25年という年月は短かったのか、長かったのか。ハリウッドに行っても『レイン・オブ・アサシン』のような中華圏の作品にも出演していたし、中華圏以外でも『The Lady アウンサンスーチー』のようなドラマ、『ラストクリスマス』のようなコメディ、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズにも(シャンチーと同じMCUなのに!)出るし、TVシリーズの『スタートレック:ディスカバリー』では船長も務めている…って大活躍じゃないか、こうやってちょっと書き出してみても!最近の出演作では武闘派の図書館司書を演じた『ガンパウダー・ミルクシェイク』がよかった。あんな図書館司書を目指したい…(こらこら) とはいえ、主演作は12年ぶり。しかもミシェル、トニーと同い年。アジア人中年女性が主人公となる米国映画は今までなかったらしく、アクションスターとしてのキャリアを存分に活かして大暴れ&大ヒットというのなら確かに興味を引く。でもSFアクションがなぜオスカーにノミネートされて作品賞まで獲るのか?ええ、二度目を一緒に観た友人にもやはり言われた。なんでこれがオスカー作品賞なの?と。 でもね、公開初日に観終わった時にうっかり思ったのである。これ、もしかして作品賞いくんじゃないかな?って。
こんな感じで笑ったりブンブンと振り回されて観ていたが、エブリンとジョブの熾烈な直接対決を経て迎えた結末には、妙にしみじみとした気分になった。カオスを極めたこのマルチバースの旅でエブリンは目覚め、ジョイとも向き合う覚悟を持った。 本来の世界に戻ったことで「なーんだ、結局家族の話に収まるのか、凡庸だな」などといわれてたのを見かけたのだが、別に家族の話に収まったことにはこっちは感動してない。家族の話に収まるように見えても、実はそんなんじゃない。それぞれのバースに、それぞれのエブリンやジョイがいるが、それぞれの人生を生きている彼女たちは、やはり「今ここにいる」エブリンとジョイに集約される。それは元に戻ったのではなく、お互いにアップデートしたうえでの集約なので、決して以前と同じにはならない。そんな複雑さを抱えているから人は面白く、それぞれが小宇宙のようなものである。そんなことを感じてしみじみしたのであった。 ラストに♪This is a life free from destiny…と流れる主題歌(アカデミー賞ノミネート)がさらにまた沁みる… というわけで、クリップをどうぞ。
様々な引用とオマージュに満ちた映画だけど、クライマックスでウェイモンドがエブリンに「人生との戦い方」として授ける「親切でいてね」という言葉を聞き、これがカート・ヴォネガットの言葉だとわかり、心の中で膝を打った。 ヴォネガットは私も好きで何冊か読んでいるが、若い頃は彼の言う「愛は負けても、親切は勝つ」という言葉がどうも理解しがたかった。だけど、ジョイのような煩悶の日々を過ごして歳もエブリンに近くなり、ここまで生きてきてしまった身として、その言葉の大切さと実行しがたさは本当によくわかる。それでもマルチバースのひとつかもしれない現実に”FxxK it!"といいつつ、人に親切にすることを心がけていく。これが誰にでも大切なことなのかもしれない、とまた思い返してはしみじみするのであった… This is a life.
原題:Everything Everywhere All At Once 製作&監督&脚本:ダニエルズ(ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート)製作:ジョー&アンソニー・ルッソ、ジョナサン・ワン他 製作総指揮:ミシェル・ヨー他 撮影:ラーキン・サイプル 編集:ポール・ロジャース 衣裳:シャーリー・クラタ 音楽:サン・ラックス 出演:ミシェル・ヨー ステファニー・スー キー・ホイ・クァン ジェームズ・ホン ジェイミー・リー・カーティス
現在日本で紹介される香港映画も、あの『十年』からたどれば、この時代を反映した若手映画人によるドキュメンタリーが多い。もちろん『乱世備忘』も『理大囲城』もオンラインでだがしっかり観ている。クラウドファンディングに参加した『憂鬱之島 Blue Island』も無事完成してこの夏東京から上映が始まるし、昨年カンヌと東京フィルメックスで特別上映されて話題を呼んだキウィ・チョウ監督の『時代革命』も上映を控えている。もちろん機会があったら劇場で観たい映画だ。 だけど、それだけじゃ寂しい。ドキュメンタリーだけではなくフィクションも観たい。もちろん『レイジング・ファイア』や『バーニング・ダウン』は面白かったけど、アクションだけじゃなくてしっかりしたドラマももっと観たい。そんなわけで、我が地元では香港が返還されて25年経った日から上映が始まっていた『花椒の味』を観に行ったのであった。
21世紀の香港アクション映画を代表する人物となり、ハリウッド進出も順調なドニー・イェンと、香港返還直前にデビューを果たし、俳優や歌手のみならず、近年は料理番組でシェフとしても活躍するニコラス・ツェーという、21世紀香港映画のアイコンである2人が主演。そして監督は『ジェネックス・コップ』『香港国際警察 NEW POLICE STORY』『レクイエム 最後の銃弾』など、このblogでも感想を書いてきた多数の作品を手掛けた“香港の爆発王”ベニー・チャン。反送中デモが起こった2019年に撮影を終え、香港及び中国で上映が始まって間もない2020年8月に58歳でこの世を去り、本作が遺作となった。
ベニーさんといえば先に挙げたような、大規模な爆発を得意としており、『WHO AM I!?』などの成龍とのコラボレーション、そして《衝鋒隊:怒火街頭》に始まる警察ものが代表作と言われるけど、デビュー作はあの『アンディ・ラウの逃避行/天若有情』だし、『新少林寺』や『コール・オブ・ヒーローズ』のような時代ものも撮れるオールラウンダー。ドニーさんとは90年代のTVシリーズでコンビを組んだとのこと。ベニーさんを語るのに欠かせない人物は成龍を始め様々いるが、やはりここでは『ジェネックスコップ』以来主演や助演で多く出演してきたニコを取り上げたい。
マーベルのえらい人が、ただのファンになっておる… というわけで、この1作だけで世界中にトニーのファンを爆発的に広げてしまったのは確かなので、できることならファイギCEOに以下のことを直訴したい。 MCUシリーズからのスピンオフとして、ウェンウーの1000年間の人生を描いた『テン・リングス The Beginning』の製作を。それも配信ドラマではなくちゃんとした映画で。これ以上注文をつけるときりがなくなるので、とりあえずこのことだけは直訴する。どうか前向きな検討を願いたい。
最近のコメント