イニD公開Countdownから思ふ、中華&アジア芸能スタンダード化への道は…?
一昨日、市内の映画館に行って、やっと待望の『頭文字D THE MOVIE』のチラシを発見(参考にこちらの記事を)。おお、こんなみちのくの小都市でもやってくれるのねイニD、そいつぁよかったぜ、とほっと胸をなでおろす。さらに館内にはジェイを始め、えぢやショーンの卓上スタンディが置かれていて(女子トイレの窓際にはショーン!)、久々に力の入った宣伝してるじゃねーか配給元さんよ(終極の宣材、地方公開でもこれくらい力を入れてほしかったです、コ〇スト〇クさん…)、と頼もしく思った次第。
そう喜びつつも、でもここは田舎だから、宣伝ターゲットはあくまでも車&走り大好き男子の皆さんで、上映されるのも吹替版なんだろーなー、しょーがねーよなぁ、未だにこっちのパンピー男子にとっては香港映画といえば李小龍&成龍さんなんだからなぁ、なんて心の中で例の如くグチってみたりするのだった。
そんなふうに思いながら取ったチラシをチェックしていたら、ジェイ・えぢ・ショーンのショットをあしらった「時代は今、華流(ファリュウ)」と書かれたチラシを発見。これ、イニD以外にも、えぢが窪塚洋介くんと共演する『同じ月を見ている』と、アンディ&学友さん共演の《江湖》改め『ベルベット・レイン』まで紹介されていて(つまりえぢ&ショーン出演がらみってことか)、ちょっとビックリしてしまったのである。
さらにチラシの裏面では「ベテランから華流新スターへ」などと書かれたショートコラムもあって、そっか、こっち方面でも売り出しをかけようってことか、それならまだまだ希望は捨てられないかな、なんて思ったりして。でもワタシはこのコラムではすっかり「ベテラン」扱いされていたトニー迷。…ええ、ええ、どーせこちとら古い奴でございます。でもやっぱり、時代は動いているもんだなぁ、しょーがねーとは思うんだけどさぁ…などと、ちょっと切なくなったりもした。
それに先駆けて読んだのが、先週発売された(まだ書店にはあるはず)朝日新聞社のニュース週刊誌『AERA』の綴じ込み特集「華流・韓流 Asian Entertainment」。
かつては成龍さんを始め、ゆんれんれん、トニー、アンディ、カレン、レスリー、フェイ、サム、りよん、サミー、ケリーなどの、そうそうたる香港明星が表紙をフォトジェニックに飾っていた(大陸明星だとコン・リーやツーイーも表紙になった。つまり『2046』は主要キャストの半分がAERAつながりであるってことだ。監督ではウーさんも表紙経験あり、逆に星仔が表紙になっていないのが意外)この雑誌、その当時は香港&中華芸能にもそれなりに理解を示してくれて嬉しかったんだけど、昨年からの韓流ブームに乗っかってしまい、一時期はこれでもかこれでもかと冬のなんちゃら&ぺ様特集を毎週のように組み、ゲンナリさせられたものだった。(関係ないがこの雑誌がその前に散々騒いでいた『負け犬ブーム』にも嫌気がさしていたこともある)
で、
このAERA、最近はぺ様独占インタビューやら表紙にぺ様と共演の韓国女優を取り上げたりなんやらで、昨年のイライラ再びかよ、なんて思ってしまったので、この中綴じ特集にもさほど期待していなかったんだけど、…まぁ、思ったより悪くなかったなぁ。いや、巻頭で取り上げられたF4はなぜジェリーの写真が小さいんだ?(個人的にはF4人気の中心はジェリーと仔仔だと思っていたので。ケン迷の方ホントにすみません_(._.)_)とか、前も書いたけど、だから阿部力って誰よ?(以前の記事より。ただし、スポニチのリンク先記事はすでに消えています)ってくらいの勢いでイニDグループでの彼の写真が大きかったりとツッコミしたのはいうまでもなかったけど、韓流の扱いが意外に少なくて嬉しかったし(あ、何人敵に回したかなぁ)、F4仕掛け人のアンジー・チャイさんやF4ドラマがいかにして誕生したかという記事や、以前もAERAで取り上げられていた“東アジア映画”についての記事(プロデューサーとしてアンディも登場!)など、硬派な記事も多くて読み応えがあった。
でも、嬉しい反面、こんなことも思ったのである。 いまそれほど韓国や中華のエンタメが注目されて必死にブームを作ろうとしているのなら、どーしてそれを8年前にできなかったのか、と。もし、香港返還をきっかけに沸き起こった香港エンタメブームをブームのまま終わらせずに、どんなに香港当地で低調であっても、日本でも人が入らなさそうでも盛り上げていってスタンダードにできたら、それに乗っかって日本の芸能もアジアンエンタメに理解を示すこともできただろうし、それが下地になれば韓流のバカ騒ぎもなく、純粋にエンタメとして受け入れられたのではないか、と思うのだが、果たしてどうだろうか。ま、冷静に考えたら、あの当時はそれをやりたくても、ホントに無理だったのだろうという気もする。でも、やっぱり今後の見通しを予測して進出してほしかったなぁ、なんて思いましたよ。>各芸能プロ&広告代理店の皆さん。
