北京語使用者は、地方の言語が苦手らしい。または『色、戒』の言語状況について
ジェイ演唱会ですっかり舞い上がっていましたが、それでも続いてます『ラスト、コーション』キャンペーン。
ええ、某「週刊○春(この雑誌、昔は面白かったのに…)」のオヤヂ目線記事には決して負けませんし、今頃オヤヂ系週刊誌が色めき立っているえぢのあの事件にも目を向けさせないような記事にしますわよー!
…ってそんな文才ないだろ自分。
さて、今回は予告どおり、『色、戒』における言語状況なんぞについてちょこっと。
この映画は台湾&中国メインで作られているし、舞台も中国大陸なので、当然使用言語は“普通話(台湾では「國語」)”と呼ばれる北京語。日本で一般的に中国語といわれるのがこれだよね。だけど、この映画には北京語をメインにしながらも、いろんな種類の言語が飛び交っている。ちょっと北京語をかじった人間だったらよくわかると思う。
まず、易太太が主として話すのは上海語。奥様たちの麻雀では発音がはっきりした北京語で話している印象だけど、親が上海出身の広東人である佳芝や、使用人と話す時は独特のしゃべり方になる。
そして、広東人の佳芝は大陸の人間なので主として北京語を使うけど、しばらく香港で暮らしていたので広東語も多少話せる。作戦決行の合図を裕民たちに知らせる時は広東語を話していたっけね。彼女は大学にまで進学し、上海でも学校に通ったり教師をしていたようなので英語も話せ(もともとの希望は父親が住む英国に渡ることだったし)、日本語も多少なりともわかるような設定だったのだろう。裕民も広東人なので、香港人の曹に近づく時は広東語を話していた。(後に曹が裕民たちのところに押しかけたとき、彼は北京語を使っていたけどね)
そして易先生だが、ずーっと聞いていると、彼だけは終始北京語で押し切っていたような気がする。太太と話す時も上海語じゃなかったもんな。易先生、一応上海出身って設定なんだっけ?
次に、役者からのアプローチを。
初の大陸映画(?)だった『英雄』では吹き替えだったトニーだけど、今回は全部自分で台詞をしゃべっていたので、今まで通訳の都合上北京語でインタビューする姿は見たことあっても(一番古い記憶は『ブエノス』の来日記者会見)、劇中で完全な北京語をしゃべるのはこれが初めてなんじゃないだろうか?ああ、台湾語が話せないからと耳の聞こえない設定になった『悲情城市』もすでに二十年近く前の話だし、同じホウちゃんの『海上花』ではホントは上海語を話さなければいけないところを、設定を広東から出向した役人という設定にしてもらって上海語なまりの広東語を話していたっていうこともかつてあったもんなぁ。
中国人じゃないワタシがいうのも生意気なんだけど(爆)、劇中のトニーの北京語はきれいだったと思います。聞きやすかったしね。
一番多言語を使いこなしていたのはなんといっても湯唯小姐。北京語・上海語・広東語・英語と4言語もしゃべっています。湯唯小姐は杭州出身とのことなので、もしかしたら多少上海語にちかい言語がしゃべれるのかな?なんて思ったんだけど、どの言語も難なくこなしていてよかった。話し方もナチュラルで、大陸女優さんにありがちなキンキンしたしゃべり(誰だとは言わない、あえて)じゃなかったのがまたよい。
宏くんは承知の通りABC(中華系米国人)なので、当然北京語はレッスンしたんだろうけど、言い回しがいかにも昔の熱血青年みたいでちょっと微笑ましかった。まー、役どころが演劇青年だからね。彼の演じる裕民と佳芝の学友は香港や台湾の若手をそろえているけど、確かに台湾人的な北京語を話していた。まぁ、メインキャストに台湾出身の俳優がいないから、かえって耳についたのかな。
ところで、なんでこんなことを考えたのかというと、実はそれはワタシに原因があるのでアルよ(笑)。
ワタシは20年近く北京語を学んでいるんだけど、5年以上学んでいる今の中国語の先生(ハルピン出身)曰く、ワタシのしゃべる北京語は完全に南方系らしいとのこと。そりゃー台湾で北京語を学んだのだから南方系だってことは意識してはいるけど、やっぱり先生が大陸人だからかな、先生も自分の言葉にこだわっているみたいなんだ。まーねー、ワタシは南方系が好きだから別に無理やり修正するつもりは全然ないよ(苦笑)。
でもワタシ、台湾人の北京語の特徴である「巻き舌がない」ことにはちょっと引っかかっているので、それはあえて意識して発音している。だから「我是(Wo shi)」はちゃんと「うぉーしー」と発音している。巻き舌のない「うぉーすー」という言葉を聞くと、一発で台湾人ってわかるからね。
さて、翻って台湾出身の俳優さんはどうかって考えると、台湾映画やもともと台湾人って設定であれば、発音はナチュラルに話しているのも無理はない。だけど、そんな彼らが大陸の映画にでる場合はしっかり発音が直されているような印象を受けるのだ。ってそれは単にアタシの耳の聞こえ違い?
ここでまたジェイの話になるのだが、彼の北京語(あ、國語か)はいかにも台湾人的な話し方だ。見事に巻き舌がない。それもあってかわいく思えるのかも(こらこら)。先日のコンサートで「ボクの発音ははっきりしないから…」なんていっていたのを聞くと、あーなんだ、自分の発音がよくないってちゃんとわかっているんだって理解したしね。《不能説的・秘密》は台湾が舞台(蛇足だが舞台の淡水はワタシが半年ほど住んでいた街だ)だから、発音には気を遣わなくていいのだろうけど、大陸映画であるきんきらりん、もとい『王妃の紋章』ではダイアログレッスンを受けたりしたのかな?って結局またジェイに話が戻ってしまったわ。
軌道修正もこめて最後にこんなネタを。
先週、中国語に「もし中国の方言を勉強しなければならないとしたら、先生はどうやって勉強しますか?」という質問をしたところ、「それなら上海語は絶対勉強しない。ワタシは上海語がキライだから。広東語はもう言葉が全然わからないけど、上海語よりまし」との答えが返ってきました。「なぜ上海語が嫌いなんですか?」と尋ねると、「だって上海語って大阪弁に似てません?きれいな言葉じゃないですよ」との答えが…。
センセー、これで大阪人を敵に回した感があるんですが(爆)。
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