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台カルシアター『赤い糸 輪廻のひみつ』上映会@岩手県公会堂

2021年10月に結成した台湾カルチャー研究会は、岩手県をベースに、岩手と台湾をカルチャーで結び、旅やグルメなどからもう一歩進んだ台湾を知り、カルチャーから台湾を深掘りする楽しみを広く伝えることを目的とした小さな同好会。主な活動として台カルZINEの発行、盛岡台湾Happy Fesでのプレゼン発表などを行い、24年9月に「カルチャーゴガク」岩手編を開催しました。

そして満を持して、来年から「台カルシアター」と銘打って上映会を行います。
作品は北東北初上映となる『赤い糸 輪廻のひみつ』(リンク先は当blogで書いた感想です。ややネタバレ)

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台湾の若者と交流して気づかされるのが、マンガやアニメなどの日本のポップカルチャーへの関心が非常に高いことです。日本と台湾の高校生とのオンライン交流会では、日本の生徒でもなかなか知らない新作アニメの話をする台湾の生徒に出会うことがあるとも聞きます。アニメやマンガはほぼリアルタイムで全世界配信されるので、台湾の若者はそれを楽しみ、日本に興味をもってくれます。

では、私たちからはどんな種類の台湾カルチャーにふれることができるでしょうか。近年は文学、建築、ポップスと、台湾初のカルチャーが日本の雑誌やネットメディアで紹介される機会が増え、観光やグルメだけではない台湾の多様なカルチャーに容易にアクセスできるようになりましたが、その中でも映画やドラマは、以前から日本に紹介されており、それぞれのファンも獲得しています。

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特に映画は、戒厳令が解除された1980年代後半から、すぐれた作品が作られるようになり、「台湾ニューシネマ」と呼ばれて世界中の映画祭で高い評価を受け、日本でもアート系ミニシアターで上映されてきました。ちなみに観光地として大人気の九份も、もともとは『恋恋風塵』と『悲情城市』という2本の映画がこの時代に撮影されたことから注目を浴びたことがきっかけで開発されました。
さらに90年代から現在に至るまで、民主化によりこれまで語られなかった白色テロや日本統治時代の歴史も見直され、映画としても取り上げられる一方、思春期の少年少女の恋愛や生き方を瑞々しく描いた青春映画も多く作られました。2000年代には日本のマンガを原作としたTVドラマも多く製作され、『花より男子』や『山田太郎ものがたり』がヒット。台湾での注目を受けて日本でも改めてドラマ化されたこともあります。

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そして2011年、ネット小説家として活動していたクリエーターの九把刀(ギデンズ・コー)が、1990年代から10年間に渡る自らの青春時代を基に書いた自伝的小説を原作に作った『あの頃、君を追いかけた』が台湾と香港で大ヒットします。(この映画は日本でも公開されて注目を浴び、2018年には齋藤飛鳥と山田裕貴の主演でリメイクされました)また今年大ヒットした『青春18×2 君へと続く道』は日本の藤井道人監督が手掛けていますが、両作とも劇中で『スラムダンク』など日本のマンガやゲームなどが登場することから、このように映画から台湾から日本がどう見られ、親しまれているかもわかります。

しかし、邦画やアニメ、ハリウッド大作の上映がシネコンや劇場上映の多くを占めている現在、特に地方で台湾映画が映画館で上映される機会は非常に少ないものです。稀に『青春18×2』や『KANO』のようにロードショー公開される作品はありますが、それでも地方における知名度はまだまだ低いです。リメイク版『あの頃』は齋藤飛鳥の人気で劇場公開もにぎわっていましたが、それを見て「ああ、オリジナルも面白いのに、なぜ上映されなかった…」と思ったものです。

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この『赤い糸』は2021年9月に台湾で公開されて大ヒットしたギデンズ・コー監督の第3作です。当初から日本公開を目指して主題歌の日本語セルフカバーヴァージョンが製作されましたが、日本の主要配給会社からはどこも手が挙がらなかったそうです。配信等の権利は日本でも有名な某大手映画会社が獲得したのですが、その関係で日本での配給は劇場上映のみとなってしまったとのこと。劇場公開は昨年12月から始まり、全国主要都市で上映されています。

ギデンズ・コー作品のトレードマークは、若者たちのちょっとおバカな、でもひたむきな若者たちの恋愛模様。それに加えて中華圏では縁結びの神様として知られる「月下老人」の伝説をモチーフとしているので、神様はもちろん冥界の番人や閻魔大王や悪霊も登場します。つまり、あの世とこの世を舞台にして愛と命の尊さをおバカな恋愛にのせて描いた壮大な生命讃歌がこの映画ではうたわれているのです。神様や悪霊だけでなく、犬も大活躍します。
ファンタジーであり恋愛ものでありホラーであり犬映画という、なんとも欲張りなこの映画、現在のところ日本では配信・ソフト化の権利がありません。そのため、劇場やこのような上映会でしか観ることができません。
盛岡初上陸の純愛冥界ファンタジーを、旧正月にみんなで楽しみましょう。

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台湾稀代のヒットメーカー、ギデンズ・コー監督作盛岡初上陸!
縁結びの神様〈月老(ユエラオ)〉が導く純愛冥界ファンタジー

台カルシアター『赤い糸 輪廻のひみつ』上映会
2025年1月31日(金)18:00開場 18:30上映開始
会場:岩手県公会堂26号室(岩手県盛岡市)
観賞料金1,000円
チケット予約はpeatixより
主催:台湾カルチャー研究会

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