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ヒーロー・オブ・クンフー 裸足の洪家拳(1975/香港)

 今年始め、NHKのBSで無間道三部作が放映されたときに、深夜枠でセレスティアル・ピクチャーズとNHKが共同制作したドキュメンタリー『香港映画のすべて』も一緒に放映された(参考としてこの記事を)。4年前の最初の放映を見逃していたので、「ほー、こんなんかぁ。しかし王家衛はともかく、挽歌シリーズが取り上げられずに武侠&功夫片ばかりじゃバランス悪いなー」なんてツッコミつつ見ていたのだが、それは多分、ここで取り上げられた過去の映画のほとんどはショウブラザーズ(以下ショウブラ)作品っぽいと思ったからだろうか。…いや、もちろんそれ以外の作品もあるんだろうけど、張徹監督作品なら、ほとんどショウブラなんだよね?
 うー、自信ないので後で見直して確認します。

 それはともかく、80年代後半からの香港映画はよく観ているのに、いわゆる“香港映画の代名詞”となりえた70年代のショウブラ作品をちゃんと観る機会は少ない。今では旧作DVDも日本で入手することができるので、観ようと思えば観られるのだが、これまで自分が観たのは『インフラマン』『書剣恩仇録』だけ…。確かにこれだけじゃ不十分よね?それに『裸足のクンフーファイター』の元ネタだというので、とりあえずチケを取ったのがこの『裸足の洪家拳』だったのである。

 清代の中国。洪家拳の使い手である少年関風義(フー・シェン)は、兄弟子の黄漢(チー・クアンチュン)を頼って、彼が職人として働く紡績工場の興発隆にやってきた。彼の口添えでクワンは職人見習いとして興発隆で働くことになる。裸足のクワンにホアンは自分の靴を与えてやる。ホアンはクワン以上の功夫の使い手であるのだが、彼はクワンに武術を他人に見せないようにと忠告する。実はホアンは、別の工場で用心棒を勤めていて敵対工場の刺客と死闘を繰り広げたことがあるのだが、自分の主人が功夫の使い手を見下していたことを知って、一職人として生涯を過ごすことにしたのだ。
 質のいい織物を作ることで人気のある興発隆だが、同じ街にもう1軒あるライバル工場の貴連通が興発隆をつぶすことを画策しており、興発隆の職人頭チェンを買収して、職人を狙っていた。チェンとともに職人を束ねる番頭のリーが買収に応じないため、貴連通は興発隆の職人たちを襲撃する。恐ろしさのあまり貴連通に移ろうとした職人たちを止め、貴連通の刺客を撃退したのはクワンだった。
 興発隆のボスはクワンの腕を認め、用心棒を兼ねて失脚したチェンの後釜として職人頭の職を与える。新しい靴と大金も与えられ、クワンは有頂天になる。しかし、ホアンはクワンをたしなめるが、二人は仲違いしてしまう。ますます攻撃が激しくなる貴連通はリーを殺し、クワンはリーを殺した用心棒ルンを倒すと、ボスはクワンに住宅と愛人までも与える。そして、上り詰めたクワンに待ち構えるのは…。

 オープニング、両腕に鉄輪を巻いた上半身裸のフー・シェンが演武する洪家拳。あ、これって『カンフーハッスル』でおネエキャラの仕立て屋さんが構えてた型と一緒だなー、とか、洪家拳といえばワンチャイの黄飛鴻だよな、とか、さすが劉家良の指導だな、なんて自分の持てるだけの(笑)カンフー知識を動員して見入っていた。しかし、原題は《洪拳小子》なのに、英題は“少林の弟子”という意味…。えーと、洪家拳と少林拳って違うんじゃないの?え、同じ?後で調べるか。

 これが初見となるフー・シェン。“クンフーの貴公子”呼ばれるだけあって確かにいい男だったわー。見方によっては某台湾人気男優(これ以上は言えない!これを言ったらおそらく両方の迷にブーイングされる!)と思ったりして。
 しかし、なぜ今まで彼のことを知らなかったのだろう?と思い、検索でたどり着いたキングレコードのショウブラサイトで知野次郎さんが書かれていた評伝を読んだところ…。そうか、25年前に若くして亡くなっていたのか。ジェームズ・ディーンや赤木圭一郎と同じだったんだ(泣)。しかも、この記事を書いている今日が彼の命日だ。今生きていたら54歳か…。それを思うと、この映画で描かれたクワンが駆け抜けた短い青春が、より切なく思えてしまうじゃないか。

 そうそう、彼の流麗なアクションにはもちろん目を見張ったんだけど、個人的に物語は結構痛かったんですよ。靴も買えない貧しさだけど、少年らしい純真さと正義感で真っ直ぐ進むクワンが、自分が戦うことでどんどん出世はしていくけど、そうすることで恵まれていって、どんどん欲も出てくるわけだし、最後にたどり着くのは当然…と思っていたから、なおさらね。普通主人公は死なないじゃないの!でも…(大泣。微妙にネタバレしとるな)と思えば、ねぇ。
 そういう悲しさを吹っ飛ばしたのが、彼を実の弟のように愛して(って語弊があるな)気にかけた兄弟子ホアンが、ラストで見せる怒りの一撃必殺鶴拳だったのだが、そこで終わりかよ!と余韻もなく“劇終”を迎えたのに驚き。ああ、昔の映画らしいよなぁ、こういうアッサリさが。しかし、ホアンを演じたチー・クアンチュン、すごい筋肉美だったな(正直な感想)。

 こういう男性向け功夫アクション作品は、自分から進んで観ることはないだけあって、今回スクリーンで観られたことはよかった。食わず嫌いしないで、他の作品も機会があったらDVDでちゃんと観るか。
 さらに張徹作品もこれで初見。彼の名前だけは香港電影資料館の企画展を見たことで知っていたんだけどね。ウーさんの師匠格に当たるってこともあわせて。

原題&英題:洪拳小子(Disciples of Shaolin)
監督&脚本:チャン・チェー 脚本:ニー・クワン 武術指導:ラウ・カーリョン
出演:アレクサンダー・フー・シュン チー・クアンチュン

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