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2017年12月

ジョニーは行方不明(2017/台湾)

大都市台北に暮らす若者たちが抱える孤独を描く映画といえば、真っ先に思い浮かぶのが、エドワード・ヤンの『恐怖分子』『台北ストーリー』であり、蔡明亮の『愛情萬歳』である。80年代後半から90年代にかけ、歴史的にも経済的にも大きな変化を遂げていく台北で、家族や恋人と分かり合えなかったり、思いの届かない片思いやひとときの情事に身を任せても満たされない人々の姿をスクリーンで観てきた。
台北ストーリーの主演俳優であるホウちゃんこと侯孝賢のスタッフだった黄煕監督のデビュー作『ジョニーは行方不明』を観てまず感じたのは、先に挙げたような、いわゆる“台湾新電影”の名手たちが描いてきた作品群であった。しかし、これらの作品には似ていても、全く同じというわけではない。21世紀を迎えた若者たちの孤独の描き方と、それへの向かい方は先の作品とは違う。



予告はこちらから。

車のガス欠により地下鉄に向かう男、同じく地下鉄で出会う青年と女が、それぞれ同じダウンタウン台北の古めのアパートに向かう。青年李立はアパートの大家の息子で、発達障害があるために家族から心配されている。このアパートに越してきたばかりの女・徐子淇はインコと共に暮らしている。そして男・張以風は大家の依頼でアパートのリノベーション工事を請け負うことになる。
心配されるのが苦手で、だけど自由気ままにいたい立くん。台中から一人で出てきて、友人や恩師の悩みに親身になって付き合う風くん。そして香港からやってきた徐さんには恋人がいるらしいが、どうもうまくいっていない。そんなことがわかった時、徐さんが新しく家に迎えたインコが逃げ出し、それと時を同じくして彼女のスマートフォンには「ジョニー、いる?」と間違い電話が次々とかかってくるようになる。

徐さん、立くん、風くんに共通するのは、形は違えど、それぞれが孤独に向き合っていることだ。だけど、彼らは孤独を悲しむことはない。立くんには家族がいるし、風くんは人助けが好きだ。彼らは孤独と向き合うことで、今の自分の状況を確認し、次にどこに向かおうかと思案しているように見える。決して行き場のない絶望ではない。それは、この三人の中で最も悩んでいる様子が伺える徐さんにも見られる。好きな仕事に就き、好きなインコと気ままに暮らしているけど、不倫の関係を精算できないし、実は香港に子どもを残してきている。だから、この台北の真ん中で足踏みして迷っているようなのだ。
そんな彼女は風くんと出会い、他愛もない話をしていく。彼らの関係は決して恋愛とはいえない。あくまでもご近所さん的に描かれる。それでも彼女には救いになっている。風くんも時折淋しげな佇まいを見せるし、彼のバックボーンも詳細には語られない。だけど、人に寄り添って助けてあげる親切心があり、それが大切であることを知っている。そんな親切が徐さんを解きほぐし、一歩前に踏み出すことを決意させてくれたのではないか。

ゆったりした街の映し方、住宅地のすぐ横を流れる川の風景、そして台北のマチナカに架かる道路。徐さんと風くんが疾走する夜の高架沿いの躍動感は、王家衛にも通ずる。TVドラマから派生しての良質な青春映画を多く産み出してきた台湾映画界だけど、そのみずみずしさを経由して、新電影時代に見られたテーマを描くとこのように深化していくのだろうか、ということも観終わって考えた。そして、孤独であることは決してネガティヴではないこと、そしてどんなに辛くても人とふれあい、親切にしていく/してもらうことがいかに大切なのかを語ってくれたと思った。
我らがルンルンことクー・ユールン、黄遠の2人も好演だし、レバノンと台湾のハーフというタレントのリマ・ジダン嬢(金馬奬最優秀新人賞受賞。恭喜!)の無国籍さを活かした伸びやかな佇まいも実にいい。大きな事件もなく、淡々としたスケッチのように物語は展開するけど、その淡々さがなんともよい味わいだった。

フィルメックスの監督Q&Aはこちらで読めます。動画もあり。

原題&英題:強尼・凱克(Missing Johnny)
監督:ホアン・シー 製作:ホウ・シャオシェン イエ・ルーフェン 音楽:リン・チャン シュー・シーユエン
出演:クー・ユールン リマ・ジダン ホアン・ユエン チャン・クオチュー

