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《豪門夜宴》(1991/香港)

 ネットや新聞で続報を聞くたび、現場のすさまじさ、悲惨さに愕然としてしまう512四川大地震。現地ではネットによるデマでミネラルウォーターが奪い合いになっているという報道もあるくらい混乱を極めている様子だが、日本の救助隊も現地に向かえることになったというし、都会の開発や五輪の準備を完全に後回しにしてでも、被災民の救助に全力を挙げてもらいたい、そして、被災した全ての民族には平等にケアしてもらいたいと願う次第。

 早速、香港ではエンタメ界を挙げてチャリティプロジェクトが立ち上がった様子。
もともと香港は芸能人のチャリティが盛んなところ(もちろん、某韓流スター登場以前から行われていたもんね)。毎年行われている飢餓撲滅のためのマラソン断食イベント『飢餓30』や子供たちを守る『護苗基金』など、著名な明星たちが参加&主催しているチャリティイベントも少なくない。愛はなんちゃらを救う以上に積極的なのだ。

 もちろん、香港映画界では、多くのチャリティ映画も作られている。
最近ではSARS被害のチャリティショートフィルム集『1:99 電影行動』が知られるが、ここ20年間の中で一番規模の大きなチャリティ映画が、この《豪門夜宴》である。これは、1991年に中国華東地方を襲った大規模な水害の被災者に対するチャリティ映画であり、当時活躍していた香港映画人はほとんど出演している…といっても、成龍さんとユンファ兄貴とリンチェイはいなかったのだが、それはおいておこう(多分スケジュールの都合だろう)。撮影期間はなんと1週間!さすがだ香港!

 1991年の香港。成金の建築業者ツァン(エリックとっつぁん)は下町の茶餐廰を買い取って一儲けしようとするが、ライバルのハン(サモハン)に出し抜かれ、悔しい思いをしていた。そんな折、湾岸戦争で荒廃したクウェートの王子アリババ(ジョージさん)が来港し、都市再建プロジェクトを香港の業者に受注する計画があると知ったツァンは、なんとか王子に取り入ろうとあれこれ計画を練る。もちろん、ハンもそれを狙っていた。
 婿養子である自分にまったく威厳がないと思ったツァンは、妹夫婦と同居する父(リチャード・ン)の誕生日パーティーに王子を招待することにした。そして、「自分はガンで余命わずかだからどうか同居してくれ」と嘘をついて、父を自分の家に連れて行く。部下の阿偉(トニー)に父の面倒を任せ、パーティーの準備に精を出すツァンだったが、自分の思惑通りにことが進むはずはなく…?

 現在名実ともに“香港映画界のゴッドファーザー”となったとっつぁん、変わってないけど若ーい!でもすでに頭髪がヅラ的雰囲気で…。実際に頭髪の一部がはがされる場面もあるし。ライバル役がサモハンってとこですでに勝ち目がなさそうなのだが、あれこれウラ工作してはどツボにハマり、負け犬の悲哀をかみしめながらも最後は大逆転!ライバルも味方も関係なく、みんなで一緒に屋台でパーティーを開き、飲めや歌えやで盛り上がろうよという、往年の香港映画の和気藹々ぶりがうかがえるラストシーンにご機嫌になる。数年後に映画興収が西港逆転してしまうことを考えれば、香港映画にとってこのころが一番いい時期だったんだろうな…。

 最初から最後まで大活躍のとっつぁんを始め、ちょいと出の皆さんもみんないい味出しております。トニーの出番が意外と多かったのは嬉しかったなー。短髪&Vシネのチンピラ風ファッションといえば『ハードボイルド』だけど、あの映画の撮影の間を縫って出演したんだろうか?學友さんがまだまだ青二才っぽいのもよかったな。エリック・コット&ジャン・ラムも“硬軟天師”をやっていたころで、阿吽の呼吸で笑わせてくれたわ。
 あと、王子を迎えるパーティーの直前、とっつぁんが見る夢の中の登場人物の無駄な豪華さはさすが。トイレを借りにきた梅姐、車が壊れたサリーさんを始め、若くて陽気なシルヴィア姐さん、王子で登場のタム校長&「40」と「盗賊」という名の部下、怪しげに登場する星仔もとい星爺、妻がいきなり変身したコン・リー(当然台詞は一人で北京語)、その彼女が「アナタはチャンさんでしょ?」というと、いきなりレスリーに変身していたとっつぁん…。とにかくこの場面は面白かったのよ。

 この映画、ちゃんと日本で観られる機会があればいいのに、と思っていたら、すでに香港ではこの映画の権利が不明になっていて、問い合わせができないということを映画宣伝を生業とされるFREEMANさんのblogで知った。ああ、ガッカリ。
 こういうThat's Real 香港映画!的作品が日本で観たくても、権利関係で難しいというのはもったいない話だよなぁ。
 …それを考えれば、来月下旬に渋谷のシアターNで上映される「香港レジェンド・シネマ・フェスティバル」は奇跡みたいなものなんだなぁ…。

 なお、今回からは“四川大地震一人チャリティ映画祭”と称して、1本香港映画を観たあとに地元の募金箱(by赤十字社)に募金するようにしております。

英題:The Banquet
監督:クリフトン・コウ ツイ・ハーク アルフレッド・チョン ジョー・チョン
出演:エリック・ツァン サモ・ハン・キンポー ドゥドゥ・チェン リチャード・ン トニー・レオン
ジャッキー・チュン レオン・カーファイ Beyond グラスホッパー エリック・コット ジャン・ラム マギー・チャン ジョイ・ウォン アラン・タム アニタ・ムイ サリー・イップ シルヴィア・チャン チャウ・シンチー コン・リー レスリー・チャン ジョージ・ラム ティ・ロン リディア・サム アーロン・クォック アンディ・ラウ テレサ・モウ その他香港中の監督や俳優の皆さん

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コメント

 トニーは「ハードボイルド」と同じ柄シャツを着ているし、時々目つきが意味も無く不敵なまんまだし、ジョン・ウー監督は神父姿で飛び入りするしで、やはり「ハードボイルド」撮影中にウー監督に引率されて出演したんだと思うですよ。
 怪演サイモン・ヤムヤムに「ステップの練習」っつって、無理やり腰抱かれて一緒にステップ踏むところが可愛くて大好き。学友との愉快なコンビぶり、カリーナ&マギーコンビとの珍しい掛け合いも。今のトニーの立ち位置と比べると、隔世の感がありますよねー…。

投稿: nancix | 2008.05.18 03:52

 これ、すでに15年以上前の作品なんですよね。
久々の短髪だし、どこか肩の力が抜けてるし、観てて楽しかったですよ。この頃からかなり濃かったヤムヤムとは見事な好対照。

 今回もまた、チャリティ映画の製作が企画されているのでしょうが、あの時とは映画界も状況もガラッと変わっているので、どんな感じになるんでしょうかね。たとえトニーの出番が少なかったとしても、実現するなら楽しい作品を作ってもらいたいものです。

投稿: もとはし | 2008.05.18 11:48

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