文化・芸術

【ZINE新作】21世紀香港電影新潮流

前の記事で製作をお知らせした新作ZINEが完成しました。

【新刊】21世紀香港電影新潮流 funkin'for HONGKONG@zine 2024

21centuryhkmovies

↑見本誌の画像なのでサークルアイコンが入っていますが、もちろん販売分にはついていません。

2016年以降に製作された新人映画監督作品のうち、自分が観ている作品を10本選んで紹介しています。
これまでblogやTwitterで書いてきたテキストに加筆しております。
ラインナップは次の通り。

・星くずの片隅で
・香港の流れ者たち
・毒舌弁護人
・白日の下
・淪落の人
・逆流大叔
・花椒の味
・ブルー・ムーン
・私のプリンス・エドワード
・ソロウェディング

加えて、このblogでは書いていなかった、17年と19年の香港ミニ旅行記などの散文も書き下ろし。
地元でも来月上映される『燈火は消えず』他、未見の作品にも簡単に触れました。

先日実施された浜藤の酒蔵ZINEマーケットで初頒布し、おかげ様で初版の半数をお買い上げいただけました。

E21a58e177a241d7bb77b77694a029f8

当日の様子

57fda6c64b854977a6b43b7b40a0906e

季節に合わせて紅聯も飾ってみました。

71638d7a228d4f64a6a41e91030776e6

このチラシも、勝手に応援で飾りました。

もともと地元であまり上映されていない香港映画を知ってもらって、劇場で上映されたら観てほしいなーという気持ちから作ったZINEなので、現在のところ手売りでやっていますが、増刷も考えているので通販も予定しています。
通販の準備が整ったら、ここでもお知らせいたします。

| |

【香港映画祭2023Making Waves】ブルー・ムーン/風再起時

香港映画祭の感想、後半です。

ブルー・ムーン(2023/香港)

C055c9a563504517b477b6ad22e0fbb8

この映画祭がワールドプレミア。監督は脚本家出身で2016年の《幸運是我》で監督デビューしたアンディ・ロー。
コロナ禍の香港を舞台に、24歳の女子美珍(グラディス・リー)が経験する仕事や恋や家族のいざこざのあれこれ。
結婚して家を出て、倉庫で小さな会社を営む兄(チャン・チャームマン)と義姉との不仲、美珍が生まれてすぐ父と離婚したという母(ロレッタ・リー)の抱える秘密が全編の鍵。

コロナ禍での市井の人々の生き方を描いて高く評価された映画といえば、今年日本で公開された『星くずの片隅で』が真っ先に思い出される。エッセンシャルワーカーから見た香港の姿を描いていて、私も夏に東京で観てきてとても心に沁みた。(地元上映での再見を楽しみに待っていたのだが、東北地方では唯一岩手だけ上映されずに大泣きした。配給権が切れないうちに自主上映したいので地元の方ぜひご協力をお願いします>業務連絡にて失礼)この映画と比べられてしまうかな…とも思ったけど、現代の香港を生きる若い女性の日々を静かに描いた、どこか日本のインディーズ映画のテンポを持つような作品だった。撮影中にも是枝裕和監督作品っぽいなどと言われていたそうで、ロー監督には「羅耀裕」などという是枝監督にちなんだニックネームがつけられていたとか。なおロー監督は山田洋次のファンとのこと。

B1c6ac9f25f64f52867b086cf5a14ef7

美珍を演じるグラディスは、今年のOAFFで上映された『深夜のドッジボール』の主演のひとりで、ドニーさんの『スーパーティーチャー 熱血格闘』でレーサー志望の学生ウォンを演じてた。後者は観ていたのだけど、全然雰囲気が違っていて驚いた。個人的な問題を抱えながらも妹を気に掛ける兄役のチャームマン、『三人の夫』で覚えて以来、近年は本当に大活躍。『白日の下』『マッド・フェイト』共々それぞれ全く違う役どころを演じていて、勢いのある俳優の凄さを感じた。この映画での演技は味わい深くよい印象だった。母役のロレッタは私が説明するまでもなく往年の人気スターで『香港の流れ者たち』で映画界に復帰した。仕立て屋で元ホステスという過去を持つ母親をしみじみと感じるよいキャストであった。

そしてクライマックスで登場したある場所が、過去の名作にも登場したあの場所?と驚く。あの場所がまだ残っていると知ったのは最近なので、実際に見に行ったことがないのだ。名所とは言えない場所が30年以上残っているのは奇跡的だ。これまで全く気付かなかったので次の香港行きでは…と願うのだが、今度はいつ行けるのだろう。
音楽は波多野裕介さんが担当。興味深かったのは挿入歌とエンディングテーマが日本語曲だったこと。香港のアーティストが歌っているのだが、画面にすっと溶け込んで作品世界のよいアクセントになっていて、またしみじみしたのであった。

風再起時(2023/香港・中国)

36a73a4fcdfe4e2e9a12ffa7045b1e3c

『四大探長』『リー・ロック伝』二部作、そしてアンディとドニーさん共演の『追龍』など、これまで香港映画で何度となく映画に取り上げられた50~60年代の香港警察の汚職事件とその中心人物をモデルとした磊樂(アーロン)と南江(トニー)を主人公に描く大河ドラマ的映画。『追龍』は近年の作品なので、それと同じになるはずはないよなと思ったら、思った以上にアクションは控えめで主人公2人の感情が全面に出てた。
監督がやはりアーロン主演『九龍猟奇殺人事件』のフィリップ・ユンで、あの映画も事件の陰惨さよりも被害者と加害者の感情の揺れを主に置いていたので、数多ある先達映画と差別化したかったのはよくわかる。

50aa503dd14d4ff8a201ae2e5b0d08ba

ユン監督(写真右)はトニーファンだとか。アーロンとは以前も組んだので周知の仲だろうけど、南江はトニーと組めたらやりたかったことを詰め込みまくったんだろうなってキャラに仕上がってたし、王家衛的なムードも漂っててニヤニヤできる。
でも香港でヒットしなかったと聞くのもなんとなくわかるのであった。ギラギラというよりメロドラマ的な仕上がりだったり、大陸での上映を見越してもしかしたらソフトに作られていたんじゃないかとかいろいろ考えてしまうんだが。
アーロンの青年期を演じたのは徐天佑。壮年期から老年期を演じてたけど、アーロンの腹の部分の肉体変化はご本人の努力とのことで、ご本人もノリノリでやったんだろうな。

