
作品は北東北初上映となる『赤い糸 輪廻のひみつ』(リンク先は当blogで書いた感想です。ややネタバレ)

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台湾の若者と交流して気づかされるのが、マンガやアニメなどの日本のポップカルチャーへの関心が非常に高いことです。日本と台湾の高校生とのオンライン交流会では、日本の生徒でもなかなか知らない新作アニメの話をする台湾の生徒に出会うことがあるとも聞きます。アニメやマンガはほぼリアルタイムで全世界配信されるので、台湾の若者はそれを楽しみ、日本に興味をもってくれます。

では、私たちからはどんな種類の台湾カルチャーにふれることができるでしょうか。近年は文学、建築、ポップスと、台湾初のカルチャーが日本の雑誌やネットメディアで紹介される機会が増え、観光やグルメだけではない台湾の多様なカルチャーに容易にアクセスできるようになりましたが、その中でも映画やドラマは、以前から日本に紹介されており、それぞれのファンも獲得しています。

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特に映画は、戒厳令が解除された1980年代後半から、すぐれた作品が作られるようになり、「台湾ニューシネマ」と呼ばれて世界中の映画祭で高い評価を受け、日本でもアート系ミニシアターで上映されてきました。ちなみに観光地として大人気の九份も、もともとは『恋恋風塵』と『悲情城市』という2本の映画がこの時代に撮影されたことから注目を浴びたことがきっかけで開発されました。
さらに90年代から現在に至るまで、民主化によりこれまで語られなかった白色テロや日本統治時代の歴史も見直され、映画としても取り上げられる一方、思春期の少年少女の恋愛や生き方を瑞々しく描いた青春映画も多く作られました。2000年代には日本のマンガを原作としたTVドラマも多く製作され、『花より男子』や『山田太郎ものがたり』がヒット。台湾での注目を受けて日本でも改めてドラマ化されたこともあります。

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そして2011年、ネット小説家として活動していたクリエーターの九把刀(ギデンズ・コー)が、1990年代から10年間に渡る自らの青春時代を基に書いた自伝的小説を原作に作った『あの頃、君を追いかけた』が台湾と香港で大ヒットします。(この映画は日本でも公開されて注目を浴び、2018年には齋藤飛鳥と山田裕貴の主演でリメイクされました)また今年大ヒットした『青春18×2 君へと続く道』は日本の藤井道人監督が手掛けていますが、両作とも劇中で『スラムダンク』など日本のマンガやゲームなどが登場することから、このように映画から台湾から日本がどう見られ、親しまれているかもわかります。

しかし、邦画やアニメ、ハリウッド大作の上映がシネコンや劇場上映の多くを占めている現在、特に地方で台湾映画が映画館で上映される機会は非常に少ないものです。稀に『青春18×2』や『KANO』のようにロードショー公開される作品はありますが、それでも地方における知名度はまだまだ低いです。リメイク版『あの頃』は齋藤飛鳥の人気で劇場公開もにぎわっていましたが、それを見て「ああ、オリジナルも面白いのに、なぜ上映されなかった…」と思ったものです。

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この『赤い糸』は2021年9月に台湾で公開されて大ヒットしたギデンズ・コー監督の第3作です。当初から日本公開を目指して主題歌の日本語セルフカバーヴァージョンが製作されましたが、日本の主要配給会社からはどこも手が挙がらなかったそうです。配信等の権利は日本でも有名な某大手映画会社が獲得したのですが、その関係で日本での配給は劇場上映のみとなってしまったとのこと。劇場公開は昨年12月から始まり、全国主要都市で上映されています。

ギデンズ・コー作品のトレードマークは、若者たちのちょっとおバカな、でもひたむきな若者たちの恋愛模様。それに加えて中華圏では縁結びの神様として知られる「月下老人」の伝説をモチーフとしているので、神様はもちろん冥界の番人や閻魔大王や悪霊も登場します。つまり、あの世とこの世を舞台にして愛と命の尊さをおバカな恋愛にのせて描いた壮大な生命讃歌がこの映画ではうたわれているのです。神様や悪霊だけでなく、犬も大活躍します。
ファンタジーであり恋愛ものでありホラーであり犬映画という、なんとも欲張りなこの映画、現在のところ日本では配信・ソフト化の権利がありません。そのため、劇場やこのような上映会でしか観ることができません。
盛岡初上陸の純愛冥界ファンタジーを、旧正月にみんなで楽しみましょう。

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台湾稀代のヒットメーカー、ギデンズ・コー監督作盛岡初上陸!
縁結びの神様〈月老(ユエラオ)〉が導く純愛冥界ファンタジー

台カルシアター『赤い糸 輪廻のひみつ』上映会
2025年1月31日(金)18:00開場 18:30上映開始
会場:岩手県公会堂26号室(岩手県盛岡市)
観賞料金1,000円
チケット予約はpeatixより
主催:台湾カルチャー研究会

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青春18×2 君へと続く道(2024/日本=台湾)

旅行記が好きだ。
自分もblogやZINEで書くこともあるし、他人の書いた旅行記も楽しい。
旅先の情報を旅行記から得るのも利点の一つではあるが、旅人自身のキャラクターや旅による思考の変化を読むのもまた楽しいからである。

ジミー・ライ(頼吉米)による旅行エッセイ《青春18×2 日本慢車流浪記》を原作に、我らが張震が製作総指揮を、『新聞記者』『余命10年』の藤井道人が監督を務めた日台合作の『青春18×2 君へと続く道』は、2006年夏ごろの台南と2024年春の福島への旅を重ねて描いた文字通りの青春映画。主演はドラマ『時をかける愛』でブレイクし、映画『ひとつの太陽』日台合作ドラマ『路~台湾エクスプレス』に出演した許光漢(シュー・グアンハン/グレッグ・ハン)と、藤井作品の常連でもある『一秒先の彼』の清原果耶。

