カンフーサイボーグ(2009/香港)
連休に『ブエノスアイレス』を観に行った時、エンドクレジットでセントロ・デジタル・ピクチャーズの名前を見つけてビックリしたのは、先にも書いた通り。
セントロがこの映画の製作をサポートした時は、多分会社が立ち上がって間もない頃だったんじゃないかなと思っている。そして1年後、セントロは香港映画で初めてCGを取り入れた『風雲』を手がけて名を揚げた(んだと思う)。その後は『少林サッカー』や『カンフーハッスル』等も手がけ、実写版映画『ゲゲゲの鬼太郎』2作でも多国籍に渡るCGチームの一角を担っていたっけ。
で、『カンフーハッスル』といえば、かの作品のプロデュースに関わっていたのが、我らのジェフ・ラウ。
王家衛の盟友でありながら、その作風はまったく正反対。徹頭徹尾笑わせるエンターテインメント作品を輩出する彼が、セントロと再びタッグを組み、ついに大陸に進出(!)して作り上げた抱腹絶倒のSF映画が、この『カンフーサイボーグ』である。
時は西暦2046年(!)、舞台はそのわりにあまり発達していない中国の片田舎の街。
この街を守る公安警察隊長の徐大春(胡軍)は、高度科学技術センターの林主任(とっつぁん)から、極秘のミッションを命じられる。高科技中心が新たに生み出した、人工頭脳を持つアンドロイドK1(方力申)を配下に置き、彼が人間社会にどれだけ適応できるかテストしてほしいというものだった。高性能のアンドロイドである彼はその能力を駆使して目覚しい活躍(多分)を見せ、大春の部下の素梅(スン・リー)はK1に恋愛感情を抱いていく。幼馴染であり、彼女にほのかな思いを寄せていた大春はそれを快く思わなかったが、K1には恋愛感情はプログラミングされていない。それでも素梅とK1は親密になっていくのであった。
ある日、林主任は2人に新たなミッションを命じる。K1と同時に開発されたアンドロイドのK88、通称陳龍(呉京)が突然コントロール不能に陥り、殺人を犯して逃亡したのだ。二人はK88の居場所を突き止めるが、身の危機を感じた彼は激しく抵抗する。K88はK1とほぼ同じ防御と変形能力を持っていたが、ただ一つ違ったのは、戦闘用にカンフーをプログラミングされていたことだった。巨大ロボットに変形したK1とK88は激しい戦闘を繰り広げるが、それに大春が巻き込まれてしまい…!
…えーと、ここまであらすじを書きましたが、お気づきの方はいるかと思います。
主人公の一人はアンドロイドで、サイボーグじゃありません(笑)。
「チョと待て!サイボーグとアンドロイドって違うのか?だって韓国映画に『僕の彼女はサイボーグ』ってあったじゃない?」といわれそうですが、アンドロイドとサイボーグは全然違います。『サイボーグ009』が好きなワタシがいうのだから間違いないです(笑)。
※追記・サイボーグとアンドロイドの違いについてはコメントいただきました。多謝。
で、結論を言います。タイトルは間違っていません。ちゃんとサイボーグは登場します。と、これだけ言っておきます(笑)。それがだれかはさすがに言わないけど、あらすじを読んでもらえれば容易に判断してもらえるかと。←ややネタバレ気味にて失礼。
ストーリーはよくありがち。だから見どころは、必然的にCGとタイトルにもなっているカンフーになる。これが本領を発揮するのが、K1が出動して大活躍?する中盤から。最初の出動場面はお笑い(しかも胡軍が担当)気味で使われていたけど、K88が登場して宿命の対決を繰り広げるあたりから、CGはグッと派手になる。某トランスフォーマーほどゴチャゴチャしておらず、わりといい感じに使われていたんじゃないかと思う。ゲームっぽいといえばそれまでなんだけどね。
カンフーは当然呉京が担当。んー、これはもうちょっとじっくり観たかったなあ。思ったより出番少なかったんだよね。でも、久々に彼のアクションがじっくり見られたので、あんなんでも一応満足しとります。あまくてしーましぇーん。
ちなみに胡軍はあまり戦いません。いや、別に趙雲やってアクションしつくしたってわけじゃないよ、きっと。
そういえば胡軍は珍しくお笑い担当。