この時代のことがあってから、後に設立されるのが汚職捜査機関である廉政公署(ICAC。近年では《廉政風雲》などで描かれる)の委員として登場し、この映画のメッセージを一身に背負ったマイケル・ホイさんの存在感と演技は素晴らしかった。今年の金像奬で最優秀助演男優賞を受賞したのは大納得。2010年代後半から雨傘運動や反送中デモの排除に政府から派遣された警察の仕打ちを見ていると、確かに現在の警察の姿をそのまま正義として描くのはきっとためらわれる。廉政公署ものや裁判ものの映画が増えてきているのも納得だし、警察を描くとしてもこのような歴史ものとして描くのが現状として精いっぱいなのだろう。
トニーが初めて本格的な悪役を演じた中国映画『無名』の日本公開が決まったので、これも日本公開あるのかなと見込んでいるが、うーむ、やはり難しいのだろうか…。

A947f1a3e3024a529a9b3bf5227fce8d

これまでの3年間、香港どころか東京にも出られず、加えて仕事の量が増加したので新作の香港映画も運よく地元で上映された作品をフォローするので精いっぱいだったり、未公開映画や映画祭上映作の配信が始まっても、時間がなくて見逃したり、観たとしても感想をじっくり書けなくなったりといろいろしんどかった(映画の感想自体はここ5年くらい個別で書くのがなかなか大変になってて申し訳ない)3年ぶりのTIFFとこの映画祭、そして夏の上京で観た『星くず』と東京外国語大学のTUFS Cinemaで上映された『ソロウェディング』で今年はだいぶ追いつけたとは思うのだが、それでもなかなか満足できない。映画祭や特別上映会でみんなで観るのはもちろん楽しいのだが、やはり劇場公開で地元で観るのが一番。香港映画がブルース・リーやジャッキー・チェン(彼ももうすっかり中国大陸の映画人になってしまった)や王家衛だけじゃない、ニュースで伝えられる機会も減ってしまった現在、それでも映画人が作り続け、世界に発信している現在進行形の香港映画がもっともっと知られてほしいのだ。これは台湾映画も同様。アジアンエンタメとしては韓国がもうすっかり力を持ってしまっているけど、アジアはもっと多様であるからね。日本だってアジアの一員だし。

だから映画祭で上映された作品が全て一般公開されて、全国津々浦々で上映されるのが理想なんだけど、昨年のこの映画祭で上映された新作で一般公開作が決まったのが1本だけというのが気になった。配給がついても劇場公開ではなく配信ということもある。そこはどうなるのか。
この映画祭に対して、2021年と22年の2年間、『あなたの微笑み』『ディス・マジック・モーメント』のリム・カーワイ監督がキュレーターとなって全国主要都市で開催された香港映画祭があり、『十年』や『時代革命』のキウィ・チョウ監督や『星くず』のラム・サム監督の短編などのここ数年にデビューした若手監督作品の作品が上映されている。ここからは『香港の流れ者たち』の一般公開が決まったが、残念ながら今年は開催されないとのこと。
このように観ようと思えばいくらでも観られるいい機会がある大都市は羨ましいが、それを羨んでばかりはいられない。

地方都市に暮らしてもう長くなったが、来たばかりで不安だった頃の寂しい自分を救ってくれたのが、劇場公開された香港映画と、それを応援しようと結成されたサークルだった。これについては今までもあちこちで書いているのでここでも書かないけど、自分を励ましてくれた映画を生み出した街の現在と、現在の香港映画をもっと広く知ってもらいたい、そのためには劇場でかかる映画が多くならないとという思いを抱いている。
そのためには自分がもっともっと映画を観て、それをうまく伝えていければという思いを強くしている。

そんな思いを改めて抱いたので、その思いをうまくまとめていくのがこの冬の私の目標。
なんか最後は私的な思いで締めちゃってるけど、この秋の映画祭レポートは以上。

この年末年始は実家に帰省するので、『香港の流れ者たち』と移転したBunkamuraで上映されるWKWザ・ビギニング(『いますぐ抱きしめたい』&『欲望の翼』)はなんとか観たいところ。
(そういえば『欲望の翼』のデジタルリマスター版を観たのが、コロナ前最後の東京行きだったっけ…)

| |

【香港映画祭2023Making Waves】マッド・フェイト/毒舌弁護人

香港政府と創意香港(CREATEHK)の支援を受け、昨年より香港国際映画祭協会(HKIFFS)が世界各地で新作香港映画を巡回上映している「香港映画の新しい力 Making Waves(以下香港映画祭)」。昨年は《逆流大叔》のサニー・チャン監督作による賀歳片『6人の食卓』、大阪アジアン映画祭で好評を博した『黄昏をぶっ殺せ』などの現在進行形の香港映画新作から『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』のデジタルリマスター版などの旧作も上映。中華圏の注目作を日本で一番紹介している大阪アジアン映画祭の協力を受けているとのことで、いい作品を持ってきてくれるのは嬉しい。でも昨年はまだ首都圏に足を踏み入れることはできなかったので参加は諦めた。

今年は東京国際映画祭にも行くことにしたし、少し間をおいてではあるが、引き続き香港映画が観られるのならこの上なくうれしいことではないかと思い、張り切ってチケットを取り、年休も取った。同じ週に新幹線で2往復する羽目になったが、大きな劇場で観客の皆さんと一緒に香港映画を楽しめたらもう何もいらない。でもその代わり、残念ながら今年は東京フィルメックスの鑑賞は断念することになった。来年は行きたい…

73e16e0c1c4a400cb7f93959d295c431

今年の映画祭ではMIRRORのアンソン・コン主演の『7月に帰る』『夢翔る人 色情男女』デジタルレストア版はスケジュールの関係でパスし、『レクイエム』『ホワイト・ストーム』に続くシリーズ第三弾『ホワイト・ストーム 世界の涯て』は残念ながらソールドアウト。
というわけで、上映全7作品のうち4作を鑑賞。