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台湾版予告編

原作者のジミー・ライは嘉義出身で、エッセイの舞台も嘉義だそうだが、映画では台南へ変更。
なお原作は未読。邦訳も出版されていないしね。

自ら設立したゲーム会社の取締役を解任され、取引先との引継ぎのために日本に渡ったジミー(許光漢)が、かつて送られてきた手紙の思い出に誘われて鉄道で旅に出る現在と、その送り主である4歳年上の日本人女性アミ(清原果耶)と故郷の台南で出逢う18年前が重ねられて語られる。彼は台南の高中でバスケットボールに打ち込んでいたものの、ケガで競技を断念した。台北の大学を受験した高校生最後の夏、バイト先のKTVに現れた彼女と出会ったジミーは、その夏の思い出をなぞるように、大好きな『SLAM DUNK』の聖地、鎌倉から旅を始める。

ジミーのスラダン好きがアミとの始まり。そして彼は早春の由比ガ浜に、彼女とバイト仲間と共に遊びに行った台南の海岸を重ねる。若者たちがはしゃぐその風景は『風櫃の少年』をオマージュしたような画であるので、観ているこちらもまたデジャヴュを抱く。
日本人監督が撮った台湾と言えばかつてここでも書いた『南風』や今関あきよし監督の『恋恋豆花』が思い出されるけど、どうしても観光目線で撮られがちになってしまうのが気になって仕方がない。九份が『千と千尋の神隠し』のモデルとか舞台とかなんていつまで言っているつもりなんだ、と本当にイラッとする(実際後者の作品では九份で登場人物がそのように言う場面があって頭を抱えた)
この映画も観光映画の側面を持ってはいるのだが、ほぼ台南を舞台に展開する台湾パートでは、赤崁樓や安平などの台南名所はあまり登場しない。その代わり、力を入れて描かれるのはジミーとアミの交流になるからか、『風櫃』を始めとした台湾青春映画のオマージュがふんだんに盛り込まれている。アミがジミーのバイクにタンデムして夜の台南を走る疾走感は、長年台湾映画を観ている観客なら感じ取れるものであろう。台南出身の祖父を持ち、自身も留学経験を持つ藤井監督の思いとこだわりは、台湾パートの方に強く表れているのがよくわかる。だから、ただの観光映画には収まらないと思っている(個人の意見)

ジミーの旅は鎌倉から品川・新宿を経由して中央本線で松本へ、そこから飯山線と上越線で長岡へと進み、そして只見線で新潟との県境に近いアミの故郷・福島の只見へとたどり着く。信越を経由する大回りのローカル鉄道旅で彼が出逢うのは、同郷出身の居酒屋店主劉(ジョセフ・チャン)、18歳年下のバックパッカー幸次(道枝駿佑)、長岡のネットカフェで働く由紀子(黒木華)只見の酒店主中里(松重豊)そしてアミの母裕子(黒木瞳)。劉とは台南の思い出を語り、幸次とは岩井俊二監督の『Love Letter』についての思い出をシェアし、由紀子の力を借りてジミーは長岡から新潟中部の津南で行われるランタンフェスティバルへと向かうが、それは全てアミとの思い出をなぞっての行動。とある批評で台湾パートに比べて日本パートは表面的になっているとあったけど、日本パートが観光映画の役割を担っていると考えてみればそれはもう致し方ないのではないか。実際、日本に先行して台湾で公開されたこの春以降、只見線を始め、この旅のルートを利用する台湾人旅客が増えてきたとも聞いている。

18歳のジミーと4歳年上のアミの、台南を舞台にした(ジミー曰く)恋愛以前の交流は結局成就せずに終わりを迎える。アミの現在は只見に着くまで明確に描かれないが、察することができるのなら彼女がもうこの世にいないことに早くから気づくのだろう。残り少ない命を精いっぱい生きる若者の恋愛ものは『世界の中心で愛をさけぶ』など日本映画で多く取り上げられ、藤井監督自身も難病に侵された女性の恋愛を描いた『余命10年』を撮っている。若い男女の叶えられない初恋の終わりにどちらか(特に女性)の死を持ってくるのはあまりにも残酷で安易に感じるし、実際21世紀初頭からの日本映画の恋愛ものはその手の展開があまりにも多すぎて、恋愛ものが好みではない身としてその手のネタはどうも食指がそそらない。この件について話し出すとキリがないし、ひたすら脱線していくので止めておく。

恋愛は成就しなかったものの、アミとの出会いは確実にジミーの将来を開いた。そして、二度と会えないことが明らかになったことも彼の人生に大きな傷を残し、冒頭で描かれる経営する役員解任の決議の場面の意味が明らかになる。アミは初恋の女性の範疇を超えた、ジミーの青春と希望のシンボルであった。そのことを悟り、只見から東京に戻って桜を見るジミーは18年かけてのアミとの思いを心に封印し、自分の青春期に終止符を打つ。そして故郷で新たな一歩を踏み出す。


ところでジミーが生まれたのは1988年の設定。台湾の戒厳令が解かれて間もなく生まれているということだ。
スラムダンクと言えば『あの頃、君を追いかけた』にも登場しているが、時代設定は90年代後半だから当時のジミーはまだ10歳になるかならないか。いかに息の長い人気を誇っていたのかというのがよくわかる。台南での主な舞台となるKTVでは日本の某アイドルの歌が流れるし、五月天と並んでミスチル(この映画の主題歌を担当している)にも言及される。台湾をよく知らない若者たちは、日本のコンテンツがほぼリアルタイムで入ってくることに驚くようだが(オンライン交流を見学する機会があったが、台湾の高校生の日本アニメの知識が日本の子より詳しかったりするので感心したことがある)ポップカルチャーからのつながりや共有から友情を深められる可能性をこの映画から感じ取ってもらえるかなと思った。
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昨年日本で上映された(現在Netflixで視聴可能『僕が幽霊と家族になった件』ではゲイに無理解な堅物の刑事を演じたグレッグ(最新の表記に従って「グァンハン」で書くべきなのだが、こちらの呼び方が慣れているので)だが、この映画では36歳の現在と18歳の少年を見事に演じ分けていて、これまで観てきた作品での演技も含めての芸幅の広さに感心した。『あの頃』のチェンドンは17歳からの約10年間を演じていたし、彼に限らず台湾の俳優は30代近くなっても高校生の役を演じることが多いのだが、20歳近く年が離れている役を違和感なくメリハリをつけて演じているのは見事である。
13歳で俳優としてデビューした清原果耶は、約10年間のキャリアの中で様々な印象的な役を演じてきていることから、まだ20代前半であることをつい忘れてしまう。透明感あふれる佇まいのある俳優と称されることが多いが、オリジナルでの劉冠廷の役どころを演じた『一秒先の彼』でのコメディエンヌっぷりも記憶に新しいし、実年齢と同じ22歳のアミがジミーよりちゃんと大人びて見えたのがよかった。
日本編のキャストも豪華だったけど、台湾が気に入って住み着いた神戸出身のKTV店店主シマダを演じた北村豊晴監督はしっかり爪痕残してくれていたし、ジミーの大学時代の学友でビジネスパートナーになるアーロンを演じていたのが、日本のドラマへの出演経験もあるフィガロ・ツェンだったし、ジミーの仕事仲間たちもみんないい味出していたので日本でも彼らをちゃんと紹介してほしかった。

