レクイエム 最後の銃弾(2013/香港)
この春発行されたテーマムック「TRANSIT」の最新号が沖縄・台湾・香港の特集だった。今や台湾特集なんて腐るほどあるので(おいおい、口が悪いなー)別に珍しくもないが、星野博美さんの雨傘運動フォトレポートや香港映画も多少紹介しているというので、立ち読みしてみた。
そこで「香港映画の現在」を代表する作品として『桃さんのしあわせ』や『グランド・マスター』と共に紹介されていたのが、この『レクイエム』。これはなんとも嬉しい。
しかし、その特集の後にあった「香港・台湾芸能人相関図」に登場する香港の俳優たちの顔ぶれが15年前で止まってるようだったのにハッとした。もちろん情報的には、トニーとカリーナが結婚したなど正確性はあるのだが、ステや彦祖のジェネックス組で止まるんじゃなくて、トーさんの作品の男優陣やチャッピーを入れてよかったんじゃないの?
ピントが合ってなくて申し訳ない。これは昨年の秋、シネマート六本木で撮った写真。
そんなわけでそろそろ芸能人相関図に載せてほしいと思う、現在の香港男優にして、トーさん作品常連俳優であるラウ・チンワン、ニック・チョン、ルイス・クーのトリプル主演作。でも監督はトーさんじゃなくて、香港の爆発王ことベニー・チャンさん。
立ち姿が美しい男を見るのが好きだ。もちろん、美しいって言ってもイケメンとは限らないし、美しいと言っても背筋が伸びた感とは限らない。
現在の香港映画界を支えていると言い切っても過言じゃないこの三人組。約20年間香港電影迷やってて、彼らがここまで躍進するとは思わなかった。みんな下積みが長いしね。確かにイケメンとは言いがたいけど(除く古天楽。だってどっからどう見てもイケメンじゃん!)、スクリーンで見せる佇まいには色気が漂っている。そして三人ともそれぞれの立ち姿が美しいのだ。
原題の《掃毒》の通り、麻薬捜査から物語は始まる。仲良く育った幼馴染の三人は、成長していずれも警察官となり、麻薬取締の担当となる。だが、それぞれの身分は異なる。年長のティン(ラウちん)とワイ(ニック)は実働班、そして年下のチャウ(古天楽)は潜入捜査官。チャウが潜り込んでいた最大の麻薬組織はタイの大物ブッダ(ロー・ホイパン)と取引することになり、タイ警察と合同捜査を図ることになる。そこで展開する激しい銃撃戦が前半の見せ場。これぞ爆発王の面目躍如!(っていつもこれ言ってるな)ってドッカンバッタンするので、もうたまらなかったですよ。しかし、その後に待ち受けるのは、意外にも悲劇的な顛末…。共に戦うことを誓いながらも、タイの現場でブッダたちに追い詰められ、人質にした娘のミナ(美しきトランス女優、ノン・ポーイ)との交換につきつけられた選択で、ワイが犠牲になってしまう。
5年の時を経て彼らの運命も大きく変わる。生還したティンは左遷させ、対してチャウは彼の代わりに麻薬捜査班のトップに立っていたが、家庭は崩壊していた。新たな麻薬組織が立ち上がり、それと対立して香港上陸を目論むブッダ。そして驚くべきことに、彼の傍らには、死んだはずのワイがいたのだった…。
21世紀の『男たちの挽歌』との評価には大納得。
マフィアと警察との攻防を縦糸に、幼馴染の3人の流転の運命を横糸にして、銃弾と血飛沫で彩られる物語は懐かしさ以上に、そうそう、これが香港ノワールなんだよ!と拳を握りたくなる。3人の男たちの友情と裏切りといえば、後に感想を上げる『ワイルド・ブリット』もそうだよね。
とかなんとか言いつつ、先に書いたように、やっぱり3人の立ち姿がよくてねー、とバカの一つ覚えのごとく言っちゃうんだけどさ、ははは。スタイルだけじゃなくて、三人三様のキャラが感じられるファッションもいい。ラウちんはノータイ&ジャケット、古天楽はレザージャケット、そしてニックはスーツ。これは前後半共に統一されているし、また似合ってるからねえ。特にニックは途中で立場を大きく変え、ヘアスタイルも変わるんだけどスーツは不変。それが面白い。
一時は激しく敵対した3人がやがて和解し、5年前の借りを返すべく向かうクライマックスの地はマカオ。ワイの壮絶な犠牲は痛かったが(いや、死ぬわけじゃないな。往年のショウブラ作品とか捜査官Xで見せられたアレだ)、一蓮托生で敵に立ち向かい、激しく闘う彼らには、もうこの言葉しかでなかったのである。
「かかかかかかかかカッコええ…」と。
では、ラストにこれを。劇中に登場する重要な曲、オリジナル版。
そして、3人が歌うヴァージョン!
原題&英題:掃毒(Whitestorm)
監督&脚本:ベニー・チャン 製作:ダニエル・ラム 撮影:アンソニー・プーン アクション監督:ニッキー・リー
主演:ラウ・チンワン ニック・チョン ルイス・クー ロー・ホイパン ロー・ワイコン ベン・ラム ヨランダ・ユアン ノン・ポーイ ン・ティンイップ ロー・ラン
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