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易先生のフルネームってなんだろう。

 土曜に『ラスト、コーション』を観に行った時は、年配カップルの他には男性一人客が目立つなーなんて書いたのだが、この映画を男性二人で観に行ったという強者(!!)の話を聞いた時、思わず「おいおい、これは男二人で観に行く映画か?」と思わず苦笑してしまった次第。…実家の皆さんすんません、ネタにさせていただきました。
 昨日発表された全国観客動員数では圏外だったらしいけど、それでも別にガッカリはしていないよ。でも、都市部で入りが順調でもうちのようなローカルが弱いというから、来週の動員数にも貢献しなきゃ。今週末は待望のレイトショー上映もあるし、体調を整えてじっくり観ようっと。(多分「会社帰りに観たいのになぜ夕方上映しかないの?」という勤め人映画ファンの同志から映画館側に意見があったのかもね。うちの映画館は1週目からレイトショーがつかないと、昼間&夕方上映オンリーになるから、時間をやりくりするのに大変なのだ)

 さて、飽きるまで続ける『色、戒』感想キャンペーン、今回はキャラクター&俳優陣への感想を。
まずは易先生。彼のモデルが汪清衛(兆銘)政権の特務機関「ジェスフィールド76号」を指揮していた丁黙邨であるけど、これについてはパンフ始めいろんなところで述べられているのでパス。
 映画に先立って読んだ原作ではねずみ男…もといねずみ顔の男として易先生が描写されているのだが、さすがに原作そのままじゃー映画にはできんわな。(そーいえば『ブロークバック』の原作でも、イニスはあまりいい男として描写されていなかったという)
 で、易先生を演じるトニーに対して、全体的に感じた一言。

…怖い。

 やってることがというよりも、全身にまとう雰囲気が悪夢に出てきそうなくらい怖い。佳芝に対する最初の性的虐待(あれは間違いなくそうだろう)のくだりまでは、どんな服を着ていても危険な雰囲気をぷんぷんさせていてとにかく怖い。しかし、佳芝に「私は誰も信じていない」と吐露し、彼女に溺れていくようになると変化が見えてくる。色によって戒が解かれたってわけだな。
 それでも、終幕ではその愛が彼女の任務のためだったとわかっても、易先生は色を選ばず、自らの戒を選んだ。これは恋愛映画としてみれば確かに残酷であるけど、当然の選択でしょう。おそらく易先生はこの時点で、漢奸である自分が無事に寿命をまっとうできないという覚悟もあっただろうし、もし彼女を救ってもこの時代だから逃げ場所はないと思っていたのかもしれない。

 いくらトニーが演じているとはいえ、感情移入がしにくい複雑なキャラクターだ(セックスシーンは全体的に無表情だしな)。確かにこんな役を演じてしまったら、心身ともに疲労困憊してしまうよ。観ているこっちも大変だったんだから。念のためにいえば、この「怖い」という言葉には、ワタシなりの多少の贔屓も入っているので誤解なきよう。

 お次、日本ではトニーより露出が多い(それも仕方がないんだが)湯唯小姐。
最初ワイズポリシーマガジンで写真を見た時、池脇千鶴嬢のお姉さんみたいだなーと思ったのだが、どーもそれがアタマの中にこびりついちゃって、ちーちゃん的表情を見つけては「やっぱりー」などと一人で楽しんでいた。アホかワタシは。国内外でいろんな人に非難されること間違いなし(冗談)。
 …でもね、この役、ツーイーじゃなくて彼女でホントに正解でした(爆)。
もちろん、すでに名声を博した女優さんが次の段階に進むために演じるためには非常に魅力的だと思うんだけど、ツーイーではちょっと不安かもなー、そして物足りないなーと思ったのよ。湯唯小姐は映画初主演とはいえどもずぶの新人というわけじゃないらしいけど、初映画で女性の一番美しい時を予想以上に魅力的に演じきってくれたことを素直に称賛したい。
 「中国的新世代性感偶像(漢字は当て字です)」とか言われても、彼女には今後はいろんな役どころに挑戦してもらいたいなぁ。ベタなコメディでもいいし、香港に来てくれてもいいし。ハリウッド?行かないほうがいいよ。

