大魔術師(2011/香港・中国)
香港旅行記の途中ですが、帰省時に六本木に観に行った『ギャランツ(またの名をじじぃドラゴン)』とこれがスマッシュヒットし、年明けから非常に嬉しかったので忘れないうちにこっちを先に書いておきます。なお、じじぃドラゴンのことも近日。
映画は芸術でもあり、エンターテインメントでもある。急速に消費される有料TVドラマもどきから、iPhoneで観られる名作まで種類は様々だし、それを観る人・好む人それぞれにも様々な認識で受け取られるものである。
香港におけるそれは、まず9割方が後者だとワタシは考えている。
いくら王家衛やトーさんが国際映画祭の常連となり、世界中のシネフィルにもてはやされそうと、彼らはやはりエンタメの人間である。手がけるジャンルも幅広いのだから。(王家衛は幅狭いじゃんと言われそうだが、『楽園の瑕』や《一代宗師》はアクションものとしても受け取れる側面を持っているもの)
ゼロ年代は『ワンナイト・イン・モンコック』などで香港のダークな一面を描いてきたイー・トンシンだって、「お仕事」
とはいえ『ぼくの最後の恋人』のような明るいエンタメ作品も撮ってきている。そのトンシンさんがかなり久しぶりにトニーを主演に迎え、初めて中国大陸で撮影したこの『大魔術師』(冬の香港傑作映画まつりの1作として上映)は、これまた久々の一大エンターテインメントで、大いに楽しめた。
パンフも発行されてないし、独立したチラシもないので、オリジナルポスター画像を貼る。
時は民国初期、1920年代の北京。軍閥の将軍雷大牛(らうちん)は元宦官の執事劉を従えて、我が世の春を味わっていた…が、そんな彼の泣き所は第七夫人に迎えた柳蔭(周迅)が全く笑顔を見せてくれないこと。7人の夫人の中で一番力を持つ第三夫人(イェン・ニー)には目もくれず、大牛は途方にくれていた。
一方、街では魔術が大流行。ライバル興行主(方中信)に小屋を買収された劇場主の兄妹(林雪他、ごめん妹役の女優さんの名前を失念)の元に、洋行帰りの張賢(トニー)という魔術師が現れ、劇場を立て直す。実は張賢は、軍閥に対抗するゲリラたちと手を組んでおり、彼らにマジックをサポートしてもらって、大牛を捕らえようとしていた。なぜなら彼の師匠の柳(チョン・プイ)が大牛の元で囚われの身となっており、娘である蔭が張賢の元恋人でもあったからだ…。
これはティザーポスター。
いやー、楽しかった!確かに詰めの甘さやグダグダさが真面目なシネフィルには気に障るかもしれないけど、さっき書いたように元気の出るエンターテインメントはこの世に必要です!民国初期という設定や暗躍する日本の秘密組織(リーダーの御手洗を演じるのはお馴染み澤田拳也さん)も出てくるので抵抗感を持つ人もいるだろうけど、そんなのはあくまでもたくさんある小道具の一つにすぎない。華麗なコスプレを披露して次から次に魔術を繰り出すトニー、いかにもな悪役感満々で登場しながら滑稽でそれでいて愛すべきらうちん将軍、デレなど全く見せず、終始ツンツンなのにそれが鼻につかない(むしろツーイーよりツンツンが似合うのにかわいい>個人的意見)周迅をひたすら楽しみ、大笑いするのがこの映画の正しい見方。
その他、まさかの登場&退場であっけにとられる彦祖、胡散臭さ満載の中信さんにチョン・プイさん等のトンシン組登場に、大御所二大監督(徐克さん&ヴィンセントさん!)が軍閥にいるなどの賑やかし、ラストを飾るトニー&周迅のデュエット(後で書くけど、ダブルフェイスでもラストに西島くん&照之のデュエットがあればよかったのに。笑)で、実に見事な正月映画(実際に去年の賀歳片だったっけな)であった。年初めに観る映画としては大正解。
ただね、ひとつ残念なのはダイアログが北京語だったこと。
大陸で作った作品だし、こっちの言語がどうやらメインらしいとのことだけど、せっかく「香港映画まつり」でかかるのだったら、香港上映版の広東語ダイアログを採用してもらいたかった。赤壁も《血滴子》もそうだったけど、北京語ダイアログだと香港人にウケが悪そうなんだもんな。しかもソフト版も北京語とのうわさ。うーむ、これは難しい問題だよね。
←ジャケットもセンスがイマイチな…。他にいい画はあるはずなんだが。
でも、4年ぶりにトニーの映画をスクリーンで観られたのは嬉しかった。是非、地方巡回上映もお願いしますよ。ソフト化された後でもいいし、映画祭上映扱いでもいいです。どうですか、某もりおか映画祭さん!>と堂々と名指ししてみる。地元だし(笑)。
英題&邦題:The great magician/大魔術師“X”のダブル・トリック
監督&脚本:イー・トンシン 撮影:北 信康 アクション指導:トン・ワイ
出演:トニー・レオン ラウ・チンワン ジョウ・シュン イェン・ニー ラム・シュー アレックス・フォン チョン・プイ 澤田拳也 ダニエル・ウー ヴィンセント・コック ツイ・ハーク
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