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2019年4月

非分熟女・逆流大叔・G殺・入鐵籠【2019年春香港で観た映画】

前の記事の続編です。
ここからは香港で観た映画の感想。

《非分熟女》

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この春の大阪アジアン映画祭でプレミア上映されたこの映画、香港では4月4日からの上映でしたが、運良く優先場があったので鑑賞。
監督は初OAFFで観て好きだった『ビッグ・ブルー・レイク』のツァン・ツイシャン。
一言で言えばセックスと食とポールダンスで語るあらほー女子(シャーリーン・チョイ、以下阿Sa)の成長記といったところか。阿Saの相手役は《引爆點》などの台湾の俳優ウー・カンレンだが、個人的にはもしかして初見かも

産婦人科の看護師として仕事に邁進し、結婚はしたもののセックスレスが原因で離婚した主人公が親の病のために家(茶餐廳)に戻り、そこから次に進むという展開は『ビッグ・ブルー…』と同じだけど、今回はかなりセクシュアルな要素が多い。茶餐廳にシェフとしてやってきた男(カンレン)と恋に落ちて、かなり大胆な彼とのセックスシーンも展開するのだけど、撮り方にイヤらしさがなく上手かったので感心したし、展開的にもセックスだけが強調されなかったので好感を持った。性によって解放されていくけど、それに溺れず生き方の糧として一歩進むというのがいい。
しかしアイドルだった阿Saがこんな役どころを演じるようになるなんて…と思わずトオイメになったのは言うまでもなかったのでした。
旧友に誘われてレッスンを始めたポールダンスを踊る場面もあって、これもまたステキであった。もっとも彼女のダンスはエロティックより健康的に感じたけど。

《逆流大叔》

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昨年夏公開されて高い評価を受け、4月に実施される香港電影金像奬では、作品賞を始め10部門にノミネート。
金像奬授賞式を前にしたティーチイン付き上映@香港藝術中心古天樂電影院で鑑賞。(実はアニエス・ベー・シアターの時も含めて初めて行ったシアターでした)
『地下鉄』や『モンスターハント2』など多くの香港映画の脚本を手がけてきた作家、サニー・チャンの初監督作品で、主演はン・ジャンユー。ジャンユーはプロデュースも兼ねてます。製作は古天楽の天下一電影で、藝術中心の映像ホールの名前が昨年夏に古天樂電影院となってのこけら落とし上映作品だったとのこと。

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レイオフに揺れるネットプロバイダー会社の技師たち(ジャンユーら)とその上司が、会社の命令で端午節のドラゴンボートレースに出場。家族や恋人との間にそれぞれの事情や悩みを抱える彼らはボートの練習を経て友情を深めるが…という話。
雨傘運動の時によく歌われた「獅子山下」や、お馴染『男たちの挽歌』がネタとして上がったり(上写真のユニフォーム参照)、香港人のスピリットをコメディ仕立てて描いている映画。挽歌ネタはちょこちょこ出てくるので楽しく、これは本当に香港人男子のソウルに触れる作品なんだなと確信。

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ティーチインの模様。左が淑儀役の潘燦良さん、真ん中がサニー・チャン監督。 

ジャンユーももちろんよかったのだけど、女性みたいな名前と言われる中年男子の淑儀(当日ゲストで来た潘燦良さん。演劇畑の方で助演男優賞にノミネート)や元アスリートのウィリアム、妻の不倫に悩む上司の泰、チームを鍛える先導のドロシー(ジェニファー・ユー)などそれぞれのキャラもよかった。
音楽は年明けのJ-WAVEの香港スペシャルでも紹介された中堅バンドのRubberBand(『レクイエム・最後の銃弾』の主題歌も歌ってます)主題歌「逆流之歌」とともに金像奬では音楽賞も受賞。ラップも入る軽快な挿入歌「大叔情歌」を始め、劇伴も物語にフィットしていて感心。個人的にはかなり気に入りました。
スポーツ映画であり、人間ドラマでもあり、香港らしいサバサバさもあって終始笑って観ておりました。あー楽しかった。

しかし面白いしテーマも興味深いのに、なんで日本の映画祭はどこもこれを呼ばなかったの?福岡もTIFFもOAFFもゆうばりも一体なにやってるの?監督に「日本の映画祭でやらなかったから香港まで観に来ましたよ」って言いましたよ。ちなみにティーチインでは質問できませんでしたし、残念ながら内容もほとんど理解できませんでしたよ。・゜・(ノД`)・゜・。でもこういう機会に行けてよかったよ!