というよりも、ジェフ・ラウ作品に出てしまえば、どんなにシリアスな作品で熱演している演技派俳優もたちまちコメディアンと化してしまうからね。トニーとかレスリーとかトニーとか(笑)。一番ウケたのは、林主任からK88を処理するために渡されたiPodならぬiGun(2046年設定なのに、形は変わらないのかよ)を使いこなせなくて、なぜか『月亮代表我的心』ばっかり流れてしまうというギャグか。
アンドロイドのK1を演じる水泳王子方力申。…なんかずいぶん久々にスクリーンで顔を見たやうな。まー、イケメンではあっても好みではないし、どっかつるっとした印象があったので、アンドロイド役としては適切かも。でも、思い入れできないのよね。むしろ呉京のK88の方がカッコいいじゃん♪なんですけど、好みとしては。
ヒロインのスン・リー。フォーフォー以来ですね。あかぬけないメガネっ子(でも取るとかわいい)というのはこの手のSFにお約束。…ってそうか?しかし、彼女の妹の素清(甘薇)がひどいキャラだったなー。彼女もかわいいのに、髪ボッサボサのがさつキャラ。
ヒロインに思いを寄せる理科教師ロナチェンの出番の意味は?とも思ったが、大陸演員ばっかじゃアレだから、彼はやっぱり必要か。ま、エリックとっつぁんや家英哥(♪お~んり~ゆ~)がいればそれでいい…と言ってもまたいけない。
そんなわけでざっくり書いてみたけど、大陸舞台でもコテコテの香港喜劇は成り立つものなんだな、と最終的には思ったりした。いずれにしろ、久々に大笑いできた香港映画であった。日本語字幕でもちゃんと観たかったなー。
原題&英題:機器侠(KUNGFU CYBORG:METALLIC ATTRACTION)
監督&脚本:ジェフ・ラウ 特撮&CG:セントロ・デジタル・ピクチャーズ
出演:フー・ジュン スン・リー アレックス・フォン(方力申) ロナルド・チェン ウー・ジン カン・ウェイ ロー・カーイン エリック・ツァン
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コメント
もとはしさん、はじめまして。
いつも楽しくROMらせて頂いています。
自分もご他聞に漏れず、希少種の香港電影迷です(笑)
こういうネタだとロートルSFファンは参加せずにはいられません。
ざっくり言って、サイボーグってのは人間の体を機械などに置き換えた
もので、元々は人間が出発点。
アンドロイドは人型のロボットのことで、人間成分はゼロです。
サイボーグは例えば義眼義手程度から、脳だけ残っているものまで
幅広いですし、また、アンドロイドも、人間と区別できない外見のもの
から、人間の形をしているけどメカメカしいものまで、さまざまです。
もっともこれは古い定義なので、バイオな昨今(笑)では事情は違うかもしれません。
今後もレビュー楽しみにしています。
それでは!
投稿: ayase | 2010.06.04 10:06
ayaseさん、コメント&詳しい解説ありがとうございます♪
中途半端なSF好きなのでアバウトにしか解説できず、失礼しました。韓国映画を観ていると、どーもかの国はアンドロイドもサイボーグも一緒くたにしてるんじゃないかと思えてしょうがなかったりするのですよ。それじゃあ香港(というか大陸?)は一体どうなんだ?と思ったもので。まあ、ちゃんとサイボーグが出てきたので、タイトルは嘘じゃないなとほっとした次第。
ところで、これはワタシの勝手な印象なんですが、SF好きの方には香港電影迷が多いような気がするんですよね。このへん、面白いなあと思います。
投稿: もとはし | 2010.06.04 21:22
もとはしさん、RESありがとうございます。
>>中途半端なSF好きなので
あー、いえいえ。
けっこうご存知のようなので、補足してみました(笑)
中国や韓国に限らず、扱いはけっこうアバウトだと思いますよ。
最近はレプリカント等の造語も多いですしね!
>>SF好き
それは有るかもしれません。
そもそも、視点の違いを見つけて楽しんだり、面白そうなものを
発掘して喜ぶというのが、多くのSFファンの気質にあるので、
香港映画のセンスがフィットするのかもしれません。
投稿: ayase | 2010.06.07 14:41