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霊幻道士 こちらキョンシー退治局(2017/香港)

最近、twitterでこんな気になるやり取りを見かけた。

田中泰延氏古賀史健氏は共にフォロワーも多く、インフルエンサーでもあるお二方。
特に田中氏は映画コラムの連載も持っているので、映画に造詣が深いのもわかる。
…でもさ、正直いってがっかりしちゃった、このやり取りは。
確かに映画でも旅行でも返還以前で時が止まっている人が世の中にあまりにも多すぎて、返還直後から香港に通い、全てではないけど90年代の黄金期晩期からの香港映画を観てきた身としては、それだけを言われることにムズムズしてくる。ましてやノワールとか言われても、それは何を指すの?インファ?トーさん?とツッコミたくなるし。そして取りこぼされる王家衛。
ああ、書いてて虚しいけど、オタクだからそういうところには過敏に反応しちゃいますね。悪い癖です。すんません。

そんな往年の香港コメディ映画が懐かしい、田中さんと古賀さんにもぜひ観てほしい最新作の感想を書いちゃいますよ。

 



予告はこちらから。

この春の香港旅行は、珍しく香港国際電影節の開催前という谷間のシーズンで、興味を引く映画が少なく、あと1日帰国を遅らせたら、ショーンとエリックとっつぁんの社会派映画《一念無明》が観られたのにとガッカリしてた。でもその中でヒットしていたのがこの映画。
おっ、主演は最近名前と顔をよく見かける香港映画の新たなるスター、ベイビージョン・チョイ(以下べビジョン)じゃないか!そして共演にはずいぶんお久しぶりの錢小豪!久しぶりじゃないけどリチャード・ン!そして安心のゴッドマザー、スーザン姐!…で、これ何なの?キョンシーもの?

お気づきかと思われますが、実はワタクシは、霊幻道士と幽幻道士を全スルーしたまま、ここまできた中華電影迷なのであります。ちなみにジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』もこの秋やっと初めて観ました>あまり関係ないか
中国の古代伝承や志怪小説からヒントを得たキョンシーものは、Wikipediaによると1980年前後から映画に取り上げられており、香港映画黄金期の85年に公開された『霊幻道士』がその決定版となり、台湾映画の『幽幻道士』やアイドルものの『ハッピー・キョンシー』など多くの作品が生まれた。近年では、ジュノ・マックがやはりシウホウ主演で撮った「リゴル・モルティス 死後硬直(一般公開題・キョンシー)」という、コメディ要素抜きのがっつり怖そうなオマージュ作もある、とまとめておこう。

そんないちいち調べないとキョンシーものを語れないくらいのヘタレ香港映画好きのワタシが、果たしてこれを楽しめるか否か?と心配して劇場に入ったのだが…大丈夫でした、楽しめました(^O^)

香港開闢以来、この地には常にキョンシーが跋扈していた。そのため密かにキョンシーに対抗し、発見次第駆除する秘密捜査処理班を当時の行政が設立した。それはイギリス統治と中国への返還を経た現在も続き、香港市民の安全は彼らによって保たれていた。現在の部署名は、食環處秘密行動組。英語名はVampire Cleanup Depertment、略してVCD。
これはべビジョン演じるオタク青年の張春天が、ある夜VCDとキョンシーの格闘に巻き込まれてしまったことから始まり、キョンシーと戦う宿命を背負った彼がVCDの新人メンバーとして昼は街の清掃、夜はキョンシー退治に勤しみ、これまた宿命的な恋に落ちてしまうといういろいろとてんこ盛りな物語である…。

…と物語を説明すると、よくある話ではあるんだけど、これがまたとっても楽しい。
オリジナルの道士役・林正英は既に亡くなっているけど、シリーズ出演者であるシウホウ&リチャードさんがしっかり脇を固めているので、世界観的には間違いはないんだろう。特にシウホウはさすが!と嘆息するアクションの切れ味。キャリアを重ねてもキレキレだったので、これは若い頃の作品も観なきゃかな、と。
それでも現在進行系の香港映画好きとしてはやっぱりべビジョンに注目してしまう。今年で31歳だというのに、かわいらしい英語名とそれにふさわしいベイビーフェイス、香港演藝学院を卒業後、しばらく演劇をやっていたという地元人的にはいいキャリア、日本公開作では『ドラゴン×マッハ!』や葉問3にも出演し、主役も脇役もこなす器用さ、そして既婚者!はいそこでガッカリしないように。もちろん、アクションだって難なくこなしますよ。