いや、確かにワタシも以前、ここで韓流ブームに疑問を抱き(参考はこの記事を)、それに続けとばかり台湾芸能を取り上げては「台流」などという便乗丸見えのネーミングにあきれ、「それじゃ狭い範囲に限定されるし、すぐ消費されてしまう、だからついでに香港や大陸も盛り込め、どーせなら“華流”で行け!」なんて書いたことがある。今回のイニD公開はまさにそれを具現化したもので、韓流ブームに飽き飽きした自分にとっては喜ばしいと思うのだが、…でも、これがまたブームで終わってしまっては意味がないのだ。
だから、ワタシが切に願うのは、これがきっかけとして、今まで輸入本数が減っていた香港映画の日本公開が増えてくれること(それでも現地の製作本数はますます減少していくようなので、厳しいということは百も承知なのだが…)と、良質の台湾アイドル映画が台湾でも作られ、日本でも公開されること、あとは香港・台湾・大陸(+日本or韓国?)の役者やスタッフのコラボによる作品が増えていってほしい、そして日本におけるアジアンエンタメの認知力がハリウッドと肩を並べるくらいのスタンダードになってほしいということなのだ。(蛇足:『無極』は真田さん&ドンゴンじゃなく、真田さん&ニコで売ってくれ!せっかく『ニューポリ』でニコが認知されたんだからさぁ)
このところ、日本と中国・韓国は政治面でかなりギクシャクしているから、ワタシのこんなたわごとを見た、政治的に嫌韓流&嫌中華傾向のある人には「そんな夢みたいなこといってるんじゃねぇ」なんて言われてしまうのかもしれない。でも、国は政治がすべてじゃないはずだ。例えば、大陸映画について「話が政治くせーなー」と多少思ったとしても、そのスタッフの映像表現は政治には全く関係ないと思うので、政治くささを気にしないで観れば、その映像技術やストーリー性に大いに感心させられるものもあるからだ。だから、政治と文化は関係ないというのが、もとはしの持論だ。(かつてカイコーやイーモウだって、自分の作った映画が政府に認められず、国内上映されなかったって時代もあったからね)
ま、政治を抜きにしても、マスコミ等における韓流ブームに見られる「一部俳優だけに集中し、かつ熱狂的に持ち上げる傾向(ぺ様とかぺ様とかぺ様とか)」は大っキライだけどさ…。
あ、でも、今後合作が増えたとしても、『星月童話』みたいな片方の国(の恋愛物語の定番)だけに思いっきり偏ったようなアイドル映画はもう二度と観たくないなぁ…。
そんなわけで、イニDと共に、日本・台湾・中国合作『アバウト・ラブ(恋愛地図)』もどんな出来になっているのか非常に気になるのであった。
| 固定リンク | 0
「コラム(中華芸能)」カテゴリの記事
- 【ZINE新作】『台カルZINE Vol.2』ほか(2023.06.26)
- 【近況報告&お知らせ】通販部再開しました他(2022.11.12)
- 〈香港抗議の記録 A Film on Hong Kong Protests〉を世界から日本へ(2021.01.11)
- 【お知らせ】通販部のページを開設いたしました。(2018.08.22)
- 大館の御成座で『捜査官X』を観る(2016.02.12)
コメント
もとはしさん、おばんです。
日本でイニDはそんなふうに宣伝されてるんですか。最近のアジアエンタメの盛り上がりは嬉しいですね。韓流、私も未だに乗れませんが、映画をいくつか観て、韓国映画のレベルの高さに驚いているところです。
個人的には、ハリウッド映画は今やや落ち目なので(あっ今敵を作ったような)、アジア映画がハリウッドと肩を並べるのも、今の勢いだったら不可能ではない気がします。実際ハリウッドではアジアでヒットした映画のリメイクばかりが計画されてますし。
今週金曜日から、ようやくこちらで2046が公開されます!スクリーンでトニーを久々に観れるので楽しみです。
投稿: こっぺ | 2005.08.19 02:54
これだと読めるんでしょうか? 自分ではフォーム欄内がぐちゃぐちゃの記号なのですが。
昨夜、HDD/DVDレコーダーのG-guideで深夜放映の韓国映画「黒水仙」(安聖基出演!)をタイマー録画しようとしたら、G-guideの広告欄でも「イニD」が登場していましたよ! 地道にコツコツ宣伝しているのですねえ。韓国映画だってピンキリ、香港映画だってピンキリ。「四月の雪」は監督で期待してるんですが。
