我的中華電影ベストテン2021
2016年まで「funkin'for HONGKONG十大電影」と銘打ってその年に観た中華電影のうち、気に入ったものを10作選んでいたのですが、17年以降は映画の長文の感想がなかなか書けなくなってしまいました(twitterには感想は書いているのですけどね)
ここ2年は県外の映画祭などには行けなくなり、鑑賞本数も減少気味ですが、配信で何本か観ることができたし、地元の上映も徐々に増えてきているので、今年は題名を改めて、久々にまとめてみました。
なお題名に、Twitterで書いた感想をリンクしておきます。
これまで25年以上東北で暮らしているのに、なぜか行く機会が全くなかった山形国際ドキュメンタリー映画祭でのオンライン上映で鑑賞。これに先立って、地元では上映がなかった『乱世備忘 僕らの雨傘運動』もオンラインでやっと鑑賞。
2019年の初夏から始まった反送中デモのうち、最も大きな動きとなった11月の香港理工大学ロックダウンでのデモ参加者と警察との攻防を記録したドキュメンタリーで、スタッフは全員匿名。かつてよく散歩した尖東の歩道橋や近くを通ったことがある理大キャンパスがこの攻防の舞台になっていることには衝撃を受けたし、大学内部に閉じ込められたデモ参加者(高校生もいた)の焦りや意見のすれ違い等も緊迫感をもって観た。当時は日本のSNSでも武力行使を是としない意見をよく見かけたけど、このデモが決して暴力に訴えたものではなかったことはよくわかるし、理解が及ぶところである。
3年前の春に行ったのが結局今のところ最後になる香港だが、新しい建物や普通話の会話がやたらと耳について気になってはいた(かくいう自分も一応普通話スピーカーだが、香港では片言の広東語か英語を使って過ごしている)直後に反送中デモが始まり、それを受けて政府や中央からのさまざまな締め付けがコロナ禍に乗じて始まってしまい、現在の状況になったことに非常に驚いている。この映画も『時代革命』も、現在香港では上映できなくなってしまった。現在の香港の状況については、近日別記事でも書いておきたいのだが、暗黒の時代に入った香港でも、決して自由を死なせてはいけないし絶望してはいけないという気持ちを持っていたいものだ。
《健忘村》を除くこれまでの陳玉勳作品はいずれも映画祭上映から一般公開になっていたので、今回も金馬受賞後にOAFFで上映されるのかと思っていたら、いきなり一般上映が決まって驚いた。幼いころに出会っていたアラサーで風変わりな二人のおかしな邂逅の物語。確かに初期作の『ラブゴーゴー』に通じるところは大きいけど、原点回帰というよりも進化だよね?と全ての陳玉勳作品が好きな自分は思うのであった。ついでに《健忘村》も今ならもうちょっと評価されてもいいと思うんだけどなあ…。
アカデミー賞国際長編映画賞ノミネート、そして20年の金像奬作品賞を受賞した香港映画。だけど舞台と俳優は中国、言語は普通話。10年代後半に『十年』や『大樹は風を招く』などに賞を与えていた金像奬がなぜ中国が舞台のこの映画に賞を与えたのか、疑問であった。香港映画で俳優としてキャリアを重ねてきたデレク・ツァン監督の作品は『恋人のディスクール』のみ観ている。この前作の『ソウルメイト/七月と安生』で単独監督デビューしているのだけど、これも舞台は中国。
これまで取り上げてきたテーマは友情やいじめと、普遍的なものである。そして鮮烈。中国製作なので、あの検閲済みの龍のマークはついているし、ラストには政府によるいじめ抑止対策の、クレジットもついていたのでプロパガンダ的にも見られそうだが、ここしばらくの中国映画が持つどこか忖度めいたものは感じられないし、制限のありそうな中でしっかり自分の描きたいことを描き切っている。周冬雨とジャクソン・イーの主演2人も、痛々しいほどの熱演を見せてくれた。
デレクの次回作はあの『三体』のnetflixドラマ版だそうで、これも楽しみである。第1話を担当とのことだが、そうするとあの場面から始めるのか…>あえてなにかは書かないでおく(読んだ人はわかっていると思うけど)