そして何より台湾はもとより、日本でもヒットしたのは本当にありがたかった。
私は関東・盛岡・宮古の3カ所の映画館に観に行ったのだが、いずれの館でも近くに鑑賞後に涙をぬぐう観客がいたし、この映画がきっかけで台湾をますます身近に感じてもらえると嬉しいと思っている。この夏、台鐡でミスチルを聴きながら乗る日本人の若者が何人いるだろうか。そう考えるとニコニコしてしまう。

あ、そうだ。台鐡といえば、この映画で最も疑問に思ったことを最後に書いて締めたい。

アミが帰国する直前に、ジミーは彼女を誘って十分に行くのだが、どういうルートでどのくらいの時間をかけて台南(それもターミナルではなくて普通車しか停まらない保安站)から十分まで行ったのだろうか。早朝に出て行って着いたらもう日が暮れていたから、10時間はかかっているってことか?

英題/中文題:18×2 Beyond Youthful Days/18×2 通往有你的旅程
監督&脚本:藤井道人 製作総指揮:チャン・チェン 製作:ロジャー・ホアン 前田浩子 瀬崎秀人 音楽:大間々昴 撮影:今村圭佑
出演:グレッグ・ハン(シュー・グァンハン) 清原果耶 北村豊晴 ジョセフ・チャン 道枝駿佑 黒木 華 山中 崇 フィガロ・ツェン 松重 豊 黒木 瞳

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赤い糸 輪廻のひみつ(2021/台湾)

昨年のTIFFで楽しく観たギデンズ監督最新作『ミス・シャンプー』Netflixでも配信中)の前作となる『赤い糸 輪廻のひみつ』
これも2021年の金馬奬にノミネートされており、視覚効果・メイク&コスチュームデザイン、音響効果の3部門で最優秀賞を受賞している。ここ数年、金馬奬をチェックすると面白そうな作品が多くノミネートされているので、これらに配給権がついて日本で公開されてほしいと常々願っていた。
しかし、ここ数年の話題作が日本の劇場で一般公開されることは少なくなった。台湾本国でも公開後すぐnetflixで全世界配信され、日本語字幕付きで気軽に観られるようになったとはいえ、劇場でかけてみんなで観られることを前提とした劇映画はやはり劇場で楽しく観たい。そう思っていた時にこの映画の日本公開が決まった。

この映画はこれまで『台北セブン・ラブ』や『赤い服の少女』を紹介してきた台湾映画社さんと『日常対話』を配給し、関連書籍の翻訳も手掛けてきた台湾映画同好会さんの共同配給。個人会社での配給で、権利の関係上劇場公開のみという(おそらく)異例のケース。台湾映画社代表の葉山さんが上映権獲得と劇場公開に関してのインタビューに答えており、こちらのnoteを読んだが、台湾ブームと言われても観光やグルメが定着してもt台湾エンタメがなかなか定着しない、シネフィルにも台湾映画といえばニューシネマは注目されるのにそれ以外は…と同じように歯痒く思ったことがあったので、大きく首を縦に振ったものだった。
公開に先立ってクラウドファンディングも行われていたのでもちろん参加した。現在のところ公開劇場も一部地域だが、全国で上映されてほしいと願っているので、その応援も兼ねての感想記事である。ネタバレは極力控えるようにする。

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原題でもある「月老」は台湾の縁結びの神様として知られる「月下老人」のこと。台北の霞海城隍廟や台南の大天后宮他多くの廟に祭られている神様だが、この映画に登場する月老は冥界にやってきた死者が徳を積むために従事する神職として設定されている。落雷で命を落とし、生前の記憶を失くした主人公の孝綸(クー・チェンドン)は元カレに殺されたピンキー(王淨)とバディとなり、現世で人々を赤い糸でつないでいく。
この冥界の世界観とデザインがユニーク。死神は黒いスーツと帽子にマント、という割と定番スタイルだけど、冥界の門番である牛頭(陸明君)と馬頭(ホンジュラス)はミリタリー風のスーツとマントをまとい、(死んだときの)年齢・性別がそれぞれバラバラな月老たちはグレーのセットアップを着ている。彼らを率いるリーダーの一人を演じる侯彥西はなぜか『ジョジョの奇妙な冒険』の東方仗助のようなリーゼントスタイルなので全体的に高校の制服感増し増し。死んだ人間が現世にやってくるといえば最近ネトフリで実写版が配信されている『幽☆遊☆白書』も思い出されて、この「わかる人にはわかりゃええ( ̄ー ̄)」ってところにはニヤリとする。

善行を行って徳を積む二人の前に老犬の阿魯が現れたことで、孝綸は生前の記憶を取り戻す。阿魯は彼と初恋の人である幼馴染の小咪(ビビアン・ソン)を結びつけた犬であり、寿命で命尽きようとしていた。その頃冥界では500年間牛頭を務めていた前世の盗賊・鬼頭成(馬志翔)が怨霊となって冥界を脱走し、前世で自分を裏切った仲間たちの生まれ変わりを探し出して復讐していた。その怨念は小咪にも向けられる…!

