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ブラック・シティ 黒白森林(2003/香港)

今をときめくF4を北京語読みの「エフスー(じゃ広東語だと「エフセイ」?)」ではなく英語読みの「エフフォー」と呼ばせるのって、台湾芸能ブームを“台流”と呼ばせたがるくらい違和感があるなぁと思う。そう考えるワタシは、はたしておかしいだろうか。いや、充分おかしい。←反語表現。あと、『流星花園』を「りゅうせいはなぞの」と読むのだって間違っていないんだけど、やっぱり違和感があると感じるのもおかしいんだろうな。ちなみにワタシは「りゅうせいかえん」と読んでいる。…それもヘンだな。
こんな書き出しにしたのは理由がある。今日取り上げるこの映画、原題を日本語読みするとどうなるか考えてしまったからだ。普通に読めば、確かに「くろしろしんりん」。しかーし、日本語には「黒白」と書いて「こくびゃく」と読ませる熟語がある。だから、この原題は「こくびゃくしんりん」と読んでしまってもいいのかもしれない。…ってそんな呼び方するのはワタシくらいなもんか?

またまたどーでもいい前置きは置いといて、今日はこの映画。
『無間道』のように、悪と善が混在する香港アンダーグラウンド。そこでは黒白(こくびゃく)つけるのが難しい。ってーな感じの映画がこれ。2003年といえば、ちょうど『無間道』三部作製作中だったわけで、キャストもアンソニー(字幕では北京語読み?の「ファン」だったが、役名も無間道と同じ黄!)、チャッピー、ジャンユー(特別出演)、ン・ティンイップとかぶりまくり。パクリではないけどどこか亜流なにおいを感じると思ったら、この映画の監督は王晶。しかもご丁寧にダブル監督。…イヤー、この人のエンタメ精神は健在だわ、なんて改めて思うのであった。

1993年、汚職警官のセブンアップ(ラウチン)が黒社会のボス、チュウ(ジャンユー)と密会中、作戦決行中の同僚、捜査課の黄強(アンソニー)に出くわしたことから、全てが始まる。街に響きわたる3発の銃声。その後には、立ち尽くす黄の足元に、セブンアップとチュウの遺体があった。黒社会は黄が出世のためにセブンアップを殺したと主張し、彼の妻もそれを頑なに信じる。そしてセブンアップの忘れ形見ヤンは父を殺した黄に復讐を誓い、自分の父や彼と同じ警官を目指す。
9年後、成長した息子ヤン、通称コーラ(レイモンド)は麻薬課に所属していた。彼はベトナム人麻薬ディーラーのシクロ(テレ)を追った事件の最中、父の仇の黄と、彼の部下のダメ警官アシイ(チャッピー)に出会う。シクロは逃したものの、コーラは的確な行動を見込まれて、捜査課に配属される。上司はもちろん黄。しかし、行動を共にするうち、憎き敵である彼が自分の父を殺したとは思えなくなるコーラ。そんなコーラのもとに、チュウの後を継いだ息子ライ(小春)が近づく。ライはコーラに黄を殺すように命ずる。
シクロに香港の麻薬ディーラーのウォン(パトリック)が近づき、麻薬を強奪した。しかし、それが元でウォンは命を狙われる羽目になる。そこで黄のチームがウォンを警護する。コーラはウォンの娘で大学生のケイティ(ジル)を警護する。彼らが警備している間も、シクロは攻撃の手を抜かず、警察の捜査網の裏目をかくようになってくる。その合間に、黄は自宅を襲撃される。黄はシクロとウォンの背後に、誰かがいることを感じ、その最終目標が自分であるということを感じ取る…。

まず、全編に流れるメインテーマにインパクトあり。ここ数年の香港映画でのベストメインテーマは当然『やりび』の、♪パーパパ、パーパパ、パパパパー、パパパ、パーパパ、パーパパ、パパパパー、なんだが、それにも負けないこの映画のメインテーマ。男声コーラスで、♪ウンバ、ウンバ、ハハハハ、ウンバ、ウンバ(以下略)と流れるリズムが主旋律なのである。うーん、これは文章ではうまく説明できないけど、ラグビーNY代表「オールブラックス」で有名なマオリ族の闘いのダンスの曲と、昔の西部劇映画に登場するインディアン(あえてこの表現で記す)が悪役で出てくる時にあげる雄叫びをミックスしたようなテーマを想像していただければわかりやすいかと。
これまで香港映画において、黒社会と警察(それも地元の)との力関係の微妙さは何度も何度も描かれてきたテーマである。今まで観てきた中では、例えば『BEAST COPS 野獣警察』での、地元に精通した顔役のような刑事が、黒社会のチンピラ連中をなだめたり、暴走する古惑仔と対決したりする姿があったり、 『無間序曲』で描かれた天敵同士のウォン警部とサムの関係などから、これらを観ているうちに、警察と黒社会の関係は汚い結びつきではないけど(そうか?)、警察はなんらかの形である程度相手の動向をつかんでおかないと、うまく街を動かせないもんなんだな、だから地元のたたき上げの刑事は必要なんだな、なんて思ったもんである。…日本でもそんなもんかな?
冒頭、セブンアップは潜入なのかなーと思っていたのだけど、観ているうちにどうもそうじゃないのでは?と思ったので、あ、コイツは汚職警官なんだ、というのに落ち着いた(違ったらすまん)。チュウの信頼が厚かったようなので、ほとんど親友みたいなもんだったのだろうか。もちろん、セブンアップは黄とも大親友だったということは、劇中でも語られる。
黄に対するコーラの復讐譚、シクロとウォンの麻薬取引に関する駆け引きと、彼らの取引を押さえるために護衛に就く黄たち、そして黄への復讐に事件を利用するライ…。1時間40分の中に複数の事件がこれでもかこれでもかと詰め込まれるので、はっきりいってどういう方向に着地するか先が見えずらかった。ラストになって9年前の事件の真相と幾つものどんでん返しが起こるので、えーっ!?という間に終わってしまった印象。放り投げだされた筋書きも多かったかなぁ。でも、『無間道』やジョニーさん作品に負けているかというと、王晶映画にしては結構健闘してるんじゃない?なんて思えるところもあったのだ。まぁね、コーラとその周辺の思い込みは誤解だったというのは想像できたし、これで警察が完全に悪と描かれちゃ救いようもないからね。
他の作品と比較して、これはいいかもと思ったのが、40代独身でイギリス人のお父さん(元英国軍の爆弾処理専門家)の介護をして暮らしているという黄の家庭事情の描き方。部屋にグランドピアノがある生活を質素な生活と言ってはいけないのだろうけど、高齢化問題を抱える現代の日本に生きる身としては、介護問題は香港も同じなんだなぁ、などと感心してしまったのであった。ま、そんなとこかな。

