香港映画フォーラムにて、王晶、セシリア、そして野崎先生大いに語る。(その3)
セシリアと言えば、デビュー時は「ブリジット・リンの再来」と言われ、金像奨最優秀新人賞の最年少受賞記録(!)を持つ女優。本家涙の女王といっていいほど、その泣きじゃくり方は印象深い。例えば『星願』とか…なんて思っていたら、いつも本気で泣いていたのか、セシは!
しかし、かつての彼氏と言われたロナチェンとの破局やニコとの熱愛説など、香港明星には欠かせないゴシップの被害にもあってきた。そのせいかどうかわからないが、近年はがりがりに痩せちゃって、デビュー当時の健康的なふくよかさはなく…。それでも、笑顔はとってもチャーミングで、言いたいことがたくさんあって、とにかく思いのたけを喋りたい!って雰囲気があった、フォーラムでの彼女だった。
では、前回の続き。ここからは、この香港映画祭でも上映される作品についてのコメントも交えながらのトーク。
野崎:王晶さんと言えば、ここしばらくはプロデュース作品が多くて、もう監督されないのではないかと思ったのですが、昨年、自ら脚本を書かれた『インファナル・アンフェア』で再びコメディ映画を作ってくれました。このことから香港では、コメディ映画における“ポスト王晶”が育っていないかと思ったのですが、いかがですか?
王晶:でも、ワタシはヴィンセント・コック(俳優&監督。『ゴージャス』 《行運超人》など)やジョー・マー(『ファイティングラブ』《地下鉄》)などは、いいコメディ監督だと思うよ。香港人のユーモアに対する観客のセンス(?)がもっと育ってくれれば、香港コメディはこれからも続くだろう。ワタシ自身、いいコメディアンがいればコメディを撮りたいけど、これからはどちらかと言えばシリアスな作品が撮りたい。
野崎:王晶さんのシリアスな作品と言えば、1999年の《笨小孩》という作品が忘れられません。すごい作品でした。知的障害を背負った子供を持つお母さんの話でしたが、重い話なのに決してヘヴィにならず、ユーモアもありました。
王晶:そうですね、ワタシは人間の性格や本質について考えさせられる作品を、これから作っていきたいと思います。
王晶のシリアス作品か…。この後の話にも出てくる『黒白森林』はその序章的作品になるのだろーか。ま、それでもコメディやサイコホラーなど、相変わらずジャンルを問わずに撮ってくれそうな気もするけどね。今年の王晶作品には《痩身》という、アンソニー・ウォンとチェリー・インによるダイエット(!)サイコホラーがあったようだし。
お次は金像奨受賞の話題作、『旺角黒夜』でのセシリアの役作りについて。
セシ:この映画を撮っている時は、とにかく心が痛かった。大陸から来た娼婦というのは社会の最底辺にいる人たちなので、彼女たちのことを思って演じると、なおさらそう感じたもの。殴られる場面は、本気で殴られていた。(えええええー!!!!)この映画は、決して表面だけ見てはいけない。心で見て欲しい映画なのだ。
この役のオファーが来た時、自分のことを個性的なアーティストだと考えていたから、こんな役は絶対できないと思っていた。でも、イー・トンシンがそれでいいと言うなら、と思って承諾したの。
旺角のロケでは、特にトラブルはなかったわ。ワタシも、演じているときには、セシリアである自分をすっかり忘れて、役にのめりこんでいた。野崎:香港映画を観ると、かつてのフランス映画の撮影法に似ていると感じることがある。昔、ゴダールは警察沙汰になることを恐れつつも、街で隠し撮りをして映画を撮っていた。でも、香港では隠し撮りせず街を普通に撮っている。なぜなんでしょう?
王晶:香港には、撮影に対する法律が整っていないので、街を自由に撮影することができる。しかし、それをいいことに、最近ではパパラッチの横行を呼んでいる。いろいろトラブルもあるけど、権利を守るために、アーティストたちが団結して、撮影時の協力願いを呼びかけるCMを作って、映画館で流しているんだ。
さて、『ラヴァーズ&ドラゴン』。この映画でセシリアはジャンユーと共演。ジャンユーは座頭市を思わせる盲目の剣客役だそーだ(すみません未見です)。
野崎:セシリアさん主演でウィルソン・イップ監督(『OVER SUMMER』 『トランサー』)の『ラヴァーズ&ドラゴン』ですが、このセシリアさん、とにかくもうかわいくてかわいくてたまらん…(はぁと)ってもんだったんですよ。バンバン空を飛んでいましたけど、あれ、ちゃんとご自分で飛んでいらしたのですか?
ここで我々は見た!
