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恋人のディスクール(2010/香港)

 恋愛映画が全般的に苦手だけど(特に高校生の初恋ものとセックスシーンに重きを置いたもの。両極端だな。具体的な例は挙げんが)、香港の恋愛映画は結構好きだ。それもジャンル不問で。なんつーか、こじつけくさいって言われるかもしれないけど、香港の恋愛ものは日本のそれよりも、愛の始まりも終わりも説得力のある描かれ方をしていて、それがワタシの心をえぐってくるんだろうなあと思う。…まあ、中には全然えぐってこない作品もあるけどさ。これも具体的な題名は挙げんが(笑)。
 ちなみにワタシが好きな香港の恋愛映画は『誰かがあなたを愛してる』と『十二夜』。ラヴソングとブエノスは殿堂すぎて恋愛映画じゃないかな、ワタシにとっては。 

『恋人のディスクール』は、昨年の大阪アジアン映画祭コンペティションでグランプリを得た作品。当時の審査員長があの行定勲監督というのには驚いた。でも製作がホーチョン、共同監督の片割れがあのデレクと聞けば、その完成度の高さには納得するのであった。


夜の銅鑼湾をさまよう男(イーソン)と女(カリーナ)。親密で他愛ない会話の端々から、二人にはお互いに恋人がいることがわかる。男の自宅近くで別れた二人。ベッドに横たわる彼の傍らでは、その恋人(メイビス)が寝息を立てていた。
 街の洗濯屋で働く娘(ケイ・ツェー)は、いつも洗濯物を預けにくるインターン(だと思うのだが…エディ・ポン)に片思いをしている。店番でヒマな時は、頭の中で彼を相手に自分が主人公の恋物語を展開しているが、なぜか空想の中の彼は人形。しかし、その幸せも長くは続かず、恋の相手は引っ越してしまう…。
 インテリア店で旧友を見かけた男(ジャッキー・ヒョン)は、少年(ウィリアム・チャン)の頃の苦い恋を思い出す。彼は学生の頃、旧友の母親(キット・チャン)に恋をした。父親(エリックとっつぁん)にも好意的に迎えられ、食事を共にする仲となったが、ある日、父親が若い女性と浮気をしている現場を目撃し、それを母親に告げてしまう…。
 その彼が現在付き合っている女(これがカリーナ)が、別の男(つまりイーソン)と付き合っていることに気づいた。そこで彼は男の恋人に近づくのだが…。

 全4話のオムニバスで、それがつながってくるという構成は目新しいものではない。でも、この作品が強烈だったのが、描かれている恋愛が決してハッピーエンドではないということ。そして、恋愛の過程で生まれる悦びや不安、嫉妬や怒りなど、決してきれいとは言い難い感情をまっすぐに捉えている点だ。まるでスガシカオの曲の世界だな、なんて思ったりして(意見には個人差があります)。

 夜の街を陽気に彷徨いながら、どこか軽い背徳感を覚え、それすらにも酔ってしまいそうな第1話。少女っぽい妄想と現実のもどかしさの差が切ない第2話、少年の青い経験(って実際には事には及んでないが)と残酷さがどこか官能的な第3話、そして、それが一気に集結し、恋愛の辛さとそれを受け入れて生きる覚悟を感じた最終話。決して脱いだり性的だったりと直接的な表現ではないのだけど、なんだかエロティックである。こういう考えさせる恋愛映画ってタイプだけど、…それはワタシがまともに恋愛してないからだろうか?まあいいか。あくまでも恋愛に対する考えは人それぞれだしね。

原題:戀人蕠語
製作:パン・ホーチョン 監督:デレク・ツァン&ジミー・ワン
出演:イーソン・チャン カリーナ・ラム メイビス・ファン ケイ・ツェー エディ・ポン ジャッキー・ヒョン キット・チャン エリック・ツァン ウィリアム・チャン

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