『マッド・フェイト』2023/香港

6d7b745acedb438d89fcb8a16d56ffe0

狂っているのは君か、それとも僕か。
精神を病んだ両親を持ち、親同様狂うことを恐れる占い師許(ラム・カートン)とサイコパスの青年少東(MIRRORのヨン・ロクマン)、そして雨の日に現れる連続殺人鬼(チャン・チャームマン)など、まともじゃない人々が重苦しい空気を纏った香港の街を駆け抜ける。ラストまでとことん(精神的に)殴り合って(見えないが)血みどろになるソイ・チェンの濃ゆい世界を久々に浴びてクラクラしてる。カートンさんの壊れてそうで壊れてないこのギリギリのラインをいく感よ。ものすごいんだがその一方でこれはかなり楽しんでやってるのかも…とも思ふ。

C7ab270d1ad340dc8b2164cc90a20c32

一昨年のTIFFと昨年の香港映画祭で上映された『リンボ』でもコンビを組んだソイさんとカートンが来日。
カートンさんは昨年に続いての参加だそうで、和やかであった。

ここしばらく銀河映像の作品とはご無沙汰していたせいか(製作はトーさん、脚本は游乃海さん)次々と起こる殺人事件(被害者が娼婦ばかりだったのはいろいろ思うところはある…)に流れる血に異常に興奮する少東、そして正気と狂気の狭間で少東を救うがために苦悶して進む許の姿に思い切り慄いたのだが、観終わったら、ああやっと香港映画に帰ってきたわ…となった。
長らく忘れていたよ、この世界を。いきなり両肩を掴まれてグッと引き戻された思いをした。
初めて参加した香港映画祭のトップバッターがこの映画でよかったわ。

毒舌弁護人 正義への戦い(2023/香港)

8223e3030ba642e9866f2513bc1c3a8f

今年の旧正月に公開され、香港映画歴代興行収入を更新したという作品。主演はベテランのスタンダップコメディアン黄子華(ウォン・ジーワー。今回は英語名のダヨ・ウォンで紹介)。香港に通ってエンタメニュースに触れると必ず登場する(ジャンユーや張達明とトリオを組んだ「髭根Show」などは見たことなくても知ってた)けど、ローカルコメディに出ているイメージがあったので、まさか日本で黄子華主演作が観られるとは思わなかった。しかもこの映画祭に先立って一般上映もされて二度ビックリした(実は発売日当夜のチケット取りに敗れて、TIFF上京時にシネマートで先に観ていたのであった>譲っていただけたのでした。多謝!)

職務怠慢を理由に裁判官から窓際職に追いやられたことをきっかけに弁護士に転職した林涼水(ジーワー)が、実子虐待殺人の罪に問われた被告の母親(ルイーズ・ウォン)の弁護を担当し、明らかに冤罪とわかりながら負けたことがきっかけとして真剣に取り組むことになり、裁判のおかしさに気づいて正義を追及していく姿が見どころ。対話で戦い、うまく話を転がすのはさすがだ。
これまで賀歳片で主演を張りながらなかなかヒットしなかったらしいが、昨年の香港映画祭で上映された『6人の食卓』(監督は《逆流大叔》のサニー・チャン)もヒットし、2年連続で主演の賀歳片が当たったことになるジーワーのすごさを十分に味わった。長年コメディアンとして慣らしてきたからこその、スーダラで口が悪くても正義感で突き進むこの役柄が本当にお見事。香港映画歴もかなり長くなったけど、これまで彼が日本に紹介されなかったのは本当に不思議。自分の中でのライヴの人のイメージが強かったし、香港でも出演を積極的に観てこなかった。ああ自分今まで何やってんだと反省。
彼だけでなく、対決するカム検事を演じた謝君豪、刑事役のボウイ・ラムさんなどのベテランから、ルイーズやフィッシュ・リウなど若手のキャストもとてもよい。ERRORのホー・カイワーが演じたパラリーガル(でよかったか?)の太子もよいキャラ。

これまで日本で公開されてこなかった香港の裁判もの(時代ものだけど今ネトフリで観られる『チャウ・シンチーの熱血弁護士』くらいか?)なので、かなり興味深く観た。これに先立って公開された《正義廻廊》など、ここしばらく香港ではリーガルものがヒットしているとのことだが、警察テーマの映画に代わって題材として注目されるようになったり、香港社会のあり様を描くのに現在最も適しているからかともいろいろ考えられる。まさに今「Everything is wrong!」と言われる状況であるのは言うまでもないし。コミカルには描くけどベッタベタではなく、基本的にはシリアスでもある。ちょっと前だきっと紹介されることのなかったタイプの映画だろうけど、こうして配給と字幕がついて観られるのは本当に有難い。

48be06f4fa2948afb3a465ad6a8c0ccf

ゲストは公式初来日となったジーワーと、長年ダンテ・ラム監督作品や、近年では『アニタ』の脚本も手掛けてきたジャック・ン監督。
Q&Aでは長年の謎(か?)だった英語名「ダヨ」命名の真相がわかってスッキリ。小学校の頃は「スティーブン」と名付けられたそうだけど、既にクラスに6人くらいいたそうだ。確かに香港でスティーブン君多すぎ問題は気になってた…(笑)「ダヨ」という名は他の兄弟と語感が似ているからつけられたとかなんとか。
本当は日本でも「ウォン・ジーワー」名義で紹介してほしかったけど、まあ自分で呼ぶからいいか、ダヨ名義でもいいんダヨ(やめなさい)

ジーワーのインタビュー記事はこれが一番詳細でわかりやすかったです。

(次回は『ブルー・ムーン』『風再起時』の感想をUP)

| |

【東京国際映画祭2023】Old Fox/白日の下

先の記事に続いて、今年の東京国際映画祭で観た映画の感想。

『Old Fox』2023/台湾

6a0d9fd3bbe74fd88ef67984af83da51

TIFFがワールドプレミアとなった『台北カフェストーリー』の簫雅全監督の新作。
オープニングタイトルに東映ビデオの名前を見つけておっ?となり、続いて出たエクゼクティブプロデューサーにホウちゃん(侯孝賢監督)と小坂史子さんのお名前を見て胸がいっぱいになった。ホウちゃんは先ごろ、認知症のために映画界からの引退を発表したからだ。この作品の他に幾つかの新作の製作に携わっていたようだが、もうお元気な姿を見られないのは寂しい限りである。お疲れさまでした。閑話休題。