冥界ファンタジーの趣で開幕する物語は、この再会で見覚えのある展開に突入する。『あの頃、君を追いかけた』でお馴染み、ギデンズ名物ともいえる(?)おバカ男子の恋物語である。ああ、やっぱり男子っておバカ…と笑っていたら、鬼頭成の登場で前作『怪怪怪怪物!』的なホラー展開となる(『怪怪怪怪物!』といえば、鑑賞当初は爽快さと胸糞悪さが入り混じる何とも言えない気持ちを抱いたのだが、実は製作当時のギデンズが自らのスキャンダルにより激しいバッシングを受け、そこで生じた怨みを原動力として作ったという話を最近知った。だからあんなに胸糞悪いのか…)

このように先の読めない物語なのだが、テーマは生命賛歌といえる。台湾に根づく道教や仏教をベースに、笑ってドキドキして恐怖におののいて、気がついたら感動しているド直球のエンタメで謳われる生命賛歌。どんな命でも等しく、それを救えば善となる。世界で起こる戦争等で命が失われていく現状を見ているから、その大切さや生きることの尊さを感じたのかもしれない。邦題の由来となっている、韋禮安による主題歌《如果可以》もこのテーマを体現していてよい。これは藤井風が台湾ライヴで歌いたくなるのもわかる。


Weibird本人が歌う日本語ヴァージョンもあるのでこちらも是非。

映画監督デビューも果たしたチェンドンの安定したバカ男子っぷり(誉めてます)とギデンズ作品への登板が続くビビアンはそれぞれかわいらしく、『返校』のミステリアスさをかなぐり捨てた王淨のはじけっぷりも楽しい。他のキャストもギデンズ作品常連から、馬志翔と共に『セデック・バレ』に出演したセデック族のラカ・ウマウまで、台湾映画&ドラマに親しみのある人なら思わず手を振りたくなる面々が揃う。

現在の台湾映画の勢いを象徴するこの作品、台湾好きだけど映画は…という人にも、もちろん台湾に特段興味のない人にも観てもらいたい。
重ねて言うけど、日本では劇場でしか観られない作品なので、東京や大阪だけでなく、日本全国津々浦々で上映されてたくさんの人に観てほしい。東北では香港&台湾映画を必ず上映してくれるフォーラム仙台で2月上映が予定されているけど、我が岩手でも是非上映してほしい…

今年は日本全国で中華圏の映画がたくさん上映されますように…

原題:月老/Till We Meet Again
監督・原作・脚本:ギデンズ・コー
出演:クー・チェンドン ビビアン・ソン ワン・ジン マー・ジーシアン ホウ・イェンシー チェン・ユー ルー・ミンジュン ホンジュラス ユージェニー・リウ ラカ・ウマウ

☆本blogは今年で開設20年。
ここ数年記事もなかなか更新できませんでしたが、アニバーサリーイヤーなので、なるべく更新できるように頑張ります。

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【東京国際映画祭2023】Old Fox/白日の下

先の記事に続いて、今年の東京国際映画祭で観た映画の感想。

『Old Fox』2023/台湾

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TIFFがワールドプレミアとなった『台北カフェストーリー』の簫雅全監督の新作。
オープニングタイトルに東映ビデオの名前を見つけておっ?となり、続いて出たエクゼクティブプロデューサーにホウちゃん(侯孝賢監督)と小坂史子さんのお名前を見て胸がいっぱいになった。ホウちゃんは先ごろ、認知症のために映画界からの引退を発表したからだ。この作品の他に幾つかの新作の製作に携わっていたようだが、もうお元気な姿を見られないのは寂しい限りである。お疲れさまでした。閑話休題。

日本がバブルの絶頂期を迎えていた1989年秋(といえば『悲情城市』がヴェネチアで金獅子賞を受賞した直後だ)一足先にバブル崩壊を経験していた台湾が舞台。レストランのマネジャーと仕立ての内職で生計を立てる父(劉冠廷)と暮らす小学生の廖界(『Mr.Long』の名子役白潤音)の夢は店舗を買い取って亡き母が経営していた理髪店を再開すること。家賃を集金している地主の秘書の“きれいなお姉さん”林(ユージェニー・リウ)から近隣の店舗が空いて手ごろな金額で買えると聞いた二人は喜んだが、その数日後に起こった株価変動の影響で地代が倍以上に膨れ上がり、買えなくなってしまう。失意の廖界に声をかけてきたのは、地主であり「腹黒キツネ(老狐狸)」と呼ばれている謝(アキオ・チェン)だった。謝は、世の中の金回りのことを廖界に教える。社会の強者となった謝と、彼に負け犬と呼ばれてしまう優しい父との間で揺れ動く廖界。

戒厳令が解かれてから民主化へと向かう台湾の80年代末から90年代初頭にちょうど留学していたのでなじみのある年代であるが、この時代を舞台にした映画となると90年春の野百合学運を描いた『BF*GF』に当時の複数の事件をモチーフに国民党政府の要人のフィクサーを描いた『血観音』とすぐ思い出せるものが多い。どの作品も切り口が違ってそれぞれ見ごたえがあるし、興味深い。
金をめぐって動物に例えられる職業といえばハゲタカとしばし称されるファンドマネージャーが思い浮かぶので、「世の中は金だ。金が悲劇を生む」とNHKドラマ映画『ハゲタカ』でお馴染みの台詞を心の中で呟きながら観たが、この腹黒キツネは土地を手に入れて成長した家主であるのでまた金を使う資質も異なる。その彼の半生も劇中で語られるが、当然統治時代からの話になるので、簡単に謝を悪役として見ることはできない。
彼との出会いとそこからの学び、そして愛する父への思いから、廖界が選んだ未来。映画のラストで描かれるそれはとても納得ができ、説得力のある姿であった。世の中の辛さや厳しさも描くけど、未来を見据えている。その静かで優しい描き方が胸にしみた。よい映画だった。

日本が資本を出しているのと合わせ、キャストで門脇麦が父のレストランの常連である楊夫人役で出演。台湾人役なので台詞は当然國語。変に浮いたところはなく、画面に馴染んでしっとりとした印象を残している。芸幅の広い劉冠廷が演ずる優しいお父さんもよい。謝さん役のアキオ・チェンさんは『熱帯魚』にも出演していたそうだ。
そして主演の潤音くん、成長したなあ…今後も俳優業は続けていくのだろうな。張震みたいになっていくのかな。

詳細な情報はまだ出てはいないものの、来年は日本でも公開される様子。金馬奬にも7部門ノミネートされているそうで、今から授賞式が楽しみ。

 

