ヘリオス 赤い諜報戦(2015/香港・中国)
香港映画の新たな可能性を感じた100%香港メイドのサスペンス『コールド・ウォー』(以下寒戦)。現在、新たなキャストになんとユンファ(とトニー・ヤンも)を迎えた続編を製作中だとのことで、ロケは終了している様子。
その監督コンビの第2作が『ヘリオス』。前作から一転して、大陸や韓国に舞台を広げた意欲作。學友さんやニックさんやショーン、張震など港台のお馴染の面々に加え、大陸からは王學圻さん、韓国からは『ウィンター・ソング』のチ・ジニ、そしてこの半年間ですっかりお馴染になってしまった(こらこら)チェ・シウォンが登場。日本での宣伝のメインは一番最後に紹介した人…。いや、言いたいことはあとでまとめていいます。
大陸で起きた旅客機事故と、韓国の核兵器研究所で起こった強奪事件。両者を結びつけるのは、韓国で開発された超小型核兵器デビー・クロケットことDC-8。奪ったのは、国際的に暗躍する犯罪組織「ヘリオス」に所属する通称「使者」の一人、金(張震)。DC-8が香港に持ち込まれることを知った韓国の国家情報院は、開発を担当した崔理事官(チ・ジニ)と諜報員の朴(チェ・シウォン)を香港に送る。中国政府からも、政府調査局の宋部長(シュエチー)が香港に飛ぶ。
香港警察は李隊長(ニック)を中心に危機対策本部を設置。原子力を専門とする肇教授(學友さん)を特別顧問に招き、部下の范(ショーン)を尖沙咀の金と張(ジャニス・マン)の取引先に送る。使者たちは取り逃したものの、DC-8は奪還。しかし逃走中のバイク事故で一部の破壊が発覚。崔と朴が文化中心に向かい、被曝の確認をするが、事なきを得て核兵器は本部に持ち帰られる。
DC-8が政治的なカードになると考える中国政府の命を受けた宋は、韓国への返還を拒否したため、兵器は保安局預かりとなる。中国・韓国・香港の考えの相違が明らかになる中、李はヘリオスのメンバー逮捕を試みてマカオに渡り、元武器調達人のソフィア(ジョセフィーヌ・クー)と接触した後、張を逮捕する。
そして、香港で爆発事故が起こる。ヘリオスからは犯行声明が届き、張にDC-8を運ばせるように指示を出される。しかし張に巻かれ、香港警察と崔と朴はそれぞれ張を追う。
やがて、李は内部にヘリオスへの内通者がいるのではないかと察する。その人物はあまりにも意外な人物だった…!
世界的に不安定な現在だからこそ、東アジアでも不測の事態が起こりうるかもしれない。荒唐無稽だけど、そんなことも観ながら考えた。
大陸との対立があったとしても、それでも国際都市である香港に兵器が持ち込まれるという可能性がないわけではない。劇中にも宋と肇&李がお互いの腹を探りあうようにしていたようなくだりがあったと思うけど、そのへんのさじ加減のうまさはコールド・ウォーも思い出したなあ。
韓国側も思ったより適切に活躍していたのも好ましかった。いや、もっと無駄に出はってるんじゃないかと余計な心配しちゃってたし(うわうわ、そんなこと言っちゃダメ)、片言の広東語でも普通話(北京語)でもなく、ちゃんと韓国語話してくれてたのもいい。これは同時通訳機のおかげなんだけど、こういう設定ってありがたい。(でも宋と李や肇が話をすると、案の定普通話と広東語の会話になっちゃうのだが、まあそれはお約束なのでしょうがないですな)チジニさんとシウォンのコンビもよかったし、登場時こそ韓国映画的だったけど、香港にちゃんと馴染んでいた。しかし、まさかクライマックスであんなことに…(以下ネタバレのため後略)あと、香港駐在の女性諜報員がなんかチャラかったんだけど。
ヘリオス側では、やっぱり張震がカッコ良かったですね~。韓国語も喋れたのか!と驚きかけたが、そーいやギドク作品などにも出てるか>でもあれは喋れる役だったか?(未見)相方は『ミッドナイト・アフター』でも印象深かったジャニスだけど、全く違うクールさがあってこちらも素晴らしい。若い女優さんにはホントに頑張ってもらいたいよね。
迎え撃つ香港側は、もう安定のニックさん&ショーン。主演級のショーンをあえて脇で使うのはちょっと新鮮。學友さんが理系の大学教授ってのも珍しいかな?前に大学教授をやった時は文系だったんじゃないかと(うろ覚え)。
そんなわけでクライマックスまでは楽しく観たんだけど、内通者が誰かと匂わされた時にはもう分かったし、まさか!と驚いたのは言うまでもないのだが、そのままエンドマークになるのには衝撃を受けたよ!「ヘリオスとの戦いは始まったばかりである」って、ジャンプの連載打ち切りパターンかよ!と心のなかで叫んだのは言うまでもないわ。…まあ、考えてみれば、実は寒戦も大きな謎を残したまま結末を迎えていたので、2作連続かよ!とつっこまれたんじゃないかなー?などとね。今年の香港ラジー賞ともいうべき金話梅電影選挙にも2部門でノミネートされちゃってて、もう笑うしかないわ。
ってこんな感想で、どうか許して下さいませ。
で、『破風』の時から気にしていたことを、最後に書いてみる。
ここ数年は韓国と大陸が映画の合作でかなり協力な結びつきをしているので、ホ・ジノさんや今度日本でも『更年奇的な彼女』が公開されるクァク・ジェヨンさんが大陸に招かれて映画を撮ったり、普通話ができる韓国俳優の出演が相次いだりしているわけだけど、そこそこ大韓電影が好きだった頃は受け入れられても、あの怒涛の韓流ブームに頭を抱えたこともあって、これでいいのかなー?と思ったこともある。縄張りが荒らされるという危機感を抱いているわけじゃなくて、東アジア映画として一致団結しても、香港よりも韓国の俳優が一番注目されたりなんだか違和感を覚えたり(具体的には書かないよ)、以前も書いたけどその中になぜ日本の映画人が加われないのかということで歯がゆい思いを抱いてしまうからである。
この映画、クライマックスでは京都で撮影しているんだけど、そこでそのまま幕を閉じてしまう。一体どう責任をとってくれるのよって言っちゃったよ。これは日本を舞台に続編を作ってもらうしかないじゃないか。そしたら必然的に日本の俳優も出せるし、スタッフも使えると思うよ。學友さんのスケジュール次第とも聞いているので、ちゃんと落とし前つけてくれることを願いますよ、リョンさん、サニーさん。
原題:赤道
監督&脚本:リョン・ロクマン&サニー・ルク 撮影:ジェイソン・クワン 美術:アレックス・モク 衣装:ドラ・ン&ハイ・チョンマン アクション指導:チン・ガーロッ 音楽:ピーター・カム
出演:ジャッキー・チュン ニック・チョン ショーン・ユー チ・ジニ チェ・シウォン ジャニス・マン ジョセフィーヌ・クー チャン・チェン ワン・シュエチー
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