日本では早くも今年の夏のカリコレで上映され、出演者が重複することから「霊幻道士」シリーズ最新作と銘打たれてしまったけど、もちろんつながりはない。ユーモラス感はもちろんあるけど、春天の両親の悲劇や彼と美少女キョンシー小夏との恋、そしてどちらかといえばグロ指向のラスボスキョンシーとの闘いなどの現代的アレンジは、オールドファンにはどう観られたのか気になるところ。

劇場公開は特集上映のみで終わってしまい、地方上映もないままソフト化されてしまったのは残念だけど、これからはCSの映画専門チャンネル等で放映されるし、youtubeムービーでレンタル視聴もできるようなので、多くの方にご覧いただければ幸いです。

田中さ~ん、古賀さ~ん、もし未見だったらぜひ是非これ観てくださいねー。
今の香港映画は決してノワールばっかりじゃないんですよー!>届くことはないとわかっているけど、このサイバー空間の片隅から一応叫んでみる

原題&英題:救殭清道夫(Vampire Cleanup Depertment)
監督:ヤン・パクウィン&チウ・シンハン
出演:ベイビージョン・チョイ チン・シウホウ リチャード・ン リン・ミンチェン ロー・ベン ボンディ・チウ ユエン・チョンヤン エリック・ツァン スーザン・ショウ

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相愛相親(2017/中国・台湾)

シルヴィア・チャン監督の『相愛相親』は、監督自身が演じる主人公・岳慧英が老いた母親を看取る場面から始まる。慧英自身も定年を間近に迎えた高校教師で、自動車教習所の教官である夫と地元TV局に勤務する成人した娘を持つ身であり、ここから物語は彼女の老い支度が始まるのかと思いきや、約20年前に亡くなった彼女の父親との合葬に、田舎に住む父の墓を守る最初の妻が猛反対するという展開になる。
そのおばあちゃんから見れば、慧英は妾の子。しかも「夫に先立たれ、その後ずっと独身を貫いた妻の貞節を称える」などという碑のある村に住んでいるものだから、村人も当然おばあちゃんの味方。おまけに娘の薇薇が撮った村での様子がテレビ局の看板番組に取り上げられることになり、さらに大騒ぎに…。

予告はこちら

父親の死をめぐり、最初の妻と最後の妻の子どもが争うなどというプロットは決して珍しいものではなく、総じてスキャンダラスに描かれるものであり、かつどこか古臭く感じる。しかし、この映画ではそうならなかった。20世紀後半からの中国の人々の背負った歴史も背景に匂わせつつ、急激に発展した21世紀の地方都市を舞台に、価値観や立場の違う人々のぶつかり合いから和解に至るまでを、ユーモアを交えて温かく描いている。

生真面目で家長を自認しているからこそ、愛し合っていた父と母を一緒の墓に納めたい慧英、貧しさから若いうちに別れることになってしまったけれど、死んでもなお夫を強く愛するおばあちゃん、そして慧英に反抗して家出し、恋人の阿達と共になぜかおばあちゃんのもとに住み着いてしまう薇薇の三世代の描き方が面白い。
慧英の強引さもおばあちゃんの一途さも同じ土俵に載せられているので、人によってはおばあちゃんに同情してしまう人も少なくないだろうし、その狙いも明白である。
ここで物語に客観性を呼び込むのが慧英の夫である尹孝平。妻の尻に敷かれ、家庭でも存在感が薄い、いかにも今時らしいお父さんなのだが、暴走する慧英と母親に不満ばかりを抱く薇薇の間に入って宥める役どころも果たしている。子は鎹ではなく父が鎹と言ったところか。彼を演じるのがあの田壮壮監督。『呉清源』がきっかけで面識ができ、キャスティングも想定して脚本を書いたということだが、その試みは成功していて、いいアクセントになっている。