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授賞式には欠席したジャンユー。残念なので金像奬の特写フォトをば。

《G殺》

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製作は『八仙飯店之人肉饅頭』や『イップ・マン 最終章』でお馴染みハーマン・ヤウだけど、どこかしらパン・ホーチョンのテイストも感じるのは、我らがチャッピーこと、チャップマン・トーが出演しているからですか?

生首だけの娼婦の変死体、彼女を愛人にしていた悪徳刑事と、担任教師と肉体関係を持っていたその娘、刑事に関わられてしまった彼女の2人のクラスメイト。彼らの関係や行動は全てGというアルファベットの単語で繋がる。
刑事龍(チャッピー)の娘雨婷(ハンナ・チャン)はいじめられっ子、2人のクラスメイトのうち、親友のドンは自閉症でアスペルガーでゲイ、もう一人の以泰は親に捨てられた孤独なチェリストでやはりいじめられっ子。彼ら若者たちのどこか追い詰められた感じは痛々しく、対比していじめっ子たちの幼さと残酷さも強烈であった。辛いよなあ、こういうのは。
胃ガンで母を亡くした雨婷の元に来て、継母として居座った父の愛人の小梅(『ブラインド・マッサージ』『台北セブンラブ』のホアン・ルー。助演女優賞ノミネート)も最初は嫌なヤツとしか言えないのだけど、中国大陸からやってきて香港で生きてきた孤独と絶望があり、彼女の最期も合わせて全体的に皮肉が効いているのだろうけど、どこか笑い飛ばそうとするのはやはりブラックコメディなのかもしれない。

キャストで目を引いたのはやはり主演のハンナ・チャン。SPL3では可哀想な役だったけど、あの古天楽の娘役と同じ子とは思えなかった。
ワールドプレミアとなったOAFFでは橋本愛ちゃんに似ているという評判があったけど、個人的には早見あかり嬢にもちょっと似てると思いましたよ。近作はあの『カメラを止めるな!』のスタッフが香港で撮る新作で、しかも主演なので、今後の活躍が楽しみな女優さんです。

《入鐵籠》

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香港で最後に観たこの映画は、香港の実在の総合格闘家がモデルらしい。
主人公は施設育ちのジャック(エドワード・マー)と阿兎(ラム・イウシン。《九降風・烈日當空》でデビュー、『恋の紫煙』にも出ているらしい)の兄弟。格闘家の姉弟(元秋&エリック・コット)に引き取られて兄は格闘家に、弟は学校を中退してメッセンジャーをしながら地下格闘家をやっている。ある日兄がMMAのアマチュアチャンピオンと戦うことに…という話。
この時点で話は読めた感はあったのだけど、兄が負け、弟がチャンピオンと戦うことになる時、「これを兄の復讐と思ってはいけない」と言われるのが当たり前なんだけどいい。この試合の勝者は日本の修斗の選手権に出られるという設定で、ラストは、実際に修斗の全日本選手権の開催中に小田原でロケされていた様子。
ジャックの恋人リリー(ウィヨナ・ヨン)は同じ道場でグレイシー柔術を学んでいる達人というのもいいし、師母の元秋さんもカッコええ。
ベタな展開だけど、それだからこそ楽しめたし面白かった。誰も死なないし、相手役もフェアであったしね(まあ外野は騒ぐけど)

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廉政風雲 煙幕・歐洲攻略・大師兄【2019冬&春に台南と機内で観た香港映画】

今年の2月と3月の台南と香港の旅では、機内上映も合わせて久々にたくさん香港映画を観られました。
ここでは先行してTwitterやFBで書いてきた各映画の感想を加筆して2回に分けてUPいたします。

