愛していると、もう一度(2005/香港)
国際後半戦は、28日が香港イースター映画2本立てだったんだけど、29日はフォーカスフィルムの大プロデューサー様アンディ先生大特集(でも2本立て)だった。以前も書いたけど、今年のアジアの風は裏アンディ映画祭(爆)。この映画と先に挙げた『靴に恋する人魚』、そして『Aサイド、Bサイド、シーサイド(17歳的夏天)』のプロデュースを手がけ、さらにはインドネシア映画『ジョニの約束』の世界配給権も獲得した。また、今回の参加作品じゃないけど、“フォーカス:ファーストカット”では『モンゴリアン・ピンポン』のニン・ハオ監督と『ベルベット・レイン』のウォン・ジンポー監督の次回作、そして星仔の片腕、おデブのラム・ジーチョンの初監督作品もサポートする。そーいえば浅野忠信くん主演の新作(確かタイ映画)もフォーカスがプロデュースするんだっけねー。
そんな八面六臂の大活躍を見せる、いまやすっかり香港電影界の顔役(笑)となった大プロデューサー様の最新作が満を持して登場!
…しかし件の大プロデューサー様は、次回作撮影のためにご欠席(涙)。うう、せっかくのオーチャードホールの1回こっきり上映なのに。(ちなみにオーチャードでの映画鑑賞は5年前の『花様年華』以来。『靴』を観たシアターコクーンなんて『キッチン』以来8年ぶりだし)
コウ(アンディ)は腕利きの外科医。彼にはチーチン(阿Sa)という新婚ほやほやのかわいい若妻がいるが、仕事に追われて予定をキャンセルする日々が続いていた。今日も「仕事が終わったら食事しよう」とチーチンに言うが、北京の医師との会談が入ってまたいつものようにキャンセル。免許取立てのチーチンは病院まで車で来ていて、コウからの電話に「108回目のキャンセルかぁ…」とつぶやく。しかし、二人の次回のディナーの約束は永遠になくなってしまった。暴走した車と交通事故を起こし、チーチンはそのまま帰らぬ人になってしまったのだ。
それから6年後、外科医を辞めたコウはチーチンの父親リョン(シウホン)が勤める救急隊に入隊し、隊長を務めていた。チーチンとの約束を守るかのように、彼は時間を遵守する人間になっており、隊員(林雪)たちからも信頼されていた。ある日、任務を終えて本部に帰ろうとするコウたちの救急車の脇で、高速に入ろうとした車がポールに激突した。最初は他の車に任せようとしたコウだったが、思うところがあってその場で救助する。大破した車の中にいたのはユンサム(チャーリー)という名の女性で、かつて心臓の手術をしたことがあるという。ユンサムを病院に運んだところ、コウは元同僚の心臓外科医ホー(アンソニー)がユンサムの主治医だったことを知る。そこでふと、コウはチーチンが臓器ドナーの手続きをしていたことを思い出す。ホーに問い質したところ(守秘義務はどーしたんだ!)、ユンサムは香港で始めて生体間心臓移植に成功した女性であり、彼女にはチーチンの心臓が提供されたのだ。しかし、その心臓は拒否反応を起こしていた…。
妻の心臓を持つ女性ユンサムがどうしても気になってしょうがないコウは、思い余って彼女のあとをつけ、家にまで侵入してしまう(オマエはラウか?それともシュンか?とツッコミ)。リビングの雰囲気が自宅(正式には同居していたチーチンの両親宅)のそれによく似ていたことから、彼はチーチンとの幸せな日々を回顧する。さらにユンサムの部屋に入った彼は、彼女が夫とうまくいっていなかったことから故意に事故を起こして自殺することを考えていたことを知る。さらに彼女の夫であるカリスマヘアデザイナーのデレク(アンディ二役)は、自分と全く瓜二つであった。そこでコウはある決意をする。彼女を悲しませたままあの世に向かわせてはいけない。自分の妻も再び死んでしまう。だから自分がデレクになりかわってユンサムにつくしてあげよう、そして彼女の中のチーチンを慰めてあげよう、と…。
オープニングクレジット、「黄秋生」や「林雪」の名前が浮かぶたびに波のようなサワッとした歓声が上がる。いいなぁこの雰囲気、「アンソニーに林雪、この映画でいったい何役やんの?」って感じで。
『ER』のグリーン先生のように、緑の医療着(って言うのかな?プルオーバータイプの上下)に白衣を羽織ったコウ先生登場。医者役アンディってあまり観たことがないからちょっと新鮮。チーチンは専業主婦だったのかな?しかし実年齢を考えるとかなりヤバいんでは、この設定。ヘタすると幼な妻だぞ。ピノコまではいかんが(でも阿Saなら意外と「ちぇんちぇー」が似合うかも。イメージ的に)でも、この二人の幸せな日々はあっけなく終わりを告げる…。
