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【32ndTIFF2019】『チェリー・レイン7番地』ほか観た映画の感想

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今年も映画祭の秋がやってまいりました。
まずは、先ごろ参加してきました第32回東京国際映画祭で観た映画の感想を。
今年は観たい作品が2日間にまとまっていたので、悩まずにチケットが取れました。

『チェリー・レイン7番地』

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『美少年の恋』『華の愛・遊園驚夢』(TIFF出品作)の楊凡(ヨン・ファン)監督の新作はなんとアニメーション。先ごろのヴェネチア国際映画祭ではコンペティション部門に選出され、最優秀脚本賞を獲得。1964年に台湾から香港へ移住してきた監督の自伝的要素も入っていて、60年代香港を舞台に繰り広げられる、家庭教師のバイトをする香港大学の青年(アレックス・ラム)とバイト先の女子高校生(ヴィッキー・チャオ)、そしてその母親(シルヴィア・チャン)との三角関係を描くヨン・ファンらしい耽美的な作品。

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  1967年香港の風景も空気も再現するにはもうアニメという手法を使うのしかないのだろう。広東語・普通話・上海語が入り混じるダイアログ、愛欲と自由と古今東西の名作も入り混じるムード、シルヴィアさんやヴィッキーからフルーツ・チャン監督に至るまでの豪華声優陣はとても贅沢。
質問はアニメに詳しい方々から多く発せられていた。(今年は話題を呼んだ世界のアニメ映画の一般公開も多かったし、実際にアニメーターさんが多く参加されていた様子)キャラは3Dで作って2D化するという手法を使ったらしいけど、こういうのはあまりないのだろうか?楊凡さん、「アニメはよく知らないし、アニメファンにもアート映画ファンにも観てもらえないような作品」と言われていたけど、これはなかなか面白い挑戦だと思いますよ。完成まで7年かかったとか。

そして、発掘した『美少年の恋』のプレスシートにサインを頂いたのでした。
『遊園驚夢』のパンフや《涙王子》のソフトジャケットを持参していた方もおられました。

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今見ると、なかなか感慨深いものを覚えるこのビジュアル。
彦祖ことダニエル・ウーはハリウッドで活躍中、ステことスティーブン・フォンは映画監督としても順調だし、なんといってもこの映画で初共演したすーちーと夫婦になったというのが一番大きい…。
楊凡さんにこのプレスを見せたら「おお…」と驚かれていましたよ。

『ファストフード店の住人たち』

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アジアの未来部門に出品されたこの映画は、TIFFがワールドプレミア。
主演のアーロン・クォックとミリアム・ヨンは初日のレッドカーペットとプレミア上映にはそろって参加。
2度目の上映にはアーロンとこの作品が監督デビューとなるウォン・シンファン(広東語の発音だとシンファンよりヒンファンの方が近いようですが…)がゲストで参加しました。

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24時間営業のファストフード店にたむろする訳ありの人々と、彼らの困りごとを解決すべく奔走する元投資コンサルタントのホームレス(アーロン)と彼の友人であるカラオケバーの歌手(ミリアム)の物語。このアジアの未来部門を中心にTIFFレポートを書かれている翻訳家・映画評論家の斎藤敦子さんのblog「新・シネマに包まれて」でも触れられています。

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今年一番楽しみにしていたのがこの映画。これまでTIFFでは『父子』 『プロジェクト・グーテンベルク』とアーロン主演作が上映されているけど、ゲストとしてのTIFF参加は意外にもこれが初めてとのこと。
香港では2006年からマックの24時間営業が始まったが、世界で初めてそれをやったのは日本だったという記事も着想のヒントとなったとか。深夜のファストフード店に集まる人々のささやかな連帯感は微笑ましいけど苦難を乗り越えられても貧困は希望を砕く。
最近、ヴォネガットの言う「親切は愛にも勝る」という言葉を何かにつけて思い出すのだが、転落して一文無しになった博(アーロン)が仲間の世話を焼いてはどうしようもないところまで追い込まれてしまうのにも、その言葉は重なった。あとどこか「幸福な王子」的なものも覚えたかな。
ウォン・シンファン監督は新人ではあるけど、助監督などで現場の長い方とのこと。日本でも公開された『誰がための日々』これから公開の『淪落の人』に連なる香港社会派電影系列と見てよさそう。貧困問題はいずれにもある。どうか希望が持てるような世界であってほしい。

『ひとつの太陽』

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『失魂』 『ゴッドスピード』の鐘孟宏(チョン・モンホン)監督の新作で、今年のTIFFでは唯一の台湾映画。
台湾での上映開始日と映画祭が重なったとのことで、モンホンさんの来日はなし。残念だった…。
罪を犯して逮捕される次男と、彼を拒絶する父親。そして長男は思いもよらぬ行動へ…と途中まで観ていて、これは台湾版『葛城事件』だなと思った。父と息子たちの葛藤とそこで起こる悲劇はよく似てはいるけど、ディテールやキャラの性格はもちろん違う。こちらは後半は意外な展開を見せるし、同じモチーフでも作り手が違うと全く変わる。
残酷な一方、ユーモアもあるし、過ちを犯した人間への受容も描かれている。とっ散らかっているという感想も見かけたけど、ラストには衝撃を受けてもどこか希望は少し感じる作りになっているのは受け入れやすい。


『ある妊婦の秘密の日記』

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『レイジー・ヘイジー・クレイジー』で衝撃のデビューを飾ったジョディ・ロック監督の第2作のテーマは「妊娠」。

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これもワールドプレミア上映で、フォ

 

フォトセッションでは製作のジャクリーン・リウさんや、このたび日本に拠点を移して映画製作を行う撮影のジャムくんも大集合。

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周りから過剰な期待をかけられる一方で、妊娠なんかしたくない!出来たら堕ろす!という毒づきから始まるダダ・チャン演じる香港女子の一大妊娠記。日本でも仕事を持つ者の妊娠と子育てで大きな問題があるだけに、ここまでサポートしてもらえるのはうらやましいと思った。
劇中にはルイス・チョン演じる男性の妊婦アドバイザーが登場し、主人公夫婦の周りにやたらと出没。妊娠アドバイザーは実在する職業らしいけど、男性はいないらしい(当たり前か)
面白かったのが、妊娠した妻を持つ夫たちによるパパクラブ。オヤジの会とは似て異なるし、以前ネットに回ってきて話題になっていたメキシコのウィチョル族に伝えられるアステカ法出産(出産時に妻が痛みを感じた時、夫の睾丸に結びつけたロープを引っ張ると以下かいてて痛いので略)がネタになってるのはさすがである。
パパクラブのメンバーには、これまたSNSで話題になった、平成ライダー全変身ポーズを決められる男子・豆腐くん(しかも台詞は一応全部日本語。発音不明瞭なのはまあしょうがない)がいて笑った笑った。妊婦あるあるが詰まっている作品。今回も楽しい作品で気持ちよく笑ってTIFF収めをしました。

次の映画祭は今月23日から行われる東京フィルメックス
ワタシはミディ・ジー監督の新作『ニーナ・ウー』と、いまだに「マギーの元旦那」呼ばわりしてしまうオリヴィエ・アサイヤスによるホウ・シャオシェンのドキュメンタリー『HHH』そしてそのホウちゃんとトニーが再びタッグを組んだ『フラワーズ・オブ・シャンハイ』のデジタルリマスター版を観に行きます。

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