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意外(2009/香港)

 「偶然と故意は紙一重よね」
 と、フィルメックス『意外』を観た後、朋友のひろみさんが言った。
 本当に、その通りである。ワタシもこの映画を観て、そう思った次第。

 大脳こと何國輝(古天楽)は、仲間と4人で標的を偶発的事故に見せかけて殺すという闇の稼業をしていたが、彼はその仲間を決して信じようとはしなかった。彼には最愛の妻(モニカ・モク)がいたが、彼女はしばらく前に交通事故で命を落としていて、それ以来大脳は誰に対しても心を閉ざしていたのだ。
 ある日、彼らは車椅子生活を送っている父親を殺してほしいとの依頼を受ける。事故死に見せかけるためには、トラムのレール上で感電させることが一番自然だと考えた大脳は、仲間とともに仕掛けを施し、雨の日を決行日とするが、なかなか雨が降らない。やがて大雨の夜の日に、彼らは仕事を決行させ、依頼人の父親を殺すことができたのだが、その直後、ターゲットへの接触を担当したデブ(林雪)が、大脳がとっさによけたバスのスリップに巻き込まれて死んでしまう。
 ―もしかしたら、仕掛けがばれたのか?そして、誰かが自分たちを狙っているのか?そう感じた大脳が依頼人を尾行すると、彼は中環のビルで保険会社のセールスマン(リッチー)と商談をし、大金を手に入れていた。このセールスマンが怪しい、と思った大脳は、彼の身辺を徹底的に調査する。男の家のすぐ下に空き部屋を見つけて住み込み、部屋に侵入して盗聴器を仕掛け、彼の真意を知ろうとする。やがて依頼人の男が死に、大脳は自分の危機をはっきりと自覚するのだが…。

 ちょっと気がそれると、たちまちわけがわからなくなってしまう、あっという間の89分。…ええ、実は、早めに昼食をいただいたのが災いしたが、時々30秒ずつ意識が切れてました(涙)。
 そういうもったいないことになってしまったけれども、それを別にしても面白かったのは確か。ただ、やっぱり純粋にトーさん組じゃないせいなのか、ソイさんの演出はトーさんよりもちょいとリズムがゆっくり目かな、と思った次第。これはあくまでもワタシの感覚なので、意見には個人差があるのはいうまでもないか。もっとも、過去のソイさん作品とは全く違う印象があるという、他の方の意見もあるので、トーさんスタイルをソイさんが翻訳したらこうなったって感じなのかな。

 あらゆる現象は偶然で起きている、とよく言うけど、それはもしかしたら違うかも…と思い始めたら、やっぱり大脳のように疑心暗鬼で止まらなくなってしまうのだろう。しかし、彼はそれであっても最初の信念を貫き通す男であったから、クライマックスのあれ(ネタバレにつき詳細はパス)で自分の誤解を悟っても、仕事はやらなければいけないと思ってそれを遂行してしまったのは、こういう稼業の人間の性なんだろうなー、と思った次第。
 大脳をめぐる人々の動きも、故意に見えそうで偶然にも見えそうだから、なおさらこっちも混乱する。なかでも大脳チームの最年長であるオヤジさん(ベテラン、スタンリー・フォン)は、認知症を患いながら仕事に参加しているわけだから、疑おうにしろ自信が持てなくなる。そういう配置も面白かった。

 古天楽は『コネクテッド(これから観ます)』《竊聽風雲》に続き、またしても眼鏡キャラ。しかし、同じ眼鏡くんでも、三者とも全く違うキャラクターになっているからいい。《竊聽》の時は貧しいお父さんだったけど、今回は何をしでかすかわからない不気味さもちょっとだけあるし、前半はジャケット(&作業人)姿、後半はスーツ姿と着替えてくれるのもよかったし。リッチーの部屋で彼と奥さんがイチャイチャしているところを盗聴してしまう場面の行動や表情もリアルでよかったし。
 単独主演作品を初めて観たという朋友のMさんが「10年前には古天楽がこんないい俳優になるなんて全然思わなかった!これこそが意外よ!」と大絶賛。ワタシはここ数年、彼の主演作を続けて観る機会に恵まれたけど、お久しぶりに観た方にこう言われるのだから、改めて彼の成長を喜ばしく思った次第。
 意外と言えば、これもいろんなところで言われているけど、リッチーの役どころもかなり意外だったねー。終始硬い表情を見せる有能なビジネスマンだけど、ああいう顔されたら確かに疑いたくなる(笑)。実は奥さんを愛していて…というところを大脳の前で強調させることも、彼の不気味さ(という思い込み)に拍車をかけることになったし。
 そして、究極の意外であるクライマックスのアレ…。アレは本来見ちゃアレじゃないか?と思わずツッコミそうになったが、それによってこれまでの全ての「思い込み」を回収させる手段としては斬新だったし、ちょうど時事ネタ的にもタイムリーだったから、ね。

 おっと、長くなりそうなので、このへんで一旦区切りますか。ソイさんティーチイン採録は次の記事にて。

英題:Accident
監督:ソイ・チェン 製作:ジョニー・トー 脚本:セト・カムユン&ニコール・タン 
出演:ルイス・クー リッチー・レン ラム・シュー ミッシェル・イエ スタンリー・フェン ハン・ユーシン モニカ・モク 

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コメント

アクシデントという映画なのに、
意外なことが多くて面白かったですね〜。

リッチーはとてもとても、
家族思いの優しいビジネスマンに
見えなかったのは私だけでしょうか?
全ての元凶はリッチーにあり、
だったりして(笑)。

投稿: tomozo | 2009.11.29 22:31

 原題の意外自体はアクシデントを指すけど、日本語のそのものの意味とも取れる展開が面白かったですよね。
 一般公開が決まっても、この題名を通してほしいものです。

 リッチーの姿がああ見えたのも、やっぱり古天楽の思い込みからなんでしょうね。
 でも、tomozoさん以外にもそう思って人って、案外多いかもですよ。

投稿: もとはし | 2009.11.29 23:07

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» 意外(第10回東京フィルメックス) [tomozoのうれし★たのし★大好き]
この季節のお楽しみ、フィルメックスで「意外」を鑑賞。なんとか取れた席は普通でいえば1番前、でもその前に椅子が3列設置され、それも若干椅子が高い。輪をかけて前列の男性が大きい方だったのでとても見づらかったんだけど、そんなことが序盤から忘れてしまうくらい引き込まれる映画だった。「意外」は日本語の意外とは意味が違って「accident」という意味。でも意外な展開を... [続きを読む]

受信: 2009.11.29 22:24

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