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私の少女時代(2015/台湾)

 ここ15年ほど、台湾映画の代名詞は青春映画のようになっている。このblogで真っ先に感想を書いた『藍色夏恋』がまさにそうであるけど、その青春路線で一番稼いだのが『あの頃、君を追いかけた』ってことは言うまでもない。台湾だけでなく香港でも公開時に大ヒットし、今年『寒戦2』に抜かれるまで、香港公開の華語電影歴代興収1位の座に君臨していたわけだしね。

 で、昨年公開され、これまた台湾では大ヒットした『私の少女時代』も例に漏れず青春映画。監督は日本でも放映された多くの華流ドラマを手がけてきたフランキー・チェン(注:女性です)で、我らが大プロデューサーにしてスアーパースター(このネタいつまで通じるんだろう?)アンディ・ラウ先生が製作総指揮に名前を連ねている。その理由は後述。


 一流企業で働くお疲れ気味のアラフォー(ジョー・チェン)が振り返る、林真心(ヴィヴィアン・ソン)の女子高生時代は90年代前半。ボサボサ髪で冴えない真心が、学校一の不良で転校生の徐太宇(ダレン・ワン)と出会ったことから始まる、いかにーも少女マンガ的なスクールデイズ。真心がほのかな想いを寄せる学校一の優等生歐陽非凡(この名前どうよ!ディノ・リー)、真心のご近所で学校のマドンナ陶敏敏(デヴィ・チェン)、男勝りとふくよかちゃんという真心の親友2人など、これまたいかにもーなキャラが揃っている。学校一の嫌われ者太宇のパシリにされたり、敏敏に思いを寄せる太宇のために奔走したり、そしてやっと非凡に心が通じたかと思えば、自分のほんとうの思いを自覚してしまう真心など、もうものすごくベタで甘々で一体いつの時代の少女マンガだよ!とツッコミを入れずにはいられない。

日本初上映は今年の大阪アジアン映画祭だけど、配給会社が仙台で実施したこの映画祭で初見。

 しかし、このもろに少女マンガな演出はおそらく計算されたもの。監督の実体験も多分に含まれていて、しかも彼女と同じアラフォー女子なら思わず頷いてしまったり、懐かしさを呼び起こすような仕掛けがあちこちに施されていて、彼女たちより少し年長で、なおかつ90年代初頭に台湾にいた自分としては思わずにやりとしてしまった。
 特に芸能ネタに懐かしさを覚えた人は、香港映画&芸能好きなら少なくないはず。真心はアンディ先生と星仔の大ファンで、親友はアーロンと金城くんの大ファン。真心と太宇たちが遊びに繰り出すとき、流れるのは当時バリバリのアイドルだったグラスホッパーのこの曲。

 当時の香港芸能にハマった人なら、他にもニヤリとさせられるネタはたくさんあるらしいけど、ワタシにわかったのはこれくらい。そして、こういう素地があるからこそ、日本の少女マンガを原作に台湾に舞台を移した『流星花園』シリーズを始めとした華流ドラマの成功があるのだな、と思いっきり納得した。ほとんどのあらほー台湾女子が、こんな少女時代を過ごしていたのかなあ。

 まあ、少女マンガ的展開と書いたけど、それはいい意味でもあり悪い意味でもある。そんな点で引っかかりがある人もいそうだし、実際ワタシもものすごいムカつく不良として登場した太宇は実は…な設定があまりにもご都合っぽく感じてちょっとなって思ったりしたんだけど、まあそこまでひねっていたのもご愛嬌と思えばいいか(苦笑)。

 この映画を語る際には、どうしても『あの頃』を引き合いに出されてしまうし、二番煎じと言われちゃうのもわからなくはないけど、シモネタと妄想が前編を引っ張ったあの頃に対して、あえて女子の現実ではなく夢見る時代をそのまま映像にした潔さがこの映画の強みである。けして同じではないし、せめて映画の中だけでは夢を実現させてもいいよね?という目配せも感じられる。青春映画に厳しい態度をとっても、たまにはその目配せを尊重しないと、ね。それがあるから、少女時代の予想外の顛末から、現代に戻ってアンディの台北コンサートで起こるラストのミラクルが効いてくるのだろうから…。
 とか言いつつも、あの流れにはもう爆笑するしかなかったぞ。どうしてくれる(こらこら)



なお、この映画には単館系映画には珍しく日本語吹替版も作られております。
声優さんファンが多く観に来ているとのことです。それを受けたかどうかわからないけど、上の画像は映画祭で見かけたアニメ風アレンジポスター。でもごめんなさい、これを最初に見て思ったのは、今年めっちゃ流行ったあのアニメからのインスパイア?ってことでした。すいませんすいません本当にすいません。

原題&英題:我的少女時代(Our Times)
監督:フランキー・チェン 製作:イエ・ルーフェン 製作総指揮:アンディ・ラウ
出演:ヴィヴィアン・ソン ダレン・ワン ディノ・リー デヴィ・チェン ジェリー・イェン アンディ・ラウ

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