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裸足のクンフーファイター(1993/香港)

 『洪拳小子』を元にして作られたという、ジョニーさん監督、アーロン主演の《赤脚小子》こと『裸足のクンフーファイター』。思えば香港映画サークルに所属していた頃、アーロン迷の仲間が「すっごくいい映画だよ、絶対日本公開して欲しい!」と言っていたのだが、結局観る縁に恵まれず、10年経ってしまったなぁ。星仔迷でもあったKちゃん、まだ香港映画観ているかな?

 女社長パク(マギー)が率いる染色工場の四季織に、裸足の少年関豊曜(アーロン)がやってきた。彼の父親の知人である段南(ティ・ロン)がここで働いており、クワンはデュンナンの伝とパクの好意で四季織で働くことになる。
 実はクワンもデュンナンも功夫の使い手。特にデュンナンは自分の功夫の腕前が災いして追われる身となっており、本名も隠して四季織に潜んでいたのだった。そんなデュンナンはパクを密かに愛しており、パクもまた彼を愛していた。
 クワンはある日、男装して街を歩いていた女性シウリン(シンリン)と知り合う。彼女は私塾を開いているワー老師(チョン・プイ)の娘で、父親とともに教師をしていた。字が読めず、学のないクワンはシウリンに自分の名前を教えてもらおうとする。最初はからかったりからかわれたりしていた二人だったが、次第に惹かれあうようになる。
 四季織は花で染め上げる美しい染色により、街で人気の織物を作っていたが、その人気を妬んでいたのが、街の顔役ガク(曾江)が率いるライバル会社の天龍紡。
 ある日、四季織の職人の一人が多大な借金を背負っているといって、借金取りがやってきた。そこでパクは土地権利書を担保に借金を肩代わりしたが、それが天龍紡の手に渡ってしまい、四季織の納入寸前の布に火をつけられる、怒ったクワンは借金取りと戦い、権利書を取り返すのだが、それと一緒に天龍紡の契約書まで持ってきてしまったので、四季織の職人たちは困り果てる。
 自分のやったことが四季織の迷惑になってしまったと感じたクワンは工場を辞めるが、街を去る前に参加したガク社長主催の武術大会で優勝してしまい、天龍紡の職員になってしまう。仕事と新しい靴を得たクワンは大喜びだが、それでも天龍紡は四季織の吸収を諦めていなかった。
 ワー先生はガクの不正に気づくが、それを危ぶんだ天龍紡の人間に殺されてしまう。さらに四季織にお尋ね者のデュンナンがいることに危機を感じたガクは、デュンナンをも罠にかけようとする。デュンナンが天龍紡の刺客に倒れたと知ったクワンは…。

 リメイクといっても、オリジナルとまったく一緒ってわけじゃなく、かなりのアレンジが施されている。これは金庸の作品から『シティーハンター』のような日本のマンガに至るまでの原作のある作品でも同じで、原作に忠実な映画化というのは香港映画ではあまり意識しないものなのかな、とちょっと考えた。つまり、オリジナル(原作)と映像化(新作)はあくまでも別物、という考えがあるんだな、きっと。そんな香港映画界だからこそ、『ディパ』の出来には納得できなかったんじゃないかな?
 ワタシはこの2作品を続けて観たので、どっちが面白かったかと聞かれても選べない。ただ、どちらにもいいところがあればちょっと…なところはあるわけだし、比べるなんて野暮なことをしないで、兄弟みたいな作品だと認識した方がいいと思うアルのよ。
 それであってもストーリーラインには共通するものがあり、敵味方の違いはあるにしろ、主人公が出世するに従ってラストの悲劇性が増すという分は両作とも同じような気がする。その立場の変化が靴の描写で表されるのも同じだしね。
 ラストの死闘の場面、あそこまで完膚なきまでに…と思ったが、それもまた必然的であり、“泣けるクンフー”と呼ばれる所以なのかな。

 ああアーロンかわいいよアーロン(爆)。ここ10年くらいの、濃くてワイルドな姿を見慣れているから、この映画で見せる15年前のアイドルアイドルした姿はホントにカワイイ。動きもキレがあるし、アクションもダンスみたいだしね。まさにハマリ役としかいいようがない。あの童顔なので今でも少年っぽい役柄を演じられる(『柔道龍虎房』のトニーみたいな役だな)彼だけど、若いときの方が断然かわいいなー。とにかく、かかか、かわいい…としか言えなかった。こんな自分でいいのか(笑)。
 『ロアン・リンユィ』で国際的な名声を浴びた直後のマギー。彼女の存在はこの映画のドラマ性を高めていて素晴らしい。無鉄砲なクワンを弟のように見守り、デュンナンとの身分違いの恋に身を焦がす。オリジナルでの女性キャラがほとんど花瓶状態だったことを考えるとなおさらである。ラストの、新たな命を宿した姿も神々しいし。…しかしジョニーさん、ちゃんと女性描写ができるのに、どーしてここ数年の作品では(以下略)と思ったりして。
 香港一の兄貴キャラ、ティ・ロンさんも非常に渋くて凛々しい。彼のキャラがいかにカタギじゃないのかというのは見ての通りなんだが、もしかしたら『挽歌』『挽歌Ⅱ』のホー兄さんよりカッコいいかもしれないいぞ。弁髪もよく似合うしね(それはデコが多少広いからというのとは全く無関係)。
 若くて薄倖さもやや薄めのシンリン(彼女の名を聞いて思い出すのは“薄倖”…すまん)。このキャラもクワンに対して姉のように接しながら、思いを寄せ合うという設定。それを考えればクワンは典型的な弟キャラってことになるのね。
 その他、何でも演じられる曾江さんの見事な悪役っぷり、チョン・プイさんの落ち着いた先生っぷりもよく、非常に安定したキャスティングも嬉しかった。

 ああ、これがまさに香港映画第2の黄金期の作品なのか。安心して観られる映画っていいなぁ。この時期に電影迷にならなかったことをちょっと後悔したくもなる1本だった。

原題:赤脚小子(The barefoot kid)
監督:ジョニー・トー 製作:モナ・フォン 脚本:ヤウ・ナイホイ 撮影:ウォン・ウィンハン アクション指導:ラウ・カーリョン
出演:アーロン・クォック マギー・チャン ティ・ロン ン・シンリン ケネス・ツァン チョン・プイ

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コメント

いやぁ〜、かわいかったですね、アーロン。初アーロンだったんですが、こんなにかわいいとは。。。確かにかわいすぎて、かわいい〜しかいえませんわ(笑)

今回の香港フェスで、昔のティ・ロン兄貴があんなにハンサムだとは知ったし。(冷血十三鷹とかも見れば良かった)

なかなか再発見できた香港フェスでした♪

投稿: tomozo | 2008.07.19 21:53

ほんと、よかったですよねー♪
アーロンと言えば『風雲』や『ディバージェンス』くらいのアグレッシブなイメージしか思い浮かばなかったのですが、みんながかわいいと褒め称えるのがこれでよーくわかりましたよ。
遠出して観に行った甲斐がありましたよ。

投稿: もとはし | 2008.07.23 22:49

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私の香港電影好きには波があって、最初は「男たちの挽歌」シリーズのチョウ・ユンファ。そのころの香港ノワールをみまくり、それから「恋する惑星」からウォン・カーウァイ [続きを読む]

受信: 2008.07.19 21:47

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