映画・テレビ

続・路~台湾エクスプレス~(+香港ネタふたつ)

前の記事の最初の方で、「グイ・ルンメイ…もとい波瑠」と書いたのだけど、まずはこの話から。

波瑠は出てきた頃から「なんかルンメイに似てるなー」と思っていたら、朝ドラのヒロインに選ばれて一気に知名度が上がりました。サバサバ感のあるルックスとアルトの声がよくて割と好きなんですが、映画よりもドラマで見る機会が多いですね。出演作で好きなのは朝ドラの『あさが来た』と『未解決の女 警視庁文書捜査官』
清潔さのあるショートカットがトレードマークで、それもあってルンメイに似ているのかと思ったりもしたのですが、今回はロングヘア。その前に主演していたドラマでミディアムにしていたようなので、そのまま伸ばしたのだろうけど、まさかショートにしなかったのは、切るとますますルンメイに似るから…とかいうのは思い込み過ぎでしょうかね、ははは。

さて、前回の記事から間をおいてしまいましたが、全話観終わっての感想は、あの話を3話で書くのはやはり無理があったということと、あそこまで恋愛推しにしなくてもいいのに、ということでした。これは前に書いたのとあまり変わりませんね。
脚本の田渕久美子さんが「確かに短いと思ったが、コロナの流行が拡大する前に撮影終われたので」というようなことをblogで言われていたけど、それはタイミングや結果であって、本当ならもっとじっくりと書いて撮ってほしかったですね。最終回に開通の遅れと無事故を目指した試験走行が描かれたけど、ここに繋がるまでの流れはもう少しあって良かったなあ。
そこを早く済ませちゃったからなのか、春香と人豪の話が妙に目につきやすかったのかもしれない。二人の再会は2話後半でも良かったし、早々とやっちゃったからか、その後の春香と繁之(大東駿介)の別れ方がうまくいってないようにも見えたし(原作ではもっと深刻であったけど、あまり引きずらずに決着つけていた感が)あと、春香はずっと人豪のことを「エリック」と言っていたけど、最後くらいは「人豪(レンハオ)」と呼んでほしかった。阿志と美青(吳玳昀。彼女も李梓誠と同じく新人)の恋は逆にじっくり観たかったんですけどね。

なんか文句ばかり言ってますが、そんな中でも良かったのが葉山さんと中野さんこと呂さんの友情と、一度は手を引いた高鐵開通の危機に戻ってきたレスター王の件。日本の高度経済成長を支えてきた葉山さんの人生は日本の20世紀後半の現代史とも重なるけど、18歳までを過ごした台湾に戻って生涯を閉じたことと、彼との決裂した友情を修復し、医師として彼を看取った呂さんの姿にはいろいろと意味が感じられてグッときた。レスターの存在には劇中でもあった「台湾の誇り」を象徴するようなところもあるし、現場へのカムバックはこれこそ土曜ドラマの醍醐味!という感じだったね。
また、エンディングの疾走する高鐵をはじめ、劇中の高鐵走行の場面はとても良くて、どこで撮ったのだろう?と思ったら、撮影スーパーバイザーには台湾の撮り鉄さんが協力していたそうで(詳細はこの記事)これは素晴らしいです。日本の鉄道ファンにも注目されるかな。

ところで自分が商社への就職活動をしなかったので、全くわからないままだったのだけど、ダイアログが英語ばかりで、前半は中国語が全く出ないのを不思議に思っていた。特に春香はあれだけ台湾に通っていたのに、あまり中国語を話さないなあと。それもそのはずで、多国籍事業ゆえ、ビジネスでは専ら英語でやりとりをしていたからこれでいいと、台鐵の建設に関わられていた方から教えてもらって納得しました。

観終わったばかりの頃は文句ぼっかり言ってましたが、NHKとしては初めての日台合作だし、これまで日中合作のドラマが多く作られてきたことを考えた時、NHKでは政治的に無理かなと思っていた『路』がこうしてドラマ化された意義は大きかったと思います。今後も続いてくれたらと思います。台北経済新聞によると、視聴率もよかったそうですし。
でも恋愛ものよりはもう少し見ごたえのあるものがいいかな。台湾ドラマ=若手俳優主演の恋愛ものor日本マンガ原作という公式が今も有効かどうかはわからないけど、近年は社会派ドラマやサスペンスが配信で紹介されているようですから。

感想は以上ですが、次の2つはいろいろと関連しつつも香港ネタになっているおまけです。ついでにつけておきます。

(おまけその1)ドラマの音楽を担当した清塚さんが手がけたネスカフェ香港のCM貼っておきます。日本のアニメスタジオが製作。



(おまけその2)NHKは日中合作ドラマが多いと書いたけど(『大地の子』など。先の台北経済新聞にあった「NHK同時間帯ドラマ歴代視聴率2位」の1位は多分これじゃないかな?)、11年位前の土曜ドラマ『遥かなる絆』では、『恋の紫煙』『レイジー・ヘイジー・クレイジー』グレゴリー・ウォンが出てたことを思い出した。
現在香港の民主運動についても積極的に発言している彼、どうかご無事で、と思ってしまうよ。

