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男たちの挽歌Ⅱ(1988/香港)

 彼らが銃を取るのは、勝利のためじゃない。
 彼らが戦うのは、復讐のためじゃなく、死んでいった者たちの悲しみを背負うためである。死んでいった者たちを悼み、彼らの涙を銃弾にこめる。
 だから彼らは喪服をまとい、最後の戦いに赴くのである。

 考えてみれば、この映画の邦題はまさにこれしか考えられない。なんてうまいんだ。
 そして、この2部作には、ウーさん映画の全てがこめられている(もちろん、『狼』や『ハードボイルド』もそうなんだが)。さらにハリウッドでその魂をうまく翻案したのが『フェイス/オフ』だと思うのだが、いかがなものか。

 すでに前作のラストでユンファ演じるマークが死んでしまっているのに、彼にはアメリカに双子の弟のケンがいた、というあまりにもご都合主義な設定ってどーよ?とつっこむのはお約束だけど、そんな設定が気にならないのは、ケンがマークに負けず劣らずいいキャラクターになっていて(「米を大切にしろ!」は名台詞だなー)、前作にもましてドラマティックに描かれる男たちの転落と逆転、そしてプライドとリベンジに加え、チン・シウトンが繰り出す壮絶なアクションシーンもふんだんに盛り込まれているからか。そのせいか(そうか?)皆さん血まみれでございますし、なんてったってシウトンさんなのでなぜか日本刀アクションあり。ティ・ロンさんの往年のアクションスターっぷりが思い出させられるような殺陣も堪能できる。

 また、2ではレスリー演じるキットが1よりも前面に出てきている。それゆえ、レスリーを観るなら断然2のほうがいいといわれるのかもしれない。
 兄への恨みも晴れ、兄のことを知りたいと黒社会への危険な潜入捜査に赴くが、それは当然私生活に軋みを生む。せっかく結婚し、臨月を迎えている妻ジャッキー(エミリー)を放っておくなんて、なんてもったいない、などとちょっと思ったりして。ジャッキーが某☆月の家寶の妻のように、夫の潜入捜査という仕事に耐えられずに心を病んで自ら命を絶ってしまうなんてキャラじゃなかったことは救いではあるんだけど。(つーかあの設定もご都合主義っぽいぞ、と暴言吐いてみる)
 それはおいといても、キットはケンと知り合い、“弟同士”で意気投合する、ごく短い場面は微笑ましかった。後にキットが悲しい最期を遂げてしまうだけあって、なおさらね。キットが命を落とす場面で流れるレスリーの歌が、いま聴くとまるで彼自身を葬った時のように聞こえて、たまらなく切なかったよ…。

 忘れちゃいけない、2での重要キャラであるディーン・セキ演じる龍(ルン)。
ホーの偽札作りの師匠である彼は本来なら敵に回らなければならないわけだが、彼もまたホーと同じように自分の仲間に裏切られ、娘や親類を次々に失って自ら心を閉ざしてしまう。それをケンやホーが目覚めさせ、プライドを取り戻す。構造はまったく同じなのだが、彼のどん底への堕ち方があまりにも強烈なので、その見事な復活には改めて「ううう、漢だ」なんて呟きたくなるのである。

 転落と復活、死に逝く者への哀悼、その末の激しいアクションシーン。 
度を過ぎた銃撃や流血は気分が悪くなるが、ウーさんのアクションで気分が悪くならないのは、それに悲しみがこめられているからだと思う。喪服や教会もそれを表す記号であるのだろうし、後に定番となる鳩だってそうなのかもしれないな、などと徒然に書いてとりあえず終わりにしたい。

原題(英題):英雄本色Ⅱ(A Better Tomorrow Ⅱ)
監督&脚本&出演:ジョン・ウー 製作:ツイ・ハーク アクション指導:チン・シウトン 音楽:ジョセフ・クー
出演:ティ・ロン チョウ・ユンファ レスリー・チャン ディーン・セキ エミリー・チュウ ン・マンタ ケネス・ツァン シン・フィオン

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