《証人》(2008/香港)
祝!ニコラス父さん第2子お誕生記念!のアップ(こじつけ)。
感想をねかせっぱなしにするのももったいないので、今さら書いてみる。
昨年の流行語に「草食系男子」ってーのがあった。
その定義は“恋愛に積極的でなく、おとなしい男子”らしい。
個人的には、わざわざこんな言葉を無理やり作らなくてもこーゆー男子はかなり以前から存在していたぞ、と思っているのだが、そんな言葉ができる背景を考えると、経済や政治だけじゃなく、何においても日本が全体的におとなしくなってきてしまっているのかなーと思って残念に思う(かといって、決して肉食系男子が好きだってことじゃない。そんなことでカテゴリわけすること自体がバカバカしいんだって)。
そう感じちゃうのは、ワタシが香港のサスペンスアクション映画を好んで観るからなのかもしれない。いや、事件や爆発ばっかりが現実に続いてもはっきり言って困るんだが、この手の映画は男と男の熱いぶつかり合いを描いているものが多いし、多少荒削りでも表現的にきっつくても社会的なトピックを交えてくれるので、ついつい夢中になってしまうのだ。
もちろん、日本でも、この手のドラマが全くないってわけじゃない。そういうものを感じさせるドラマにはもちろん夢中になってみるからね。ただ、甘ったるくてつまんなくてドキドキしない映画やドラマばっかりはイヤだなあと思ったわけです(注・意見には個人差があります)。
さて、そこで《証人》。この映画は刑事と殺し屋の行き詰まる対決を縦軸に、法に対する暴力や児童虐待、事故被害者の苦しみを横軸にして織り上げたちょっと異色のサスペンスといった趣。
ニコ演じる刑事とニック・チョン演じる犯人のダブル主演で、この物語は語られる。でも、あらすじはパスね。その代わり、以下ネタバレで感想書きます。スマンです(苦笑)
この映画がひねっているのは、この事件に追う側と追われる側の因縁が複雑に絡まりあっていることである。
ニコ演じる刑事フェイは、自分の追っていた凶悪犯が起こした事故で、誘拐されていた少女を死なせてしまった責任を重く感じている。ニック演じるホンは、その事故に夫婦共々巻き込まれ、妻(ミャオ・プウ)は重傷、自らも目に負った怪我のため失明の危機に瀕している。さらにフェイが追っていて、逮捕されて裁判を受ける凶悪犯の部下たちは、その裁判を担当する弁護士マン(張静初)の娘を誘拐し、ボスの弁護を娘の解放条件とする。実はその娘の姉が、件の事故で命を落としており、さらにその仕事を引き受けたのが、妻の介護費用を必要としたホンだった…といった具合。
よく考えればあまりにもすごくて狭い因縁で、ご都合主義っぽさも多少は感じられるんだろう。だけど、無間道三部作を生み出したのにちなみ、東洋的な考え方にのっとれば、東京の半分しかいない面積に約六百万人もの人口がうごめく香港なら、こういう狭い因縁もあるのでは?なんて思ってしまう。
それもあるのか、登場人物には容易に感情移入できる。身体だけではなく心にも傷を追って、死なせてしまった少女の妹を救おうとするフェイにも、過酷な運命を背負い、愛する妻を救うために心を鬼にして悪事に手を染めるホンにも。映画の中では善悪がはっきりしていても、なぜ悪の道に行くことになったのか、ということを思うと、やはり辛い。
それゆえに、この映画の主演は決してニコだけではないわけで、ニックさんが賞賛を浴びたのだろう。
すでに某CS放送で放映されたそうなので、日本上映は難しいのかな?でも、マギーの『クリーン』も、1回CSでTV放映されたのにもかかわらず劇場公開もされたので、その可能性がないわけではなさそう。
あーでも、ネックはいくつかありそうかな。それは子供が殺されること。米国映画では明らかにタブーだけど、日本でも厳しくなってきてるんじゃないかな。もしかしたらDVD販売まで行くのかもしれないけどね。
英題:Beast Stalker
監督&原案:ダンテ・ラム 製作:アルバート・ヨン アクション指導:トン・ワイ
出演:ニコラス・ツェー ニック・チョン チャン・ジンチュー ミャオ・プウ リウ・カイチー
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