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路~台湾エクスプレス

いろいろあって、なんと今年初のblogです。
TIFFからここまでの約半年間、本当にいろいろなことがあったのですが(恒例の年度末台湾がアレのせいで潰されたことも含む)、その間は映画も観たり音楽も聴いたりしていました。なかなか長文が書けなくなってきているのはしんどいですね。
その件は近いうちに別記事で話すとして、久々の更新は今観ているドラマの話をします。以前感想を上げた、吉田修一さんの『路』が日台合作の『路~台湾エクスプレス~』としてドラマ化されました。しかも当時希望として言ってた土曜ドラマでの枠で。
とはいえ、主演は石原さとみとジョセフ・チャンではなくて、グイ・ルンメイ…もとい波瑠と、元飛輪海のアーロンですけど。(どうも自分がアーロンと聞くと、後ろにクォックとつけたくなるのを台湾ドラマファン方面には許してほしい)

 

動画は台湾公視から。NHKのプレマップそのままかな。

脚本は『篤姫』や『江』の田淵久美子さん、音楽は『コウノドリ』の清塚信也さん。連続3回で、台湾でも1時間の時差で同日放映。
現時点では2話まで放映、いよいよ来週が最終回なんですが…これ、展開がかなり速いんですよ。ただでさえ濃密な物語なのに、こんなにスピーディーでいいのか?せっかくの土ドラ枠だから、50分×6回くらいでもよかった気がしますよ。あと、原作では特に気にならず、むしろ爽やかなアクセントとして好感は持っていた春香(波瑠)と人豪(アーロン)の交流が、幾分恋愛感情強めに描かれているのはちょっとなんだかなあ感を多少抱かせてしまうんですが。いやむしろ恋愛話いらんだろとまで思ってしまってるんだが。
NHKの土ドラといえば、2000年代の『ハゲタカ』から近年の『フェイクニュース』『サギデカ』まで、良質な社会派エンターテインメントで知られるけど、こういう枠で放映しているからこそ、THSR開通までの長い道のりをむしろ丁寧に描いてくれてもよかったのよーと。まあ、原作の感想でも書きましたが、吉田さん自身はこの小説を恋愛小説として描いたということですが、まあそれでもねえ…。
恋愛といえば、湾生の葉山さん(高橋長英)と彼の旧台北高校時代の同級生中野さんこと呂さん(楊烈)との話も、葉山さんの奥さんである曜子さん(岩本多代)をめぐる学生時代の話でまとめちゃっていたので、あれ、もっといろいろあったよね?と思ったのですが。そういえば今回のドラマ化を前に読み返すようなことがなかったので、いろいろうろ覚えではありますが。
THSR建設プロジェクトのコーディネーターである安西さんはARATAこと井浦新が演じていて、商社マンにして新幹線オタク(なので交渉の場面ではかなりこだわりが強い)という割といい味付けがなされているのだけど、これからどんどん苦しんでいくんだろうなと思うとワクワ…いやそんなことを言ってはいけないか。

日本側の話はこんな風にツッコミ入れながら観てますが、原作でも一番好きだった高雄組のエピソードも思ったよりちゃんと作ってくれているので、台湾語が聞こえてくるたびにニコニコしてしまいますね。陳威志を演じる李梓誠くんは、映画やネトフリのドラマ等の出演は過去にあるけど、これが連ドラ初出演とのこと。(twiiterinstagramあり)台湾キャストではレスター・王(苗字はカタカナ表記じゃないんだ…)役の梁正群と楊烈さんがなんかどこかで見たような気がする…と思っていたら、二人とも歌手でした。梁正群さんは『靴に恋する人魚』にも出てたらしい。
そしてこの人を忘れちゃいけない、台湾のお母ちゃんまたは台湾の藤山直美ことオレたちの林美秀!


そう、『祝宴!シェフ』の!《健忘村》の!『ゴッドスピード』の!五月天のPVにも出てた林美秀!
しかも日本語まで話してくれる!いやー嬉しい嬉しい、彼女が出てくるともう頬が緩んじゃう。

そんな感じで、まだ全話通しで観てないので、こんな感想くらいしか書けませんが、来週の最終回を観て、思うところがあればまた別記事か追記でもしたいとも思います。本編中のダイアログのことについても書きたいし。

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誘拐捜査・九龍猟奇殺人事件【未公開映画の感想】

これまで観てきた2年分の映画のうち、tweetはしたけど、独立した記事が書けなかったものをまとめてUPします。
まずはタイトルの2作。2017年くらいから、WOWOWで未公開中華電影の放映も目立つようになってきたので、よく観ていました。

『誘拐捜査』


中国で実際に起こった俳優誘拐事件を基にした映画。監督は成龍さん主演の中国映画を多く手がけるディン・シェン。
香港の映画スター吾先生誘拐をめぐる警察と犯人、そして吾先生と誘拐犯との駆け引き。成龍さん出演作を手がけてる監督さんだと思うけど、ポリストレジェンドをさらにリアルに寄せたような感じだったな。実際に誘拐された俳優さんも出演し、刑事役リウ・イエの上司役で出演していた。
吾先生は香港スターだけど大陸出身であっと驚く背景を背負っているのだけど、それゆえにもしかして…という期待をさせてしまうのはあえてなのか?親友の北京在住の実業家が林雪ってのは美味しい。『ブレイドマスター』の王千源はなかなか曲者。でも本来は《健忘村》のようなコメディ演技のほうが得意分野らしい。
派手ではなく、あえてリアルさで見せたのは好感度高いし、これならシネマート系の中華祭りでやってもよかった気はするんだけど、それでやるには華が足りなかったかもしれないな。でも、ドラマとしてしっかりした作品だったので、観てて安心した。北京の元宵節の風景もいい。