天下の野崎先生が萌えているのを…。
ののののの、野崎先生ったらもーう(*^~^*)…なんてこっちも心ではぁとになったりして(こらこら)。それに対してのセシリアの答え。
8割は自分で飛んだの。ワイヤーに吊られて飛ぶのは大好きだから。
なんか、一瞬会場にピンクのもやもやっとしたものが見えたのは、はたしてワタシだけだろうか…。そうか、これが萌えなのか。おおおおお。
で、締めはこの映画祭のオープニングを飾る『黒白森林』。これはワタシも以前書いたけど、王晶版無間道?といった雰囲気のある、クールでハードな映画だった。この映画についての王晶のコメント。
『無間道』に似てるってよく言われるけど、全く違う映画だよ。でも、あえて言えば撮影のスタイルと、使っているフィルムがあの映画と同じなんだ。雰囲気を出すためにね。
主演のアンソニーのこと?うん、彼はハンサムになったよね。彼がピアノを弾くシーンがあるけど、あれはアンソニーのキャラクターに立体感を持たせて、はっきりさせたかったからなんだ。
この映画では、一番悪いのはレイモンド演じるコーラと小春演じるライのそれぞれの父親を殺した犯人ではない、他にもっと悪い人間がいるということを言いたかったんだよ。(なるほど、だからあんなどんでん返ししまくりなラストだったのか…)
こんなところでタイムアップ。
さて、最後はお待ちかねの観客とのQ&Aコーナー。うう、何を質問しようかとあれこれ考えていたところ、皆さん同じことを考えていたらしく、挙手も質問もよく挙がる。
すみません、出遅れましたわ。
Q:王晶さんに3つの質問です。
1・今の日本映画についてどう思いますか?
A:今の日本映画は休火山状態だ。アニメを観れば、その可能性はわかるんだけど、映画はまだまだというところかな。
2・影響を受けた日本の映画監督は?
A:五社英雄(『鬼龍院花子の生涯』『陽暉楼』)と小林正樹(『人間の條件』『怪談』)。特に五社監督の『御用金』('69)に影響を受けた。
3・日本と合作して映画を撮る予定はありますか?
A・現時点ではまだ言えない。
ご、五社英雄…。「なめたらいかんぜよ!」ですね。渋い。
Q:現在、日本のファンの間で人気を誇っている香港明星といえば、アンディ・ラウとトニー・レオンですが、この二人を昔からよく知っている王晶さんからみて、昔の彼らの興味深いエピソードなどはありませんか?
A:アンディとは86年の『マジック・クリスタル』で初めて一緒に仕事をした。当時の彼はやんちゃ者で、毎日現場で自分がアクション指導をしたい!といって聞かなかった。その後、コンサートでやんちゃをしたら鼻を骨折してしまってね、それ以来はおとなしくなったな。
…ア、アンディらしい。何でも面白そうなものはやりたがりそうだもの、って実際やってきたか。ははは
トニーとの初仕事は90年代の中盤だった。その頃彼はすでに王家衛と一緒に仕事をしていたね。王家衛の映画には「長い休み」があるので有名だけど、彼はその休みの間にワタシのところへ来て、なにか仕事ない?と聞いてくるからそこで一緒に仕事するんだ。…ってこれは冗談だよ。
王晶さん、でもそれってマジで冗談に聞こえないっすよ…(苦笑)。
残りはセシリアへの質問。
Q:生のセシリアさんに会えて嬉しいです!質問というよりお願いですが、自分は広東語より北京語のほうが理解できるので、日本でも生声の北京語版で映画を上映して欲しいです。
A:『旺角黒夜』では、ワタシの北京語が聴けますよ。
あ、吹き替えじゃなかったの…?これは意外な。個人的には広東語派なので、北京語版ってのもどーも…と考えてしまうところもあるのだけど、来年公開の《無極》は確実に北京語だろうからね。それをお楽しみに…なのかな。
Q:先ほど、セシリアさんは演技をするとき、自分を忘れるといっていましたが、それにはいつ気がついたのですか?
A:映画をやる前から「自分を忘れる」ということを本能的にわかっていたの。あと、脚本をたくさん読むことだけがよい役者の条件じゃないと思う。
すんばらしい!天性の役者か、セシリアよ。まるで北島マヤ!?
とまぁ、そんなこんなで締めとなったフォーラムでした。
しかし、ホントに参加できてよかった。王晶もセシリアも現役バリバリの映画人だし、二人とも決して生半可な気持ちで映画に携わっているんじゃないのね、ちゃんと映画を愛しているのよね、という気持ちが強く感じられた。そして、野崎先生の質問も、香港映画の現状と未来についてワタシたちが知りたいことをすくい取ってくれたように(というより、これが多くの香港映画ファンの関心だったと思う)適切で、聞きやすかった。本当にお疲れさまでした、野崎先生。萌える先生も見られましたし(こらこら)。
そして、王晶&セシリアにもホントに愛と感謝を心から送りたい。ありがとねー。
さて、いよいよ今週末から週末ヒルズ通い(正しくは中華電影貧乏無間道週間と言う)が始まる!1年前の中越地震のように、最近関東に頻発している地震は怖いけど、それにもめげずにワタシは香港を始めとする映画を観たい。そして新しい出会いを体験したい。そんなわけで、明日の夜から再び深夜バスに飛び乗って、江戸を目指すのであった。
ちくしょー、地震がなんだ!行くぜ六本木!去年に引き続き、ヒルズの中心で香港&中華電影への愛をさけんでやる!
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