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些細なこと(2007/香港)

些細なこと(2007/香港)
 ポスターは国際版。コピーは"GOD IS LAUGHING AT EVERYONE".

『大丈夫』『AV』を観ると、パン・ホーチョンは大人になっても男子高校生の心を持っているよなぁ、ということを思ってしまう。それは別の言い方をすれば「30過ぎても子供っぽいのよね」ってことでもあるんだが(暴言っぽくてスマン)、そこが彼の作品のいいところであり、毎年支持されている所以なんだろう…なんちゃって。それでいて、『イザベラ』みたいにベタすれすれでも心に沁み入る涙モノ映画をサラッと撮ってしまうんだから、やっぱりただ者じゃない。…ああ、なんで未だに『出エジプト記』が観られないんだよ。と去年と今年の夏の個人的な恨み(大人げない>自分よ)をここで蒸し返してみる。
 それがあったからこそ、今年のホーチョン枠、『些細なこと』のチケットは是が非でも取りたかったのである。無事に取れてよかったです、ハイ。

 今回の映画は小説家でもあるホーチョンが、自ら書いた短編集『破事兒』を原作とし、そこから7編を選んで撮ったという、監督デビュー7年の作品7本目(つまりスリーセブンだ!)。今回は各短編ごとに感想(またはツッコミ)書きます。
 長くなりそうなので、ティーチイン記録は別記事にて。

『不可抗力』
 精神科医(ジャン・ラム)が恩師をカウンセリングすることになる。ビデオカメラに向かって教授が話した心の悩みは、妻(クリスタル)とセックスが上手くできないこと。精神科医は夫人のカウンセリングも試みたが、彼女もまた夫とのセックスに不満を感じていて、平行線を辿ってしまう…。

 某ス〇ィー〇ン・〇ダ〇バー〇監督のデビュー作を彷彿とさせ…るわけないでしょ(笑)。
 生真面目な顔で性の不一致を語る教授と「まったくもー」的雰囲気で同じことを語る夫人の姿に、「こりゃ確かに性の不一致は起こるわ」と思わせられる。
 教授に「頼むからワタシのセックスを想像するな」と言われてまったく別のイケメンくん(笑)とギャル(しかもちく…もとい両點チラ見えだよ、きゃー)のベッドシーンを見せられるのはサービスだろうけど、クリスタル姐さーん、別にイケメンくんと絡んでもよかったんじゃないのー?なんて思ったりする。あーでもやっぱりチャッピーがいいか?

『道徳心』
 クラブで女子をナンパした男子(えぢ)。
 口説き文句曰く、「オレは公共マナーを守る男なんだ。だって、便器にこびりついたう○こをシ○ン○ンで流してんだぜ」

 …えぢ、オマエどこの男子高校生だよ。
 ちなみに、この“公共マナー”はホーチョン自身も実践しているとか(fromティーチイン)。ホーチョン、オ(以下えぢに同じ)

『祝日』
 惚れた女子(イザベル・チャン)とルームシェアを始めた男子(イーソン)。しかし、いくらセックスしたくても彼女の貞操は固く、結婚するまで体を許してもらえそうにない。せめてブロウジョブを…と彼女にやってもらうと、やっぱり嫌な顔をされる(当たり前)。しかし、クリスマスイヴの日になんとやってもらうことに成功。記念日なら許してもらえる、ということに気付いた彼は、大晦日、春節、端午節のたびにやってもらう。しかし、性的欲求に果てがないため、世界中の記念日を利用してはほぼ毎日彼女にブロウジョブ。そんなことばっかりやっているから、ある日悲劇が訪れ、彼には恐怖がやってくる…。

 ったくオー○ル○ッ○ス(エロトラバ除けの伏字…ってあんまり意味なし?)かよ、男のセックスってどーしよーもないよねー、と苦笑しつつ、オチに驚愕。これまたティーチインでの談話だけど、劇中の記念日は“蛋白質記念日”を除いてすべて調べた実在のもの。
 ここまででセックスネタとシモネタが続いたので、「そうか、“些細なこと”ってそーゆーことか」と思い込んでいた。

『タッガー星』
 銀河の彼方にあるタッガー星。この星の名付け親になったのは香港人の学生阿池(ケニー・クワン)。彼が好きになったクラスメイトのタッガー(アンジェラ・ベイビー)のために、星の命名権を得て彼女に捧げたからである。それが今やタッガー星の伝説になっていた。

 …しまった、「タッガー」の漢字を覚えていない。
 あと、星の命名権を募集していた雑誌の編集長が、お久しぶりのたむ子さん(俳優の方のパトリック・タム)だったんだけど、ホントに久々だったから、観ているときに気がつかなかったよ…。