『九龍猟奇殺人事件/踏血尋梅』



少女の殺人事件から見えてくる、人間の孤独と哀しみを描いた映画だった。憧れの香港で夢を叶えられず落ちていく少女と、幼い頃に事故で母親を失い、失意のまま成長した男が出会ったことで起こった悲劇は確かに猟奇的だが、お互い何かを求めていたと見ると印象が変わる。
主演はアーロンだけど、決して派手じゃないし、むしろ彼の役どころは狂言回し的。渦中の男女を演じる白只(マイケル・ニン。『宵闇真珠』にも出演)と春夏(『シェッド・スキン・パパ』のジェシー・リー)が本当に熱演で、アクションよりリアリティを求めた映画のトーンともマッチしていた。グロい場面や台詞もあるけど、それほど気持ち悪くはならなかった。TVで観たからだろうか?うーむ。
撮影にドイル兄、あとウィリアム叔父さんの名前も見たので、映像的にも見ごたえある。いい映画なんだけど、派手でもなくむしろ地味な展開なので一般公開はキツかったんだろうな。ただTLによると、WOWOW放映版は98分の短縮版で、120分のディレクターズカット版があるらしい。これも観たい。
当事者の王佳梅(ジェシー)は湖南省生まれという設定で、広東語も割とすんなりしゃべりつつ時々キッツい湖南訛りで喋るというキャラで、普通話話さないのは珍しいなと思ったのだけど、ある場面でしゃべっていたのは意味があるのかな?と思った。

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非分熟女・逆流大叔・G殺・入鐵籠【2019年春香港で観た映画】

前の記事の続編です。
ここからは香港で観た映画の感想。

《非分熟女》

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この春の大阪アジアン映画祭でプレミア上映されたこの映画、香港では4月4日からの上映でしたが、運良く優先場があったので鑑賞。
監督は初OAFFで観て好きだった『ビッグ・ブルー・レイク』のツァン・ツイシャン。
一言で言えばセックスと食とポールダンスで語るあらほー女子(シャーリーン・チョイ、以下阿Sa)の成長記といったところか。阿Saの相手役は《引爆點》などの台湾の俳優ウー・カンレンだが、個人的にはもしかして初見かも

産婦人科の看護師として仕事に邁進し、結婚はしたもののセックスレスが原因で離婚した主人公が親の病のために家(茶餐廳)に戻り、そこから次に進むという展開は『ビッグ・ブルー…』と同じだけど、今回はかなりセクシュアルな要素が多い。茶餐廳にシェフとしてやってきた男(カンレン)と恋に落ちて、かなり大胆な彼とのセックスシーンも展開するのだけど、撮り方にイヤらしさがなく上手かったので感心したし、展開的にもセックスだけが強調されなかったので好感を持った。性によって解放されていくけど、それに溺れず生き方の糧として一歩進むというのがいい。
しかしアイドルだった阿Saがこんな役どころを演じるようになるなんて…と思わずトオイメになったのは言うまでもなかったのでした。
旧友に誘われてレッスンを始めたポールダンスを踊る場面もあって、これもまたステキであった。もっとも彼女のダンスはエロティックより健康的に感じたけど。

《逆流大叔》

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昨年夏公開されて高い評価を受け、4月に実施される香港電影金像奬では、作品賞を始め10部門にノミネート。
金像奬授賞式を前にしたティーチイン付き上映@香港藝術中心古天樂電影院で鑑賞。(実はアニエス・ベー・シアターの時も含めて初めて行ったシアターでした)
『地下鉄』や『モンスターハント2』など多くの香港映画の脚本を手がけてきた作家、サニー・チャンの初監督作品で、主演はン・ジャンユー。ジャンユーはプロデュースも兼ねてます。製作は古天楽の天下一電影で、藝術中心の映像ホールの名前が昨年夏に古天樂電影院となってのこけら落とし上映作品だったとのこと。

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レイオフに揺れるネットプロバイダー会社の技師たち(ジャンユーら)とその上司が、会社の命令で端午節のドラゴンボートレースに出場。家族や恋人との間にそれぞれの事情や悩みを抱える彼らはボートの練習を経て友情を深めるが…という話。
雨傘運動の時によく歌われた「獅子山下」や、お馴染『男たちの挽歌』がネタとして上がったり(上写真のユニフォーム参照)、香港人のスピリットをコメディ仕立てて描いている映画。挽歌ネタはちょこちょこ出てくるので楽しく、これは本当に香港人男子のソウルに触れる作品なんだなと確信。

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ティーチインの模様。左が淑儀役の潘燦良さん、真ん中がサニー・チャン監督。 

ジャンユーももちろんよかったのだけど、女性みたいな名前と言われる中年男子の淑儀(当日ゲストで来た潘燦良さん。演劇畑の方で助演男優賞にノミネート)や元アスリートのウィリアム、妻の不倫に悩む上司の泰、チームを鍛える先導のドロシー(ジェニファー・ユー)などそれぞれのキャラもよかった。
音楽は年明けのJ-WAVEの香港スペシャルでも紹介された中堅バンドのRubberBand(『レクイエム・最後の銃弾』の主題歌も歌ってます)主題歌「逆流之歌」とともに金像奬では音楽賞も受賞。ラップも入る軽快な挿入歌「大叔情歌」を始め、劇伴も物語にフィットしていて感心。個人的にはかなり気に入りました。
スポーツ映画であり、人間ドラマでもあり、香港らしいサバサバさもあって終始笑って観ておりました。あー楽しかった。

しかし面白いしテーマも興味深いのに、なんで日本の映画祭はどこもこれを呼ばなかったの?福岡もTIFFもOAFFもゆうばりも一体なにやってるの?監督に「日本の映画祭でやらなかったから香港まで観に来ましたよ」って言いましたよ。ちなみにティーチインでは質問できませんでしたし、残念ながら内容もほとんど理解できませんでしたよ。・゜・(ノД`)・゜・。でもこういう機会に行けてよかったよ!