日本がバブルの絶頂期を迎えていた1989年秋(といえば『悲情城市』がヴェネチアで金獅子賞を受賞した直後だ)一足先にバブル崩壊を経験していた台湾が舞台。レストランのマネジャーと仕立ての内職で生計を立てる父(劉冠廷)と暮らす小学生の廖界(『Mr.Long』の名子役白潤音)の夢は店舗を買い取って亡き母が経営していた理髪店を再開すること。家賃を集金している地主の秘書の“きれいなお姉さん”林(ユージェニー・リウ)から近隣の店舗が空いて手ごろな金額で買えると聞いた二人は喜んだが、その数日後に起こった株価変動の影響で地代が倍以上に膨れ上がり、買えなくなってしまう。失意の廖界に声をかけてきたのは、地主であり「腹黒キツネ(老狐狸)」と呼ばれている謝(アキオ・チェン)だった。謝は、世の中の金回りのことを廖界に教える。社会の強者となった謝と、彼に負け犬と呼ばれてしまう優しい父との間で揺れ動く廖界。

戒厳令が解かれてから民主化へと向かう台湾の80年代末から90年代初頭にちょうど留学していたのでなじみのある年代であるが、この時代を舞台にした映画となると90年春の野百合学運を描いた『BF*GF』に当時の複数の事件をモチーフに国民党政府の要人のフィクサーを描いた『血観音』とすぐ思い出せるものが多い。どの作品も切り口が違ってそれぞれ見ごたえがあるし、興味深い。
金をめぐって動物に例えられる職業といえばハゲタカとしばし称されるファンドマネージャーが思い浮かぶので、「世の中は金だ。金が悲劇を生む」とNHKドラマ映画『ハゲタカ』でお馴染みの台詞を心の中で呟きながら観たが、この腹黒キツネは土地を手に入れて成長した家主であるのでまた金を使う資質も異なる。その彼の半生も劇中で語られるが、当然統治時代からの話になるので、簡単に謝を悪役として見ることはできない。
彼との出会いとそこからの学び、そして愛する父への思いから、廖界が選んだ未来。映画のラストで描かれるそれはとても納得ができ、説得力のある姿であった。世の中の辛さや厳しさも描くけど、未来を見据えている。その静かで優しい描き方が胸にしみた。よい映画だった。

日本が資本を出しているのと合わせ、キャストで門脇麦が父のレストランの常連である楊夫人役で出演。台湾人役なので台詞は当然國語。変に浮いたところはなく、画面に馴染んでしっとりとした印象を残している。芸幅の広い劉冠廷が演ずる優しいお父さんもよい。謝さん役のアキオ・チェンさんは『熱帯魚』にも出演していたそうだ。
そして主演の潤音くん、成長したなあ…今後も俳優業は続けていくのだろうな。張震みたいになっていくのかな。

詳細な情報はまだ出てはいないものの、来年は日本でも公開される様子。金馬奬にも7部門ノミネートされているそうで、今から授賞式が楽しみ。

 

『白日の下』2023/香港

A780dd1ef12a4da398faf01bbe093cdb

ワールド・フォーカスの特集「アジアン・シネラマ-香港フォーカス」での上映作で、映画祭で観た唯一の香港映画。
監督はこれが長編2作目となるローレンス・カン。2015年と16年に香港で起こった高齢者介護施設での虐待事件と障害者施設での入所者変死事件を題材にした作品。古天樂率いる天下一電影公司の製作で、プロデューサーを務めるのはイー・トンシン。

高齢者と障害者が入所するケアハウスで虐待が行われているという情報を得て、A1新聞社の記者凌(ジェニファー・ユー)が認知症の入所者周(デビッド・チャン)の孫を装って施設に潜入する。そこで彼女は周の親友の水(今年91歳の大ベテラン歌手でもある胡楓)身体障害者でハウスの職員としても働いているサム(ピーター・チャン/チャン・チャームマン)、知的障害者の明仔(来年日本公開『燈火は消えず』のヘニック・チャウ)と小鈴(レイチェル・リョン)など様々な事情を抱えた入所者たちと出会う。この施設の院長で自らも障害を持つ章(ボウイ・ラム)によれば、民間施設ゆえ経営維持のために入所者を多く受け入れているとのことだが…。

観ていてどうしても思い出さずにいられなかったのは、現在公開中の日本映画『月』のモデルとなっている、2016年に起こった相模原障害者施設殺傷事件と、その事件が起こるきっかけとなった施設内で入所者の虐待が常態化していたという件。同じ実在の事件で似通っているとはいえ、大きな違いとしては、この『白日の下』では、調査報道としてこの事件が取り上げられたことである。調査報道といえばアカデミー賞受賞の『スポットライト 世紀のスクープ』、さわや書店が「文庫X」として売り出して注目された清水潔氏の調査報道をまとめたルポルタージュ『殺人者はそこにいる』、そしてその本を参考文献としたドラマ『エルピス』も思い出される。
調査報道の視点から描かれてはいるが、劣悪な施設の内部事情や職員が入所者に行う虐待行為等はかなり直接的に描かれるのでその残酷さはかなり強い。凌とその仲間たちはその事態を辛抱強く暴き出していくが、その経緯で何人かの入所者が命を落とす。虐待が常態化していても、その施設を拠り所とする入居者もいる。辛い日常があってもそこで友情を築く者もいる。故に結末で業務が停止され、それぞれ別々の施設に分かれていく入所者の中には、真実を暴き出した凌を責める者もいる。勧善懲悪ではないし、様々な人間模様を交えながら語られている。

辛い重い作品だが、香港映画的な人情ももちろんある。ジェニファーとデビッドさんは、偽りの孫と祖父としてそりが合わない関係から始まるが、物語が進むにつれ、どこかで通じ合うような関係に変化していく。凌とパウ・ヘイチンさん演じる母親との場面も印象的。
施設内でおぞましい行為に及ぶ章院長の複雑な人物造形も強烈であった。『毒舌弁護人』にも出演しているベテランのボウイさんが演じているが、よくぞこの役をお引き受けに…と思ってしまった。入所者を演じたチャームマン、ヘニック、レイチェルは近年の香港映画群で頭角を現しているという若手たち。コロナ禍のために映画祭に行けず、ここ数年の新作が追えてなかったので、ここで彼らの演技が見られてよかった。

香港ではTIFF上映後の11月2日に公開され、現在大ヒット上映中。台湾で行われる第60回金馬奬では、主演女優賞(ジェニファー)助演男優賞(ボウイさん)助演女優賞(レイチェル)他5部門でノミネート。

