天堂口(2007/香港)
こーゆー場面はありませぬ(苦笑)。なんとなくジェネックス欲望の翼?
ジョン・ウーという名前は、すでに中華電影界はもちろん、ハリウッドをもを飛び越え、世界電影的なブランドと化した感がある。だって、ただいま公開中のアニメ映画『エクスマキナ』は、あの『攻殻機動隊』の原作者で、世界的にも知名度が高い士郎正宗の代表作『アップルシード』の続編的作品なのに、それよりも「ジョン・ウープロデュース」ってーコピーが前面に出ているんだよ。まーそれ以外にYMOの再結集で誕生したHASYMOの音楽参加やミウッチャ・プラダが衣装デザインに参加などという話題もあるらしいけど…。
そんなウーさんは今、約15年ぶりの長編中国語映画となる《赤壁》を撮っているわけだけど、中華圏復帰への準備としてとりかかったのが『桑桑と小猫』であり、製作として関わった『天堂口』であるような気がする。
1930年代の蘇州。貧しい家に暮らす若いフォン(彦祖)は病気の母親の薬代を稼ぐために、幼馴染のターカン(リウイエ)とシャオフー(トニー君)兄弟とともに上海に出る。フォンとシャオフーは人力車を引き、ターカンはキャバレー“天堂”のウェイターの職にありつく。このキャバレーは上海映画界の実力者と裏社会のボスという二つの顔を持つホン(孫紅雷)がオーナーを務め、愛と欲望に満ち溢れたクラブだった。ターカンはホンに取り入って仕事をもらい、フォンとシャオフーを誘うが、それは横流しされた武器を奪い返すヤバイ仕事だった。相手に気づかれて乱闘となったとき、フォンは初めて人を撃ち殺す。ホンは3人を気に入って自分の側近とするが、権力への欲望をあらわにするターカンにシャオフーはついていけなくなる。
敵の多いホンはある日刺客に襲われる。彼を襲ったのは彼の右腕にして実の弟であるマーク(張震)だった。彼はキャバレーの花形であるルル(すーちー)に恋していたが、彼女はホンの愛人にされていたのだ。そしてフォンもまた、ひょんなことからルルと知り合い、彼女にひかれていくのだが…。
ウーさんの壮絶な傑作『ワイルド・ブリット』を原案に、舞台を30年代上海に移し、彦祖に張震にリウイエにトニー君など、中華圏の若手を総動員したこの映画、確かにウーさんリスペクトなテイストに満ち溢れている。だって張震演じる殺し屋の名前がマークだよ!さすがに鳩は飛ばないけどガンガン撃ちまくるし、もろパクリじゃない適度なリスペクト具合は誉めてつかわそう(笑)。
しかし…リスペクトはいいんだけど、オリジナルが長い作品だったせいか、あるいは期待しすぎたせいか他に理由があるかどうか知らんけど、1時間40分じゃちょっと消化不良?と感じさせられたんですわ。ファーストシーンで「なぜこうなったんだ?」と愕然とするフォンの姿が映し出されたので、ああ、これがラストシーンなのかと思いきや、おいおいそうなるのかよ!(泣)と。あれこれ盛り込みすぎたせいか、えー、フォンとルルの恋模様の顛末はそれでいいのか!とか、シャオフーの堕ちっぷりをもう少し丁寧に…とか、言いたいことがいっぱいあって困る。これは一般公開が決まってからじっくり書いたほうがいいかしら?
そんなふうに物語と演出には「?」ばっかりだったけど、キャストはよかったです…てーかこれだけメンツ集めれば悪くないはずがないか(苦笑)。
彦祖は久々に主人公らしいキャラ。(それってどーゆー意味で書いている?)役割的には『ワイルド…』でのトニーにあたるのか?純粋で優しい青年が欲望にまみれた都会で過酷な試練を背負うけど、最後まで人を信じる心を失わないってところが非常に主人公っぽい。って当たり前のことをいうな。
リウイエ&トニー君兄弟。似てないな(こらこら)。しかしリウイエよ、キミはいったいどこへ行くんだ。郵便配達や藍宇はもう過ぎ去りし美しき思い出なのか!トニー君はひたすらかわいそうな役で、もう…。そういえばこの3人組の共通点は、いずれもゲイ役の経験があるってことか、どーでもいいが。すーちーはこれまたお得意な役どころですわね。完璧すぎて文句も出ない。嬉しいような残念なような。
しかし、なによりも一番よかったのが張震だったのよね。まーこの子ったらいつの間にかこんなにクールに成長してくれちゃって、15歳のころからずーっと見てきたおねーさんは嬉しいわ(照)。それでもあちこちで指摘されていますけど、確実に彦祖とはかぶりますよね(大笑)。
孫紅雷はすっかり悪役おぢさんになっちゃったなぁ。あのスキンヘッドは現代劇の悪役(もちろん香港映画での)でもいけると思います。
監督さんはホントに初長編だったということで、おそらくプレッシャーがきつすぎたのかもしれないけど、それはそれだけ期待されているってことよね。初監督でヴェネチアのクロージング作品に選ばれるってのもおそらく前代未聞だったんだろうし、それは今後に期待ってことで不満もとりあえずのむことにするか。
英題:Blood Brothers
製作:ジョン・ウー テレンス・チャン 監督:アレクシー・タン 衣裳:ティン・イップ 音楽:ダニエル・ベラルディネッリ
出演:ダニエル・ウー チャン・チェン スー・チー リウ・イエ トニー・ヤン スン・ホンレイ
| 固定リンク | 0
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 盗月者(2024/香港)(2024.12.30)
- 台カルシアター『赤い糸 輪廻のひみつ』上映会@岩手県公会堂(2024.12.21)
- 無名(2023/中国)(2024.08.16)
「香港映画」カテゴリの記事
- 恭喜新年 萬事如意@2025(2025.02.11)
- 盗月者(2024/香港)(2024.12.30)
- 【ZINE新作】21世紀香港電影新潮流(2024.01.22)
「日本の映画祭」カテゴリの記事
- 【香港映画祭2023Making Waves】ブルー・ムーン/風再起時(2023.12.05)
- 【香港映画祭2023Making Waves】マッド・フェイト/毒舌弁護人(2023.12.03)
- 【東京国際映画祭2023】Old Fox/白日の下(2023.11.23)
- 【東京国際映画祭2023】雪豹/ムービー・エンペラー/ミス・シャンプー(2023.11.08)
- 侯孝賢的40年(台湾映画祭in仙台で初期作品を観ました)(2022.01.03)
コメント
なるほど、ウーさんの「ワイルド・ブリッド」が原案なのですね。私は、どこかでこれは「刺馬(blood brothers)」のリメイクだっていうのを読んで、「投名状」もあるのに、そんなこと有るのかなぁと思ってました。
このポスターは滅茶苦茶カッコイイですよね。
投稿: tomozo | 2007.11.04 22:53
確か当初はそれでアナウンスされていたと思います。物語は多少違うんですけどね。
《刺馬》のリメイクと勘違いされたのは、英題が同じだからかもしれませんね。
投稿: もとはし | 2007.11.04 23:41