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授賞式には欠席したジャンユー。残念なので金像奬の特写フォトをば。

《G殺》

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製作は『八仙飯店之人肉饅頭』や『イップ・マン 最終章』でお馴染みハーマン・ヤウだけど、どこかしらパン・ホーチョンのテイストも感じるのは、我らがチャッピーこと、チャップマン・トーが出演しているからですか?

生首だけの娼婦の変死体、彼女を愛人にしていた悪徳刑事と、担任教師と肉体関係を持っていたその娘、刑事に関わられてしまった彼女の2人のクラスメイト。彼らの関係や行動は全てGというアルファベットの単語で繋がる。
刑事龍(チャッピー)の娘雨婷(ハンナ・チャン)はいじめられっ子、2人のクラスメイトのうち、親友のドンは自閉症でアスペルガーでゲイ、もう一人の以泰は親に捨てられた孤独なチェリストでやはりいじめられっ子。彼ら若者たちのどこか追い詰められた感じは痛々しく、対比していじめっ子たちの幼さと残酷さも強烈であった。辛いよなあ、こういうのは。
胃ガンで母を亡くした雨婷の元に来て、継母として居座った父の愛人の小梅(『ブラインド・マッサージ』『台北セブンラブ』のホアン・ルー。助演女優賞ノミネート)も最初は嫌なヤツとしか言えないのだけど、中国大陸からやってきて香港で生きてきた孤独と絶望があり、彼女の最期も合わせて全体的に皮肉が効いているのだろうけど、どこか笑い飛ばそうとするのはやはりブラックコメディなのかもしれない。

キャストで目を引いたのはやはり主演のハンナ・チャン。SPL3では可哀想な役だったけど、あの古天楽の娘役と同じ子とは思えなかった。
ワールドプレミアとなったOAFFでは橋本愛ちゃんに似ているという評判があったけど、個人的には早見あかり嬢にもちょっと似てると思いましたよ。近作はあの『カメラを止めるな!』のスタッフが香港で撮る新作で、しかも主演なので、今後の活躍が楽しみな女優さんです。

《入鐵籠》

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香港で最後に観たこの映画は、香港の実在の総合格闘家がモデルらしい。
主人公は施設育ちのジャック(エドワード・マー)と阿兎(ラム・イウシン。《九降風・烈日當空》でデビュー、『恋の紫煙』にも出ているらしい)の兄弟。格闘家の姉弟(元秋&エリック・コット)に引き取られて兄は格闘家に、弟は学校を中退してメッセンジャーをしながら地下格闘家をやっている。ある日兄がMMAのアマチュアチャンピオンと戦うことに…という話。
この時点で話は読めた感はあったのだけど、兄が負け、弟がチャンピオンと戦うことになる時、「これを兄の復讐と思ってはいけない」と言われるのが当たり前なんだけどいい。この試合の勝者は日本の修斗の選手権に出られるという設定で、ラストは、実際に修斗の全日本選手権の開催中に小田原でロケされていた様子。
ジャックの恋人リリー(ウィヨナ・ヨン)は同じ道場でグレイシー柔術を学んでいる達人というのもいいし、師母の元秋さんもカッコええ。
ベタな展開だけど、それだからこそ楽しめたし面白かった。誰も死なないし、相手役もフェアであったしね(まあ外野は騒ぐけど)

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廉政風雲 煙幕・歐洲攻略・大師兄【2019冬&春に台南と機内で観た香港映画】

今年の2月と3月の台南と香港の旅では、機内上映も合わせて久々にたくさん香港映画を観られました。
ここでは先行してTwitterやFBで書いてきた各映画の感想を加筆して2回に分けてUPいたします。

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《廉政風雲−煙幕》
インファナルアフェア三部作のアラン・マックが監督し、同じチームのフェリックス・チョンがプロデュースしています。メインとなるのは香港の汚職捜査機関・廉政公署(ICAC)。大企業の不正取引に関わり、証人として出廷要請を拒否し海外逃亡した会計士(ニック・チョン)と、彼を追う二人のICAC捜査官(ラウ・チンワン&カリーナ・ラム)が主人公。内容的には地味になるんじゃないかと思いきや、チェイスあり暗殺ありの、香港映画的な通常運行でした。
らうちん&カリーナは同僚でライバルでしかも夫婦というコンビなのだが、それって正直アリなのか?ただ、夫婦仲はあまりよろしくないのと、ニックさんを追ってオーストラリアに行くのがカリーナ、香港に残って調査するのがらうちんなので、こういう立ち位置はイマ的かもしれないなあ。
リーガル&エコノミーサスペンスなので、専門用語(それでも易しめ?)が多くてなかなか難しいけど、盗聴犯シリーズも追っていたのはマネーロンダリングやインサイダー取引なので、その辺を思い出しながら観ていた。でもクライマックスの展開は分からなくもないと思ったが、オチはそれでいいのか!と驚愕。…製作に中国の会社が入っていたので、こういう風にしないといけないのか、と少し思った次第。
キャストは前述の3人のほか、ICACの捜査責任者に安定のアレックス・フォン、らうちんの部下にカルロス・チャン、大企業から収賄を受けた政府官僚にアニタ・ユンなど。珍しく偉い役のユンれんれんは何となくキョンキョンっぽい(もちろんフィリップじゃなくて小泉さんの方ね)雰囲気をまとっていたんだが、そう思えたのは多分自分だけだろうな。