その他、観たかったけど観られず…な作品を。

1d8b2fddcd534abdae196b7dc01ce4ce

これも現在香港で大ヒット公開中『年少日記』

C7397781d8e04c00b8c238fc1dbd0215 

現在の香港映画を製作面からも背負って立つ古天樂主演の『バイタル・サイン』。共演はアンジェラ・ユン。
監督のヴィンシー・チェクはかつて芝see菇biという名前でDJや舞台でも活動していたマルチクリエイター。 

476d7a5171b64f7ba3cf709131b039f4

9646aaa8cadd4332ac30f12c3e4db5bb

4年ぶりのTIFF。2021年に会場を日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区に完全移転し、大きなホールからミニシアターまで揃うエンターテインメントの一大拠点のような場所で開催されるのは実に有難いこと。今年は日程が元に戻った東京フィルメックスが一貫して有楽町で開催されているし、国際映画祭の場所としてはこれまでの六本木よりもずっとこちらの方が適していると思っていた。私的なことを言えば実家から乗り換えなし約1時間くらいで来られるし、終映後すぐ有楽町駅から東京駅で新幹線に飛び乗ることもできるし、食事にも困らない。

5497af3e4c7944fc8a1f8aba8fc9a50e 

しかし、メイン会場の東京ミッドタウン日比谷には全く足を運べず、結局行けたのは最終日の上映前。
せっかく立派なシネコンがあるのに、スクリーンは2つしか使われてないとのことで、なんだかもったいなく感じた。六本木では全スクリーンを使っていたのに…。全スクリーン使ってもいいのよと映画祭側にはアンケートに書いて送っておいた。

本当に久しぶりの映画祭(及び東京)だったこともあって、観客も若い人が増えてきて、外国人も目につくようになった。中華電影だと華人観客が多いのはもちろんだが、欧米系観客もちらほらと見かけた。そんな観客層の変化もあってか、以前よりもっと気になるようになったのは上映中のスマートフォンの点灯だった。上映開始後入ってくる観客はほとんどスマホで座席を探していたし、ある映画の本編終了後は両隣の客がエンドクレジットでスマホを見ていたのにイライラさせられた。これは通常上映でもやられているが、一般観客入場可ではあっても国際映画祭は国際映画祭。これはしっかりとしたアナウンスで周知徹底してほしい。以前から要望があった上映前の英語アナウンスは録音で流されるようになったというけど、中国語や韓国語のアナウンスも作品によってでいいのであるといいのかも。

83a5282ff7b04c1ea8c80ef94eff993e

今年はTIFFの後に開催された香港映画祭2023 香港映画の新しい力 Making Wavesにも参加。
先行して一般上映された『毒舌弁護人』を含めて4作品鑑賞したので、こちらは次回の記事で。

| |

【東京国際映画祭2023】雪豹/ムービー・エンペラー/ミス・シャンプー

実に4年ぶりに参加した今年の東京国際映画祭

今年はトニー・レオンのマスタークラスが開催されたのだけど、残念ながら日程が合わずに断念。
ワールド・フォーカスではアジアン・シネラマ-香港フォーカス(上記のトニーのイベントもこの一環)台湾映画ルネッサンス2023と香港&台湾映画の特集でかなり充実していたのだが、日程と相談した結果、5作品(チベット、中国、台湾×2、香港)を鑑賞。
ここではまず3作品の感想を。

『雪豹』2023/中国・チベット

F38be7fed3a049edb29bdf6349afa7ef

 

中国で国家一級保護動物(=天然記念物)に指定されている雪豹が、チベットのある家畜業者の家の羊を襲って殺した。
一家の兄(ジンパ)は怒って雪豹を殺すと息巻くが、役人が到着するまで羊の柵に留まる雪豹を追い出せない。僧である弟(ツェテン・タシ)は「雪豹法師」とあだ名がつくほど雪豹を愛していて、当然兄とは対立する立場にある。弟の伝手でこの事件を取材しにやってきた県のTVクルーと役人も加わって騒動は堂々巡りに。雪豹を憎む者、愛して守りたい者、それを客観的に見る者それぞれの視点から物語が語られる。

これを観て真っ先に思い出したのが、現在全国各地で起こっている熊害。地元でも死者が出るほど深刻な問題になっているが、動物愛護の観点から殺すなというクレームも入り、なおかつ相手は凶暴でいつどこで出てくるか予想もつかないので、多方面で対応に苦慮している状況はよくわかる。もちろんこの物語の状況と完全に一致できるような状況ではないけど、人間の営みと自然の驚異が隣り合わせになっている現代社会のバランスの危うさを考えると、どの国にも同じような課題があるのかもしれない。

チベット族として初めて北京電影学院で映画を学び、チベット人によるチベット映画を確立させたペマツェテン監督は、自らが暮らすチベットを辺境のエキゾチックな地として捉えることなく、その地の人々の生き様を普遍的な視点で描いてきた。しかもシリアスになりずぎず、ユーモアも適度に交えてくるのもよい。今年53歳で亡くなったのは非常に残念だが、この映画の他にまだ多くの未発表作があり、息子さんやスタッフたちがその意志を引き継いで世に出してくれるだろうから、これから登場する新作にも期待する。
そして日本ではまだ『羊飼いと風船』のみの一般公開なので、今年の東京グランプリ受賞をよい機会に、東京フィルメックスで上映された過去作『オールド・ドッグ』 『タルロ』 『轢き殺された羊』なども合わせて作品が日本で公開されることを望んている(自分も先の2本が未見なもので)

(追記)フィルメックスの神谷ディレクターがインタビューで来年1月下旬から2月上旬にかけて、ヒューマントラストシネマ有楽町にてペマツェテン監督作品の特集上映を行うと答えているので、これがなんとか全国上映に結び付いてくれないかと期待している。

B43424d1198a4fc1800653d2f4df93fc

Q&Aにはジンパ(左)、TV局の若手クルーを演じた熊梓淇(ション・ズーチー)雪豹法師役のツェテン・タシが参加。

C206f6eb1ff349c9a8daeeac89684ab9

『ムービー・エンペラー』 2023/中国

893e08f234e5407d8edc31e67e11b775

今やもうベテランな、香港映画界を代表する俳優にしてプロデューサーのアンディが、かつてプロデュースした『クレイジー・ストーン』などのコメディを作り続けてきた中国の寧浩(ニン・ハオ)監督と今度は主演俳優としてコンビを組んだ「スターはつらいよ」物語。
近年の中国映画の勢いと政治的状況を見ると、どうしても中国映画に対して抵抗感を持ってしまうのだが、とりあえずその気持ちを横に置いて観ると、デリケートな部分をうまく避けて作られた良質のコメディであった。未知の仕事に悪戦苦闘する往年のスターの物語としてスタンダードなプロットだし、SNSでの炎上等アップトゥデイトなトピックもしっかり盛り込んでいて、自らの非をわかっていながらなかなか謝れない様などについつい笑ってしまう。

