« 来週ちょっと取材に行ってきます、香港まで(笑) | トップページ | 夏香港、心配なのは台風か。もちろん体調も。 »

《大捜査之女》(2008/香港)

 nancix さんが以前取り上げられていたのを読んで、これは観なきゃと思った次第。
 『長恨歌』以来、体調不良で芸能活動から遠ざかっていたサミーが、自らも出演した無間道三部作の脚本コンビ、アランさん&フェリックスさんとタッグを組み、鮮やかに電影に復活したのが、この《大捜査之女》。某踊るなんちゃらっぽいタイトルだけど、無間道三部作に足りない?ヒロインの大活躍とユーモアに富んだ快作になってて嬉しい。

 司徒慕蓮(英語名も「モーリーン」。サミー)は30代独身でキャリアの警察官。女性警官たちとバーでガールズトークを展開中、彼女は仲間に同棲中の売れない彫刻家マイケル(コンロイ。これが意外とハマリ役)が作品制作に夢中で自分に構ってくれないことを愚痴る。そこに現れたのが華麗なるジゴロダンサー3人組(リッチー&カイマン&ヴィンセントさん)。3人は彼女に一晩のアバンチュールを売り込むが、慕蓮の合図で現れた警官たちが彼らを捕らえてたちまち逮捕。実はこの3人、女性に迫っては莫大な金を巻き上げるため、警察にマークされていたのだ。
 その頃、中国広東省のグリーンベイでは、不法に石油が採掘される事件が相次ぎ、タンクローリーが次々と爆破される事件が続発した。それに通りすがりの一般人が巻き込まれ、とある親子が死んでしまう。中国公安の警部趙天河(董勇)がマークしたのは、香港人の黒社会の若き実力者霍青松(イーソン)。青松は敵対する闇石油業者としのぎを削っていて、一触即発状態だった。
 そのさなか、青松の息子ジミーが誘拐されてしまう。捜査にあたったのは、慕蓮と部下の阿勝(チャッピー)。彼女たちは特別捜査班を率いて青松邸にこもり、黒社会を仕切る青松の親類たち(ジョー・チョン、リウ・カイチー他)もろとも邸内に閉じこめ、犯人の要求を待つ。そんな時だというのに、慕蓮は吐き気を催す。これはもしかして妊娠―?
 一方、大陸の趙は、タンクローリー爆発事故で妻子を失った徐半山(張國立)が長い間自宅を空けていることに気づいた。徐が香港に入境していることを知った彼は、ここしばらく青松の業者が現れていないことにも気づき、彼が動けない理由も探る。
 誘拐犯からの連絡はなかなかこない。阿勝はジミーの幼稚園の先生に近づき、誘拐当時の状況を聞き出す。そして、慕蓮のコンディションも最悪になっていく。重大事件と自らの懐妊疑惑?に翻弄され、心身ともに傷だらけ(!)になっていく慕蓮。そんな中、本来は敵対するはずの青松と彼女の間に、奇妙な連体感が生まれ…。

さすがサミー、そして無間道脚本コンビ!スカッといい気分になれた。
ホモソーシャル風味が強いことで知られる香港映画だけど、実際の社会は男女同権であり、日本に比べると政界や経済界でバリバリと働く女性だって多い。そういう背景もあるので、この映画での刑事サミーの活躍は、日本で女刑事が主人公となるドラマにありがちな、無理に頑張りすぎて不自然になっているような感じもなくていい。だから、安心して観られるし共感も持てる。
 最初のほうこそ某海外ドラマみたいなガールズトークが展開されるのはちょっとありきたりだけど、すぐ仕事モードに入ってがんがん飛ばしてくれる(そして同僚のベテラン女性警官に妊娠についてどんどんつっこまれる)のでよい。レイバンのグラサンは…まーあれはあれで許してもいいような気がするぞ。

 イーソンのパパ役を見るのは初めてかなー?黒社会の大物役なので、もっと不気味な貫禄があってもいいんだろうけど、それだと怖くなりすぎるか。でも、しっかりとしたオトナな演技で好演していた。怖い方面のことは、とりあえずジョー・チョンさんやカイチーさんに任せておけばいいのか。ただ、時間の関係か、それとも大陸上映での関係かどうかはしらないけど、青松の最期がああなるのは、ちょっと盛り上がりにかける感じもした。
 脇役の皆さんもそれぞれ楽しい。チャッピーはいるだけで安心するねー。外見のせいか普段なら林雪やヴィンセントさん的な立ち位置が振られそうなコンロイは、ここではエキセントリックな慕蓮の恋人マイケルを魅力的に演じていた。おお、意外とキスがうまいぞ。さすがジョシーの夫(笑)。リッチーたち3人は出てくると画面をさらうねー(笑)。 

 アランさんとフェリックスさんがコンビを組んで監督デビューした前作《情義我心知》では、あれこれ欲張って詰め込みすぎた印象もあったけど、今回は無間道三部作で作り上げた「警察と黒社会が入り乱れる」という図式を踏まえつつ、女性を主人公にして一種変則的なホモソーシャルな世界を作り上げたというのが面白かった。慕蓮と青松の間に決して恋愛感情は生じないものの、それぞれが抱える裏事情にちょっと目を閉じつつ、お互いに共感と同情を持って事件解決に向かうというくだりは観ていて面白い。サミーのマニッシュなキャラクターは日本人の好みには合わないかもしれないけど、こうやって自分の足で立ってしっかりと走っている女子には素直に憧れちゃうじゃないか。そんなわけで、かなり楽しんで観た次第。
 あ、慕蓮は高級ブランドバッグに目がないみたいだけど、ブランドものは当然自分の金を出して買っているんだろうな(笑)。ブランドは人に買ってもらうより自分で稼いで買わなきゃ楽しくないって言うし(こらこら)

英題:Lady cop & Papa crook
監督&脚本:アラン・マック&フェリックス・チョン 製作:ジョン・チョン 音楽:チャン・クォンウィン
出演:サミー・チェン イーソン・チャン トン・ヨン チャン・クオリー チャップマン・トー コンロイ・チャン ミッシェル・イエ ケイト・チョイ パトリック・タム ジョー・チョン リウ・カイチー ティン・カイマン ヴィンセント・コック リッチー・レン 

| |

« 来週ちょっと取材に行ってきます、香港まで(笑) | トップページ | 夏香港、心配なのは台風か。もちろん体調も。 »

香港映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 《大捜査之女》(2008/香港):

« 来週ちょっと取材に行ってきます、香港まで(笑) | トップページ | 夏香港、心配なのは台風か。もちろん体調も。 »