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《歐洲攻略》
トニー・レオン&ジングル・マーによるアジアのジェームズ・ボンドものまさかの13年ぶりの第3弾…なのだが、中国資本が入って製作はなんと澤東公司のレーベルBlock2(多分トニーが契約していた最後の作品)、おまけに林貴仁の名前は林在風と変更されて、実質的にはリブートものだった。
共演はクリス・ウーと唐嫣,杜鵑(擺渡人でのトニーの元恋人役)と全体的に中国寄り。林が10年前にミッションで救った華人数学者(ジョージ・ラム)が遺したプログラムを巡って、彼の遺児とCIAが対立するといった展開だったけど、なんとなくとっちらかっていてイマイチのめり込めず。林とスパイの王朝英(唐嫣)のラブロマンスは必要だったか?
でも今回はトニーズエンジェルならぬトニーズギャランツといった感じで、元秋さんを初めとしたおっちゃんおばちゃんの四大名手がいい味出していたので、そこはよかった。まあでもねえ、今さらそれをやるのか?って感じはしました。すでに設定からして香港は全然関係ないってのももちろんあるのだけど。

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《大師兄》
ド兄さんがめちゃくちゃ強いミドルスクールの先生になって、問題児揃いの生徒たちと触れ合っていく話。
学校が廃校の危機にあったり、ド兄さん演じる陳先生の過去が壮絶だったり、武闘家の悪だくみがあったりとあれこれ盛り込んでお腹いっぱい。
アクションは谷垣さんで、学校ならではのロケーションを生かした殺陣が面白かった。
谷垣さんといえば、東京ロケも敢行して監督も務めたド兄さん主演作品《肥龍過江》が今年の夏頃に香港で公開されますが、この作品とセットで日本公開されないかしらと思っております。まあその前に『イップ・マン4』が日本公開されるので、お楽しみはこれからなんですけどね。

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アリフ、ザ・プリン(セ)ス(2017/台湾)

アジアでもっともLGBTに対する理解が高いと言われる台湾。
これまで『藍色夏恋』『僕の恋、彼の秘密』『ビューティフル・クレイジー』『GF*BF』などの同性愛が背景にある2000年代以降の青春映画を観たり、アン・リー監督のヴェネチア映画祭金獅子賞受賞作『ブロークバック・マウンテン』に対する熱い支持などで、それを実感することができたが、そこから社会的な理解度の高さを推量することはなかなかできなかった。 (もっとも『GF*BF』は90年代台湾の政治状況とともに台湾初の同性結婚式挙行という実話もエピソードとして盛り込まれており、青春映画に収まらない意欲的な作品として興味深く観た) Wikipediaには中華民国におけるLGBTの権利という項があり、アジアで最もLGBTへの理解が進んだ国としてプライドパレードを始め様々なイベントや歴史がわかりやすく紹介されている。
また台湾とLGBTという検索項で上位にくる、在台日本人によるblog「にじいろ台湾」も理解の一助となる。



『アリフ、ザ・プリン(セ)ス』(台湾サイトあり)の主人公アリフは台東出身でパイワン族のトランスジェンダー。アリフは男性から女性への適合手術を受けることを目指して台北に出て、昼はヘアサロンで、夜はショーパブでドラァグクイーンたちのスタイリストを務めながら暮らしている。ルームメイトの佩貞はレズビアン、ショーパブのオーナー・シェリーは性別移行済のトランスセクシュアルであり、ドラァグクイーンの一人のクリスこと正哲はヘテロの公務員でピアノ教師の妻がいる。
アリフはクリスにひかれるが、クリスは妻に秘密がバレてしまう。シェリーは幼馴染で前科者の水道管工の呉さんを愛しているが、ガンで倒れてしまう。アリフは倒れた父から族長の後継となることを願われるが、息子として継いでほしいと頼まれる。父の気持ちはわかるけど、族長を継ぐよりも一日も早く適合手術を受けたいアリフ。
そして適合手術を控えたある日、佩貞はアリフにとんでもない申し出をする。



今年は日本でもLGBTが合言葉のようにネットやマスコミを飛び交い、TVニュースやイベントに登場する頻度が高くなったものの、まだまだ一般的認知度は低いし、身の回りでも誤解は多い。当事者からも「LGBとTは分けるべき」という声もあって、どこか複雑な印象をあたえるのだが、そもそも人間というものは複雑で多様なものではないか、と思うと、もめることも不理解もわからなくもない。この映画ではトランスジェンダーを中心に扱っているけど、かつては性同一性障害と言われ、適合手術の有無だったり異装者との違いなど、すぐ理解した、なんて言ってしまっては申し訳ない。

アリフは台東で自分の性別の違和に気づき、台北で働き出して女性への移行を始める。と言っても彼女からは詳細は語られないので、これは展開からまとめてみたが、説明されないのがいい。本来はそれでいい。
そういえば、パイワン族には女性の族長もいるので、男子のみが継ぐと言うわけではなくと台湾で先住民研究を行っている弟が話していた。確か他の先住民でも女性族長はいたことはわかっていたので、物語的な理由かな。お父さんが心情として息子として継いでもらいたかった、という感じだろうか。