キャスティングもホントに王晶映画的。だって、冒頭に登場してさっさと退場するだけなのに、ラウチンとジャンユーって…。いいのかなぁ。
メインはアンソニーさんというより、ただいま売り出し中のレイモンド君(『Needing You』『PTU』)。清廉潔白な演技に好感は持てるけど、主演にしてはちょっとインパクトに欠けるかなぁ。チャッピーは『無間道』のキョンがそのまま刑事になった(それもかなりのダメダメ刑事。だいたい身だしなみがなっちゃいないし)って言うのはどーゆーことだ。テレンスは…いいの、ずっとこの路線で?ニコパパはさすが大スターなので、登場時のインパクトは大きい。髪も長いし。しかし、このパパの娘にジルっていうのも…。小春、もっと出番があっても…。あ、ピンキー・チョンが演じた(だよね?)ウォンの妻の使い方はホントに王晶映画っぽい。ジョニーさんや『無間道』ではセクスィー系女優が出てこないストイックさがあったけど、やっぱり王晶映画ではビキニスタイルのお色気担当(でもあまりお色気には見えなかったなぁ…)女優が欠かせないんだなぁ。

この映画を観たのは、仙台に『ワンナイト・イン・モンコック 旺角黒夜』を観に行く前日で、観たばかりの時はそれなりによかったんじゃん?なんて思ったんだけど、…『旺角黒夜』を観た後では、かの映画のインパクトがあまりにも強かったので、やっぱりたいしたことなかったか、なんて思い直してしまったのであった。すまん、ホントに。

英題:colour of the truth
監督:ウォン・ジン&マルコ・マック
出演:アンソニー・ウォン チャン・シウチョン レイモンド・ウォン チャップマン・トウ ジリアン・チョン テレンス・イン ラウ・チンワン ン・ジャンユー ピンキー・チョン ン・ティンイップ パトリック・ツェー

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コメント

アメリカ留学時代、ピンキーと一緒に住んでいた友人の者です。ピンキーのことが書かれていたのでコメントさせていただきます^^
ブラックシティ、ちょっとしか出てないので残念でした。ピンキーの出演作はエブリディイズバレンタインやミッドナイトエクスプレスウなどの超有名映画以外は、成人映画系の有名作ではないようなので・・・あまり日本で公開されず、見れないのが残念です。
今はなかなか話す機会もないので、どの程度の会話力になっているか不明ですが、日本語が堪能で、優しく聡明な女性です。わがままちゃんな時もありますが・・・(笑)是非、生暖かく見守ってあげてください!

投稿: doremin | 2007.11.30 05:09

 おお、ピンキーの室友さんだったとは!
doreminさん、コメントありがとうございます。
ピンキーって日本語ペラペラなんですかー。香港へ行って現地の新聞や雑誌を買うと、ピンキーが日本の流行りものを紹介する記事をよく見かけたので、日本好きなのかな?なんて思ったことがありました。
 ワタシも彼女の映画はこれの他に、「ミッドナイト・エクスプレス」と「エブリディ・イズ・バレンタイン」くらいしか観たことありませんね。最近の映画ではほとんど観かけないので、TVドラマの方に活動を移したのかな?

投稿: もとはし | 2007.11.30 20:48

もとはしさま

レス、ありがとうございました^^
そうなんです。ピンキーは日本語ベラベラでした!
今はそうでもないようですが・・・(笑)

私たちの留学あと何年かした頃、蛭子さんと
こぶ平さんとの香港旅行番組があったのですが、
そこでピンキーが案内人として出てました。
その頃はまだ上手な日本語でしたね^^

私もやっとこ「エブリディ・イズ・バレンタイン」を見れたのですが、とっても懐かしかったです。あの胸の谷間なんか(笑)
ちなみに彼女の家の留守電メッセージは日本語です(爆)

是非また何かで見たらブログで紹介してください!^^

投稿: doremin | 2008.01.02 01:06

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