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チャイニーズ・ゴースト・ストーリー(1987/香港)

 や、やっと感想が書ける、嬉しい…(泣)。

 全体としては課題は山積だけど、上映された作品の評判がよかったと伝え聞く今年の東京国際。
 実際自分が国際で観た作品も香港映画においてはどれもよかったと思ったのだけど、このところの香港映画は、中国市場を視野に入れた三岸地域での“合作”というのが大きな流れになってしまった。これまでは『英雄』のように、どちらかと言えば中国側主導で、香港人キャストとアクション監督とスタッフを揃え、人民解放軍を総動員した物量大作戦をよしとしたところがあるように感じられたけど(その行き着く先が女帝とキンキラキンだったと思う)、ウーさんが『赤壁』の前半部だけで大成功を収めてしまったことから、この流れはますます加速しそうな予感がある。
 まー、個人的にはハリウッドよりインディペンデント、メジャーよりアート系が好きなので、ホーチョンやアン・ホイさんのようなミニマムな作品も好きではあるんだけど、娯楽映画としての純粋な香港映画はもう作られないのだろうか。CGや人民解放軍に頼らなくても、ものすごい低予算でも、工夫と演出と語るべき物語がちゃんとしていれば、まだまだ面白い物語を自力で生み出すことができるのでないだろうか。
 先月NHKのBSで放映された『男たちの挽歌』3部作、そして『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー(以下チャイゴー)』3部作の、80年代に徐克がプロデュースしたこれらの作品群を観たことを思い出しながら、そんなことを考えた次第。

 どこかの時代の中国のどこかの地方。
 借金取り立てのバイトをしながら学問に勤しむ書生の寧采臣(ニン・チョイサン/レスリー)は、宿屋からの取立てに失敗して町の郊外の古寺に野宿するはめになる。幽霊が出現するとの噂が立っているこの寺でビクビクしながら夜を過ごすチョイサンだが、ある日、寺にやってきた美女に恋をしてしまう。彼女は小倩(シウチン/ジョイ)といい、寺の裏にある屋敷で姉妹たちと暮らしていたが、彼女の正体ははるか昔に一家共々惨殺されてしまった女性の幽霊であり、千年樹にとりついた老女の幽霊姥姥(ロウロウ/ラウ・シウミン)の支配のもと、若い男を誘惑しては餌としてロウロウに与えていたのだった。やはりチョイサンを愛してしまったシウチンは、自分を戒めから解き放ってくれるように彼に頼む。チョイサンは幽霊退治を専門とし、この寺で修行をしていたイン道士(牛馬)の協力を得て、ロウロウに立ち向かうことになる。

 ワタシがこれを初めて観たのは、そんなに昔のことではない。香港電影迷になって間もなくの頃だから、多分10年くらい前。それまでなかなか観る機会がなかったのに、なぜか名前だけは知っていた。それは多分、この映画の初紹介が今からちょうど20年前の東京ファンタだったからだと思う。
 実際にファンタに参加したのはこれまた10年くらい前からなのだが、そこから遡ること約10年前の高校生の頃、部室に転がっていた少年サンデー(当時は『らんま1/2』などを読んでいた)の2色グラビアにファンタ特集があり、そこで大々的に紹介されていたので名前を知ったんじゃないかな。
 当時はスプラッタホラーが人気で、怖いのはキライで人体破裂なんてもってのほか(でも『北斗の拳』はマンガだったから平気だった)、という人間だったので、当時は東京ファンタもそーゆー映画ばっかりやっていて、チャイゴーもバリバリのホラーだとどっかで思い込んでいた。しかし、そんなのは杞憂に過ぎなかったのは言うまでもなく(笑)。

 中国の怪談ともいえる『聊斎志異』の一編「聶小倩」を元に、人間の青年と女性の幽霊の儚い恋物語を描く…といっても、そのまま描くだけではやっぱり面白くない。せっかくの幽霊ものだからホラーにするのも悪くないけど、それだけだとマニアックになってしまう。それならVFXとワーヤーワークでやりたいことをやろう!という作り手の思いがよく出ている。80年代香港娯楽映画の黄金期を作り上げた徐克さんの見事なプロデュース力と、監督も兼任した程小東の、舞踏的ワイヤーアクションをふんだんに生かした動作設計、そして美青年なのに三枚目役もハマり、母性本能をくすぐられるレスリーのかわいらしさと、やはりこの映画の成功を決めたのは彼女以外にありえないと思うジョイの美しさ、それがうまくかみ合って面白くなっているし、それがこの映画を名作にもしている理由である。
 ジョイは当時19歳ということもあり、まだまだ幼さもあるんだけど、風に髪をなびかせて現れる姿はとにかく妖艶。すでに30歳だったレスリーが彼女より年下に見えるのも不思議だけど、やっぱり小倩は彼女以外にはありえない。ヌードも背中だけならオッケイ(もしかして吹替なのかもしれないけど)みたいだし、脱がなくてもエロティシズムを醸し出していたんだから、やっぱり貴重な存在だったのね。
 レスリーはねー、とにかくカワイイっすねー(笑)。反則なくらいかわいいよ。特に戦うわけじゃなく、戦いは基本的に小倩やイン道士に任せて、脇でバタバタしているのがおかしい。日本じゃこういう主役は基本的にありえないし、それだからこそかわいいのかね。

 あと、この頃はまだSFXだった特撮技術も、今見ればローテク感覚だけど、それがまたいい味出してる。昔はこーゆーのでも充分怖かったもんね。もちろん、この映画もホラーだから、ゾンビやら不気味な怪物やらがガンガン出てくるんだけど、もう大人になっちゃったから全然怖くない。むしろ笑っちゃう。明るい部屋の小さなテレビで見たら安心感もあるものね。
 寺にこもるレスリーを、床下のゾンビ(みたいなヤツ)が襲おうとする場面なんかホントにおかしいよ。ノリはほとんど「うしろだ、志村!(by全員集合)」だもの。こんな楽しさもまさに、黄金期の香港映画そのものなんだよね。

 というわけで、そのうち書くつもりのチャイゴー2の感想に続く。

原題:倩女幽魂
製作:ツイ・ハーク 監督&アクション指導:チン・シウトン
出演:レスリー・チャン ジョイ・ウォン ウー・マ ラウ・シウミン

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