『白日の下』2023/香港

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ワールド・フォーカスの特集「アジアン・シネラマ-香港フォーカス」での上映作で、映画祭で観た唯一の香港映画。
監督はこれが長編2作目となるローレンス・カン。2015年と16年に香港で起こった高齢者介護施設での虐待事件と障害者施設での入所者変死事件を題材にした作品。古天樂率いる天下一電影公司の製作で、プロデューサーを務めるのはイー・トンシン。

高齢者と障害者が入所するケアハウスで虐待が行われているという情報を得て、A1新聞社の記者凌(ジェニファー・ユー)が認知症の入所者周(デビッド・チャン)の孫を装って施設に潜入する。そこで彼女は周の親友の水(今年91歳の大ベテラン歌手でもある胡楓)身体障害者でハウスの職員としても働いているサム(ピーター・チャン/チャン・チャームマン)、知的障害者の明仔(来年日本公開『燈火は消えず』のヘニック・チャウ)と小鈴(レイチェル・リョン)など様々な事情を抱えた入所者たちと出会う。この施設の院長で自らも障害を持つ章(ボウイ・ラム)によれば、民間施設ゆえ経営維持のために入所者を多く受け入れているとのことだが…。

観ていてどうしても思い出さずにいられなかったのは、現在公開中の日本映画『月』のモデルとなっている、2016年に起こった相模原障害者施設殺傷事件と、その事件が起こるきっかけとなった施設内で入所者の虐待が常態化していたという件。同じ実在の事件で似通っているとはいえ、大きな違いとしては、この『白日の下』では、調査報道としてこの事件が取り上げられたことである。調査報道といえばアカデミー賞受賞の『スポットライト 世紀のスクープ』、さわや書店が「文庫X」として売り出して注目された清水潔氏の調査報道をまとめたルポルタージュ『殺人者はそこにいる』、そしてその本を参考文献としたドラマ『エルピス』も思い出される。
調査報道の視点から描かれてはいるが、劣悪な施設の内部事情や職員が入所者に行う虐待行為等はかなり直接的に描かれるのでその残酷さはかなり強い。凌とその仲間たちはその事態を辛抱強く暴き出していくが、その経緯で何人かの入所者が命を落とす。虐待が常態化していても、その施設を拠り所とする入居者もいる。辛い日常があってもそこで友情を築く者もいる。故に結末で業務が停止され、それぞれ別々の施設に分かれていく入所者の中には、真実を暴き出した凌を責める者もいる。勧善懲悪ではないし、様々な人間模様を交えながら語られている。

辛い重い作品だが、香港映画的な人情ももちろんある。ジェニファーとデビッドさんは、偽りの孫と祖父としてそりが合わない関係から始まるが、物語が進むにつれ、どこかで通じ合うような関係に変化していく。凌とパウ・ヘイチンさん演じる母親との場面も印象的。
施設内でおぞましい行為に及ぶ章院長の複雑な人物造形も強烈であった。『毒舌弁護人』にも出演しているベテランのボウイさんが演じているが、よくぞこの役をお引き受けに…と思ってしまった。入所者を演じたチャームマン、ヘニック、レイチェルは近年の香港映画群で頭角を現しているという若手たち。コロナ禍のために映画祭に行けず、ここ数年の新作が追えてなかったので、ここで彼らの演技が見られてよかった。

香港ではTIFF上映後の11月2日に公開され、現在大ヒット上映中。台湾で行われる第60回金馬奬では、主演女優賞(ジェニファー)助演男優賞(ボウイさん)助演女優賞(レイチェル)他5部門でノミネート。

その他、観たかったけど観られず…な作品を。

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これも現在香港で大ヒット公開中『年少日記』

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現在の香港映画を製作面からも背負って立つ古天樂主演の『バイタル・サイン』。共演はアンジェラ・ユン。
監督のヴィンシー・チェクはかつて芝see菇biという名前でDJや舞台でも活動していたマルチクリエイター。 

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4年ぶりのTIFF。2021年に会場を日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区に完全移転し、大きなホールからミニシアターまで揃うエンターテインメントの一大拠点のような場所で開催されるのは実に有難いこと。今年は日程が元に戻った東京フィルメックスが一貫して有楽町で開催されているし、国際映画祭の場所としてはこれまでの六本木よりもずっとこちらの方が適していると思っていた。私的なことを言えば実家から乗り換えなし約1時間くらいで来られるし、終映後すぐ有楽町駅から東京駅で新幹線に飛び乗ることもできるし、食事にも困らない。

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しかし、メイン会場の東京ミッドタウン日比谷には全く足を運べず、結局行けたのは最終日の上映前。
せっかく立派なシネコンがあるのに、スクリーンは2つしか使われてないとのことで、なんだかもったいなく感じた。六本木では全スクリーンを使っていたのに…。全スクリーン使ってもいいのよと映画祭側にはアンケートに書いて送っておいた。

本当に久しぶりの映画祭(及び東京)だったこともあって、観客も若い人が増えてきて、外国人も目につくようになった。中華電影だと華人観客が多いのはもちろんだが、欧米系観客もちらほらと見かけた。そんな観客層の変化もあってか、以前よりもっと気になるようになったのは上映中のスマートフォンの点灯だった。上映開始後入ってくる観客はほとんどスマホで座席を探していたし、ある映画の本編終了後は両隣の客がエンドクレジットでスマホを見ていたのにイライラさせられた。これは通常上映でもやられているが、一般観客入場可ではあっても国際映画祭は国際映画祭。これはしっかりとしたアナウンスで周知徹底してほしい。以前から要望があった上映前の英語アナウンスは録音で流されるようになったというけど、中国語や韓国語のアナウンスも作品によってでいいのであるといいのかも。

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今年はTIFFの後に開催された香港映画祭2023 香港映画の新しい力 Making Wavesにも参加。
先行して一般上映された『毒舌弁護人』を含めて4作品鑑賞したので、こちらは次回の記事で。

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【東京国際映画祭2023】雪豹/ムービー・エンペラー/ミス・シャンプー

