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欲望の翼(1990/香港)

思えば、この『欲望の翼』という映画は、ワタシにとっては、ずーっと片想いしながら観る機会に恵まれず、不意打ちのように観るチャンスがやって来る映画だ(すまんちょっと意味不明な文で)。レスリーがこの世から「退場」し、『花様年華』や『2046』を経た今、この映画を見直すと、初見時には全く気づかなかった官能性と刹那の輝きに満ちた映画であることがわかった。なお、この映画は中国語映画100年の歴史の中で香港人101人が選んだ100大中国語映画のうち第3位に選ばれている。

60年代の香港でアンニュイな生活を過ごす旭仔(ヨディ:レスリー)と、彼に係わった女性麗珍(マギー)とミミまたはルル(カリーナ)、ミミに横恋慕する旭仔の弟分(學友)、麗珍を気にかける警官(アンディ)が織りなす物語。ホステスで常に男を求め歩いているような養母(レベッカ)に育てられた旭仔は定職にも就かずに放蕩の限りをつくすが、心の中ではフィリピンで暮らしているという実母を思っていた…とかストーリーの紹介は書いても無駄だろう。

改めてみると、王家衛の映画スタイルはこの映画から『2046』までずっと変わらない印象。というより、王家衛の演出姿勢はこの映画でほぼ固まり、『2046』まで来たんだなぁ、と思った次第(で、前にも書いたと思うけどその流れからすりゃ『恋する惑星』&『天使の涙』は異端な作品。だけど、日本じゃなぜかこの2作品のイメージで一般的には王家衛が語られちゃっているから不思議だ)。そして、やっぱり王家衛映画のテーマである「愛の喪失」はここでも強く感じるのである。というか、もーちょっと別の角度から見ればそれぞれのキャラクターが求めてさまよう愛の形がそれぞれずれているために、肉体的には触れ合えても心から愛し合えない若者たちの群像劇といった感じなのかな。
群像劇であっても、やはり主人公はレスリー演じる旭仔(「ヨディ」と英語名で書くよりこっちの方が字面的にいいな)である。麗珍そしてミミと愛する女性を取り替えながらも二人ともあっさり捨て去ってしまい、ついには香港を去って本当の愛を求めてフィリピンに行くものの、そこでも念願の母には会えず、あっさり命を落としてしまう。香港編の前半とフィリピン編の後半のトーンが全く違うので、最初観たときには混乱したものの、いいかげん王家衛映画を何本も観ていった今観直すとそれも不自然には感じない。香港パートでは麗珍やミミの目から旭仔を見て、彼が主体的に動き出す後半は彼の中から行動を観ていくという感じに思える。そうすることで、旭仔の愛を渇望する孤独さや何もかも失ってしまったあとの刹那的行動を何かしら理解できたような気がする。…いや、理解できていないかもしれないけど。

そういえば、「愛の喪失」や「愛に対する各自の感情のすれ違い」というテーマにふさわしく、この物語の登場人物は誰もハッピーエンドを迎えない。そして、誰の物語も終わらない。旭仔が最期を遂げたのを知っているか知らずか、ミミはフィリピンまで向かうし、麗珍は相変わらずサッカー場の仕事を続けている。そして、香港かフィリピンかどこかわからないある屋根裏で、一人の男(トニー)が身を整えて部屋を出て行く。彼が出会うのははたして麗珍なのかミミ(orルル)なのか。旭仔の死がこの男に物語の続きを渡したことで、王家衛はトニー・レオンを得て周慕雲を産み出したのか。そんなことをなんとなく考えてみた。とカッコつけすぎた、スマン。

以下はおバカなネタなのでスルーしてもよいです。
ところでワタシは女子のくせに、実はお尻の大きな女性が好きだ。日本でいえば鈴木京香ちゃんに深津絵里ちゃんなど(ってこんなこと書いたらこの二人のファンにボコボコにされること間違いなしだな)。そして、この映画を観ていて、カリーナの後姿&お尻に惚れた。頼むトニー、一度カリーナを1日ワタシに貸してくれ。彼女の後姿&お尻(もちろん着衣のままだ!)をじっくり見ていたいんだ。

…ますますスマン、バカな終わり方をしてしまった。ああ、この感想、ホントはレスリー追悼感想になるはずだったのに!

(BGM:『聲光回憶』より「Siboney」「Jungle Drums」「Maria Elena」「Perfidia」)

原題&英題:阿飛正傳(Days of being wild)
脚本&監督:ウォン・カーウァイ 撮影:クリストファー・ドイル 美術:ウィリアム・チャン
出演:レスリー・チャン マギー・チャン カリーナ・ラウ アンディ・ラウ ジャッキー・チョン レベッカ・パン トニー・レオン

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コメント

こんにちは。私もつい最近映画館でこの映画を観ました。DVDのジャケットも新しくなったんですよ。2046公開に備えてるのでしょうか。。もとはしさんのおっしゃるように、初めて観たときよりカーウァイをよく知ってる今の方が感動できました。こちらでもすごく評価が高かったんですよ。前に書いた日記ですがTBさせていただきますね。

それとですね、前から書こうと思っていたんですが、私のサイトが、リンクしていただいた時と違って中華ネタ地元ネタがごちゃごちゃになってるんですが、こちらのサイトの趣旨と合わなくなってしまってて申し訳ないナーと思っているんですが。もし不都合でしたらリンクからはずしていただいても構いませんので。細かいことですみません。

投稿: こっぺ | 2005.03.31 03:01

ごめんなさい!TB4回も飛ばしてしまいました。削除してください。

投稿: こっぺ | 2005.03.31 03:17

こっぺさん、いつもありがとうございます。
この映画を初めて観たときは雰囲気をじっくり楽しむ余裕もなしに話を追うのに必死でわけわからなくなってしまったり、レスリー演じる旭仔に感情移入しづらくて大変だったのですが、今観るといろいろなことを考えてしまい、切なくなってしまいます。
この映画の原題はジェームズ・ディーンの『理由なき反抗』の中国題にちなんで名づけられたとかで、同映画の直接のオマージュではないみたいですが、不良青年のアンニュイさや苦悩が普遍的なものとして全世界的に共感を呼んだのかもしれませんね。ちなみに邦題は『ベルリン天使の詩』の英語題&中国語題にちなんだという話も聞いたんですが…。

あ、当blogは中華blogですが、ブログリストには一般的な日記系も多く入っていますので、リンクはそのままにしておきますよー(^_^)。

投稿: もとはし | 2005.03.31 18:40

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» 欲望の翼、感想 [MCONTENTS BLOG VERSION]
『欲望の翼』(The Days of Being Wild)を観てきました。Lumiere Theatreじゃなくてオペラプラザ・シネマで上映でした。前の日記訂... [続きを読む]

受信: 2005.03.31 03:06

» 欲望の翼 [のほほん便り]
レスリー・チャン、アンディ・ラウ、トニー・レオン、マギー・チャン、カリーナ・ラウ等、香港のトップスターの共演で贈る青春ドラマ。1990年の作品。「青春のリグレット」かな? なぜかユーミンの「憎んでもイイから、私を忘れないで」みたいな歌詞がある曲を連想してしまいました。ウォン・カーウァイ作品は、「恋する惑星」「天使の涙」という順番で見て、アジアを舞台に、スタイリッシュな映像センスと感覚に魅了。だけど、この作品が、かくも人気あったとは知りませんでした。個人的には、「こんな風に進化していったんですね」とい... [続きを読む]

受信: 2015.02.18 17:24

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