そしていつの間にか救急隊員になっているコウ先生。ここではベレー帽姿の凛々しいアンディが見られる。制服フェチはご注目(こらこら)。そんなわけで、この後はいろいろ説明しなくとも華麗なるアンディファッションショーに突入する(ってなんか違うな)。なんといっても極めつけは黒い上下に無精ひげといういかにもーなスタイルで、自分より背の高いモデルたちと並んで歩くカリスマヘアアーティスト姿でせう!キャーアンディったらステキー…って本気で言っていないのがミエミエかしらん。ゴメンねファンの人。
…しかし、このアーティスト・デレクと、元外科医の救急隊員コウ。確かにアンディは一人二役で頑張っていたんだけど、妻の心臓を持つ女性も愛してしまうコウと、派手な業界に身を置くゆえに自由奔放でいながらも、実はちゃーんと妻を愛しているデレクに何の違いがあるのか知らん?言い換えればコウもデレクもユンサムに対する愛のベクトルが全く同じだったから、えー?こんなんでいいのぉ?と思ったのは事実。現にティーチインでもそのことについて指摘があったんだけど、それに答えたダニエル・ユー監督曰く「これは意図的にそうしたんだ。ホントはデレクをもっと冷たいヤツにしたかったんだけど、アンディはファンのことを考えると冷たくできないって言っちゃって…」とのこと。…ううう、冷たいキャラでもファンは喜ぶんじゃあーりませんか、大プロデューサー様よ。
ユンサムの最後の日々をデレクとして一緒に過ごし、かつて彼がチーチンにしてあげられなかった償いをするかのごとく、ユンサムを愛するコウ。ああ、こんなふうに愛されたら、女性も本望だよねぇ…などと珍しくこんなことを考えて胸がキューンとしちゃったんだけど、ふと我に返った。「…しまった!アタシはセカチューやいまあいみたいな純愛ものには全然泣けず、ウルトラマンの感動エピソードにワーワー泣く特異涙腺システムの持ち主だ!ここで泣いてはいかん!まんまと大プロデューサー様の企みにハマるところだったぜぃ」と冷静になったのである。そんなワタシの隣の席の女性がワーワー泣いていたのは、もちろん言うまでもない。
しかし大プロデューサー様、サービス大魔王と化してますよ。哀愁の鼻血野郎時代のようにプープー鼻血は吹いてくれないけど、チーチンの容態が急変した時に選択室に水汲みに行き、あふれた水に脚を滑らせてすっ転ぶシーンになぜそんなに力を入れるんだ!?これもティーチインで質問が出たんだけど、ダニエルさん、「だいじょぶだったけどね(^_^;)」と前置きしてからすっ転びシーンの撮影秘話を披露してくれた。最初はワイヤーで吊る予定だったのが、大プロデューサー様曰く「説得力がない!」といって自らすっ転ばれたとか。…す、すごい男優魂ってゆーか、全身サービス大魔王だな、アンディよ。それ以外にもアンディとダニエルさんは全ての場面で話し合って、アイディアを入れてったそーですよ。ほんと、今後アンディのことは哀愁の鼻血野郎からサービス大魔王に呼び名を変えてあげなくちゃ。サービスサービス♪(古っ!)
おっと、他の人のことについても書かなきゃ。阿Saについてはさっき書いたのでパス。
チャーリーは…『ニューポリ』以降儚げな役どころが続くなぁ。いや、大人の女になったからステキではあるんだけど、ちょっとこのイメージで固定されちゃってもなぁって気もあるのよ。でもステキだ。いつかまたトニーと共演してねー(^o^)丿。
アンソニーさんはどことなくジョージ・クルー二ーを知的にしたようなイメージの心臓外科医(しかも襟元には蝶ネクタイ!)うーん、知的だわ。ウォン警視のようなダンディさとも、文太パパや小寶パパのようなセクシー&パワフルさともまた違って楽しいわ。林雪はどこで何をやっても林雪なので、見かけたらすぐに手を振りたくなっちゃうわ。
シウホンさん演じるチーチンパパも、娘を失った悲しみから立ち直れずにいる父親を印象的に演じていた。ユンサムと会った時の、奥様と一緒に金色のチャイナ服を着たところの雰囲気がよかったなぁ。
そんな感じのサービス大魔王によるサービス過剰な愛の巨編。ティーチインではどんな質問があったのか?というわけで、上記で書いたこと以外のQ&Aに愛とツッコミを。ゲストである監督のダニエルさんはアンディのフィルムパートナー。昨年の『十面埋伏』でもプロデュースを手がけ、その時にアンディと共に来日しているとか。彼はアンディの「ホントはここに来たかったのだけど、自作の準備に入ってしまって無理だった、ゴメンね。そして映画を観て泣いてしまった方、泣かせてゴメンね」というメッセージを持ってきてくれた。
Q:この映画を作ったきっかけは?
A:ワタシは小さい頃から恋愛小説が好きでよく読んでいた。男としては、愛する人には優しくしてあげなきゃいけないと思って、この映画を作ったんだ。
ちょっとちょっと聞きました?「愛する人には優しくしてあげなければ」。これ、知人の男どもに聞かせてやりたい台詞ですわ。
Q:アンディが二役を演じる際、どんな指示をしたのですか?