実に4年ぶりに参加した今年の東京国際映画祭

今年はトニー・レオンのマスタークラスが開催されたのだけど、残念ながら日程が合わずに断念。
ワールド・フォーカスではアジアン・シネラマ-香港フォーカス(上記のトニーのイベントもこの一環)台湾映画ルネッサンス2023と香港&台湾映画の特集でかなり充実していたのだが、日程と相談した結果、5作品(チベット、中国、台湾×2、香港)を鑑賞。
ここではまず3作品の感想を。

『雪豹』2023/中国・チベット

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中国で国家一級保護動物(=天然記念物)に指定されている雪豹が、チベットのある家畜業者の家の羊を襲って殺した。
一家の兄(ジンパ)は怒って雪豹を殺すと息巻くが、役人が到着するまで羊の柵に留まる雪豹を追い出せない。僧である弟(ツェテン・タシ)は「雪豹法師」とあだ名がつくほど雪豹を愛していて、当然兄とは対立する立場にある。弟の伝手でこの事件を取材しにやってきた県のTVクルーと役人も加わって騒動は堂々巡りに。雪豹を憎む者、愛して守りたい者、それを客観的に見る者それぞれの視点から物語が語られる。

これを観て真っ先に思い出したのが、現在全国各地で起こっている熊害。地元でも死者が出るほど深刻な問題になっているが、動物愛護の観点から殺すなというクレームも入り、なおかつ相手は凶暴でいつどこで出てくるか予想もつかないので、多方面で対応に苦慮している状況はよくわかる。もちろんこの物語の状況と完全に一致できるような状況ではないけど、人間の営みと自然の驚異が隣り合わせになっている現代社会のバランスの危うさを考えると、どの国にも同じような課題があるのかもしれない。

チベット族として初めて北京電影学院で映画を学び、チベット人によるチベット映画を確立させたペマツェテン監督は、自らが暮らすチベットを辺境のエキゾチックな地として捉えることなく、その地の人々の生き様を普遍的な視点で描いてきた。しかもシリアスになりずぎず、ユーモアも適度に交えてくるのもよい。今年53歳で亡くなったのは非常に残念だが、この映画の他にまだ多くの未発表作があり、息子さんやスタッフたちがその意志を引き継いで世に出してくれるだろうから、これから登場する新作にも期待する。
そして日本ではまだ『羊飼いと風船』のみの一般公開なので、今年の東京グランプリ受賞をよい機会に、東京フィルメックスで上映された過去作『オールド・ドッグ』 『タルロ』 『轢き殺された羊』なども合わせて作品が日本で公開されることを望んている(自分も先の2本が未見なもので)

(追記)フィルメックスの神谷ディレクターがインタビューで来年1月下旬から2月上旬にかけて、ヒューマントラストシネマ有楽町にてペマツェテン監督作品の特集上映を行うと答えているので、これがなんとか全国上映に結び付いてくれないかと期待している。

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Q&Aにはジンパ(左)、TV局の若手クルーを演じた熊梓淇(ション・ズーチー)雪豹法師役のツェテン・タシが参加。

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『ムービー・エンペラー』 2023/中国

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今やもうベテランな、香港映画界を代表する俳優にしてプロデューサーのアンディが、かつてプロデュースした『クレイジー・ストーン』などのコメディを作り続けてきた中国の寧浩(ニン・ハオ)監督と今度は主演俳優としてコンビを組んだ「スターはつらいよ」物語。
近年の中国映画の勢いと政治的状況を見ると、どうしても中国映画に対して抵抗感を持ってしまうのだが、とりあえずその気持ちを横に置いて観ると、デリケートな部分をうまく避けて作られた良質のコメディであった。未知の仕事に悪戦苦闘する往年のスターの物語としてスタンダードなプロットだし、SNSでの炎上等アップトゥデイトなトピックもしっかり盛り込んでいて、自らの非をわかっていながらなかなか謝れない様などについつい笑ってしまう。

香港の大スターでありながら無冠の帝王、私生活でも崖っぷちな主人公ダニーが、中国の若手監督のインディペンデント映画に出演して映画祭出品の野心を抱くも、思う通りに事は進まず…。アンディ本人と重ねてみるときっとファンは怒るのかもしれないけど、中国映画の撮影あるあるを多分に盛り込み、40年に渡る彼のキャリアを基に、本人もきっとノリノリでスタッフにアイディアをたくさん提案して楽しんで作っていただろうことが伺える。さんざんな目にあってもその態度や行動を貶すこともないし、ちゃんと愛をもって主人公を描いている。
『クレイジー…』の感想を読み直すと「中国映画に洗練という語はない」などとかなりひどいことを言っているが、あれから16年も経てばそれは大きく変わるものである。海より深く反省せざるを得ない。

『ミス・シャンプー』2023/台湾

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前作の『赤い糸 輪廻のひみつ(月老)』の日本公開を前にして上映されたギデンズ監督第4作は、「すいません、おかゆいところはありませんか?(請問,還有哪裡需要加強)」という原題が示す通り、美容室を舞台にしたラブコメディ。ここしばらくホラーテイストの作品が続いていたので、いろんな意味で原点に帰った感も覚えた。特に下ネタ方面で(笑)

組の頭をタイ人刺客に殺され、自らも命を狙われるヤクザのタイ(台湾のアーティスト、春風ことダニエル・ホン)が逃げ込んだ美容院で残業していた美容師見習のフェン(ビビアン・ソン)に一目ぼれ。シャンプーが得意だが絶望的もとい独創的なカットセンスの持ち主で、楽天モンキーズの野球選手鄭旭翔を熱烈に推すフェン会いたさにタイは美容院に通い、フェンも彼にひかれていく。
黙っていればなかなかハードボイルド感を持ってるタイが、フェンに出会ってとんでもないカットをされて恋に落ちてからの壊れっぷりがおかしく楽しい。男らしさの極致みたいなヤクザ稼業で女性関係も場数を踏んできたはずなのに、一気に高校生男子レベルまで幼稚化もとい純情化してしまうのが笑える。そうなると当然下ネタも過剰となるので、久々に「いやーホント男ってバカだよねー」と言いながら楽しく観られたのは言うまでもない。『あの頃』と比べると二人はお互い大人なので、ヤる前は下ネタ満々でも事は(もちろん)あっさり省略して描かれるので実にすがすがしい。タイの舎弟のひとりにはお馴染みクー・チェンドン、その他脇のキャストもかなり楽しい。そして近年のポストクレジット(エンドタイトルの後に映画が続くあのシステム)を意識したようなエンドタイトルの仕掛けには大爆笑。台湾や香港ではエンドタイトル時にさっさと場内が明るくなって追い出しを催促されることが多いのだが、台湾上映時に最後まで観た人ってどれくらいいるのだろうか…

