霊幻道士 こちらキョンシー退治局(2017/香港)
最近、twitterでこんな気になるやり取りを見かけた。
五・七・大 pic.twitter.com/PxRuN2y5Pt
— 田中泰延 (@hironobutnk) 2017年12月6日
いい時代! 返還前の香港コメディはほんとたのしかったですよね。 https://t.co/1WgGycccSi
— 古賀史健 (@fumiken) 2017年12月6日
あの頃の明るさ。いまはノワール映画ばかりになりました… https://t.co/dbhuYh9A8R
— 田中泰延 (@hironobutnk) 2017年12月6日
田中泰延氏と古賀史健氏は共にフォロワーも多く、インフルエンサーでもあるお二方。
特に田中氏は映画コラムの連載も持っているので、映画に造詣が深いのもわかる。
…でもさ、正直いってがっかりしちゃった、このやり取りは。
確かに映画でも旅行でも返還以前で時が止まっている人が世の中にあまりにも多すぎて、返還直後から香港に通い、全てではないけど90年代の黄金期晩期からの香港映画を観てきた身としては、それだけを言われることにムズムズしてくる。ましてやノワールとか言われても、それは何を指すの?インファ?トーさん?とツッコミたくなるし。そして取りこぼされる王家衛。
ああ、書いてて虚しいけど、オタクだからそういうところには過敏に反応しちゃいますね。悪い癖です。すんません。
そんな往年の香港コメディ映画が懐かしい、田中さんと古賀さんにもぜひ観てほしい最新作の感想を書いちゃいますよ。
予告はこちらから。
この春の香港旅行は、珍しく香港国際電影節の開催前という谷間のシーズンで、興味を引く映画が少なく、あと1日帰国を遅らせたら、ショーンとエリックとっつぁんの社会派映画《一念無明》が観られたのにとガッカリしてた。でもその中でヒットしていたのがこの映画。
おっ、主演は最近名前と顔をよく見かける香港映画の新たなるスター、ベイビージョン・チョイ(以下べビジョン)じゃないか!そして共演にはずいぶんお久しぶりの錢小豪!久しぶりじゃないけどリチャード・ン!そして安心のゴッドマザー、スーザン姐!…で、これ何なの?キョンシーもの?
お気づきかと思われますが、実はワタクシは、霊幻道士と幽幻道士を全スルーしたまま、ここまできた中華電影迷なのであります。ちなみにジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』もこの秋やっと初めて観ました>あまり関係ないか
中国の古代伝承や志怪小説からヒントを得たキョンシーものは、Wikipediaによると1980年前後から映画に取り上げられており、香港映画黄金期の85年に公開された『霊幻道士』がその決定版となり、台湾映画の『幽幻道士』やアイドルものの『ハッピー・キョンシー』など多くの作品が生まれた。近年では、ジュノ・マックがやはりシウホウ主演で撮った「リゴル・モルティス 死後硬直(一般公開題・キョンシー)」という、コメディ要素抜きのがっつり怖そうなオマージュ作もある、とまとめておこう。
そんないちいち調べないとキョンシーものを語れないくらいのヘタレ香港映画好きのワタシが、果たしてこれを楽しめるか否か?と心配して劇場に入ったのだが…大丈夫でした、楽しめました(^O^)
香港開闢以来、この地には常にキョンシーが跋扈していた。そのため密かにキョンシーに対抗し、発見次第駆除する秘密捜査処理班を当時の行政が設立した。それはイギリス統治と中国への返還を経た現在も続き、香港市民の安全は彼らによって保たれていた。現在の部署名は、食環處秘密行動組。英語名はVampire Cleanup Depertment、略してVCD。
これはべビジョン演じるオタク青年の張春天が、ある夜VCDとキョンシーの格闘に巻き込まれてしまったことから始まり、キョンシーと戦う宿命を背負った彼がVCDの新人メンバーとして昼は街の清掃、夜はキョンシー退治に勤しみ、これまた宿命的な恋に落ちてしまうといういろいろとてんこ盛りな物語である…。
…と物語を説明すると、よくある話ではあるんだけど、これがまたとっても楽しい。
オリジナルの道士役・林正英は既に亡くなっているけど、シリーズ出演者であるシウホウ&リチャードさんがしっかり脇を固めているので、世界観的には間違いはないんだろう。特にシウホウはさすが!と嘆息するアクションの切れ味。キャリアを重ねてもキレキレだったので、これは若い頃の作品も観なきゃかな、と。
それでも現在進行系の香港映画好きとしてはやっぱりべビジョンに注目してしまう。今年で31歳だというのに、かわいらしい英語名とそれにふさわしいベイビーフェイス、香港演藝学院を卒業後、しばらく演劇をやっていたという地元人的にはいいキャリア、日本公開作では『ドラゴン×マッハ!』や葉問3にも出演し、主役も脇役もこなす器用さ、そして既婚者!はいそこでガッカリしないように。もちろん、アクションだって難なくこなしますよ。
日本では早くも今年の夏のカリコレで上映され、出演者が重複することから「霊幻道士」シリーズ最新作と銘打たれてしまったけど、もちろんつながりはない。ユーモラス感はもちろんあるけど、春天の両親の悲劇や彼と美少女キョンシー小夏との恋、そしてどちらかといえばグロ指向のラスボスキョンシーとの闘いなどの現代的アレンジは、オールドファンにはどう観られたのか気になるところ。
劇場公開は特集上映のみで終わってしまい、地方上映もないままソフト化されてしまったのは残念だけど、これからはCSの映画専門チャンネル等で放映されるし、youtubeムービーでレンタル視聴もできるようなので、多くの方にご覧いただければ幸いです。
田中さ~ん、古賀さ~ん、もし未見だったらぜひ是非これ観てくださいねー。
今の香港映画は決してノワールばっかりじゃないんですよー!>届くことはないとわかっているけど、このサイバー空間の片隅から一応叫んでみる
原題&英題:救殭清道夫(Vampire Cleanup Depertment)
監督:ヤン・パクウィン&チウ・シンハン
出演:ベイビージョン・チョイ チン・シウホウ リチャード・ン リン・ミンチェン ロー・ベン ボンディ・チウ ユエン・チョンヤン エリック・ツァン スーザン・ショウ
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