『おかっぱ頭のアワイ』
 90年代初頭。女子高生のケイ(ステフィー・タン)は眼鏡におかっぱの阿慧(ジル)とよく一緒にダニー・チャンの「puppy love」をカラオケで熱唱していた。ケイは阿慧を親友とは思っていなかった。それは阿慧が何かする時、自分自身で決めずに必ず意見を求めてきていたからだ。
 ある日、阿慧は自宅近くの自動車修理工場で働くイーグル(ジュノ・マック)に交際を申し込まれる。当然阿慧はケイに「どうしよう?」と聞くが、彼女を遠ざけたかったケイは「付き合えば?」とあっさり言う。たちまち二人は恋に落ちるが、案の定阿慧は妊娠。中絶したいからお金を貸してほしいとケイに聞くが、意中の彼氏と東京旅行を計画していた彼女は「結婚して産めば?」と突き放す。阿慧は高校を辞めてあっさり結婚するが、そこから二人の人生が大きく変わっていく…。

 自分の高校時代もこんなことあったっけ…(ただし、妊娠した友人はいません)と思い出させてくれ、親しみもあれば切なさもある作品。個人的にはこれが一番印象的だった。時代背景からすれば絶対ホーチョンの青春期が背景にあるよね、とティーチインで聞いてみたら、案の定だった。詳しくは後ほど別記事で。
 そーいやジュノ・マック、名前は聞いていたけど顔を初めて見たよ。意外と今時の若者顔(?)なんだな。

『チャージ』
 “不是兄弟”のオフィスで、短編『祝日』の打ち合わせを主演のイーソン(本人)としていたプロデューサーのチャッピー(当然本人)のもとに、「新しい車が入った。日本車、上海車、その他もろもろ…」と連絡が入る。打ち合わせを切り上げて外出するチャッピー。
 実は「車に乗る」とは「娼婦に会ってセックスする」という隠語。某とっつぁんと某○春の紹介でこの組織を知った彼は、そこから斡旋された“上海車”、実は河北出身(と思った)の娼婦フェイとホテルで密会する。
 セックスした後、彼はフェイにある頼まれごとをされる。それは組織から逃がしてほしい…ではなくて、広東語がわからないので、携帯電話のチャージをしてほしい、ということだった。チャージしている間、チャッピーの心に微妙な変化が訪れる…。

 冒頭から『祝日』の打ち合わせ、と楽屋オチ的に始まると思いきや、突然『大丈夫』のその後か?と思いたくなるような驚愕(オーバーすぎ)の展開に。しかも一部実名で登場だから(もちろんフィクションなんだろうけど)、これが結構ビビる。そして幕切れはちょっと切ない。
 またしてものセックスネタですが、ここで男のセックスの悲しい性(ってこんな言い方しないか)と感じたりするのであった。なんつってー。

『ジュニア』
 散髪中のウォン氏(音楽担当、ピーター・カム!)の元に突然やってきたのは、殺し屋を斡旋するエージェント(香港映画にやたらと出たがる大陸のフォン・シャオカン監督)がやってきて、「キャンペーン中につき今なら無料で殺し屋を派遣する。それにうちはジュニアも養成しているんだ」と熱心に営業活動をする。
 そのころ、その“ジュニア”の殺し屋(ショーン)が、標的を探しにボーリング場にいた。指示で標的を見つけ、ボーリングレーンの裏側に潜り込む。標的となった張(コンロイ)にジュニアの拳銃が向けられた時、張は水パイプでアヘンを吸ってラリっているところだった…。

 最終エピソードは豪華キャスト。
 ピーター・カムさんを見て、某北の将軍様みたいなんて思ったのはワタシだけだろーか。しかしフォン・シャオカンって、ホントに出たがりだよな。これに関するエピソードがあったらしいんだけど、ティーチインでは聞けなかった。残念。
 ショーンとコンロイの掛け合いは楽しかったなぁ。これぞホーチョンマジックよね、という展開で嬉しかった。

 確かに、どのエピソードのテーマも、ホントに“些細なこと”。だけど、それが意外な展開を見せ、とんでもない結末を迎える。意味深だけど大したことない、だけどそれが面白いんだよね。
 そんなわけで、今年も大いに楽しませていただきました。いつもありがとね、ホーチョン。

原題(英題):破事兒(Trivial Matters)
原作&製作&脚本&監督:パン・ホーチョン 製作&出演:チャップマン・トー 撮影:チャーリー・ラム 音楽スーパーバイザー&出演:ピーター・カム
出演:ジャン・ラム クリスタル・ティン エディソン・チャン ステファニー・チェン イーソン・チャン イザベラ・チャン ケニー・クワン アンジェラ・ベイビー パトリック・タム ステフィー・タン ジリアン・チョン ジュノ・マック フォン・シャオカン ショーン・ユー コンロイ・チャン 

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