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《廉政風雲−煙幕》
インファナルアフェア三部作のアラン・マックが監督し、同じチームのフェリックス・チョンがプロデュースしています。メインとなるのは香港の汚職捜査機関・廉政公署(ICAC)。大企業の不正取引に関わり、証人として出廷要請を拒否し海外逃亡した会計士(ニック・チョン)と、彼を追う二人のICAC捜査官(ラウ・チンワン&カリーナ・ラム)が主人公。内容的には地味になるんじゃないかと思いきや、チェイスあり暗殺ありの、香港映画的な通常運行でした。
らうちん&カリーナは同僚でライバルでしかも夫婦というコンビなのだが、それって正直アリなのか?ただ、夫婦仲はあまりよろしくないのと、ニックさんを追ってオーストラリアに行くのがカリーナ、香港に残って調査するのがらうちんなので、こういう立ち位置はイマ的かもしれないなあ。
リーガル&エコノミーサスペンスなので、専門用語(それでも易しめ?)が多くてなかなか難しいけど、盗聴犯シリーズも追っていたのはマネーロンダリングやインサイダー取引なので、その辺を思い出しながら観ていた。でもクライマックスの展開は分からなくもないと思ったが、オチはそれでいいのか!と驚愕。…製作に中国の会社が入っていたので、こういう風にしないといけないのか、と少し思った次第。
キャストは前述の3人のほか、ICACの捜査責任者に安定のアレックス・フォン、らうちんの部下にカルロス・チャン、大企業から収賄を受けた政府官僚にアニタ・ユンなど。珍しく偉い役のユンれんれんは何となくキョンキョンっぽい(もちろんフィリップじゃなくて小泉さんの方ね)雰囲気をまとっていたんだが、そう思えたのは多分自分だけだろうな。

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《歐洲攻略》
トニー・レオン&ジングル・マーによるアジアのジェームズ・ボンドものまさかの13年ぶりの第3弾…なのだが、中国資本が入って製作はなんと澤東公司のレーベルBlock2(多分トニーが契約していた最後の作品)、おまけに林貴仁の名前は林在風と変更されて、実質的にはリブートものだった。
共演はクリス・ウーと唐嫣,杜鵑(擺渡人でのトニーの元恋人役)と全体的に中国寄り。林が10年前にミッションで救った華人数学者(ジョージ・ラム)が遺したプログラムを巡って、彼の遺児とCIAが対立するといった展開だったけど、なんとなくとっちらかっていてイマイチのめり込めず。林とスパイの王朝英(唐嫣)のラブロマンスは必要だったか?
でも今回はトニーズエンジェルならぬトニーズギャランツといった感じで、元秋さんを初めとしたおっちゃんおばちゃんの四大名手がいい味出していたので、そこはよかった。まあでもねえ、今さらそれをやるのか?って感じはしました。すでに設定からして香港は全然関係ないってのももちろんあるのだけど。

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《大師兄》
ド兄さんがめちゃくちゃ強いミドルスクールの先生になって、問題児揃いの生徒たちと触れ合っていく話。
学校が廃校の危機にあったり、ド兄さん演じる陳先生の過去が壮絶だったり、武闘家の悪だくみがあったりとあれこれ盛り込んでお腹いっぱい。
アクションは谷垣さんで、学校ならではのロケーションを生かした殺陣が面白かった。
谷垣さんといえば、東京ロケも敢行して監督も務めたド兄さん主演作品《肥龍過江》が今年の夏頃に香港で公開されますが、この作品とセットで日本公開されないかしらと思っております。まあその前に『イップ・マン4』が日本公開されるので、お楽しみはこれからなんですけどね。

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ふたたび、香港映画は死なない。

各国の映画賞レースでも一番遅い開催となる香港電影金像奬。
今年は4月16日に第38回の授賞式が開催され、『インファナル・アフェア』三部作の脚本家として知られるフェリックス・チョン監督、チョウ・ユンファ&アーロン・クォック主演の《無雙》(TIFF上映題『プロジェクト・グーテンベルク』以下グーテンベルク)が最優秀作品賞を始め、監督賞など7冠に輝きました。受賞結果等の詳細はアジアンパラダイスさんのblogをご参照ください。