ただ「イニD」は中華圏映画オタク(私のような)を避けて迂回して"一般観客"を狙い、結局のところアブ蜂取らずになる可能性大です。何のオタクでもない"一般趣味""何となく映画見る派"の無党派・浮遊票の皆さんはそもそも、大々的に宣伝してる話題作で、見覚えがあるキャストの映画にしか行かないもん。セカチューとかいまあいとか「電車男」とか「亡国のイージス」とか。そんなオタク迂回での失敗例は「ラヴソング」を始め、10年前からいっぱいあるんだけどねえ…。
投稿: nancix | 2005.08.19 15:31
>こっぺさん
こういう方面で売り出しもかけようというのは、それだけ“韓流”が大きな顔をしているのに(あ、また敵を増やした発言だ)日本の業界側も黙って見ていられなくなったからかな、なんて気もするのですが、…気のせいかしら(汗)。
確かに日本で楽しめるアジアンエンタメもかなり増えました。でも韓国は、映画はあんなにいいのに、どーしてドラマは気に入らないのかなぁ…なんて思っちゃいます。最近の日本では輸入される映画も“韓流スター”主演作品がこれでもかこれでもかとやってくるので、ホントに観たい韓国映画がなくなってしまいつつあります。(韓流スター映画のせいで、アン・ソンギやソン・ガンホの主演作品がみちのくまでたどり着きません…)
台湾エンタメもドラマ人気が中心ですが、最近の台湾では映画をあまり作らなくなってしまったので、彼らの出演映画ってどうしても香港映画が多くなってしまうようです(日本でマネージメント契約しているチェン・ボーリンも、香港で『ツインズ・エフェクト2』や《見鬼10》に出ていたし)。
ハリウッドの不調は前々からワタシも気になっていました。日本ではEp3が大当たりしているけど、それでも本国ではいろんな作品がコケまくって、無間道やJホラーのリメイクが注目されるって言うあたりで、ハリウッドも必死なんだなーと思った次第です。超大作ばかり作り続けて、ネタが切れちゃったんでしょうね。その中でもウーさんや李安さんを始めとした中華系映画人は注目されているようですが、彼らの今後の活躍には大いに期待しております。(渡辺謙さんにも是非頑張ってほしい)
ここにきて再び『2046』フィーバーが世界で局地的に起こっているようですね。米国公開もめでたいし、TV放映のプロモーションとしてトニーが台湾に行った(これ『少林サッカー』TV初放映時に来日した星仔と同じだな)と聞くと、あの映画もまだまだ終わっていないんだなということも感じます。
>nancixさん
ご心配されていること、こちらとしてももよーくわかります。『イニD』はもともとゲームやアニメで人気を博しているので、おそらく一番の宣伝対象は原作・アニメ・ゲームファンで、その次が車&走り好き、そして“華流”に興味のある女子で、最後に我々のような中華芸能迷…なのでしょう(ーー;)。そして吹き替え声優陣も、杏ちゃん以外はアニメ版の声優をそのまま起用するのではないでしょうか(といってもアニメ版なんてぜんぜん知らないのだが)。
かといって、マニア対象だとどーしてもDVDセールスに力が入ってしまうっていう傾向もどーかと思いますが。(そもそも自分は映画館で映画が観たい派だし。これって少数派?)そのへんで複雑な気分にさせられてしまいますね。
香港では原作や映像・ゲームのファン以上に若手スター勢揃いに釣られて観に行った女子がヒットを支えたと聞きましたが、同じ手(つまり“華流明星”攻撃)が日本で通じるかどうかは確かにわかりませんね。今月末からスタッフ&キャストがプロモーションをかけるので、その様子を眺めたいかと思います。日本で知名度の高い作品だけあって、どういう反応が返ってくるか、またこれが今後の中華芸能人気にどう影響するかという点ではホントに未知数ですね。(昔を思えば、成龍さんの『シティーハンター』なんてホントに王晶節炸裂映画だったから、原作&アニメのファンはきっと面食らったんだろーな)まぁ、取らぬ狸のなんとやら…状態のプロモは、香港映画に限らずハリウッド大作の宣伝でもよくあるパターンですし。まぁ、売れれば勝ちというのが最近の市場原理のようだから、売り手はパンピーを取り込もうと必死になっているのでしょうが、そのせいで昔からの熱心な観客(マニアではなくて)を失っていることについてはどう考えているのかしら…。いや、考えていないか。
かつて『ハチクリ(八月のクリスマス)』に感動した人間(でも『春の日は過ぎ行く』は見逃した)としては、『四月の雪』のホ・ジノ監督の演出手腕は気になるところですが…、それよりもぺ様主演っていうことだけ一点で、観る気力を失ってしまいました。ははは、すみません。
そーいえばイニDと四月、同じ日に封切りなんですね。
ああ、また毒を吐きまくってしまった…。すみませぬ。
投稿: もとはし | 2005.08.19 21:19