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もっともっともーっと!愛とリスペクトと周星馳

 前回書いた『ミラクル7号』の感想に書ききれなかったので、もーちょっと。
『裸足の洪家拳』や『裸足のクンフーファイター』や『楚留香』の感想も早いところ書きたいとは思うんだけどね。

 なんか、人の入りがよくないんだって(泣)?『少林ラクロス』より100倍楽しいのに!
 いやまー実際、ワタシが観たときも平日夕方メンズデーという状況でお客3人だったわけなんですが…。
 まーねー、ライバルがいんぢい先生と翻版流星花園(しかも某航空会社割引@香港便とタイアップしてる…泣)だからってのも不利だけど、もーちょっと人が入ってもいいと思うし、ファミリー向けにもっとアピールしてもいいと思うんだぞ。ワタシもミスドでフルーツシューを買っては「ああ、また当たらなかった…」とガッカリしながら売り上げに貢献しているし、吹替版でも声優経験のない有名タレントなんか出ていないし、そこそこは面白いのだから、「うちの方は吹替版しかやらないから観ない」と言って避けている人も、是非観ましょうよ!

 確かに古くからの星仔迷や星仔作品が好きな人には、彼が完全に大陸にシフトしてしまったのが非常に物足らないというのもわかる(公開当時、香港の批評では「周星馳は死んだ」とまで書かれたらしいけど)。こてこての香港電影迷であるワタシからしても、アレが足りないとかコレが欲しいと言い出したらきりがない。『少林サッカー』や『カンフーハッスル』を抜かしても、90年代作品にあった魅力がどんどんなくなっているというのはよくわかる。…でも、それは彼の映画だけじゃなくて、現在の香港映画全般にも当てはまることではないのかな。数日前の新聞に、「香港人に『自分は中国人である』という意識が強まってきた」というような記事があったけど、それだけ時代が変化してしまったってことになるのか。

 でも、昔の星仔映画はよかった…なんて言っていられない。中国大陸はもとより、世界で勝負するのなら、星仔自身、こうするしかなかったのかという選択をしたんじゃないかと思うもの。そして、昔の“無厘頭”なネタを控えめにする一方で、過去の映画やマンガへの愛とリスペクトを前面に出すようになってきたのが、21世紀に入っての監督作品にそれが表れているんじゃないのだろうか。ちょっと昔の香港映画も好きだし、それに加えて『ドラえもん』や『キャプテン翼』に親しんだマンガ好きとしては、日本のポップカルチャーや世界の映画に敬愛をこめて映画つくりに挑む(この姿勢をオタクとも言う)星仔の姿勢にしびれてしまうのだ。オタクな同業種と言えばクエタラことクエンティン・タランティーノが真っ先にあがるけど、同じオタクでもクエタラと星仔のタイプは違うだろう。むしろ星仔は、この秋に自作の『20世紀少年』が映画化される、漫画家の浦沢直樹氏と似たタイプなんじゃないかと思う。…って異論あったらすみません。単に個人的な印象で言ってますので。

 とまぁ、全体的な感想はこのへんにして、細かいところをあれこれ。
○『少林サッカー』にも見られるボロ靴へのこだわりなんだが、後で感想を書く『裸足の洪家拳』と『裸足のクンフーファイター』もまた、靴にこだわっていたので、なんか通じるところがあるのだろうか、と思ったんだけど…。これ、香港レジェンドシネマでのもにかるさんのトークショーで話題にはならなかったかな?
○ティー親子が見入っていたテレビに映った宇宙人騒ぎレポートで、レポーターを演じていた妙に濃い存在のおじさんが気になっていた。エンドクレジットで確認したら、ここ最近の星仔作品から『狼たちの絆』『上海グランド』『kitchen』『SPIRIT』を撮ったヴェテラン、プーン・ハンサンさんだったらしい。初めてお顔を拝見しましたよ。
○星仔作品での音楽の使い方はなかなか面白い。オリジナルサントラを担当するレイモンド・ウォンが選曲しているかどうかは定かじゃないんだけど、クラシックを使ってみたり(『少林サッカー』ではグリーグの「ソルヴェイグの歌」をムイの場面でアレンジして使っていたのが印象的)、かと思えばコテコテの中華音楽をやったり。今回はナナちゃんとディッキーが踊りまくるボニーMの「Sunny」や、日本では「雨音はショパンの調べ」の題で知られるガゼボの「I like Chopin」が効果的に使われていたのがよい。このへんの曲、もしかして星仔が『E.T.』を観たころによく聴いていたんじゃないのかな?(「Sunny」はもうちょっと古い時代の曲だろうけど)

 この映画、香港電影迷やファミリー層だけじゃなく、もっといろんな人に観てもらいたいなぁ。『少林ラクロス』にガッカリした人とか、ナナちゃんかわいい♪とflash待ち受けをダウンロードしてこの映画の内容をよく知らない人とか、自分が不幸なのは社会のせいだと思っている人とか、子供の給食費を払えるのに払えない人とか、このほか具体的に書いたら各方面からお叱りを受けそうなのでこのへんにしておくけど、ホントにホントに観てもらいたいですよ。

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