マクダル パイナップルパン王子(2004/香港)
すまん、ベタだとは思うが単刀直入に素直な感想を先に書く。
すみません、泣きました!
ああ、『愛していると、もう一度』でも『忘不了』でも泣かなかった、この自分が!…でも、実写の映画じゃなくてアニメで泣いているわけだから、やっぱり天邪鬼(てゆーか子供?)じゃないのか、という気もあるような気がする。
というわけで、『マクダル パイナップルパン王子』を観てきた。長編アニメ第1作『マイライフ・アズ・マクダル』も日本公開が決定したそうでめでたい。
子ブタのマクダル(レイ・ウィンイン)は大角咀にシングルマザーのママ(サンドラ)と暮らし、春田花花幼稚園に通っている。ところが、大角咀一帯が都市再開発地区に指定されてしまう。そのころからマクダルは貧乏ゆすりをするようになり、ママは心配する。
墓地を買ったママは、マクダルに自分の夫マクビン(アンディ)を主人公にした話をする。「昔、王子様がいました。王子様は成長して、オヤジになりました。おしまい」
「ママー、ハリー・ポッターを読んでよー」とねだるマクダルに耳も貸さず、ママは「パイナップルパン王子」の話をする。ボーッとしたパイナップルパン王子は母の皇后(サンドラ)により、外の世界にお供のおじさん(秋生さん)と共に旅に出たが、不慮の事故によりおじさんが倒れ、王子は香港の街にたどり着く。そこで助けてくれたのはピザ屋のデリバリーをやっているピザファイ(チョイ・ジンナム)。彼は王子を王宮に戻す努力をしたが、王子はそのまま香港に居つき、成長してコックのマクビンとなった。彼は若き日のママ、玉蓮(dejay/the pancakes)と恋に落ちて結婚したが、結婚写真を撮っているときにピザファイと再会し、実は生きていたおじさんと共に、失った過去の自分を取り戻すために妻の前から姿を消してしまうのであった…。
「100%香港製造動画」は伊達じゃない。動物と人間が共存(?)する香港の街はびっくりするほどリアル。さらにその街が王国に変わっていくさまを見ると、こういう発想は実写映画じゃできないもんな、と感心させられたもんだった。クラシックをベースにものすごい突飛な歌詞を載せた音楽も秀逸。(サントラが欲しい!)
そんなところに感心しつつ、物語には思いっきりつかまれた。王家衛の作風(特に『楽園の瑕』!)にたとえられるのもわかる。『楽園』や『ラヴソング』など、香港返還前後に作られた香港映画で描かれたテーマや空気をアニメで描き出すなんて、かなりチャレンジングなのではないか。
思いっきりロマンティストの夫と、思いっきりリアリストの妻。マクビンと玉蓮のカップルには、香港、いや世界中の男女に通じる雰囲気を持ち合わせている。このことを思えば彼らの別離は充分わかっていた展開ではあったんだけど、マクビンが玉蓮に残した手紙のくだりで大泣きしてしまったのだ。あのアンディの語りで!
…なんでなのかなぁ、自分がマクビンの気持ちに共鳴したからなのかなぁ。このままでいいのか、という不安定な気持ちがシンクロしたのかな。でも、なぜ泣いたのかは自分でもよくわからない。もう一度観たら答えが見えるかな…。
もちろん、泣いていたばかりじゃなくて大笑いしたのは言うまでもない。
幼稚園での、ミス・チェンと校長先生(秋生さん)による「マルチ教育式会話術(という名のクレームのつけ方や言い逃れの仕方)」には大笑いしたし、あまりにもうっかり(でもブラック)したお供のおじさんの最期とか、結婚写真を撮るときに、玉蓮が「華仔[ロ阿]~」と呟くところとか、大笑いしたもの。
当初はレスリーにマクビンをお願いする予定だったというけど、レスリーだったらもっと大泣きしていたかもなぁ。いや、もちろんアンディもよかったのよ、彼の名誉のために行っておくけど。秋生さんはうまい。特徴的な声してるよね。ママとお医者さんや屋台のおじさんとの会話(というかマシンガントーク)は大ウケだった。
原題&英題:麥兜 菠蘿油王子
監督:トー・ユエン 製作&原作&脚本:ブライアン・ツェー 原作&美術:アリス・マク 音楽:スティーブ・ホー 主題歌:the pancakes
声の出演:アンディ・ラウ サンドラ・ン アンソニー・ウォン レイ・ウィンイン チョイ・ジンナム the pancakes チェット・ラム ジャン・ラム
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