香港の大スターでありながら無冠の帝王、私生活でも崖っぷちな主人公ダニーが、中国の若手監督のインディペンデント映画に出演して映画祭出品の野心を抱くも、思う通りに事は進まず…。アンディ本人と重ねてみるときっとファンは怒るのかもしれないけど、中国映画の撮影あるあるを多分に盛り込み、40年に渡る彼のキャリアを基に、本人もきっとノリノリでスタッフにアイディアをたくさん提案して楽しんで作っていただろうことが伺える。さんざんな目にあってもその態度や行動を貶すこともないし、ちゃんと愛をもって主人公を描いている。
『クレイジー…』の感想を読み直すと「中国映画に洗練という語はない」などとかなりひどいことを言っているが、あれから16年も経てばそれは大きく変わるものである。海より深く反省せざるを得ない。

『ミス・シャンプー』2023/台湾

Ac9b3e6b084c48f6bbf1468028ee70c7

前作の『赤い糸 輪廻のひみつ(月老)』の日本公開を前にして上映されたギデンズ監督第4作は、「すいません、おかゆいところはありませんか?(請問,還有哪裡需要加強)」という原題が示す通り、美容室を舞台にしたラブコメディ。ここしばらくホラーテイストの作品が続いていたので、いろんな意味で原点に帰った感も覚えた。特に下ネタ方面で(笑)

組の頭をタイ人刺客に殺され、自らも命を狙われるヤクザのタイ(台湾のアーティスト、春風ことダニエル・ホン)が逃げ込んだ美容院で残業していた美容師見習のフェン(ビビアン・ソン)に一目ぼれ。シャンプーが得意だが絶望的もとい独創的なカットセンスの持ち主で、楽天モンキーズの野球選手鄭旭翔を熱烈に推すフェン会いたさにタイは美容院に通い、フェンも彼にひかれていく。
黙っていればなかなかハードボイルド感を持ってるタイが、フェンに出会ってとんでもないカットをされて恋に落ちてからの壊れっぷりがおかしく楽しい。男らしさの極致みたいなヤクザ稼業で女性関係も場数を踏んできたはずなのに、一気に高校生男子レベルまで幼稚化もとい純情化してしまうのが笑える。そうなると当然下ネタも過剰となるので、久々に「いやーホント男ってバカだよねー」と言いながら楽しく観られたのは言うまでもない。『あの頃』と比べると二人はお互い大人なので、ヤる前は下ネタ満々でも事は(もちろん)あっさり省略して描かれるので実にすがすがしい。タイの舎弟のひとりにはお馴染みクー・チェンドン、その他脇のキャストもかなり楽しい。そして近年のポストクレジット(エンドタイトルの後に映画が続くあのシステム)を意識したようなエンドタイトルの仕掛けには大爆笑。台湾や香港ではエンドタイトル時にさっさと場内が明るくなって追い出しを催促されることが多いのだが、台湾上映時に最後まで観た人ってどれくらいいるのだろうか…

(続く。次回は『Old Fox』『白日の下』の感想をUP)

| |

【ZINE新作】『台カルZINE Vol.2』ほか

岩手と台湾をカルチャーで結び、台湾カルチャーを深掘りする楽しみを伝える目的で2021年に結成された台湾カルチャー研究会のZINE「台カルZINE」の最新号が発行され、盛岡市内の各ブックイベントで販売しました。

【新刊】台カルZINE Vol.2 特集:NO MUSIC,NO TAIWAN(台湾カルチャー研究会)

Cc1f6c1e37c344b690278bd294ca3e19  

1号が映画なら2号は音楽!という理由での音楽特集。とはいえ台湾音楽も実に幅広く、すべてを網羅することは不可能なので、メンバー3人の偏愛音楽エッセイを中心に構成。日本でも放映された2000年代の台湾ドラマを彩ったテーマソング集があれば、台湾での村上春樹の受容を追っていたら出会った文青ポップスもあり。私はかつてこのblogでも書いてきたジェイ五月天の日本ライヴレポートのダイジェスト版と、自分が初めて触れた1990年代前半の台湾ポップスの思い出について書き下ろしました。
また、このZINEで紹介した曲を中心にしたプレイリストもspotifyでつくりました。よろしければ聴いてみてください。

 

【新刊】『このまちで えいがをみること』書局やさぐれ

A54a72288a014c26b4aab27c7940d45a

表紙はこの4月に営業を終了した、岩手県盛岡市の映画館通りにあるニッカツゴールデンビル。
かつては日活の映画館が入っていたビルで、日活撤退後も長年映画館が入っていました。
このビル自体の営業終了により映画館が閉館したことがきっかけで作ったZINEです。

11年前に香港映画の、5年前に台湾映画のZINEをそれぞれ作ってきたので、3冊目の映画ZINEはそれ以外…となるはずなのだけど、それでもここで紹介するのは、ええ、それでも入っているのですよ、香港映画+αが(^_^;)。
このZINEでは、自分が昨年観て気に入ったり気になった映画を洋邦各5作品、映画館で観た旧作5作品、そして今年上半期観た映画5作品のTwitterで書いてきた感想に加筆してまとめた感想集なのですが、このblog的な作品として『レイジング・ファイア』『時代革命』『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』そして王家衛4K作品集について取り上げております。ここで書いた長文感想のダイジェスト的にシンプルにまとめました。
長年映画好きやっておりますが、もうすでに香港映画も分かちがたく、香港・台湾映画を除いて映画の感想をまとめることって自分にとっては結構厳しいのだと改めて思いました。なお、いろいろな人に読んでもらえることを目的に作りましたので、毒は控えめです。

この新刊2作を引っ提げてまず参加したのが、6月18日(日)に岩手教育会館で開催された文学フリマ岩手8
東北唯一の文学フリマです。

20ae4a3a50384e2291a5d1401754c37f

当日のブースの様子。今年は書局やさぐれと台カル研のダブルネームで参加しました。

48877b581a304d2ba403a04970bc6e07  

当日のセットリスト。既刊ZINEもまだまだ在庫あります(笑)