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グーテンベルクは来年、新宿武蔵野館での日本公開決定。改めて邦題もつけ直されるようです。
上映時には今回の受賞結果が宣伝に使われるのでしょう。

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今年の大阪アジアン映画祭で観客賞を受賞し、現在香港で上映中の『みじめな人』はアンソニー・ウォンの主演男優賞、クリセル・コンサンジの新人俳優賞、オリヴァー・チャンの新人監督賞と3部門受賞。
これは観られなかったので、日本公開希望。

今年の授賞式は、意外にも追悼コーナーから開幕。金庸、レイモンド・チョウ、リンゴ・ラム、西城秀樹(!いや出演作ありますしね)などこの1年に亡くなった映画人を振り返ってから、登場したのはベイビージョン・チョイ始め、『レイジー・ヘイジー・クレイジー』のフィッシュ・リウやアシーナ・クォック、『G殺』のハンナ・チャンなど、ここ数年で登場した香港映画を彩る新世代俳優たち。今年は彼らが司会を務めるという面白い構成でした。プレゼンターも、今年のテーマ「Keep Rolling」の発想の元となった日本の大ヒット作『カメラを止めるな!』の主演俳優コンビ、返還直後の香港映画界を支えたニコラス・ツェー&スティーブン・フォン&ダニエル・ウー&サム・リーのジェネックスコップ4人組、錢嘉樂&小豪兄弟、そしてアンディ・ラウ&ソン・ヘギョfrom韓国など、賑やかな面々でした。

今年のノミネートの特徴は、新人監督による香港ローカルの作品が多数ノミネートされていたこと。グーテンベルクやダンテ・ラムの『オペレーション・レッド・シー』は中国資本の入った合作ですが、障害を負い車椅子生活となった男性と彼を介護するフィリピン出身の家政婦の友情を描いた『みじめな人』、生首だけの娼婦の怪死体の発見から始まる奇妙で過激な青春ドラマの『G殺』(チャップマン・トー&ハンナ・チャン主演)リストラの危機にさらされた中年男子たちが端午節のドラゴンボートレースに人生を賭けるン・ジャンユー主演の《逆流大叔》、TIFFで上映された、男として人生を生きてきた中年トランス女性の目覚めを描く『トレイシー』(フィリップ・キョン主演、音楽は21年ぶりの香港映画参加となる『あまちゃん』『いだてん』の大友良英さん!)など、新人監督による作品が目立ちました。
(トレイシー・G殺・逆流は鑑賞済みなので、別記事で簡単な感想をUPします)
近年の金像奬の流れとして、新人監督の手がける香港ローカルの映画への高い評価があり、特に今年は新人監督の当たり年のようにも感じたので、これらの作品が多く獲ってくるのではないかと思われたのですが、結果としてみじめな人が先に書いた3部門、逆流が中堅バンドのRubberBandによる主題歌とサントラの2部門、そしてトレイシーが両助演賞(カラ・ワイ&ベン・ユエン)の2部門受賞にとどまりました。