 忘れちゃいけない宏くん、彼が演じた裕民だって重要人物なのは間違いない。
裕民は中国のプロパガンダ抗日映画では確実に主役となりえた熱血漢なのだが、原作ではもっと思慮深いカリスマ的リーダーと読み取ったんだけど、実はそっちの方が誤解だったんだな。宏くんはミュージシャンとしても清潔感あふれるキャラなので、それに合わせて好演していた。
 で、映画での裕民のキャラクターは、実は易先生や佳芝以上に色と戒に翻弄された人物じゃないかと思い当たった。愛国心に満ちあふれて国を救おうとしても、あまりに若すぎるボンボン。抗日運動にかまけて女を知らず、動揺のあまり曹をめった刺しにし、やっと自分が佳芝を愛していると知ったとき、彼女は心身ともに成長し、ある意味で自分を超えられてしまった…。最後の任務に赴く佳芝に彼がキスしたのには、正義に自分の心身的成熟が追いつかなかった彼の歯がゆい気持ちがこめられていたのだろうし、それまで裕民が彼女への思いを見せるという場面が入っていないだけに、そうなんじゃないかという気もちが強くなる。裕民たちのグループはこれまで様々な媒体で描かれてきたレジスタンスの中では非常に幼い集団としてかかれていて、仲間内でセックスすらないというのがちょっと引っかかったんだが、実際に情熱だけで突き進んで潰れていったグループもあるのかもしれないな。 
 もちろん、ラストに二人で顔を見合わせる場面も印象的。

 ちなみに宏くんの演技を見るのはこれが初めてざんす。彼は李安先生を尊敬するとあって、充実した仕事だったんだろうなってことが、彼の演技を見ていて伝わってくる。トレードマーク(?)のたくましい二の腕披露サービスもあるしね。

 他に印象的だったのは、重厚な存在感を示したジョアンさんの易太太、重慶のレジスタンスの親玉呉を演じ、個人的に久しぶりに顔を見た台湾の中堅俳優トゥオ・ツォンホア、意外なところで見かけてビックリのルンルン演じた梁。佳芝と裕民の仲間で、佳芝の最初の男となった彼だけど、せめて「嶺南大学」の校名入りランニングを脱いでからちゃんと全裸でセックスしろよ。見ているこっちも萎えるよキミ。

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コメント

 易先生のご尊名は、易黙成ですよね。処刑執行命令書に墨文字でサインしてましたよね。
 丁默邨と、張愛玲と年の差カップルになりながら、漁色を止めず次々に女を作り、ついに離婚した胡蘭成とのミックスぶりが、何とも。
 易先生の人物像には、さらに蒋介石側近で国民党軍特務首脳=藍衣社の頭領だった戴笠も投影されているそうです。
 トニーにしては低く抑えた声色がまた、異色なんですよね。
 ネズミ男大泉洋、じゃなくてネズミ顔の葛優が易先生を演じていたら、車内セクハラシーンはさらに不気味なホラーになっていたことでしょう……きゃぁぁぁぁぁあぁあぁぁ。
 ルンルン君は立派に「萎え~」男を演じていましたね。太っちょ君、スポンサーなのに運転手役君、どうもサンドラ・ンーに見える女友達と、学生たちは見事にハマり役。ドラマ「のだめカンタービレ」出演者達がいまや大活躍しているように、今後の飛躍を期待したいです。(例えがヘンだぞ)
 

投稿: nancix | 2008.02.08 00:57

 nancixさん、易先生のお名前情報ありがとうございました。近日再見時(予定は明日の夜)に件の場面を注意して観たいと思っております。
 原作通りに受け取れば、やっぱりカンヌウィナー先輩の葛優さんが易先生ってイメージなんでしょうか。『野宴』の皇帝みたいないかにも的いやらしさをぷんぷん出されたら…はははははははは。
 佳芝と裕民の学友たちは、ルンルン以外は台湾と香港の無名の若手を揃えていますね。あのサンドラ似の女友達の女優さんは、『暗恋桃花源(楽園のかなたに)』の舞台演出家スタン・ライ監督に見出されたそうで。確かに今後の台湾&中華圏電影での活躍が楽しみな面々ですね。

投稿: もとはし | 2008.02.10 01:07

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