昨年から会場が変わったのと、出店者も一般参加者も過去最高を記録したとのことで、会場内の熱気は実に半端なかった。お隣が旅の写真集を出されていた方でお話しできたり、思わぬ出会いがあったりと忙しいながらも実りあるイベントでした。
文学フリマ岩手には初回からずっと参加していますが、実は一般でも出店でも東京は未経験。3年前の春のイベントに出店の申し込みをしたことがあるのだけどコロナ禍で中止。岩手の文フリも2年連続で中止になりました。秋は映画祭シーズンと重なるので行けないだろうけど、来年の春の東京は出店を検討しております。

その1週間後、6月25日(日)にもりおか町家物語館で開催された浜藤の酒蔵ブックマーケット2023-Summer-にも出店いたしました。

 34ae1f2116e641cc93d8773fac576273

1f08ee14321d462fbe9a9d5260dbd31a

こちらは古本市からスタートしたブックイベントで、市のアート系団体の主催です。
古本屋を経営されている方から、フリマ感覚で自宅の本を持って販売する方まで出店者は様々でZINEや読書グッズの販売のみでもOKと間口が広いイベントでいつも楽しく参加しています。
会場が住宅地にあるので来場者に子供たちも多く、今回ワンオペ故店番を手伝ってもらったOPENちゃん(写真)が人気でした。

今後のイベント参加は秋までありませんが、ZINEイベントにも出品しております。
また、新刊発行にあわせて通販も近日再開いたしますので、ご興味がありましたらよろしくお願いいたします。

そして次の新作ZINEも秋発行を目指して現在計画中。
次作は旅行記の予定です!ふふふ

 

| |

熱烈歓迎!盛岡台湾Happyフェス

このblogでもこれまでたびたび紹介してきた盛岡台湾Happy project
昨年12月から正式に協議会として組織され、これからは通年で盛岡と台湾の交流イベント事業等行っていくようです。

5aed5a1372034b6a94e37bfcdc4d9696

このプロジェクトのメインイベントであり、今年で3回めとなる盛岡台湾Happyフェスは1月28日と29日に開催されました。

B4df7447d5cc44e9a14b9eb076f339ec

大都市圏で行われるような台湾祭や台湾フェスのような大規模イベントではなく、地元の事業者による出店とトークで構成されるのはいつも通り。今年は盛岡と友好都市である花蓮から、花蓮縣政府青年發展中心が参加してパネル展示と物販を行いました。3回目にして初めて台湾からの参加!

C91a330c90084a37827a93083e3dcad5

2bc4e9050b844d06b2a5ca9c5ffc7c17

今回は物販が大人気。毎年恒例の東家特製盛岡台湾弁当は2日とも即完売。
(私も買えなかったので友人が購入した弁当を撮影しました)

0ba8a3e5cb0840a9a7deaf9c530627db

9fb889b903ad4e959e50f1cf40e1bd3a

今年は魯肉飯と蒸し魚がメイン。

169128bb809c44c7a791579c551fbcef
こちらはパイカ(軟骨)の豆鼓煮込み弁当。市内の台湾料理店ふぉん特製。
お店は夜のみ営業ですが、市内のお弁当イベント等にも時々参加しています。

F98444340f9c44a1a903cc16bba9f9b0

「楽しみながら学ぶ盛岡台湾交流DAY」と銘打った土曜日のイベントは教育がテーマ。
今年始め話題になったニューヨークタイムス紙の「2023年に行くべき52カ所」に盛岡が(実は台北も)選出されたことを受けるように、台湾の高校生に盛岡のいいところをおすすめするプランを即興で作ったり、盛岡や台湾を題材にしたクイズを作成するなどの高校生たちの取り組みが発表されていました。
その中でひときわ興味深かったのが、市内で食品業を営む方の台湾留学レポート。ご両親が台湾から日本に移住し、日本で生まれた2世の方なのですが、日本語を母語として育ったので、中国語はビジネスで使うくらいだったそうです。両親の故郷で学ぶことを長年夢見ていたそうで、2年前の秋から昨年の夏までの1年間、65歳にして悲願を叶えたとのこと。しかも留学されていたのが、私がここしばらく心の近所として通っている台南の成功大学。課題の多さ(これは誰でもいうことだけど)に加え、一人暮らしでの食生活の工夫や体力作りなど、参考にしたい話もたくさん聞けました。
私も今後仕事を首にされるか、運よく定年を迎えた後に、親に不測の事態が万が一起こらなければ、また留学したいかなと思うようになったのですよ。自分の頃と比べても留学しやすくなってきたし、実際高校でも米国より台湾への留学案内も増えてきているとのこと。
若者たちにとっても、いろいろと学べることも多いし、有意義だと思います。

060f06a32f8542309944fc8b159e1788

2日目の日曜日のイベントテーマは「ディープにデュアルトーク盛岡台湾DAY」。
盛岡出身の新渡戸稲造を始めとして、後藤新平や伊能嘉矩、三田定則など台湾統治時代に活躍した岩手県人についてや、市内の森林公園できのこアドバイザーを務めるきのこ王子さんによるきのこ話などが展開する中、私と友人たちで結成した台湾カルチャー研究会(以下台カル研)も「おいでよ、台湾映画沼 わたしたちはこうしてハマった」という題名で、台湾トークしてきました。
昨年12月、協議会に関わる友人の某氏より「台カル研で台湾映画トークやらない?」と打診があり、昨年出した台カルZINEを基に、これまであまり意識して台湾映画を観たことがない方々が多いことを想定して、現在観られる映画を中心に紹介しました。
キーワードとしては青春映画、台湾ニューシネマ、LGBTQ+、ホラー、社会と歴史、そしてリメイクなど。個別の作品では『幸福路のチー』『あの頃、君を追いかけた』『1秒先の彼女』を紹介しました。
あわせて、配信で観られる作品もリーフレットにまとめました。(写真の右下に写ってます)

94296de74b764962b60d82e1a1b8742a

私自身は、4年前の『藍色夏恋』上映会でトークは経験済みなのですが、あの時はほぼ準備してなかったのでいろいろ大変だったっけ…なんて思い出していましたが、その時よりスペースはオープンだしどんな人が聞いてくれるかわからなかったし、退かれたらどうしよう…などとオタク的ないらぬ心配までしてしまいましたが、メンバー3人の好きなことをあれこれ話せて本当に良かったです。聞いてくださった皆様、本当にありがとうございました。