ところで台湾公開時には、手術を前にしたアリフと恋人と別れた佩貞が関係を持ち、子供を作ってしまったことが両人のセクシュアリティを否定するように捉えられて議論になったようだけど、この映画がダイバーシティを狙って作られているのならば、そこは大目に見てもいいのではないかと個人的には思ったかな。ラストでアリフが帰って女性として族長となった時、彼女の実家の太麻里を訪ねた佩貞は、いずれは子供にもうひとりのお母さんとして話すのだろうしね。

昨年のTIFFで上映されたこの映画は、今年日本各地のクィア映画祭やイベントでたびたび上映され、LGBTへの関心(と誤解)が話題になったいいタイミングに観られるのはいいことであると思った。
しかし、先ごろ台湾の地方選と同時に実施された国民投票では反同性婚の動きが様々な条項を否決したというようなニュースもあり、気になったこともある。今後どうなるのだろうか。自分自身はヘテロ認識ではあるけど、地元のプライドパレードに参加したり、職場でもネガティブな文脈で話題が上がったら気を遣いながら話して誤解を解くことを試みているので、当分気を付けてみていきたいと思う。

原題(英題):阿莉芙(ALIFU THE PRINCE/SS)
監督:ワン・ユイリン 
出演:ウジョンオン・ジャイファリドゥ チャオ・イーラン ウー・ポンフェン バンブー・チェン マット・フレミング キンボ

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【お知らせ】blog更新休止について(改訂版)

ここ2,3年ほど、本業内容が変わって日常生活への負担が増加し、あわせてPC等の老朽により、web記事作成が難しい状況が続いています。自宅PC(Vista)もすでにwebが使えず、文書やPDF作成のみにしか使えなくなってしまいました。来年前半を目処に買い換える予定はあるので、2019年夏頃まで更新を休止いたします。

 

書きかけの記事も多いのですが、それは再開後改めてUPします。また、ここ1年に観た映画や読んだ本の感想はtwitterに残してあります。
今年から始めたnoteは、iPhoneで原稿を作成できるので、できる限り更新を続けます。

 

また、先の休止期間中に文学フリマ岩手が開催されたので、ZINEの新刊を製作しました。

 

 

 

 

 

今年は、先ごろ紫波町のシワキネマで『恋恋風塵』の上映会が行われ、「台湾巨匠傑作選2018」も全国で上映されていることから(東北ではフォーラム仙台で上映)キン・フーからギデンズの作品までを取り上げた台湾映画ZINE「寶島電影院」を作りました。台湾映画の上映機会が少ない地域なので、台湾映画自体を知らないという声も聞き、こんなZINEを作ってみたのでした。Twitterで告知したところ、東京のサークルや台湾映画を愛する方々から問い合わせが来てびっくりしました(汗)。ささやかなコピー誌で申し訳ありませぬ。
現在、通販を行っております。詳細はこちらの記事のリンクから御覧ください。

 

また、Cyg art galleryで開催されたART BOOK TERMINAL TOHOKU 2018に出品した台南旅行記合本版「寶島幸福茶舗+寶島浪漫的逃亡」は現在Cygのオンラインショップで取り扱われております。

 

 

 



昨年「浪漫的逃亡」を作成した時点で合本化は考えていたのですが事情によりできず、今年やっと実現しました。ABTTにも2012年の「香港電影欣賞指南」以来の出品となります。
表紙は仮フランス装にしてみました。
なお、合本化に当たって、今年の春の台南&墾丁旅行記を新たに書き下ろしました。

 

 

 

 



さらにお知らせ。10年くらい前から創作サークルで書いていた香港小説『麻煩偵探』シリーズは現在3作目まで出ておりますが、その番外編として書いた短編「仮棲まいの港 ふるさとの山」が6月に発行された文学フリマ岩手アンソロジー『イーハトーヴの夢列車 二号車』に収録されております。こちらは全国各地の文フリでも販売されます。

 

お休みしている間はこのような活動をしていたのですが、blog再開後も並行して行っていきますのでよろしくお願いいたします。
ZINE頒布(販売)等の詳細は書局やさぐれのTwitterを御覧ください。

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【覚書】これまで観た中華電影、読んだ中華関連本一覧

(5/14追記)鑑賞作追加。

(3/13追記)鑑賞作及びリンクを追加して更新。noteは更新しています。

(1/14追記)blogとは別に、短いコラムのようなものを書く場所として、noteを始めました。
期間限定か、ダブル更新かはまだ未定ですが、こちらもよろしくお願いします。

大変ご無沙汰してしまいました。生きてます。まあtwitterではほぼ毎日tweetしてるから、そっちで生存確認はできますね。SNSメインになって申し訳ありません。
本業がかなり忙しくなっているのに加え、未だにPCもvistaなので、もう更新も大変で大変で(今年中には買い替えます)。春の香港旅行記以来、映画や本の感想もかなり溜まってしまいました。それでも完成次第なんとか感想等をアップしていこうと思います。短く客観的かつ批評的な文章を目指して書きますね。
全部記事を書くまで、この覚書をblogのトップにおいておきます。

