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おばさんのポストモダン生活(2006/中国)

↓ヒルズのグランドハイアット側にあったイラストポスター。これはかわいかった。ユンファの笑顔のうさんくささがサイコー。

おばさんのポストモダン生活(2006/中国)

※今回は完全ネタバレです。またご覧になっていない方(特に関西の『アジアの風』でこれを見られる方)はこの先から読まれないことをオススメします。なお、今回の語り手は事情によりもとはしではありません。あしからず。


おばさんのポストモダン生活(2006/中国)

ボクの名前は寛寛(クワンクワン)、歳は13歳。好きなものはオンラインゲームとPSPとサッカー。でも去年の夏、脚を折っちゃってもうサッカーができなくなったんだ。好きな子がいるんだけど、脚のせいで告白できないし…。

ボクは去年、上海に住む葉おばさん(斯琴高娃)のところで夏を過ごした。おばさんは元英語教師だったんだけど、もう退職して、家庭教師の職を探しているところ。おばさんが駅までボクを迎えに来た時は、すっごく恥ずかしかったよ。派手な傘を差しちゃって、大声でボクの名前を呼ぶんだから。
おばさんは、はっきりいってウザい。アパートの電気代をケチり、「冷房は腰を冷やすから使わないのよ!」とか言いながら、夜は自分の部屋だけガンガンに冷やして寝ている。隣に住む水おばさんは猫の飛飛を愛しているんだけど、おばさんは水おばさんをキライみたい。
ボクが上海に来た理由はもう一つ、メル友の“六姫”に会うためだ。彼女はボクより年上の18歳、本名は隣の猫と同じ飛飛だ。前髪を赤く染めて伸ばしているのがカッコイイけど、その下には大きなやけど痕があった。飛飛にはボケ、じゃなくて痴呆症、あ、日本では認知症って言うんだっけ?のおばあちゃんがいるんだけど、小さい頃にそのおばあちゃんが間違って彼女を火鉢に落としてしまったので、顔に傷ができてしまったというんだ。ボクは彼女が好きで、美人だと思うけど、その傷はやっぱりどうにかならないのかなぁ。まとまったお金があれば、韓国で整形手術が受けられるのに。
そこでボクは誘拐された振りをして、おばさんから大金を巻き上げようとした。けど、結果は失敗。でも、悪いのはボクらなのに、おばさんは取調べの時「アタシがこの狂言誘拐を考えたのよ!だからこの子達は悪くないのよ!」とボクらをかばってくれた。ビックリした。そして、嬉しかった。仕事で忙しいボクの母さんは、多分同じことをしたら決してかばってくれないだろうから、本当に嬉しかったんだ。そこでボクは上海を離れる前に、おばさんにケータイをプレゼントした。おばさん、気に入ってくれたかなぁ…。

ここからは、ボクがまたおばさんに再会するまでに起こったいろんな出来事の話。
秋、おばさんは公園で素敵な男の人と出会ったんだ。その人は、京劇の一節を朗々と歌い上げていた。潘さん(ユンファ)って名前の人だ。彼は京劇や漢詩に詳しく、ロマンティックな人(とおばさんが言っていた)。おばさんはその人に恋をするんだけど、潘さんはおばさんから薬代を借りたままいなくなっちゃった。おばさんがガッカリしたのは言うまでもない。
おばさんはさらに、食堂で顔を切られた永花って女の人に出会う。永花には難病の娘がいて、勤めていたレストランをクビにされたので自暴自棄になっていたんだ。潘さんのこともあって疑り深くなっていたおばさんは彼女に冷たくあたったけど、病院で娘の姿を見て同情するようになり、永花を自分の家に呼んだ。だけど、彼女は地道に働こうとしないで、当たり屋をして大金をゲットしようとしていたので、おばさんはもうカンカンで、永花を追い出したんだって。
ある日おばさんは、街で潘さんと再会した。彼にダマされたと思ったおばさんはもちろんそっけない態度をとるけど、潘さんもまたおばさんが好きになったみたいで、二人は一緒に夕食をしたり、一緒に夜を過ごす(ってよく言うけど何をしてるんだ?ラブラブな二人がすることらしいけど)仲になる。潘さんはおばさんにお墓を利用したビジネスを持ちかけ、おばさんもそれにのって、全財産をつぎ込んでお墓を買った。とにかく、その時までおばさんはとっても幸せだったんだ。少なくとも、潘さんとの夕食の最中に、あの猫の飛飛がアパートに迷い込んでくる直前までは…。 