タイムラインがざわつき始めたのは、グーテンベルクの各部門での受賞が重なり始めた頃。
日本ではすでにTIFFで上映されており、映画祭で観たファンも多かったようですが、受賞に値するほどの作品か?的なコメントを見かけるようになりました。『インファナル・アフェア』の大ヒットから監督に転身し、この10年で盗聴犯シリーズや『サイレント・ウォー』などを監督してきた(最新作は製作を手がけた《廉政風雲 煙幕》)フェリックスさんは意外にも監督としては初受賞だったのですが、製作には大陸のBONAが入った港中合作であり、ここしばらくの香港で評価された作品から比べると、明らかに大作であったので、先に上げたようなコメントが多かったのかもしれません。
私は昨年のTIFFで観られなかったので、香港でBDを購入してきました。あまり偏見を持ちたくないので、しばらく時間をおいてから鑑賞して、判断したいです。
昨年のこのnoteの記事でも書いたのですが、『十年』(16年)『大樹は風を招く』(17年)の作品賞受賞が中国大陸で報道されなかったのは、いずれも香港人監督がローカルなテーマで取り上げられ、しかも前者が雨傘運動を受けて生まれた大陸批判も込められた作品だったからでした。でもその頃から、意欲的なテーマを取り上げた新人監督の力作も増えてきましたし、これまでショーン・ユー以降の世代がなかなか出てこなかった(特に女優は大陸や台湾出身者がヒロインを務めることも多かった)俳優たちも、べビジョンや『29歳問題』のクリッシー・チャウ、『空手道』のステフィー・タンに逆流始め今年は複数の作品と賞でノミネートされたジェニファー・ユーなど、次世代の俳優たちが頭角を現してきました。
(今年の主演女優賞は中国出身のクロエ・マーヤンでしたが、主演作の『三人の夫』はニンフォマニアックな女性の性的な受難と彼女を愛して共に生きる三人の「夫」の姿が香港の過去から未来を象徴するようにも見えるフルーツ・チャンの会心作で、18キロの増量で大地の女神を思わせるような娼婦を演じて過酷なセックスシーンに取り組んだクロエの女優根性には、境界を超えて感服するしかなかったです)
このようにフルーツさんの新作も含めて、今年はローカルで香港ならではのテーマが多く目立ち、それが香港っ子や我々のような映画ファンにも支持されたのですが、その中でグーテンベルクが最多受賞したのはなぜだろうか?と授賞式の翌日からあれこれ考えました。

ウィキペディア日本語版に受賞作一覧があったので、ここしばらくの作品賞を眺めていると、「香港電影結束」と大陸ネットメディアに言われたのが『ウォーロード』(08年)の頃。ここ10年は『グランド・マスター』(14年)や『黄金時代』(15年)のような大陸を舞台にした大作も多い一方、『燃えよ!じじぃドラゴン』(11年)や『桃さんのしあわせ』(12年)など、香港を主な舞台となる佳作が作品賞を受賞していました。監督賞はツイ・ハークやアン・ホイ等ベテランが多く受賞していますが、新人や若手も賞を獲るようになり『コールド・ウォー』が作品賞を受賞した13年にはこの作品を初めて手がけた監督コンビ(と言っても映画現場ではベテランのスタッフですが)も受賞し、『大樹』の時も『十年』を手かげたジェヴォンズ・アウも含んだ監督トリオも受賞しています。

こういう流れを見ると、香港映画は十年代の初めから様々な試みをしており、15年以降は若手の作り手を集めた特集上映や政府のバックアップを得て商業作デビューを果たした監督たちが、それぞれ結果を出してきたのが今回のノミネートに現れたのではないかと考えます。その中で、2000年代からの香港映画の流れを脚本などで主流となって支えたインファナル・アフェアチームの功績を讃え、返還からの20年での大きな変化に一区切りをつけるための、グーテンベルクの受賞だったのではないか、と思えるようになりました。
作品賞の授与でBONA側のプロデューサーの普通話の長いスピーチを聞いて、「あーこれってもしかして大陸側への忖度?」などと最初は思ったのですが、「謝謝香港電影」と何度も繰り返した姿や、フェリックスさん自身がずっと香港を拠点にしてきたことを考えると、たとえ合作であって中国大陸で受け入れられたにしても、この作品はやはり香港映画であり、大陸でもその恩恵を受けてそれに報いるべく製作に情熱を注いだ映画人がいるのだから、一概に批判的に観てしまってはいけないのだろうと反省しました。
「香港映画結束」から10年。この間様々な出来事があっても、香港映画は規模こそ大きくはないものの、新しい世代が登場し、語られるテーマも多様化しました。これらの作品や若いスタッフやキャストがそのまま世界で評価されるのには、まだまだ時間はかかるかもしれません。プレゼンターのカメ止め俳優コンビが「香港映画といえば、ジャッキー・チェン?」と香港人にとってはもう遺跡みたいなもので、30年くらい変わらずに聞かされてきたことを言っていたけど、そんな認識を一気に払拭させる力作が登場することを期待します。
社会制度の変化で不満や意義も増え、古いものがなくなりつつあり、2047年はどんどん近づいてくるけど、そうであっても香港映画は死なない。それを希望と思って、これからも新作を楽しみにします。

