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小さな村の小さなダンサー(2009/オーストラリア)

 人種の坩堝と呼ばれるアメリカでは、華人を主人公にした映画は決して珍しいものではない。ウーさんや成龍さんがハリウッドに進出する以前からそのような作品は作られてきた。例を挙げるなら『スモーク』で有名な中華系アメリカ人ウェイン・ワン監督の作品群や李安さんの出世作『ウエディング・バンケット』などがそれ。
 ヒューストンバレエ団でプリンシパルを務めた華人バレエダンサーの半生を描いた、この『小さな村の小さなダンサー』も、その系列であるんだけど、珍しいのはオーストラリアのスタッフで作られたということ。しかも監督は中華系じゃなく、21年前にアカデミー賞で作品賞に輝いた『ドライビングMissデイジー』のペレスフォードさん。それに加え、やはりオーストラリアで作られた傑作伝記映画『シャイン』のスタッフが集結して作られたとか。

 リー・ツンシン(李存信)ご本人の自伝が原作。

 1972年、文革まっただ中の中国山東省のとある村。この村に突然やってきた共産党幹部により選ばれ、わずか11歳で親と引き離されて北京舞踏学院で学ぶことになった存信(ホアン・ウェイピン)。理由もわからず家族と別れた彼にとって、バレエの訓練は厳しく辛いものだった。しかし、彼をバレエに目覚めさせたのは、親身になって教えてくれたチェン先生だった。
 頭角を現し成長した存信(グオ・チャンウ)は舞踏学院でもトップクラスのダンサーとなる。しかし文革まっただ中のこの時代、時の指導者が求めたのはクラシックではなく、『紅色娘子軍』のような革命を鼓舞する創作バレエだった。チェン先生は指導者の一人、江青に申し入れをしたが、そのために学院から追放されてしまう。現実を厳しさを知る存信。
 ある日、アメリカのヒューストンバレエ団から芸術監督のベン(ブルース・グリーンウッド)と二人のダンサーがやってきて、舞踏学院の生徒とデモンストレーションを行った。彼らは中国の優れたダンサーを自分たちのバレエ団に招くことを希望し、そのメガネにかなったのが存信だった。初めて行く外国、初めて見るアメリカの人々やもの。中国の外にはこんな自由な世界があったのかと、存信は気づく。そして、彼はスランプに悩むバレエ団の研修生・エリザベス(アマンダ・シュル)と初めての恋に落ちる。
 そして、研修の期限が近づいてきた。存信は自由のためにエリザベスと結婚し、弁護士のフォスター(カイル・マクラクラン)の協力を得て、アメリカに亡命することを選ぶ。それは、両親をの別れを決意しなければならないという辛い選択であった…。

 中国という国の誇りよりも、中華民族という誇りを選んで自分の道を進む。
在外華僑の著名人のスタンスは、こういうものではないかと感じる。
しかし、国に縛られていたら、自分の表現に限界がある。それが現実だ。

 もともと李存信は、自らバレエを目指したわけではない。共産党によって選ばれ、親と引き離された。大都会で一人で生きる彼に光を示したのが、バレエであった、と捉えた方がいいかも。
バレエと出会ったことで彼は二人の師と、自由と、初めての恋と、生涯の伴侶を得た。だけど、国を捨てても忘れられなかったのは、幼い頃に別れた両親と、家族だった。国を離れてもなお、それを恋うるのは、やはり両親や家族のことなのだろう。中華民族の「家族」の絆の強さは、中国以外で作られる華人の映画にはよくあるテーマなのだが、それがまたこの映画でも大切に描かれていた。

 李存信を演じた3人は、いずれもプロの俳優ではない。
渡米後の存信を演じたツァオ・チーは本人もまたバレエダンサー(英国バーミンガム・ロイヤルバレエ団プリンシパル)だし、メインビジュアルで印象的な少年期のホアン・ウェイピンは、この作品のために選ばれた男の子。でも、それほど違和感はなくつないでいたと思う。
 お母さん役は、どんな作品でどんな役でもこなせるジョアン姐さん。彼女は2年前に出演した《意(ホームソング・ストーリー)》でオーストラリアと縁ができたようで、おそらくその経験を買われての出演で、弁護士役のカイル・マクラクランは絶対『ツイン・ピークス』つながりでの出演だと思う(笑)。

 ところで、李存信のことを調べるためにTwitterで質問し、いろいろ教えてもらった中で知った事実がある。この映画、やっぱりというか意外というか、中国本土で上映されていないのだ。
 原因はやはり、政府の考えを否定的に描いてるからだということにあるのだが、そこまで不寛容じゃなくていいのに、とあいかわらず大陸にわだかまりを残してしまうワタシであった。いや、まあ、しょうがないことなのだが。

原題:Mao's Last Dancer
監督:ブルース・ペレスフォード 製作:ジェーン・スコット 脚本:ジャン・サーディ 振付:グレアム・マーフィー 
出演:ツァオ・チー ホアン・ウェンビン グオ・チャンウ ジョアン・チェン ブルース・グリーンウッド アマンダ・シュル カイル・マクラクラン

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