A:彼とは昔からの仲で、お互いに性格もわかっている。だから演技のハードルを上げて正反対の性格を持つ役柄を要求したら、見事にやってくれたんだ。
なるほど、確かにコウとデレクは正反対。でも愛のベクトルは…ってまたさっきの繰り返しになるので以下略。
Q:(香港のファン。質問は広東語)失意のアンディがオレンジを切るシーンがあったけど、その意味は?
A:ワタシはいろんな表現をするシーンには、小道具を使うんだ。よく「悲しいときには心が酸っぱくなる」というので、いかにも酸っぱそうなオレンジを使ってみたんだ。
アンディもこのシーンが気に入っているらしいよ。
Q:相手役に阿Saとチャーリーをキャスティングした理由は?
A:アンディはいろんな女優とたくさん共演しているから、共演女優を探すのが大変なんだ。そこで今回は今まで共演したことがない女優を求めて、チャーリーと阿Saを選んだ。チャーリーは昔彼女のMTVを撮ったことがあるんだけど、悲劇的な役柄がピッタリだと思ったんだ。また、阿Saはアンディと比べるとすっごく若いんだけど、アンディ迷には彼女の年齢くらいの若いファンも多い。そこで、「華仔も若い女優と共演できるんだよ」という証明を見せたかったんだ。二人ともとても美しく、演技も素晴らしかった。
10歳くらい違うはずのチャーリーはわかるんだけど、やっぱ阿Saとじゃ犯罪的だよ、ダニエルさん…(苦笑)。そして最後の質問。
Q:このコンビの次回作はなんですか?
A:まず、フォーカスフィルムとしてはいろんなプロジェクトを練っていて、若い監督や俳優たちと、いろんなことをやっていきたいって思っている。この映画祭に来る前にも、いろいろとリサーチして2作品(『AサイドBサイド』と『靴』かな?)持ってきた。これからもいろんな作品を映画祭に持ってきたい。
来年作る予定の作品は、アンディとマギーの共演もの。自分はプロデューサーに回って、監督はジョニー・トウにしてもらうんだ。お楽しみに。
おお、いいニュースを聞いた!アンディ&マギーの共演ってもしかしたら『欲望の翼』以来では?それに演出がジョニーさんっていうのも気になる。コメディでいくのか、どシリアスで行くのか?そのへんもあわせて楽しみが増えたのであった。
まー、映画自体はさっきも書いたけど、とーってもアンディらしいサービス満点映画。でも、この映画自体やその製作姿勢からも今後の香港&アジア映画の未来の姿が垣間見える。そして、香港映画の復活も遠くないんじゃないかなぁなんて思わされた映画なのであった。応援してますよ、ダニエルさんに大プロデューサー様!
というわけで、以上で今年の東京国際鑑賞分の映画自体の感想は終了。ただし、30日(日)上映の『長恨歌』でスタンリーさんのティーチインを聞いたので、次回はそっちをアップして映画祭の総括に入りますわ。というわけで、もーちょっと続く…。
原題&英題:再説一次我愛[イ尓](All about love)
監督:ダニエル・ユー 製作&出演:アンディ・ラウ
出演:チャーリー・ヤン シャーリーン・チョイ アンソニー・ウォン ラム・シュー ホイ・シウホン
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コメント
こんにちは、いつも楽しく拝見しております。
「冷たいキャラでもファンは喜ぶんじゃあーりませんか~」にブンブンと強く頷き、。「…しまった!~まんまと大プロデューサー様の企みにハマるところだったぜぃ」には、泣いたっていいじゃないもとはしさん・・意地っ張りーとツッコミをしてしまいました。そこで唐突ですが、トニーさん迷のもとはしさんが見たアンディ映画のBEST5はなんでしょう??アンディ迷以外の香港映画ファンの方の本音が知りたく・・・(一本もなし!!ってのはご勘弁を)唐突なお願いをすみません。
投稿: はた | 2005.11.04 13:25
どーもー、意地っ張りというか天邪鬼のもとはしです(笑)。
まーツッコミ放題な感想ですが、なんのかの言いつつ楽しんだのは事実ですね(^o^)丿。あはははは。
おお、私的アンディ映画BEST5ですか!とりあえず5本は上げられますよー。…でも、『ベルべット・レイン』鑑賞関連で、後日別記事にしちゃってもいいですかー?いや、こういうのは記事にしたほうが面白いんじゃないかなーと思ったので。
投稿: もとはし | 2005.11.04 23:37
こんばんは。いきなりの不躾なお願いを快くお聞き入れいただきまして、ありがとうございます。しかも記事に取り上げてくださるなんて・・恐縮です。なんでアンディ映画なの?と?マークが星降るごとく頭上か脳内に舞い落ちてると思いますが、単純に迷以外の方の感想をお聞きしたく。難問ですよね~出演本数の割りに秀作が少なくて(ボカッバコッ)。記事楽しみにしております。ビシバシ、ツッコミ付きでお願いします。
投稿: はた | 2005.11.04 23:57