ところで10年代前半は金像奬の中継もなぜか大陸のネットメディア経由で発信されていました。当時は回線も重く、RTHKのネットラジオ中継も併用しながら苦労して受賞結果を得た記憶もあります。しかし『十年』のノミネートに大陸メディアが反発し、中継媒体が変わって全世界対象の最新アプリ(opensky)が導入されて見やすくなって、本当にありがたいです。アジア・フィルム・アワードも同じアプリで配信されたし、日本の映画祭のコンペティションや授賞式もopenskyなどを利用して世界発信してもいいんじゃないかって思うんだけどねー。

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時間は経っても、プーアール生茶は美味い

 これは、かつて昆明に留学していた弟が買ってきてくれたプーアール茶。
雲南省の易武地区に生育している古樹から採られた七子餅茶です。

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このお茶をもらったのは2001年。それより8年前に採取されて餅にまとめられたとのことで、すでにかなり時間が経っていて飲み頃ではあったのですが、弟曰くあと8年寝かせればもっと味わいが深くなるとのことだったので、もらってすぐ飲むようなことはなく、ボール紙の空き箱に入れて長らく暗所に保存していました。
ーそしてしばらくその存在を忘れ(でも引越し時にはちゃんと持っていった)、8年どころか18年の時が過ぎました。
今年の2月の台南旅行で、恒例の姉弟ミーティングをした際、再び弟がプーアール餅茶をくれました。
今度はシーサンパンナ産のプーアール生茶。もちろん、昔もらった七子餅茶と同じ大きさ。
これをもらってやっと易武古茶の存在を思い出したので、そろそろ飲まなきゃな、とやっと決意。でも長期間の保存だったので、もし傷んでいたりカビが生えていたらどうしようか、と判断に迷ったので、毎月恒例の中国茶会で、我がお茶の師匠である焙茶工房しゃおしゃん店主のしゃおしゃんさんに状態を見てもらうことにしました。
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餅にはカビなど特に目立つ変化はなし。ただトータル26年もののため、プーアール茶独特のカビ臭く感じる香りが強めだったので、2度の洗茶でいただきました。
おお、これぞ古茶。プーアール古茶独特の味わいがしっかり出て美味しい。
水色も濃くないので(茶葉多め、蒸らし時間長めだと黒くなるけど)青プーアール茶かな。
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そういえば、初めて青プーアールの古茶をいただいたのも、しゃおしゃんさんのお茶講座からでした。
もともとプーアール茶好きでしたが、講座では黒くて濃くて独自の匂いを持つもの黒プーアールだけではないということを教えてもらいました。当時ハマった千年古茶青プーアールも今では希少価値のお茶になってしまいましたが、この易武古茶を飲んで、千年古茶の懐かしい味を思い出しました。
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味もしっかり出て、一度淹れると2日間くらい飲んでも薄くならないので、夏前くらいまでは適度にお湯切りしながらゆるく飲んで楽しんでいます。
餅茶の量はだいたい357g。香港や台湾の茶荘で100g単位で購入してもすぐに減る量でないことから、多分毎日飲んでも1年以上は保ちそうです。他に弟や友人からもらった台湾の高山茶やジャスミン茶もあるので、お茶のバリエーションをいろいろ楽しんで飲んでいます。

そして、先日の香港の旅にもこの古茶を持っていき、ホテルでお茶を淹れたり、タンブラーに詰めて街歩きの水分補給で飲んでいました。
蓮香居や添好運にも行って、当然のごとく飲茶のお供には黒プーアールを注文したのですが、同じプーアールでもやっぱりあの古茶とは味わいが違うわー、と改めて思ったのでした。

