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プロジェクトA(1984/香港)

大地の龍に気が集まり 東方の夢が目覚める

中華の男子は士気溌溂と 皆熱がこもってる

手中にした計画から 美しい夢が溢れる

龍族の末裔は誓う 東方の威風を示さんと

えー、あの主題歌の冒頭をオレ的翻訳してみました。歌詞はこちらのサイトから。


結構カッコいい歌詞だよな~、これがどうして「♪ここでワ~イフォン!」って空耳できるのか不思議だわー>こらこら


 時は20世紀初頭の香港。湾岸に現れる海賊に頭を悩ませた政府は、熱血警官ドラゴン(成龍さん)が所属する水上警察に検挙を依頼する。しかし、彼らは陸上警察の連中とそりが合わず、司令官の甥でエリートのパンサー隊長(元彪)の陸上部隊と喧嘩してしまうくらいのお荷物軍団。おまけに出場直前になって所属の船挺が全て爆破されたことで、水上警察部隊は廃止され、パンサーの部隊に組み込まれてしまう。
 旧知の仲である泥棒のフェイ(サモハン)からこの事件の裏には武器商人チョウがいることを突き止めたドラゴンは、彼を捕まえに行こうとするが、逆に上司から咎められて、発作的に警察をやめてフェイとともに事件を追う。そして海賊退治のために派遣された英国海軍提督たちまで海賊に拉致される重大事件が発生し、ドラゴンは警察に復帰。旧水上警察と陸上警察の精鋭を結集し、海賊の撲滅と人質の救出を図る「A計画」を実行するのであった。

 普通、この映画の感想を書くとなると、やっぱり「ジャッキー若ーい、アクションすげー」とかになってしまうのだろうけど、さすがにそれで終わっちゃ書いてて面白くない。だってもう成龍さんのアクションがすごいのはわかってることだもの。
 そこで自分が注目したのが時代背景。オープニングで「香港開港初期」とあった気がするので、そっかー、イギリス統治が始まったばかりの頃ね、幕末より少し前くらいかと思ってたら思いっきり違っていた(笑)。
 ワタシは返還以前の香港の警察組織についてはあまり知識がないので、Wikipediaを当てにしたのだが、そこで初めて20世紀からの香港警察の事情を知ることになった。あーそうか、当時は幹部クラスがすべてイギリス人で、インド人警官もいたんだ。図版を見て、制服も一応考証されていたんだなあとわかった(遅い)。改めて、20世紀香港のコスモポリスっぷりがよくわかる。

 それもあるのか、これまで観てきた成龍さんの作品と比べて、洒落っ気があるように感じる。米国で彼が再評価された時、激しいアクションにクラシック映画のユーモアを持ち込んだと言われていた。確かバスター・キートンに例えられていたんじゃなかったっけ?前半の酒場での大乱闘におけるコミカルなアクションはまさにそれを体現していて、クラシカルな欧米映画とアグレッシブな香港映画が見事に融合されている。西洋建築のセットで見せるアクションあり、サモハンと組むと粤劇風になったりと、観ていてとても楽しい。
 もちろん、サモハンと元彪とトリオを組めばもう最強。甘いマスクにエリート役がよく似合う元彪(いま思うけど、言われるほどには柴田恭兵さんには似てないよね)の信頼性の高いアクションと、巨体を活かしたパワーで押し切るサモハンは、それぞれが成龍さんとは違うタイプというのが明らかにわかるので、ラストの海賊の頭領サン(ディック・ウェイ)との1対3の決戦場面は本当に楽しめる。

 そう!この場面といえば、るろけん京都編二部作後編『伝説の最期』でオマージュを送られていることで有名。るろけんだけ観た若い観客には「最後のあれは卑怯じゃない?あれじゃ志々雄様がかわいそう(ネタバレ失礼)」とか言われてたけど、いーや違う違う、あれは志々雄様が一人ではかなわないほど強いから剣心たちがそれぞれ立ち向かっていかなきゃならなかったわけで、こっちも頭領がめっちゃ強かったのであの三人が(以下同文)と同じなんだよなあ、できれば若い人もこっちも観てほしいな、と思った次第。

 今まで成龍さんの過去作品はあまり積極的に観てこなかったのだが、今回「バック・イン・シネマ」でこうやって代表作が上映されたことは自分には有り難かった。前回のエントリーで書いたようにこっちで広東語映画が全然やってくれなかったってのもあるが、TV放映じゃない公開時そのままの形で観られるというのはほんとうに貴重だと思ったからである。成龍作品はTVで観る層が圧倒的に多いらしく、映画感想サイトcocoのページにも「日本語吹替版で観たかった」という意見が少なくなかったのだけど、それで観るのはちょっともったいない気がするのだ。まあ、この時代の香港映画は撮影の関係上、セリフが同録できなくて別人の吹替になっていることもあるというから、日本語でもいいじゃんって言われそうだけど、広東語で話すことが「香港」という異国の場所を感じさせていいんじゃないかなって個人的に思う。
 しつこく強調するけど、ジャッキー映画は香港映画そのものじゃなくて、あくまでも香港映画の一部分なのだから、と某レンタルショップのカテゴリであらゆる香港映画が「カンフー」でまとめられることに疑問を抱くワタシは思うのであった。

 この旧作上映企画、姉妹編の「バック・トゥ・ザ・シアター」は来年も続行らしいけど、こちらはどうなるのかな?せっかく香港アクション映画のクラシックをまとめて上映してくれたのだから、今までシネマートが上映してきた香港電影楽園シリーズを全国的に拡大させて、『男たちの挽歌』 『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』 『狼たちの絆』 『友は風の彼方に』などの香港映画黄金期の作品群に加え、『欲望の翼』 『恋する惑星』などの王家衛作品を特集上映してもらいたいところ。だってBICの非中華作品がちょうど90年代に流行した独立系&ハリウッド作品なのだもの、そのへんとの繋がりも持てるし、アクションだけじゃフェアじゃないよ。

 そんな提案をしながら、今年最後の映画感想更新とさせていただきます。

原題:A計劃
監督&脚本&出演:ジャッキー・チェン 製作総指揮:レイモンド・チョウ 製作:レナード・ホー 音楽:マイケル・ライ
出演:サモ・ハン・キンポー ユン・ピョウ ディック・ウェイ イザベラ・ウォン タイポー マース クワン・ホイサン ウー・マ

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