おばさんと再会したのはその半年後。でも、上海でじゃなくて、ずーっと寒い鞍山という工業都市だった。おばさんは上海出身だったけど、鞍山で結婚して、そこで生まれたボクのいとこの劉大凡(ヴィッキー)と旦那さんとでしばらく暮していた。でも、おばさんにとって、この結婚は楽しいものではなくて、しばらくしてから離婚して上海に戻ってしまったってことなんだ。大凡がボクに話してくれた。すごく不幸な事件がいくつかおばさんの身に起こり、大怪我をして脚を悪くしたおばさんは、もう上海で暮らすことができなくなってしまった。だから大凡はおばさんを迎えに行ったのだけど、彼女は自分を捨てたおばさんが最初は許せなかったみたいだった。
鞍山で逢ったおばさんは、上海でのおばさんとは全く別人だった。髪は白髪交じりで、あの勢いもなくて、おじさんが汚した床をせっせと磨いて、おじさんが作った靴を毎朝市場に売りに行く。元気なおばさんはいったいどこへ行ってしまったんだろう。

ボクはまだ13歳で、おばさんの人生がどんなのだったかはよく知らない。だけど、これだけはわかる。おばさんは上海が大好きだったんだ。そして、上海で出会う人も大好きだったんじゃないかなって。お隣の水おばさん、亡くなってしまったって聞いたけど、おばさんは本当はあの人をキライじゃなかったんだって思う。ボクはおばさんが大好きだったという潘さんも、おばさんに迷惑をかけていた永花って人も知らないけど、ケチでウザくて、それでもってお人よしだったおばさんは、上海という街でこそ、どんなことがあっても自分は幸せでいて、それでここが自分の居場所であるって信じていたんじゃないかなぁ。
ボクは中国を離れて外国に住むことになった。おばさんみたいに、自分の好きな街に居場所を見つけて、おばさんのぶんまで幸せに暮せればいいなぁ。

そうそう、おばさんとボクの物語を、香港のアン・ホイっておばさん、じゃなかった監督さんが映画にしてくれたんだけど、この間、もとはしっておばさん…あ、お姉さんと一緒に東京で観たんだ。音楽がボクの好きな日本のアニメ映画みたいだねって言ったら、日本の音楽家が作曲したんだよって教えてくれた。おばさんと潘さんが一緒に京劇のコスプレをしている場面で曲が流れたんだけど、これが日本のアニメだったら、ここで二人は夜空を飛ぶんだろうなぁ。
あと、おばさんを演じた斯琴高娃っておば…女優さんは、中国映画界での大ベテラン女優なんだって。昔は美人だったんだろうなぁって何度か思ったよ。ボクのおばさんにしてはちょっときれい過ぎるなぁって思ったのも事実だけど、でもおばさんっぽさがすごかったので、斯琴高娃さんはやっぱり大女優だね。
それ以上に驚いたのがチョウ・ユンファの潘さん!ユンファってハリウッド俳優じゃん!いまでも剣を振るってワイヤーアクションで飛んだり、拳銃を両手に構えてドカドカ撃ちまくっているじゃん!それがおばさんの恋のお相手?カッコよすぎない?…でも、そこまでカッコイイからおばさんが恋しちゃうのか。あはははは。いとこがヴィッキーっていうのもビックリ。でも、かなりきついキャラだったね。大凡はホントに悪い人じゃないって思ったけど。
ところで、水おばさんを演じた女優さんと、ボクのいとこの彼氏を演じた俳優さんって、誰なんだろう?最後の字幕が読めなかったんだ。

原題:姨媽的後現代生活
監督:アン・ホイ 音楽:久石 譲
出演:スーチン・カオワー チョウ・ユンファ ヴィッキー・チャオ

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コメント

こんにちわ。
水おばさんを演じていた女優さんは、盧燕(リサ・ルー)です。

投稿: せんきち | 2006.11.02 12:30

せんきちさん、こんにちはー。
盧燕(リサ・ルー)さんですね、ありがとうございます。ボクは嬉しいです。
なんせ、もとはしに聞いても「わからーん」って言われちゃったし、もとはしも「あの女優さんは誰?」って他の人に聞かれても答えられなかったって言うくらいですから。

投稿: 寛寛(代筆もとはし) | 2006.11.03 21:02

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受信: 2006.11.11 22:53

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