映画祭で鑑賞 した映画
『メイド・イン・ホンコン』 デジタルリマスター版

『アリフ、ザ・プリン(セ)ス』

『怪怪怪怪物!』
『超級大国民』 デジタルリマスター版
『ミスター・ロン』
『相愛相親』

『山中傳奇』デジタルリマスター版
『ジョニーは行方不明』

『天使は白をまとう』

劇場で鑑賞 した映画
『人魚姫』
『霊幻道士 こちらキョンシー退治局』
『牯嶺街少年殺人事件』デジタルリマスター版

『イップ・マン 継承』
『グレートウォール』
『おじいちゃんはデブゴン』
『コール・オブ・ヒーローズ  武勇伝』
『レイルロード・タイガー』
『草原の河』
『湾生回家』
『十年』

『スキップトレース』
『海の彼方』
『マンハント』
『52Hzのラヴソング』
『空海 KU-KAI』
『ナイルの娘』

TV録画等で鑑賞
『誘拐捜査』
『ブラッド・ウェポン』
『やがて哀しき復讐者』
『盗聴犯 狙われたブローカー』
『九龍猟奇殺人事件』
《殺破狼・貪狼》
『77回、彼氏をゆるす』

読んだ中華関係本
『台湾少女、洋裁に出会う  母とミシンの60年』鄭鴻生
『日本×香港×台湾 若者はあきらめない』SEALDs
『星空』ジミー・リャオ
『蔡英文 新時代の台湾へ』蔡英文
『ハゲタカ2.5 ハーディ』真山 仁
『13・67』陳浩基
『僕が殺した人と僕を殺した人』東山彰良

以上です。
では、頑張って記事書きます。
書き上がり次第、随時UPいたしますね。

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天使は白をまとう(2017/中国)

原題の「嘉年華」は、カーニバルという意味で、英語の音に合わせて作られた単語らしい。中華圏では映画祭のカテゴリや小売店のバーゲンなどでこの言葉をよく見かける。英題直訳である『天使は白をまとう』は、題名の華やかなイメージを想像して見始めると、思い切り裏切られる。

舞台は中国南部のリゾート地に立つモーテル。そこに2人の小学生女子を連れて、街の党幹部が宿泊した。その翌日、モーテルに捜査が入る。どうやら泊まった小学生たちが性的暴行を受けたのではないかという疑いがかけられる。捜査を担当する検事は従業員の小米に協力を要請する。
当日夜勤に入っていた小米は18歳と自称しているが、実は最近16歳になったばかり。出生地の戸籍がない黒孩子で、一人でも暮らせるようにと暖かな南部までやってきたのだ。身分証明書を作成するには多額の費用が必要。彼女は当日の監視カメラの録画で幹部と少女たちが同じ部屋にいたことを確認していたことから、それを武器に幹部をゆすり、大金をせしめようと画策する。

海水浴にはまだ早いような早春の海辺に立つ、巨大な女性の足の像。全身こそ見えないが、赤いヒールやちらりと見える白いスカートから、その像がマリリン・モンローの像であることは容易に想像できる。その像を足の間から見上げる小米の姿がファーストシーンとなるが、事件の経過とともに像も大きく変化する。この像は中国に実際に建てられたものの、すぐ取り壊されたのを地元の少女たちが悲しがっていたという実話から想を得たと、監督のヴィヴィアン・チュウがQ&Aで話していたが、無戸籍児の小米や暴行を受けた小文が持つはずだった無垢の喪失と、マリリンが不遇の正直を経てスターになり、セックスシンボルとしてゴシップに晒されながら若くして亡くなった事実を重ね合わせていたと考えられる。(マリリンについての一般的なものと地元女子たちの認識の差も興味深かったとも)

小文も小米も心身ともに傷ついていく。訳の分からない災難が自分に降りかかり、母親になじられることも理解できずに、離婚して別居した父親の元に逃げる小文。故郷を離れて流浪し、南の地で安定した生活を手に入れたいのに、理不尽な暴力にも晒される小米。暴行事件は見えざる力が働いてあっさりと終結する。重く苦い展開は、中国だけでなく世界中の女性や子どもの受難でもある。しかし、事件の影響でモーテルがなくなり、行き場をなくして売春を強要された小米にはまだ選択する道があった。それはおぞましい場所から逃げ出すこと。傷ついてばかりの人生は嫌だ、まだ戦えるはずだという表情を見せ、捨てられたバイクに白いドレス姿で跨り、取り壊されたマリリン像と並走する姿には、先の見えなさもあったけど、希望もあると感じた。
このように、かなり皮肉めいていて、いくらでも深読みもできるこの作品があっさりと中国国内で上映が認可されたというのは考えれば不思議なものだ。ヴェネチア映画祭のコンペ部門に選出され、ジャ・ジャンクーが主催する平遙国際映画祭で最優秀賞と監督賞を受賞し、さらには金馬奨でチュウ監督が監督賞を受賞など、非常に評価が高いことが、ここ数年独立系作品に対して上映許可を出してこなかった当局の背中を押したのだろうか。チュウ監督はベルリン映画祭で金熊賞を受賞した『薄氷の殺人』のプロデューサーでもあるというので、現在の中国独立系映画の中心人物として今後とも注目したい。(フィルメックスで一緒に写真も撮ってもらったので、とちょっと自慢してみる。笑)

