春光乍洩な日本の北の方で、地球の裏側で春に愛し合った男たちのことを想う。
このたび、Yahoo!動画にて 「TV Bank - ブエノスアイレス チャンネル」なるものがいきなり開局。王家衛が初めてカンヌに出品し、いきなり監督賞を受賞し、トニーの存在も世界的に知られることになった記念すべきこの作品が無料(それも日本公開当時のトニー&家衛インタビューつき)で観られる。
しかし、『恋する惑星』でも『天使の涙』でも『花様年華』でも『2046』でもなく、なぜこれ?レスリーへの追憶?王家衛カンヌ映画祭審査委員長記念か?それともブロークバック記念(fromみったんさん)か?ああ、ブロークバック・ブエノスアイレス。…やっぱしくどいな。
というわけで、久々に…それも今世紀になってから初めてだな、『ブエノスアイレス』を観た。ビデオで(おいおい!Yahoo!で観ろよ)
実物があまりにもでかすぎてスキャンできなかった(苦笑)、国際版ポスターをモチーフにしたサントラの裏ジャケットの一部。もちろん、デザインはshya-la-laである。写真を撮ってモブログしたほうがよかったか。
いつ観ても妙にもぞもぞした気分になってしまってしょうがない冒頭のベッドシーン、ファイ(トニー)を濃厚に攻めてるウィン(レスリー)に思わずくらり(苦笑)。
そして、モノクロの前半シーンでのファイの瞳の深さに改めて気づく。その瞳には、恋人のはしたないまでの奔放さにあきれ、怒りをこらえながらも心の底ではやはり彼を求めずにはいられないという深い想いがあったのか。この映画の全編に渡ってのトニーの瞳には深い黒さがある。それは映像がザラザラしているために黒味が強調されているからか、それとも単にビデオテープが古くなって色がつぶれ気味になっているからか。(それはどうだ?)
どんな放蕩を尽くしても自分にはファイがいる、だから自由に飛びまわれるのだとばかりに恋人のファイに甘え、思うがままの快楽に浸るウィン。彼が常に丸いなで肩を小刻みに震わせているのは、決してマクダルのような貧乏ゆすり(笑)ではなく、小さな鳥(脚は多分ないと思う)みたいな気質を持ち合わせたキャラだからか?
お互いに愛し合っているくせに、なにかというとすぐにぶつかり合い、傷つけ合ってしまう。ファイはそれを悔やんでは関係を終わらせたがり、ウィンは「やり直そう」という。でもやはり、互いが愛しくてしょうがない。そして悪循環を繰り返す。
そんな二人の関係を、公開当時はいろんな人といろいろ話し合った。レスリー迷のマダムとはほとんどケンカ状態でお互いの意見を戦わせた。そのころのワタシはまだ若かったから、この映画で語られる愛の意味はわかっていた振りをしても、実は全然わかっていなかったのだと思う。…もちろん、今もわかっていないのだけどさ。
ファイは、ウィンを愛するが故に関係を断つ決意をし、ウィンは、ファイを愛するが故に何をやっても自分は彼のもとに安心して帰れるんだと思っていたのかな。確かに、二人ともお互いを愛していた。…でも、彼らの求めていたそれぞれの愛がどこかずれていたから、故郷から遠く離れた地球の裏側で、二人の愛が終わってしまったんだろうな。
…なんて、初見から9年を経て、はたして成長しているか否かよくわからない、あの映画のトニーに年齢が追いついた自分は思うのであった。
そうそう、チャンこと張震も忘れちゃいけないね。
彼が仕事先の仲のいい先輩の恋人が男性だと気づいたかどうかはわからないけど(でも気づいてないと思う)、先輩の悲しみを察し、どこかでその恋模様を静観していた、観客に近い存在なんじゃないかと思いつつ、ファイを立ち直らせるきっかけ(でも、決して新しい恋の相手ではない)を与えたという彼の役割は、今思えば案外重要だったのかも。
ウシュワイアには、いずれ行きたいと思ったもんだ。
ホントに久々に観たんで、なんだかほとんどとりとめもなく書いているなぁ。
それに思いがけず大泣きしてしまった。レスリーがもういないということもあるし、今になって妙にウィンに肩入れしてしまっている自分がいると思ったし。
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