また、岳家のファミリーアフェアも描きながら、慧英の担任するクラスで問題を抱えている学生・盧くんとその父親で売れない俳優・盧明偉と彼女の関係、西安から北京に行く途中で街にとどまり、ライヴハウスで歌うようになった歌手の阿達と薇薇の発展しない恋愛など、脇の人間関係も興味深い。これらの筋が物語にうまくハマり、慧英とおばあちゃんがそれぞれ決意をして争いを収めようとする結末に向かう。それを思うと、Love Educationという英題からは、自分と異なる人の行動や思考から相手を理解し、考えを深めて次に進むという意味がこめられていると考えられる。
発展著しい中国の地方都市の文化や生活も見え、いろいろと考えさせられながらもポジティヴ良心的な作品。『戦狼』のようなビッグバジェットではなく、第五世代のような巨匠たちの作品ともまた違う中国映画である。一般公開する価値は十分にあるので、各配給会社さんに是非期待したい。

東京フィルメックスではオープニングフィルムとして上映。
2年前に審査員を務めたシルヴィアさんが再び有楽町にやってきました。

上映時のQ&Aはこちらから。
動画は上記の題名にリンクした作品紹介ページでも観られます。

英題:Love Education
監督:シルヴィア・チャン 脚本:シルヴィア・チャン&ヨウ・シャオイン 撮影:リー・ピンビン 音楽:ケイ・ホアン
出演:シルヴィア・チャン ティエン・チュアンチュアン ラン・ユエティン ソン・ニンフォン ウー・イェンメイ タン・ウェイウェイ カン・ルー レネ・リウ

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イップ・マン 継承(2015/香港・中国)

昨年の『ローグ・ワン』と今年初めに公開された『トリプルX:再起動』という2本のハリウッド大作に次々と出演し、香港映画ファン以外にも知られるようになってきたんじゃないかと思われる我らが宇宙最強ド兄さんことドニー・イェン。
ただ、ハリウッドに出てくれたことで説明しやすくなったのはありがたいが、主演作が地方までくることは少なく、本当に悩ましいのもまた事実。現にこっちには『捜査官X』以降の主演作は全く来ていない。ファンの中には「映画館にきても入らないから、ソフトや配信で観る」などと思っている人もいるかもしれない(そんな人いないと信じたい)が、そう思うのは本当にもったいない。と、ド兄さんの出世作となったシリーズの最新作『イップ・マン 継承』を観て思ったのであった。

日中戦争を背景に、故郷の佛山を占領した日本兵との対立を中心においた2008年の『イップ・マン 序章』、戦後移住した香港で功夫の先達から認められ、彼らを見下す英国人ファイターに挑んだ2010年の『イップ・マン 葉問』から5年が経って登場した第3作。この間にはもともと企画が先行していたものの、例によっての王家衛だから完成まで13年かかった『グランド・マスター(以下一代宗師)』もやっと公開された。この他には、デニス・トー主演でハーマン・ヤウ監督の『イップ・マン 誕生』、同じくハーマンさん監督で秋生さん主演の『イップ・マン 最終章』も作られているけど、すみませんこの2本は未見です。



1作目は金像奨で作品賞も獲り、ド兄さんの熱演で映画界における葉問ブームが湧き上がったのが(ただし一代宗師は除く)もう10年近く前になるのにびっくりしているが、以前の感想にも書いているけど、実は諸手を挙げて評価しているわけじゃないんだよね、前2作は。大陸を向き始めた頃ってのもあってか、敵を中国以外の者に設定してイデオロギーやや高めな感じになってるのが引っかかった。そのあたり数年の時代ものアクション映画になぜか抗日的要素が入ってしまっていたのは、谷垣健治さんも著書で触れられていましたっけね。

今回の舞台は1950年代の香港。ド兄さん演じる葉師傳もすっかり香港の生活に馴染み、次男の葉正もやんちゃな小学生へと成長。貿易港湾都市として好景気に沸く香港での問題は地上げであり、葉正の通う小学校が標的にされることから、物語は不穏な方向へ動き出す。
この事件から出会うのは葉正の同級生の父親で、車夫をしている詠春拳使いの張天志(張晉)。向上心に燃える張天志は、いつかは葉問のように香港の武林に認められることを望んでいる。しかし生活のために闇の格闘技試合に出場し、上昇志向が強いために、やがて葉問と対立することになる。



