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台北カフェ・ストーリー(2010/台湾)

 この春、引越しをした。…と、と唐突に私事から前振りしてしまって申し訳ない(笑)。
 10年以上暮らした木造アパートの2DKがモノであふれかえり、寒さに体がもたなくなったというのが最大の理由だが、幸い職場から10分くらい離れたところに2LDKの賃貸マンションを見つけたので、そこに大移動(詳しくはここに書いたのでお暇な方はどうぞ)。
部屋は増えたものの、いろいろあったものを捨てたり、語学教室主催のバザーに出したりして整理したら、だいぶ身軽になった。捨てるのをためらうものもあったけど、これからの人生を考えたら、ものはあまり手に入れずに、減らして身軽にしていくのがベストだもんね。
 とかなんとか思いつつ、連休に帰省したら、なぜか洋服を大量にもらっちゃったんですけど(笑)。まあ、誰かが着なくなった/使わなくなったものでも、ほかの誰かが使うかもしれないのは確かだもんね。そんなわけで、今はもらった服を着て通勤して仕事をしている。 

 さて、『台北カフェ・ストーリー』
 実は初めて観たのは、2年前の暮れの台湾やさぐれ旅行、往路の機内上映にて。その年、すでにTIFFで上映されていたけど、観られなかったもんで。感想を書きたかったけど、もう一度観ないとなーと思ってたので、日本上映はホントに嬉しい。



 デザイナーだったドゥアル(ルンメイ)は、会社を辞めて妹のチャンアル(リン・チェンシー)をパートナーに、念願のカフェを台北にオープン。日替わりのスイーツと選び抜かれたコーヒーが「ドゥアル・カフェ」の自慢。開店直前、車の接触事故を起こして、慰謝料代わりに相手の車が乗せていたカラーの花を大量にもらったものの、さてどうしたことか。そこで彼女は元同僚に、「開店祝いを持ってきてくれたらカラーをあげるよ」とメールした。同僚たちはいたずら心を起こし、カフェにそぐわない贈り物をもってくる。
 開店パーティーは盛況に終わったものの、お店はさっそく閑古鳥が鳴き、店内にはガラクタにしか見えない贈り物ばかり。さて、再びどうしたものか。ある日、自治会長がやってきた時、その中の一つのタイ語のレシピ本に目を所望したところ、機転を利かせたチャンアルが「何かと交換してくれるのなら譲る」と言い出す。これがきっかけで、ドゥアル・カフェは物々交換カフェと化し、店には大陸の団体旅行客から古い日本語の楽譜を欲しがる中孝介(本人)まで、さまざまな人がやってきて、客はドゥアルのコーヒーとスイーツを楽しみながら、さまざまな品物が人々の間を行き交う。
 ある日、カフェに群青(張翰)という男性がやってくる。世界中の都市で買い集めた35個の石鹸を持ってきた彼は、それぞれの都市にまつわる物語を来店するたびにドゥアルに聞かせる。それを聞きながら彼女はイラストを描き、石鹸に添える。
 カフェはますます繁昌し、そのユニークさに目を付けた業者が二人に店のフランチャイズ化を持ちかけるのだが…。
 

 ずっと「The Shadow of your smile」のカバーだと思い込んでいたのだが、教えてもらってどうも違うということがわかったメインテーマ。すみません、ホントにすみません。

「モノの価値は人の心が決める」。
 オープニングのナレーションが語るこの言葉。初見では日本語字幕がなかったし、小さな画面だったのでそれほど気にはとめなかったのだが、震災や引っ越しを経た今、この言葉がすっと心の中に入ってくる。これまであれこれと物を買い、手に入れてきたけど、もったいないなあとついつい戸棚の奥底にしまいこんだりして、ずっと存在を忘れてしまっていたものの多かったこと。長らく使わないと、使えなくなってしまうものだってある。それなら捨てるよりは、誰かに使ってもらったほうがいい。そう思ってバザーに持っていった品物は、半分くらいが必要とされる人々の元に旅立っていったようで、ホッとした次第。

 物々交換となると、これはちょっと難度が上がる。
お金で買い求めるのなら容易いけど、何かと交換するのなら、それと引き換えるのにふさわしいものを用意しなければならない。そして、なにしろ相手との交渉が必要になり、それが人々の交流を呼ぶ。これは「売り手の顔の見える経済」の典型ともいえそうな地産地消や、アートマーケットにも共通するのかな。
 チャンアルが物々交換を提案したのは、純粋にカフェの売り上げをアップさせたいからという単純なことだったのだろうけど、それが二人に思わぬ考えの変化を及ぼしたのが面白い。世の中は金かもしれ
ないけど(おいおい)、価値観や心の持ち様は金じゃ変えられないもんね。
  もちろんこの物語は映画だから、実際には物々交換がこんなにうまく行くとは限らないのかもしれない。でも、日本でもブクブク交換xChangeのようなムーブメントもあるので、この動きがいい方向で広がっていくといいよね。

  いつもながら愛らしいルンメイはもう鉄壁だが(もちろん誉めてます)、彼女と掛け合うリン・チェンシー小姐ののびのびした演技も印象深い。彼女の存在がこの映画のいいアクセントになっている。張震の兄・張翰もよかったなあ。実はブエノスや牯嶺街に出ていることは全然知らなかったのだが、やっぱり弟にちょい似てると思う。俳優以外にも舞台やCMの演出など創り手としても活躍しているらしい。ほお。

このドゥアル・カフェこと「朵兒咖啡館」は台北の松山区に実在するカフェらしい。かなり有名な話なのに、今までチェックせずに訪問できなかったのが残念。かもめ食堂よりはずっと行きやすいところにあるのにね。
  そして、この映画はまた観たいと思っているのだが、地元でやってくれるかどうか。でも、配給元さんが「カフェ上映プラン」という企画を持っているので、これは是非地元のカフェにお願いしようかと考えている。あるお店に声をかけて見ているんだけど、もうちょっとプッシュしようっと。

他にもいろいろ感想言いたいんだけど、後はいずれ地元で再見するチャンスがあったらってことで、このへんで一区切り。

原題(英題):第36個故事(Taipei Exchange) 
監督&脚本:シアオ・ヤーチュアン  製作総指揮:ホウ・シャオシェン 音楽:サマー・レイ&ホウ・シージエン 録音:トゥー・ドゥーチー
出演:グイ・ルンメイ    リン・チェンシー    チャン・ハン     中  孝介

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