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さらば、シネマート六本木

 2015年6月14日、9年3か月にわたって六本木で営業されてきたアジア映画専門シネマコンプレックス、シネマート六本木が閉館した。

 思えば、映画館のスタイルがシネコンへと大きく変わり始めた頃に誕生したが、日本での映画興行収入は洋画から邦画が売れるようになり、全国各地にシネコンが誕生した。それに伴うように都内の名画座やミニシアターの閉館も相次ぎ、ついには新宿や有楽町といった大劇場メインだった地域もついにシネコン化したのが、この9年間だった。

 5月の台湾映画特集の時に飾られていたKANO関連小道具。

 言わずともわかるように、ワタシはとーほぐ在住なので、この映画館には最初から熱心に通っていたわけではない。折しも開館当初はまだ韓流ブーム。だから上映も韓国映画が圧倒的に多かったし、わざわざ観ることもないか、とあまり行かなかった。でも地元では絶対やらなさそうな映画がかかった時は観に行った。
 そんなわけで初シネマートは、今や世界のアサノとなった、浅野忠信くん主演のタイ映画『インビジブル・ウェーブ』…と思ったら違った、『ディバージェンス』だった(笑)。『ドラゴン・プロジェクト』『エンター・ザ・フェニックス』はその後くらいに上映していたのね。
 だいたいその頃は、我が街モリーオにもそこそこ香港映画も来ていたのだが、それでもトーさんの映画は何本か来ていないし(特に『エグザイル/絆』!)、さらに台湾映画はそれ以上に来なかったという状況だった。それを見越して帰省時や映画祭の時に武蔵野館等に観に行ったこともあったけどね…。

 通うようになったのは、特集上映が行われるようになった頃。イー・トンシン特集の『プロテージ』を観に行ったなあ。旧作上映が増えていったのもこのあたりから。震災直後で心がささくれだっていた頃、5月に1週間の帰省をして久々に挽歌二部作をスクリーンで観られた時にはなんとも嬉しかったものである。

「香港電影天堂最終章」で上映されたインファナル・アフェア三部作日本版ポスター。
ディパーテッドよりダブルフェイスよりやっぱりこれだよ、若者よ!(笑)

旧作特集上映時にはすっかりお馴染となったウォール。
あまりに作品が多すぎてどれを観たのだかと数えることすらできなかった(笑)。

 また、『燃えよ!じじぃドラゴン』上映初日は、年明け早々TVで紹介されたこともあり、満員スタートだったところに居合わせることができたのも面白かった。ソフト発売を前にした映画の特集上映も帰省時と重なったらできるだけ観に行ったので、まさに上映してもらえるだけありがたいと感じたものだったし、5月の劇終特集上映のあいまに開催された支配人のトークショーからも、香港映画にかける情熱と、全勤務地だったキネカ大森時代からのアジア映画専門館の歴史に触れ、日本のアジア映画上映はこういう努力あってこそのものだったのかと改めて胸を熱くしたものだった。

 しかし!ここから暗い話になるが、そんな熱も田舎までは届かず、アジア映画上映は全国的に見れば完全に厳冬期。実際、シネマートに足を運んで観てみても、毎回満員御礼…というわけではなかった。まあ、韓国映画はそんなことはなかったのかもしれないけどね。よくわからないけど。
 もちろん関西にはシネマート心斎橋があるし、名古屋にも熱心なミニシアターもある。我が東北にはフォーラム仙台がアジア映画を上映してくれ、これから感想を書く幾つかの作品も実はそこで観たものだったりする。(実は仙台の支配人さんがかつて盛岡に勤務していた時、香港映画上映サークルを立ち上げてもらって参加していたので、香港映画に関しては大恩人なのです)
 ただ、とーほぐはあまりにも広すぎる。山形-仙台間はバスで1時間位らしいけど、盛岡-仙台間はバスでも2時間半かかる。新幹線だと最速40分だけど、往復1万円は超えるわけだから…。
 そして映画館も拡大上映作を優先し、ミニシアター作品の上映は遅くなる。それも欧米作品のシェアが圧倒的に大きいから、必然的にアジア映画の上映は減る。だって、一時期当地でも熱狂的に支持された韓国映画も恐ろしい勢いで上映が減っているのだよ。それなら香港映画なんて…(と、いつもながらの愚痴になるので強制終了)。

 本当はメジャー作品の悪口なんか言いたくない。でも、観たい作品、みんなで観たいと思う作品が劇場で観られなくなるのはほんとうに残念だ。家でソフト鑑賞しても、一人だと寂しい。
 映画上映でSNSで関東方面の人たちが盛り上がっても、話題に置いていかれるのがすごく悲しかった。
 昨年の日本における映画館での上映本数は、なんとかつての映画館全盛期の本数(約600本くらいらしい)を上回り、1000本越えてしまったと聞いたのだが、それでも全国でくまなく公開されたのは300本もないんじゃないだろうか。これほど本数が多いと売れる作品と売れないものが極端に分かれているということらしいが、もうこれはどうにもならないのだろうか。

 それよりも、今後のアジア映画の上映はどうなっていくのか。
 多様性があるのが映画文化だ。乱発でもなく、じっくり観られて、新しい観客に繋げられるような上映があればいい。それは東京だけでなく地方も同じ。映画館で観たいけど、いくらリクエストしてもスルーされるのなら、いっそどこかで自主上映できればいい。でも著作権法云々とかもあるのか。でもでも、あまりにももったいないんだよなあ。

 ああ、案の定いつもながらの愚痴になったので、ここで終わります。
 さようなら、シネマート六本木。そして日本の映画興行界よ、どうかアジア映画上映の灯を消さぬように。

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