(続く。次回は『Old Fox』『白日の下』の感想をUP)

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【ZINE新作】『台カルZINE Vol.2』ほか

岩手と台湾をカルチャーで結び、台湾カルチャーを深掘りする楽しみを伝える目的で2021年に結成された台湾カルチャー研究会のZINE「台カルZINE」の最新号が発行され、盛岡市内の各ブックイベントで販売しました。

【新刊】台カルZINE Vol.2 特集:NO MUSIC,NO TAIWAN(台湾カルチャー研究会)

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1号が映画なら2号は音楽!という理由での音楽特集。とはいえ台湾音楽も実に幅広く、すべてを網羅することは不可能なので、メンバー3人の偏愛音楽エッセイを中心に構成。日本でも放映された2000年代の台湾ドラマを彩ったテーマソング集があれば、台湾での村上春樹の受容を追っていたら出会った文青ポップスもあり。私はかつてこのblogでも書いてきたジェイ五月天の日本ライヴレポートのダイジェスト版と、自分が初めて触れた1990年代前半の台湾ポップスの思い出について書き下ろしました。
また、このZINEで紹介した曲を中心にしたプレイリストもspotifyでつくりました。よろしければ聴いてみてください。

 

【新刊】『このまちで えいがをみること』書局やさぐれ

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表紙はこの4月に営業を終了した、岩手県盛岡市の映画館通りにあるニッカツゴールデンビル。
かつては日活の映画館が入っていたビルで、日活撤退後も長年映画館が入っていました。
このビル自体の営業終了により映画館が閉館したことがきっかけで作ったZINEです。

11年前に香港映画の、5年前に台湾映画のZINEをそれぞれ作ってきたので、3冊目の映画ZINEはそれ以外…となるはずなのだけど、それでもここで紹介するのは、ええ、それでも入っているのですよ、香港映画+αが(^_^;)。
このZINEでは、自分が昨年観て気に入ったり気になった映画を洋邦各5作品、映画館で観た旧作5作品、そして今年上半期観た映画5作品のTwitterで書いてきた感想に加筆してまとめた感想集なのですが、このblog的な作品として『レイジング・ファイア』『時代革命』『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』そして王家衛4K作品集について取り上げております。ここで書いた長文感想のダイジェスト的にシンプルにまとめました。
長年映画好きやっておりますが、もうすでに香港映画も分かちがたく、香港・台湾映画を除いて映画の感想をまとめることって自分にとっては結構厳しいのだと改めて思いました。なお、いろいろな人に読んでもらえることを目的に作りましたので、毒は控えめです。

この新刊2作を引っ提げてまず参加したのが、6月18日(日)に岩手教育会館で開催された文学フリマ岩手8
東北唯一の文学フリマです。

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当日のブースの様子。今年は書局やさぐれと台カル研のダブルネームで参加しました。

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当日のセットリスト。既刊ZINEもまだまだ在庫あります(笑)

昨年から会場が変わったのと、出店者も一般参加者も過去最高を記録したとのことで、会場内の熱気は実に半端なかった。お隣が旅の写真集を出されていた方でお話しできたり、思わぬ出会いがあったりと忙しいながらも実りあるイベントでした。
文学フリマ岩手には初回からずっと参加していますが、実は一般でも出店でも東京は未経験。3年前の春のイベントに出店の申し込みをしたことがあるのだけどコロナ禍で中止。岩手の文フリも2年連続で中止になりました。秋は映画祭シーズンと重なるので行けないだろうけど、来年の春の東京は出店を検討しております。

その1週間後、6月25日(日)にもりおか町家物語館で開催された浜藤の酒蔵ブックマーケット2023-Summer-にも出店いたしました。

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こちらは古本市からスタートしたブックイベントで、市のアート系団体の主催です。
古本屋を経営されている方から、フリマ感覚で自宅の本を持って販売する方まで出店者は様々でZINEや読書グッズの販売のみでもOKと間口が広いイベントでいつも楽しく参加しています。
会場が住宅地にあるので来場者に子供たちも多く、今回ワンオペ故店番を手伝ってもらったOPENちゃん(写真)が人気でした。

今後のイベント参加は秋までありませんが、ZINEイベントにも出品しております。
また、新刊発行にあわせて通販も近日再開いたしますので、ご興味がありましたらよろしくお願いいたします。

そして次の新作ZINEも秋発行を目指して現在計画中。
次作は旅行記の予定です!ふふふ

 

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熱烈歓迎!盛岡台湾Happyフェス

このblogでもこれまでたびたび紹介してきた盛岡台湾Happy project
昨年12月から正式に協議会として組織され、これからは通年で盛岡と台湾の交流イベント事業等行っていくようです。

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このプロジェクトのメインイベントであり、今年で3回めとなる盛岡台湾Happyフェスは1月28日と29日に開催されました。

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大都市圏で行われるような台湾祭や台湾フェスのような大規模イベントではなく、地元の事業者による出店とトークで構成されるのはいつも通り。今年は盛岡と友好都市である花蓮から、花蓮縣政府青年發展中心が参加してパネル展示と物販を行いました。3回目にして初めて台湾からの参加!

