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早熟(2005/香港)

ジェイシー「監督、ボクこれから青山に行ってきます」
デレク「おお、気をつけて行ってこいよ。」
ジェ「…あのぉ、監督?今日はオフじゃないんですか?」
デレ「なんだ?なんでそんなこと聞くんだ?」
ジェ「だって、日本には結構監督のファンも多いですよ。ボクと一緒に青山行ってもいいんじゃないですか?ファンの皆さんが父さんの映画のロケで日本にいるってことは知っているんですし、この間はダニエルが撮影の合間に僕の映画を観に有楽町まで来てくれたってこともあるみたいですし」
デレ「そんなこと言われてもなぁ、今夜は横浜でスタッフと飯を食いに行くって約束しちまったし…」

 現在絶好調撮影中(多分)の《新宿事件》のロケ現場で、ジェイシーとトンシンさんの間でこんな会話が交わされた…ことは多分ないだろうな(苦笑)。
 と相変わらずの前振りはこのへんにして、成龍さんの息子さんとして日本でもぼちぼち紹介されるようになってきたジェイシーくんの出世作にして、イー・トンシン監督の快作『早熟』が満を持して映画祭で上映。上映前に舞台挨拶にやってきたジェイシーは、フラッとやってきてフラッと帰ってきた自然体青年でした。でもやっぱりお父さんの息子だなぁ…と思ったのも確かなこと。

 家富(ジェイシー)はできの悪い不良だけど、気はやさしい少年。そんな彼が一目ぼれしたのは、名門のテレサ女学院に通う16歳の若男(フィオナ)。名門校の男子学生のふりをして学院に潜り込んだ家富は若男と意気投合。厳格な敏腕弁護士の両親(アンソニー&キャンディス・ユー)に育てられ、自由を求めていた若男は家富の奔放さにひかれ、執事(シウホン)や家富の両親(エリックとっつぁん&テレサ)の助けもあって交際を深めていく。
 ある日、両親の海外出張のすきを狙って、二人は郊外にキャンプへ行く。ワインに酔い、すっかり気持ちが緩んだ二人は互いに身体を許してしまう。案の定、若男の妊娠が発覚し、彼女の父親は娘と家富を引き離す。彼女への深い愛情とともに責任を感じた家富は駆け落ちし、二人は家を飛び出す。友人の手引きで西貢のボロ家に居を定め、誰の助けも借りずに二人だけの出産を決意する。自然薯と釣りで採った魚介類、インスタントラーメンの日々、まるでままごとのような“新婚生活”を過ごす二人だったのだが…。

 香港では16歳以下が未成年とされることを初めて知った。それもあって、香港人には早婚が多いといわれる所以か。しかし、若者の愛と性の問題は、日本も香港も同じみたいだ。
 昨年放映されたTVドラマ『14歳の母』(観てなかったけどさ)や、今なぜか大流行のケータイ小説映画で若年層の妊娠が描かれているけど、そこではなんだか妊娠やそれにまつわる大きな悩みや問題がキレイごとのように感じられてしまって(orキレイごとしか見せていない?)、リアリティがない。あの手の作品が好きな方やスタッフの方にはほんとに申し訳ないことを言ってしまうんだけどね。
 まーワタシ自身ももう10代なんてうーんと昔になっちゃったし、高校時代は自分はおろか周りには浮いた話もなかったし、いい年こいても彼らくらいの子供を持っているわけではないから、なんだか他人事…と言って終わろうと思ったけど、やっぱりどーしても他人事には思えない。

 若いころは、自分は何でもできると思っていた。すぐ大人になれると思っていた。でも、それができると思ったら大間違いで、世間知らずの彼らは現実の厳しさにぶち当たるのは言うまでもなく。
 もちろん、そんな彼らを親は心配しないわけはない。セレブな弁護士夫妻である若男の両親だって、超庶民なミニバス運転手の父親と海鮮料理店でウェイトレスやってる家富の両親だって、自分たちが犯した過ちを再びさせまいとしてそれぞれが彼らを愛し、我が手に取り戻さんとする。だけど、子供を持ってしまった時点で、彼らがイヤでも親から自立しなければならないのは運命なのだから、親たちは彼らの過ちを許し、正しい道へ導いてあげることしかできないんだろう。娘を取り戻すことばかり考えていた若男の父親がそれに気づいたとき、家富は逮捕されてしまったけど…。でも、逮捕されてしまったとはいえ、若い2人の未来は決して暗くはないはずだ。

 ジェイシーの初々しさ、フィオナのかわいらしさ。撮影当時はすでに20歳過ぎていたとはいえ(フィオナはこれがデビュー作なの?)、むこうみずで子供っぽくて一生懸命背伸びするカップルはあまりにも痛々しく、いとおしい。こういう経験をしていなくても、自分が10代だったころのあれこれをついつい思い出してしまう。
 それを見守るエリックとっつぁん&テレサ姐さん、秋生さん&キャンディスさんの各夫婦。立場も身分もそれぞれ違うけど、決して自分の子供を見捨てることなんてしない。これもまた好キャスティング。家富パパがミニバスの仲間を連れて、へっぽこ古惑仔ふうに家富の友人のところに押しかける場面が面白かった。もちろん、執事役のシウホンさんも忘れちゃいないし、裁判場面で登場の大御所デヴィッド・チャンさんにカーロッも。

 作品としては非常に地味だし、ケータイ小説の過激さに慣れてる(麻痺している?)このごろの日本の女子コーセーからすればたいしたことないと感じられるのかもしれない。今の日本映画じゃいろんな理由でこういう作品は作れないだろう。それだから公開できないってわけじゃない。やっぱり香港電影迷以外の、若い人にも観てもらいたい。
 また日本で上映してもらえるチャンス、どこかで作ってほしいよ。 

英題:2young
監督:イー・トンシン 製作:ホアン・ジェンシン
出演:ジェイシー・チェン フィオナ・シッ エリック・ツァン テレサ・モウ アンソニー・ウォン キャンディス・ユー ホイ・シウホン ラム・シュー チン・カーロッ デヴィッド・チャン

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