少林少女(2008/日本)
「オマエのやっているのは少林拳の『型』だけにすぎない」
これは、『少林少女』のヒロイン、桜沢凛(柴咲コウ)に対して、元彼女の師匠であった中華料理店の店主岩井拳児(江口洋介)が言い放った言葉。
この言葉の「少林拳」を「カンフー映画」に変え、この映画を企画・製作した富士電視台に投げ返してやりたい、と思ったのはワタシだけなんだろうか。
もちろん、観る前に十分覚悟はしていたのはいうまでもない。
つっこんだり、悪口を言うためだけに映画を観てはいけないっていうのも十分わかっている。
それなら観ないほうがましだとは思うんだけど、それでも観てしまうのは香港電影迷であって一人勝手に香港映画の名誉回復に力を入れてしまう自分の悲しい性か。
とにかく、予想したとおりの中途半端さ。それは予告を見ただけで容易に判断できたけどね。
少林拳を会得した女の子の大活躍といういかにもな物語には特に文句はない。それにいまさら文句もへったくれもないからね。でも、それで星仔映画や過去のカンフー映画の名作のいいとこ取りをしたとしても、残念なことにそれがまったくいいとこになっていないのだ。アクションもちゃんと香港から本職を呼んで来ればいいのに(『修羅雪姫』のドニーさんとか、『どろろ』のチン・シウトンなどが日本映画に参加済みだしね。そうでなければ谷垣健ちゃんでもいいんじゃないの?でも彼は『カンフーくん』にかかわっていたか)、それもしないし。ただCGでごまかしゃいいってもんじゃないんだよ。
加えて物語もかなり破綻している。
師匠の料理店で働く国際星館大学の留学生ミンミン(日本じゃこれで初登場かよ…のキティ・チャン)に誘われてラクロスを始め、一人突っ走りそうになるのを師匠にとがめられ、初試合でノーコンっぷりを発揮して惨敗させたのに、それがなんでチームワークを無視しているからにすり替えられるの?そうか、ノーコンってチームワークを学べば克服できるのか(違う違う)という強引な納得をさせられ、せっかくラクロスメンバーと意気投合してこれから!ってとこでこれまた強引に力を尊ぶ大学の大場学長(トロさん)につかまれ、強引に対決に持ち込まれる。っていきなり話を変えるなよ。そして、ただの少林拳バカ、もとい未熟だった凛はその戦いの終盤で、いきなり目覚めてしまうのだが、なんでそこで唐突に目覚める?しかもそういう目覚め方かよ?と心の中で思いっきり突っ込む。
確かに、破綻した物語展開は香港映画でも珍しくない。しかし、莫大なお金をかけたメジャー系日本映画でそれをやっちゃーおしめぇだろう。
プロデューサーと監督よ、香港映画をなめてませんか?香港映画をなめたらいかんぜよ!
物語からそんなんだから、キャストにも頭を抱えさせていただいた。
コウ小姐には悪いことを言いたくないが、なんで彼女じゃなきゃいけないのか?少林拳ならぬ少林寺拳法の使い手なら、水野美紀小姐(奇しくも彼女は『踊る』関係者じゃないか)がいるじゃないか!もうすでに“少女”じゃないけど。…ところで彼女が香港で撮ってた『さそり』ってどーなったんだろう。
師匠の江口。…あれ、いつまたロン毛に戻ったの?(付け毛だってば)こーゆー小汚い役の彼ってあまり見たことないけど、師匠にしては威厳がない。久々に悪役のトロさんは上半身裸も見せてサービスしてくれるけど、ジェネックスの赤虎のときほど光っていないよな。ほえんあいわずとえるぶいやーずおーるど、あいそーあごーすと。←意味もなく赤虎の台詞
カイマン&ジーチョンの兄弟子コンビ、扱いはあんなもんなんだろーけど、もっと大暴れさせてよかったんだぞ、シャチョーサン!あ、お初のキティはかわいかったです。顔はともかく、思わず胸に注目してしまったワタシは何?
そして岡村さん…うーん、今回もまた微妙だったよなー。彼のカンフー映画への偏愛ぶりはもちろん承知なんだけど、それでもどうも違和感を禁じえないのはいったいなんでなんだろう。いや、岡村さんが嫌いとかそんなんじゃないんだけどさ。
もったいなかったのはラクロスチームの女子の皆さん。知っている若手女優も多かったこともあって、彼女たちにももっと活躍してほしかった。てか本編で全然目立たなくてエンドタイトルで大活躍っていう、あの扱いはひどいよ。逆にちょっと出の街の人たちが豪華な無駄遣い。商店街の店主の一人を演じていたトータスさん、確か以前少林サッカーは好きじゃないって言ってたことを思い出したぞ。
一つ誉めるとしたら凛のじーちゃん。よくもまぁ、あのお方を引っ張り出したねぇ。まぁ、同じ分野出身のアンノさんとか監督つながりで岩井俊二さんも役者経験ありますからね。
ところで、さらに頭を抱えさせてしまったのは、ランキングでしか良し悪しを判断できないオリコンのこの記事(Yahoo!ニュース経由)。
ああ、これでジェイの『カンフーダンク!』公開時に変な先入観がつかないことを祈るばかりだよ…(泣)。
監督:本広克行 製作:亀山千広 脚本:十川誠志&十川梨香 音楽:菅野祐悟 アクション監督:野口彰宏
出演:柴咲コウ 仲村トオル 江口洋介 岡村隆史 キティ・チャン ティン・カイマン ラム・ジーチョン トータス松本 麿 赤兒 富野由悠希
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コメント
はじめまして、ブログ読ませていただきました。
私も見たんですが、面白くなかったですね。観客がラストのシーンで鼻で笑ってました。
カンフーハッスルに遠く及びませんね。
失礼しました
投稿: ニコルソン | 2008.04.28 21:55
コメントありがとうございました。
あまりのひどさに、帰宅してから速攻で録画していた『カンフーハッスル』を観て口直ししましたよ。
今後もこういう感じの“なんちゃってカンフー映画”の公開が続くので、シンチー本来の新作『ミラクル7号』や彼と同じくカンフー好きのジェイ・チョウ主演の『カンフーダンク!』が日本公開されるときに、余計なことを言われるんじゃないかと心配しております。
投稿: もとはし | 2008.04.28 22:07
キティ・チャンはモックン&ヴィッキーの『夜の上海』が(日本)初登場です。でもどこに出ていたか気づかなかったけど・・・
投稿: Kumi | 2008.04.29 08:07
キティの日本初登場は『夜の上海』でしたか。
確かにアレはどこに出ていたかわからない…。
モックンがスタイリングを手がけていたモデルさんの一人でしょうかね。
投稿: もとはし | 2008.04.29 16:17