小米を演じたのは、劇中の年齢よりさらに若い14歳で衝撃を受けた文淇小姐。「ヴィッキー・チェン」という英語名の通り、確かにヴィッキーに似ている。台湾に生まれて北京で育ち、子役として活躍しているそうだが、なぜか実年齢以上の役どころが多いらしい。今年の金馬奨では、ヤン・ヤーチェ監督の新作《血觀音》で見事に最優秀助演女優賞を受賞。台湾はもちろん香港でも活躍してほしい若手女優。オーディションで選ばれたという小文役の周美君ちゃん(撮影当時11歳)も熱演。脇は事件の捜査にあたる検事に阿部力の奥さんといえば通じるのかな?の史可、遊園地でエンジニアをしている小文の父に耿樂、モーテルのオーナーに大活躍の陳竹昇と手堅いキャストも揃っている。
#MeToo ムーブメントもあって今や世界的な問題となった女性への暴力だが、事件発覚直前に映画として世界に披露された先見の明を感じる。この手の問題に腰が上がらない日本で、これを一般公開してくれる配給会社は現れてくれるのだろうか。

原題:嘉年華
監督&脚本:ヴィヴィアン・チュウ
出演:ヴィッキー・チェン チョウ・メイジュン シー・クー カン・ルー バンブー・チェン 

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ジョニーは行方不明(2017/台湾)

大都市台北に暮らす若者たちが抱える孤独を描く映画といえば、真っ先に思い浮かぶのが、エドワード・ヤンの『恐怖分子』『台北ストーリー』であり、蔡明亮の『愛情萬歳』である。80年代後半から90年代にかけ、歴史的にも経済的にも大きな変化を遂げていく台北で、家族や恋人と分かり合えなかったり、思いの届かない片思いやひとときの情事に身を任せても満たされない人々の姿をスクリーンで観てきた。
台北ストーリーの主演俳優であるホウちゃんこと侯孝賢のスタッフだった黄煕監督のデビュー作『ジョニーは行方不明』を観てまず感じたのは、先に挙げたような、いわゆる“台湾新電影”の名手たちが描いてきた作品群であった。しかし、これらの作品には似ていても、全く同じというわけではない。21世紀を迎えた若者たちの孤独の描き方と、それへの向かい方は先の作品とは違う。



予告はこちらから。

車のガス欠により地下鉄に向かう男、同じく地下鉄で出会う青年と女が、それぞれ同じダウンタウン台北の古めのアパートに向かう。青年李立はアパートの大家の息子で、発達障害があるために家族から心配されている。このアパートに越してきたばかりの女・徐子淇はインコと共に暮らしている。そして男・張以風は大家の依頼でアパートのリノベーション工事を請け負うことになる。
心配されるのが苦手で、だけど自由気ままにいたい立くん。台中から一人で出てきて、友人や恩師の悩みに親身になって付き合う風くん。そして香港からやってきた徐さんには恋人がいるらしいが、どうもうまくいっていない。そんなことがわかった時、徐さんが新しく家に迎えたインコが逃げ出し、それと時を同じくして彼女のスマートフォンには「ジョニー、いる?」と間違い電話が次々とかかってくるようになる。

徐さん、立くん、風くんに共通するのは、形は違えど、それぞれが孤独に向き合っていることだ。だけど、彼らは孤独を悲しむことはない。立くんには家族がいるし、風くんは人助けが好きだ。彼らは孤独と向き合うことで、今の自分の状況を確認し、次にどこに向かおうかと思案しているように見える。決して行き場のない絶望ではない。それは、この三人の中で最も悩んでいる様子が伺える徐さんにも見られる。好きな仕事に就き、好きなインコと気ままに暮らしているけど、不倫の関係を精算できないし、実は香港に子どもを残してきている。だから、この台北の真ん中で足踏みして迷っているようなのだ。
そんな彼女は風くんと出会い、他愛もない話をしていく。彼らの関係は決して恋愛とはいえない。あくまでもご近所さん的に描かれる。それでも彼女には救いになっている。風くんも時折淋しげな佇まいを見せるし、彼のバックボーンも詳細には語られない。だけど、人に寄り添って助けてあげる親切心があり、それが大切であることを知っている。そんな親切が徐さんを解きほぐし、一歩前に踏み出すことを決意させてくれたのではないか。

ゆったりした街の映し方、住宅地のすぐ横を流れる川の風景、そして台北のマチナカに架かる道路。徐さんと風くんが疾走する夜の高架沿いの躍動感は、王家衛にも通ずる。TVドラマから派生しての良質な青春映画を多く産み出してきた台湾映画界だけど、そのみずみずしさを経由して、新電影時代に見られたテーマを描くとこのように深化していくのだろうか、ということも観終わって考えた。そして、孤独であることは決してネガティヴではないこと、そしてどんなに辛くても人とふれあい、親切にしていく/してもらうことがいかに大切なのかを語ってくれたと思った。
我らがルンルンことクー・ユールン、黄遠の2人も好演だし、レバノンと台湾のハーフというタレントのリマ・ジダン嬢(金馬奬最優秀新人賞受賞。恭喜!)の無国籍さを活かした伸びやかな佇まいも実にいい。大きな事件もなく、淡々としたスケッチのように物語は展開するけど、その淡々さがなんともよい味わいだった。

フィルメックスの監督Q&Aはこちらで読めます。動画もあり。

原題&英題:強尼・凱克(Missing Johnny)
監督:ホアン・シー 製作:ホウ・シャオシェン イエ・ルーフェン 音楽:リン・チャン シュー・シーユエン
出演:クー・ユールン リマ・ジダン ホアン・ユエン チャン・クオチュー

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