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【予告】春から夏にかけての計画

 なんと今年初めてのblog投稿となりました。皆さま覚えておりますか(^_^;)
昨年は年度始めからかなり多忙となり、春の台南旅行記も予告だけのUPで大変失礼いたしました。
本業が多忙になったのと共に、vistaだった自宅PCのサポート終了でネットサーフィンができなくなり、職場に持って行ってるノートPCで少し更新はしていたのですが、それも限界があって昨年末からしばし更新を休んでおりました。
この春のココログの仕様変更で、タブレットでの入力が楽にできるようになったので、テストも兼ねて近況や今後の計画などを紹介していきます。

昨年春から先月にかけては、台南には昨年8月と今年2月の2回足を運び、先月は2年ぶりに香港にも行けました。
2年前は香港国際映画祭開催前だったので映画もあまり観られなかったのですが、今回は大阪アジアン映画祭で上映された《非分熟女》と《G殺》、作品賞始め金像奬に多数ノミネートされている昨年夏のヒット作《逆流大叔》、香港の実在の総合格闘家をモデルにした格闘技映画《入鐡籠》と4本観ました。行きの機内ではトニーの《歐洲攻略》とドニーさんの教師もの《大師兄》も観られたので満足満足。
これらの作品の感想はTwitterやFBにも書いているので、こちらにも先に書いたものをまとめて載せていく予定です。作成時間も取れないので、1作品1記事ではなくて、複数の作品をまとめて1つの記事でUPしていきます。その他、旅の覚え書きのようなものも記事にしていくつもり。
その他、Twitterのハッシュタグ #春光香港2019 を検索すれば旅の断片が拾えるようになっています。

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大角咀にて。

また、昨年夏の台湾行きから、旅にテーマを設定しています。
ここ数年、昨年惜しくも亡くなられた天野健太郎さんやミステリ作家の島田荘司さんなどが長らく紹介されてきた台湾文学や華文(中華圏の文学の総称)ミステリが日本でも注目を集め、ブックコーディネーターの内沼晋太郎さんや台湾のブックカルチャーを発信しているユニットの太台本屋さんなどにより、台湾の書店も注目されるようになってきました。そしてこの秋には台湾の現代文化を網羅した誠品書店を擁する誠品生活がいよいよ日本に上陸するということで、台湾や香港のブックカルチャーをたどり、ついでに旅の間に自分の積読も消化しよう(笑) という目的で題して「閱讀之旅」を始めました。
このテーマ旅のことは、今年の6月に盛岡市で実施される第4回文学フリマ岩手に冊子で頒布を予定していますが、blogの原稿との並行作成が大変なこともあるので、大変申し訳ありませんがnoteの方で作って投げ銭式のマガジンで発表いたします。
いつもはblogでジャーナルを綴っていましたが、日記形式で改めて綴るのが難しくなっていることと、本をめぐる旅なのでやはり本の形にこだわりたいので、以上のような発表に踏み切りました。ご迷惑をおかけします。でもその分、最後まで楽しく読んでもらえるように執筆していきたいです。
これから原稿を書き始めますが、だいたい5月までnoteにに全文UPできるようにします。


もちろん、こちらもしばらく放置するということはありません。
閱讀之旅の原稿から取りこぼしたネタはこちらでも書きますし、昨年の春の台南と墾丁の旅も書きかけの記事があるので、こちらで発表していきます。実は昨年『寶島浪漫的逃亡』の一部原稿を差し替えまして、墾丁での思い出を少し追加しました。そちらもページ数の関係で短いものとなってしまったので、SNSのログを見つつ思い出しながら簡潔にまとめます。
タブレット入力なのでリンクや動画も貼りにくかったりしますが、後ほどPC編集で追加できるようにします。
何よりも、ただ漠然とSNSのTLを眺めているより、少し長い文を書ければ変に悩むこともないので、これからちょこちょこと、とは言ってもまだまだ不定期更新ですが、記事を作成していきます。
そんなわけで、今後もよろしくお願いします。

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これまで何度も付近を通り過ぎていたのに、なぜか撮影していなかった油麻地の警察署。

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