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今回は物販が大人気。毎年恒例の東家特製盛岡台湾弁当は2日とも即完売。
(私も買えなかったので友人が購入した弁当を撮影しました)

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今年は魯肉飯と蒸し魚がメイン。

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こちらはパイカ(軟骨)の豆鼓煮込み弁当。市内の台湾料理店ふぉん特製。
お店は夜のみ営業ですが、市内のお弁当イベント等にも時々参加しています。

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「楽しみながら学ぶ盛岡台湾交流DAY」と銘打った土曜日のイベントは教育がテーマ。
今年始め話題になったニューヨークタイムス紙の「2023年に行くべき52カ所」に盛岡が(実は台北も)選出されたことを受けるように、台湾の高校生に盛岡のいいところをおすすめするプランを即興で作ったり、盛岡や台湾を題材にしたクイズを作成するなどの高校生たちの取り組みが発表されていました。
その中でひときわ興味深かったのが、市内で食品業を営む方の台湾留学レポート。ご両親が台湾から日本に移住し、日本で生まれた2世の方なのですが、日本語を母語として育ったので、中国語はビジネスで使うくらいだったそうです。両親の故郷で学ぶことを長年夢見ていたそうで、2年前の秋から昨年の夏までの1年間、65歳にして悲願を叶えたとのこと。しかも留学されていたのが、私がここしばらく心の近所として通っている台南の成功大学。課題の多さ(これは誰でもいうことだけど)に加え、一人暮らしでの食生活の工夫や体力作りなど、参考にしたい話もたくさん聞けました。
私も今後仕事を首にされるか、運よく定年を迎えた後に、親に不測の事態が万が一起こらなければ、また留学したいかなと思うようになったのですよ。自分の頃と比べても留学しやすくなってきたし、実際高校でも米国より台湾への留学案内も増えてきているとのこと。
若者たちにとっても、いろいろと学べることも多いし、有意義だと思います。

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2日目の日曜日のイベントテーマは「ディープにデュアルトーク盛岡台湾DAY」。
盛岡出身の新渡戸稲造を始めとして、後藤新平や伊能嘉矩、三田定則など台湾統治時代に活躍した岩手県人についてや、市内の森林公園できのこアドバイザーを務めるきのこ王子さんによるきのこ話などが展開する中、私と友人たちで結成した台湾カルチャー研究会(以下台カル研)も「おいでよ、台湾映画沼 わたしたちはこうしてハマった」という題名で、台湾トークしてきました。
昨年12月、協議会に関わる友人の某氏より「台カル研で台湾映画トークやらない?」と打診があり、昨年出した台カルZINEを基に、これまであまり意識して台湾映画を観たことがない方々が多いことを想定して、現在観られる映画を中心に紹介しました。
キーワードとしては青春映画、台湾ニューシネマ、LGBTQ+、ホラー、社会と歴史、そしてリメイクなど。個別の作品では『幸福路のチー』『あの頃、君を追いかけた』『1秒先の彼女』を紹介しました。
あわせて、配信で観られる作品もリーフレットにまとめました。(写真の右下に写ってます)

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私自身は、4年前の『藍色夏恋』上映会でトークは経験済みなのですが、あの時はほぼ準備してなかったのでいろいろ大変だったっけ…なんて思い出していましたが、その時よりスペースはオープンだしどんな人が聞いてくれるかわからなかったし、退かれたらどうしよう…などとオタク的ないらぬ心配までしてしまいましたが、メンバー3人の好きなことをあれこれ話せて本当に良かったです。聞いてくださった皆様、本当にありがとうございました。

今年は『藍色』や『あの頃』を始め『海角七号』『KANO』など21世紀に入ってからの傑作台湾映画の配給権が次々と切れていくそうで、国内で上映される作品が少なくなるのが残念ですが、それでも今後様々な台湾映画が広く観られて、観光やグルメと共に台湾を知るきっかけになってほしいと思うのでした。
今年は何か上映会が企画できるといいなあ。

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今年はステージトークがあったのでいろいろ時間が取られ、合わせて本業の仕事等も大変で、プレウィークで行われた市内各所の展示等もじっくり見られなかったので、スタンプラリーを回るのもなかなか大変でした。
今年のデザインはこんな感じ。
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今年のコンプリ特典は昨年とちょっとデザイン違いの美麗!台湾コラボステッカーと、昨年秋に行われたボンネットバスツアーの特製ポストカード。(ちなみにこのボンネットバス、バリバリの現役です。Suicaやpasmoで乗車できます)
スタンプとスタンプカードは今月いっぱい、ポノブックスさんに設置してあります。

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パンデミックの始まりから3年が経ち、まだまだ感染は収まらないけど、経済や往来は元に戻していこうとしているこの頃。
定期便も観光も復活しつつあるけど、当地の国際線はまだ復活せず。まだまだ状況が厳しいのはわかるけど、今年はなんとか行けることを願うばかりだし、このフェスで台湾に興味を持ってくださった方が、気軽に地元の空港から旅立てるようになってくれたらということもあわせて願うところです。イベントも毎年ながら楽しく充実しているし、こんなに楽しいのなら台湾自体もっと楽しいのは言うまでもないですしね。

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サークルとしても、もちろん個人でも、今後もこのプロジェクトには積極的に協力していきます。
何かイベントがあったらこちらでも紹介しますので、今後ともご注目をお願いしますね。

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第7回文学フリマ岩手に出店します【ZINE新作】『台カルZINE Vol.1』ほか

バタバタしている間に前日のお知らせとなりました。申し訳ございませぬ。
前回のエントリ通り、明日6月19日(日)に岩手県産業会館(産ビル)7階大ホールで開催される第7回文学フリマ岩手書局やさぐれ&透明度として出店いたします。
当日のセットリストは画像の通り。

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【新刊】『台カルZINE Vol.1 特集:台湾映画鑑賞指南』(発行:台湾カルチャー研究会

「台湾を深掘るともっと楽しいよ!」を合言葉に、岩手の3人の台湾好きが結成した同好会によるZINE。創刊号のテーマは台湾映画。

【新刊】『自宅台湾飯』

以前のblogエントリを元に、複数のレシピ本を参考にここ2年作り続けた台湾飯をまとめたフォトブック第2弾。
第1弾は昨年発行した『職場台湾便當』(関連記事はこちら)です。

【新刊】『日日是MAKE TEA NOT WAR』

中華色薄めですがこちらもご紹介。地元産のお茶から英国紅茶まで、全編「ああお茶うめぇ…」とだけ言って1冊まとまった(笑)エッセイ。題名が物騒ですが、一応戦争反対の思いを込めて作りました(真顔)

【既刊】『閱讀之旅2019之雙城故事』 『寶島電影院』

部数僅かですがこちらもあります。

以上の本は今後ZINEイベントやブックイベント参加時にも取り扱います。
また通販も検討しております。
ではでは、よろしくお願いいたします。
そして明日のイベント頑張ります。
(当日は台カル研メンバーも集合しますよ)

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より以前の記事一覧