今年は『藍色』や『あの頃』を始め『海角七号』『KANO』など21世紀に入ってからの傑作台湾映画の配給権が次々と切れていくそうで、国内で上映される作品が少なくなるのが残念ですが、それでも今後様々な台湾映画が広く観られて、観光やグルメと共に台湾を知るきっかけになってほしいと思うのでした。
今年は何か上映会が企画できるといいなあ。

F8136a0028dd4a0598ebba926375876b

今年はステージトークがあったのでいろいろ時間が取られ、合わせて本業の仕事等も大変で、プレウィークで行われた市内各所の展示等もじっくり見られなかったので、スタンプラリーを回るのもなかなか大変でした。
今年のデザインはこんな感じ。
De7edc527fa649a193651b92639bf394

Eee0d758ed0d4bf393fb156014555818

1e0b20f1dc344c228634b6475b5bee71

今年のコンプリ特典は昨年とちょっとデザイン違いの美麗!台湾コラボステッカーと、昨年秋に行われたボンネットバスツアーの特製ポストカード。(ちなみにこのボンネットバス、バリバリの現役です。Suicaやpasmoで乗車できます)
スタンプとスタンプカードは今月いっぱい、ポノブックスさんに設置してあります。

0b6425d665ee4a319d47eb63cce9b178 

パンデミックの始まりから3年が経ち、まだまだ感染は収まらないけど、経済や往来は元に戻していこうとしているこの頃。
定期便も観光も復活しつつあるけど、当地の国際線はまだ復活せず。まだまだ状況が厳しいのはわかるけど、今年はなんとか行けることを願うばかりだし、このフェスで台湾に興味を持ってくださった方が、気軽に地元の空港から旅立てるようになってくれたらということもあわせて願うところです。イベントも毎年ながら楽しく充実しているし、こんなに楽しいのなら台湾自体もっと楽しいのは言うまでもないですしね。

75d826e2691f454c80aeed35898e21a3

サークルとしても、もちろん個人でも、今後もこのプロジェクトには積極的に協力していきます。
何かイベントがあったらこちらでも紹介しますので、今後ともご注目をお願いしますね。

| |

新年快樂!&イベント参加のお知らせ

新年快樂 

 

萬事如意

5363d4512e8d4b14b6718e47f41b5458

4e227dc2dd4f4afeb09930e91ebdd390

あはははは(汗)
こちらの絨布揮春はHKストアで購入いたしました。

今年初の更新が旧正月になってしまいました。
香港や台湾との往来が再開しつつあるけど、行けるようになるのは当分先かな…

さて、このblogで度々取り上げてきた盛岡台湾Happyフェスが今年も開催されます。
過去2回のイベントについてはここここで書いています。

大規模イベントとは一味違う、地元の事業者さんや教育団体が集う盛台交流イベントですが、3年目の今年、ついにステージデビューとなりました!(笑)はい、台カル研のメンバー3人で台湾映画トークをします。題して「おいでよ、台湾映画沼 ~わたしたちはこうしてハマった~」

詳細はこちらをご覧ください。

 

Bd245186dc39499da885627d33ac19ad

また、フェス会場に近い盛岡市大通3丁目のブックカフェpono books & timeさんでは、期間限定で台カル研の棚を作っております。
台カルZINEや私の台湾飯フォトブックの販売や、台カル研おすすめ本の展示を行っております。

1b215e7e6d0b456cb56fa19e4da02938

地元でのイベントかつ直近のお知らせになってしまい、遠方の皆様には申し訳ありませんが、地元の皆様はぜひよろしくお願いいたします。

そして今年、ニューヨークタイムスで「今年行くべき52都市」の一つに選ばれた我が盛岡市にも、皆様是非おいで下さいませ>となぜか中華blogで謎アピールいたしますが、どうか見逃してください(笑)。

 

ともあれ、今年もよろしくお願いいたします。

| |

第7回文学フリマ岩手に出店します【ZINE新作】『台カルZINE Vol.1』ほか

バタバタしている間に前日のお知らせとなりました。申し訳ございませぬ。
前回のエントリ通り、明日6月19日(日)に岩手県産業会館(産ビル)7階大ホールで開催される第7回文学フリマ岩手書局やさぐれ&透明度として出店いたします。
当日のセットリストは画像の通り。

Photo_20220618164301

【新刊】『台カルZINE Vol.1 特集:台湾映画鑑賞指南』(発行:台湾カルチャー研究会

「台湾を深掘るともっと楽しいよ!」を合言葉に、岩手の3人の台湾好きが結成した同好会によるZINE。創刊号のテーマは台湾映画。

【新刊】『自宅台湾飯』

以前のblogエントリを元に、複数のレシピ本を参考にここ2年作り続けた台湾飯をまとめたフォトブック第2弾。
第1弾は昨年発行した『職場台湾便當』(関連記事はこちら)です。

【新刊】『日日是MAKE TEA NOT WAR』

中華色薄めですがこちらもご紹介。地元産のお茶から英国紅茶まで、全編「ああお茶うめぇ…」とだけ言って1冊まとまった(笑)エッセイ。題名が物騒ですが、一応戦争反対の思いを込めて作りました(真顔)

【既刊】『閱讀之旅2019之雙城故事』 『寶島電影院』

部数僅かですがこちらもあります。

以上の本は今後ZINEイベントやブックイベント参加時にも取り扱います。
また通販も検討しております。
ではでは、よろしくお願いいたします。
そして明日のイベント頑張ります。
(当日は台カル研メンバーも集合しますよ)

| |

台湾カルチャー研究会はじめました

Photo_20220606220901 

突然ですが、立ち上げました。略して「台カル研」

Facebookページはこちら→

6月19日(日)に岩手県産業会館(産ビル)で3年ぶりに開催される第7回文学フリマ岩手のB-27「書局やさぐれ&透明度」のブースにて、この台カル研発行のZINE「台カルZINE」第1号を頒布いたします。
詳細はまた後ほど。

そうそう、書局やさぐれとしても、現在新作のZINEを製作中です。こちらも完成しましたら後ほど紹介いたします。

| |

より以前の記事一覧