ワイルド・ブリット(1990/香港)
今から25年前、『悲情城市』に衝撃を受けて台湾に渡ったワタシは、主演の一人である梁朝偉という人の名前だけは漢字で覚えていた。10月のある日、寮にあった新聞でその名前を見つけた。新作映画の広告だった。その題名とは、《喋血街頭》。
だけど、観に行けなかった。留学中は勉強に必死で、言葉のわからないまま映画館に行く勇気が持てなかった時期だったからだ。そして帰国後、この映画が『ワイルド・ブリット』という邦題で日本公開されたのにも驚いたのだが、当時も勉強で忙しく以下省略。
で、ちゃんと観たのは、実はビデオで。その頃は圧倒されちゃって何も言えなかった。5月のシネマート六本木閉館企画でこの映画が久々にスクリーンにかかるということを知り、帰省時を利用してかなり久々に観たのであった。
あ、サムネイルが辛い場面…。
1967年、香港。ベトナム戦争と文化大革命の影響はこの街にまで及び、共産主義を支持するデモが警官隊と日々衝突していた。ベン(阿B/トニー)、フランク(輝仔/學友さん)、ポール(細榮/チーホン)の幼馴染3人組は、貧しい生活の中でも青春を謳歌していた。恋人と結婚することになったベンの結婚資金を集めていたフランクは敵対するチンピラの縄張りに立ち入ってしまって襲われ、それを知ったベンたちが復讐しに行くが、誤ってチンピラを殺してしまう。
信頼する親分から薬の運び屋の仕事を請け負い、ベトナムに逃亡する3人。到着早々ベトコンの襲撃に巻き込まれて資金源を失うが、その中でフランス人の血を引くベトナム華僑の殺し屋ルーク(ヤムヤム)と出会い、当地の権力者からの現金強奪とかつて香港で活躍していた人気歌手の救出を持ちかけられる。事態はどんどん悪化、4人はベトコンとマフィアの両者に追われ、ついには米軍捕虜とともに囚われる。ベトコンに捕虜を殺すように迫られたポールはベンたちを裏切り、フランクは錯乱する。そして…。
初見がかなり前だったので、内容も忘れていたかと思ったけど、結構覚えていた。そして、今観た方が強烈に胸に刺さる映画だった。
文革支持派と警察の衝突の激しさは、確かに昨年の学生たちとの衝突ともダブって見えるのかもしれないけど、そういえばあの頃は文革の実験性を評価していた動きがあったということも思い出していた。いずれにしろあの凄まじさは恐ろしかった。
そこからさらに泥沼のベトナムに舞台が移ると、もっと恐ろしかった。ベトコンのアジトで囚われて水責めの拷問を受けていた米軍兵の様子ももちろんであるし、手ひどく裏切るポール、自らを失うフランク、踏みとどまろうとして意地を張るベンの、友情も人間性も無残に破壊されてしまうのが恐ろしく、切ない。ウーさん作品の良心を背負うトニー(これはハードボイルドや赤壁二部作も同様かな)、毎度おなじみ裏切り者キャラのチーホン、そして學友さんはそれぞれ適材適所のキャストだけど、やっぱりトニーより學友さんに目が行ってしまう。まあ、それが本来の狙いだったんだろうと。
そしてヤムヤム。髪の量を除いてあまり変わった感がなくて嬉しいのだが(こらこら)、いろんな過去を背負ってそうなキャラとスタイリッシュなスーツ姿が実によい。こういうキャラはトーさん作品のそれともちょっと違ってるように見えていい。
ウーさん渾身の作品であったと聞くこの映画、あまりにも激しすぎて本上映では評判にならなかったというけど、時代がかなり変わった今観ても、これをどうしても作りたかった意義というのは何となく読める。これだけ激しい戦争映画を作ってしまえば、その後も強烈なアクションシーンを描きながらも、鳩をバンバン飛ばして「実は平和主義なんですよー」としれっと言っちゃうウーさんの気持ちがわかるわ(笑)。
てなわけで、どんなにバイオレンスが激しくなろうと、やっぱりウーさん好きだわ、ってのは結論でした。ちゃんちゃん。
あれ?トニーのことあまり書いてないな。一応誕生日記念感想のつもりなのに(笑)。
でも、これを観て改めて、ウーさん&トニーのコンビ作っていいなあと思ったのでした。ええ、ウーさん&ユンファのコンビ作ももちろん同じくらい好きだしね。でもトニーとのコンビって、どこか愛があるように思えるもんでね(同じような状況を、最近気に入ってる某監督&某俳優コンビに見ているもので>と独り言で締めてみる)
原題&英題:喋血街頭(Bullet in the Head)
監督&脚本:ジョン・ウー 脚本:パトリック・レオン
出演:トニー・レオン ジャッキー・チュン レイ・チーホン サイモン・ヤム
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