↑これは公開時に劇場で掲出されていたスチール。地元の映画好きにも好評な作品でした。
それなら『七月と安生』も上映してほしかったなあ…配信で観るしかないのか。
リンクはTV版の感想で失礼します。クラウドファンディング特典のトーク付き限定配信で観たのですが、なぜか感想をtweetしていなかった…
ホウちゃんのプロデュースでTV版が先行して製作され(NHKBS1で放映された『母と私』2015年製作)その後長編劇場版として製作。独立映像制作者の黃惠偵監督が、 葬儀業を営むレズビアンの母との修復を試みるためにカメラを回して自らと母の姿を撮ったドキュメンタリー。これまでの恋人たちが語る母の姿が興味深く、やがて語られる女性の抑圧に衝撃を受ける。今でこそLGBTQ+の権利を守り、多様性を重んじる台湾でも、かつての女性の扱いはやはりどこの国とも同じようなもの。監督が母との関係や彼女の過去を振り返ることで、台湾の個人史が現代史と重なるし、そこから知ることも大きいし、いろいろと考えられる。
JAIHOの配信で鑑賞。これも台湾の現代史に考えが及ぶ映画。舞台となる年代はちょうど自分が留学していた頃であった。戒厳令解除からしばらく経っていたが、まだ国民党が実権を握っていた頃だった。TVでたまたま観た省議会中継の議員の暴れっぷりにあきれた記憶がある。そして劇中での暗殺や怪死事件が当時実際にあった複数の事件を基にしているというのに闇を感じた…
JAIHOではOAFFやTIFFで上映された作品が観られてうれしいけど、だいたい期間限定配信なので、いつも最終日ギリギリに観てしまう癖を直したいところである。
先の記事でも触れたとおり、金馬奬で長編ドキュメンタリー賞を受賞した時の傅榆監督のスピーチが大陸側で物議を醸した作品。オードリー・タンのインタビュー本『オードリー・タンの思考』でもこの映画が紹介されていた。
14年の太陽花学運に参加した学生たちの栄光(と言っていいのか)と挫折、そして彼らを追った監督自身の心情も語られ、セルフドキュメンタリー的な面もあった。学生たちがジョシュアとアグネスに面会する場面があったが、二人の現在を思ってしまって胸が痛かった。2014年からの香港と台湾が現在こうなってしまうとは。そして今後はどう変わっていくのか。
祝、ペマツェテン作品日本初公開!
フィルメックスの常連で、ソンタルジャと共にチベット映画を確立した彼の作品が地元の映画館で観られるのは実に素晴らしきこと。
中国映枠に入れてはいけない気もするけど、王家衛が過去作をプロデュースしてるし、中華圏という枠で観られる作品だから、ということで。
今年はホウちゃんの過去作品をまとめて観られたのも実に有意義だった。
元ネタのゲームは全く知りません。ゲームだから三国の英雄たちがびしばし超能力を発揮するってことですよねそうですよね。
古天樂の呂布はいい感じの貫禄でカッコえかったけど、ハンギュンの関羽…それでいいのか、セクスィー関羽…
まあそれでも日本公開の意義はあったと思う。最近日本で作られた劉備がぼやきまくる某三国志映画に比べたら百倍も千倍もいい。
そして東京と大阪の他、唯一の地方公開を果たしてくれた地元の劇場・盛岡中央劇場には大いに感謝しております(なおこの劇場で近日『レイジング・ファイア』が上映されます。中劇のニコファンの方による熱いレコメン記事をみんな見てあげて)
はい、番外です。昨年唯一このblogで感想が書けた映画だけど、番外です。
中華電影へのリスペクトが込められていてもやっぱりマーベル映画だし、久々にトニーへの愛も激しく確認できたけど、まあいろいろあるし。(そして勢い余ってこんなファンフィクションまで書いてしまったので、よろしければ読んで脱力してくださいませ)
続編製作が決定したのは嬉しいけど、次のキャストには噂されているあの人よりも四大天王クラスを出してほしいなあ。
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