戦時中→対戦直後→50年代香港と時代を移し、その時々の状況に応じた好敵手が要問の前に現れ、彼と拳を合わせる。先に書いたように、全2作の敵はいずれも香港(というか中国)の外からの敵であったのだが、今回は同じ香港居民であり詠春の使い手であるというところが特徴的である。それをベースにして語られる物語は、果たして強いだけでいいのかという基本中の基本でもあるのだが、対抗する張天志の事情もよく分かるだけあって、ちょっとしたボタンの掛け違いのようなすれ違いで葉問を越える野望を露わにしてしまったのは切ない。演じる張晉もまた良いキャラだからなおさらそう感じた。

しかし今回の葉問しーふーの、まあなんとエレガントなこと。
それはド兄さんが重ねたキャリアと年齢が活かされているのは言うまでもないのだけど、品格があって愛妻家で息子思いで人を尊んでご近所のマダームにもモテモテでなんとまあ隙がない。あまり品行方正なのもどうかと思うけど、まあしーふーだからそれはそれでいいか(笑)。冒頭で登場する、陳國坤演じる生意気なあの青年(とだけ言っておこう)との痛快なやりとりなどは、まさにしーふーとしての品格からなるものであったしね。
香港の武林界でもリスペクトをもらった彼が語るのは、守るための詠春という考えを受けての、未来の世代にそれを受け継ぐという決意がこめられていたこと。
こういうのがあるから、ワタシはこの映画に好感が持てたし、邦題もうまかったよなって思うのであった。



史実では、葉問の妻永成は彼が香港に渡っても佛山に残り、そこで一生を終えたというのであるが(だから一代宗師ではそのへんは忠実である)、ここでは彼女も一緒に香港で暮らしているという設定になっている。この永成(熊黛林)と葉問との愛もシリーズの見どころであるのだけど、今回は永成が胃ガンにより余命わずかとなったことも物語に絡んでくる。佛山の苦難の時代からずっと葉問のそばにいて、彼が危機を冒して戦う姿をずっと見てきただけあるので、病を抱えながらも、小学校をめぐるいざこざや、「詠春正宗」を名乗ってはなんとか戦いの場に引っ張り出そうとする張天志に向かう葉問を大いに心配する。だけど夫である彼も彼女の気持ちは痛いほどわかっているので、最期の時を一緒に過ごそうとする。フィクションではあるけど、こういうエピソードもバトルと並べても浮いてはいないのだから、今回はとても良くバランスの取れた構成だった。
製作発表当初はマイク・タイソンの特別出演で話題になったけど、これも物語から浮かずに処理できたのもよかったしね(まあ、タイソン自身のルックに「そういう顔にタトゥー入れたイギリス人不動産屋さんはさすがにおらんだろ?」という気にはなったが、映画だから気にするな)

そして最後にこれだけはいいたい。
今こそこのシリーズはド兄さんの代表作となり、この3作目はシリーズでも最高傑作となった。でもだからといって、一部にある「ド兄さんの葉問こそ唯一」という意見には納得できないし、返す刀で一代宗師を批判されたくない。むしろしたら倒してやる、と逆上する。
それはここでも書いてきたように、一代宗師が先行しているわけだし、どちらも同じ葉問であっても、アプローチも違えば演技も違う。だからこそ、アクションや娯楽性だけで同じまな板に乗せて論じることは意味がない。同じ映画としてエールを送り合っているようにも見えるから、比べることなどできないのだ。そこを心得ないといけないと思う。

原題:葉問3(Ip Man3)
監督:ウィルソン・イップ 製作:レイモンド・ウォン 脚本:エドモンド・ウォン 撮影:ケニー・ツェー アクション指導:ユエン・ウーピン 音楽:川井憲次
出演:ドニー・イェン リン・ホン マックス・チャン パトリック・タム ベイビージョン・チョイ チャン・クォックワン マイク・タイソン ケント・チェン

注:youtubeの仕様が変わり、縮小できないまま予告を貼ってしまいましたが、画面上のタイトルをクリックorタップすれば該当ページが開きますので、そちらでご覧下さい。

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