龍虎門(2006/香港)
ただいま“香港映画に愛とリスペクトを!”運動実施中のもとはしです。
え、いつもだろ?…まーそーなんだけど。
しかし、最近の日本における香港映画プロモーションは、なんか我々香港映画ファンを大事にしないで、パンピー受けを狙おうとして余計な飾りをつけすぎて失敗しているって気がしてならない。それを痛感したのが、この『龍虎門』(サウンドはオフにして見ることを推奨)日本公開時のプロモーション。
『SPL』で凄まじいアクションを見せたド兄さんことドニー・イェンと、ウィルソン・イップ監督がふたたびコンビを組んで作ったのは、香港のマーベルコミックスといった具合の、黄玉郎による同名の超長編漫画を原作にしたアクションファンタジー。今から10年前に映画化された『風雲』や『中華英雄』の流れを汲む、カンフー&ワイヤーアクション&CGのミックスによる、正統的なバトルファンタジーなのに、なぜか日本では“ヤンクアクション”などというふざけたコピーをつけられ、邦題も限りなくヤン○ーくさい“かちこみ!”などという言葉が加えられ、単に決めポーズが似ているからと言って当時の人気お笑い芸人が吹替を担当するわ、イメージソングにゃ某ぬぎぬぎシンガーの従兄弟の既存曲が勝手に決められ、挙句の果てには吹替版メイン公開の悪しき前例まで作りやがった(その前にイニDもそうだったんだが、まだあれはいいほう。字幕版の公開も多少あったから…)。
ちなみにこれ、地元でも上映されたんだけど、当然吹替版のみの公開で、やる気をなくして後回しにしていたら、2週間上映が1週間で打ち切られていたという憂き目にあった次第。
ええ、当然“ダサい邦題に反対する会”(参考としてKEIさんのところのこの記事を)には喜んで参加いたします。
タイガーこと王小虎(ニコ)は非力な人々や孤児に武道を授ける正義の武道家集団「龍虎門」の師範だった父親を持ち、自らも武術を体得して日々鍛錬している血気盛んな若者。ある日、とある食堂でヤクザのマーが持つ令牌を偶然入手してしまった彼は、マーの用心棒であるドラゴンこと王小龍(ドニー)と対決することになる。
実はこの二人は兄弟であり、二人の母親が父と別れたことにより、離れ離れになってしまったのだ。母はドラゴンにいずれは龍虎門に戻るようにと、タイガーと揃いの札を彼に託していたが、ある日アパートの火事に母親が巻き込まれて命を落としてしまう。その場をマーに救われて以来、ドラゴンはマーとその娘シウリン(董潔)に仕えることになり、龍虎門で会得した技を出入りの場に使ってきていた。タイガーと再会し、龍虎門に戻りたいと思っても、罪なき人々を自らの手で殺めてきた過去を悔いた彼は、戻ることができないと思い込んでいた。
現師範のタイガーの伯父(元華)の元には、ヌンチャク使いのターボこと石黒龍(ショーン)という若者が訪れ、龍虎門への入門を願っていた。タイガーは令牌を巡るいざこざの最中にターボと出会っていたが、それがきっかけで友情を育むことになる。師範との対決で自分の器の小ささを知り、己を悔いたターボもやがて入門を許され、共に鍛錬するようになる。
マーは娘のためを思ってやばい稼業から身を引くことを決意し、令牌を暗黒組織羅刹教を率いる火雲邪神(声・古天楽)に返却した。彼の裏切りに激怒した火雲邪神はマーを暗殺させる。また、火雲邪神の養女ローザ(リー・シャオラン)はドラゴンと恋仲になっていたが、彼女の本心を知っただけでなく、恩人であるマーを守りきれなかったドラゴンは大きな衝撃を受け、精神的にも打撃を受ける。
そして、ついに火雲邪神自らが龍虎門を襲撃する。その力は強大すぎてタイガーとターボは簡単に倒されてしまい、伯父もまた火雲邪神によって絶命させられる。満身創痍のタイガーとターボを介抱したシウリンは、彼らを救うために白雲山のケイ師(黄玉郎ご本人)を訪ねる。彼女の願いを受け入れたケイ師は、二人に厳しい試練を課し、火雲邪神を倒すための新しい技を授ける…。
なんかねー、懐かしいっす。香港コミックが元になっているってこともあって、ノリとしては『風雲』や『中華英雄』を彷彿とさせるからね~。一見チンピラ風の美形キャラがどんどん登場するって面は古惑仔シリーズにも通じるけど、それらの作品よりこの原作の方が歴史が長いのだからそれもそうか。
そういえば、今年は『風雲』が作られてちょうど10周年で、折りしもイーキン&アーロンのオリジナルキャストに加えてニコも出演するという続編(監督はパン兄弟。もしかして久々の非ホラー作品では?)も作られていることもあり、スタッフ&キャストも全然違うのに、ついつい比べている自分がいた。
ドニーさんの本格アクションとニコたちのワイヤー&CGアクションを違和感なくミックスさせ、ウィリアムさんデザインによる、これまた『2046』チックな近未来香港をスクリーン上に構築して展開させる、まさにマンガじゃん!としかいえない世界観。香港映画におけるCG技術の進歩を大いに実感し、これならハリウッド版が賛否両論の『七龍球』も香港で映画化すべきだったんじゃないか?とぞ、思ふ。もちろん亀仙人はユンファのままで(笑)。
マンガじゃん!といえば、『功夫』の梁小龍…じゃなくて火雲邪神。なぜか英語名シブミ。正体が日本人という設定だからか?しかしそのビジュアルは仮面にマントでどことなく特撮ドラマの悪役テイストなんすけど…。こりゃ、来年の仮○ライ○ーは是非香港を舞台にしてもらって、邪神さまにはそのラスボスに君臨していただかんと(冗談)。
本来ならニコが主役であるべきなんだろうけど、彼をアクションで食いまくっていたドニーさん。正直、若者二人と並ぶとうーむ…って感じの若づ(こらこら!以下略)なんだが、それは相変わらずのオレ様アクションでカバーってことで。
ニコは、前髪長めのビジュアルも☆印タンクトップもよく似合っているし、血気盛んでありながら龍虎門の若造どもをまとめ上げるリーダーシップもあって頼もしいんだけど、それ以外の個性が見えないのが残念(泣)。
銀髪に左頬の傷って、ちょっとアレンジしたら某天才無免許外科医だよな、と思ったショーンのターボは和み担当(個人的意見)。…しかし、長髪が似合わないのか、それとも銀髪が、なのか?
そのほか、意外と香港映画&広東語吹き替えにもなじむ董潔ちゃん(存在が花瓶なのはしょうがないのだが)、ちょっとだけの出番でも相変わらずの存在感だった元華さんは、見ていて嬉しかったのはいうまでもなし。
気楽に観るには悪くない出来。でも、劇場で広東語で観たかったなぁ。そして、公開時に思いっきりツッコミしたかった。観る時機を逸したかなという気もあったけど、ちゃんと字幕版で放映してくれたムーピープラスには大いに感謝。
邦題(苦笑):かちこみ!ドラゴン・タイガー・ゲート
監督:ウィルソン・イップ 原作:黄玉郎 音楽:川井憲次 ビジュアルコンサルタント:ウィリアム・チャン アクション指導:ドニー・イェン
出演:ドニー・イェン ニコラス・ツェー ショーン・ユー トン・ジエ ユン・ワー リー・シャオラン ハワード・シッ ルイス・クー(声の出演)
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