カンフーハッスル(2004/香港・中国=アメリカ)
台湾でも日本でも、TVを観ると流れていたのは『カンフーハッスル』の予告。本編に登場する功夫三勇士+アホな星仔をフィーチャーしたカッコいい台湾(香港&大陸もこれ?)版の予告と比べて、ひたすら「ありえねー。」で押し通す日本版予告にトホホーな気分だったが、ボヤッキー(の声…だよね?)が「この国はまだ、本当の『カンフー』を知らない。」とラストに締めるヴァージョンを見て、おもわずこう言っちゃったよ。
「当たり前じゃんボヤッキー、この国では武侠小説が一般的じゃないからさ」
てなわけでfunkin流にこの映画のキャッチコピーをつけるとしたら、こうだ。
「『ありえねー。』とか言ってるヒマあったら金庸でも読めば?」…すまん、偉そうで。
舞台は前世紀の中国。サム組長(クォックワン)率いる、斧が目印の暗黒組織「斧頭会」が踊りながら斧で人を撲殺しつつブイブイいわせているある街。一発当てたいヘタレのダメダメ男シン(星仔)が弟分(ジーチョン)と共に貧民窟(のようなアパート)『豚小屋砦』にやってきたのがそもそもの始まり。「自分は斧頭会の人間だ」とか大ボラ吹いてみるものの、ヘタレかつダメダメ男なので全く相手にされない。しまいにはど迫力の大家夫人(元秋)に追い出される始末。悔し紛れにシンが放った花火により、このアパートの運命は一転。なんと通りがかりの斧頭会の副組長(林雪!)が巻き添えを食ってしまい、平和だった豚小屋砦は斧頭会に目をつけられてしまったのだ。豚小屋砦から人々を追い出そうと斧頭会はアパートを囲むが、ところがどっこい、このアパートには功夫の達人がいたのだ、それも3人も!普段は大家夫人から「早く家賃を払えー」と迫られている三勇士はたちまちのうちに斧頭会のザコどもを片付ける。しかし斧頭会も黙っていない。ナンバー2の功夫の実力を持つという二人の琴奏者の刺客をアパートに放ち、三勇士を倒す。これで決着が…と思ったら、なんと大家夫婦が琴奏者に応戦して勝利!実はこの二人、亭主(元華)は太極拳を使う楊過、夫人は一声で敵を吹き飛ばす獅子の咆哮の持ち主である小龍女の“神鵰侠侶”(←ハイここ金庸好き&武侠電影好きなら笑うトコー)だったのだ!…これでついに斧頭会は最強の功夫の達人を放つことを決意。その“ナンバー1”は異人類研究センター(言い換えれば精○病○?)に幽閉されていた火雲邪神(梁小龍)だった。一見キレ気味のしょぼいオッサンだが、実はものすごいパワーの持ち主だった。シンは家主夫婦と火雲邪神との戦いに巻き込まれて重傷を負うが、それがきっかけでダメダメのシンの中に眠っていた強大なパワーが目を覚ます…!!
なんとこの映画、出資はコロンビア(日本ではソニー)ピクチャーズ!つまりすーちー&ヴィッキー&カレンの『クローサー』(あ、まだ感想書いていない…)やここで感想を書いた貴一ちゃんの『天地英雄』と同じレーベルの映画である。『少林サッカー』の前までは、日本では全く無名だった(かつての香港ブームの最中でも、日本で劇場公開された主演作品は思いっきり少なかった!)星仔だったが、まぁ彼のギャグは香港&広東語圏以外ではウケないというからしょうがなかったのかな、なんて思うところもあったけど、世界市場を狙ったわかりやすいギャグで挑んだ前作は大ヒット。確かにサッカーW杯効果もあったのだろうけど、まさかここまで星仔の知名度が上がるなんて!とビックリするばかりだった。ついでにこの映画以降、『英雄』や『十面埋伏』や『2046』などの大作中華電影が全国ロードショーされるようになったけど、それもこれがヒットしてくれたおかげじゃないかな、などと最近思うところもある。
そんな星仔が3年ぶりに帰ってきた。しかも今回は中華圏と日本公開にほとんどタイムラグがない(『2046』でさえ1ヶ月の差があった)。嬉しい。そして出来上がった作品は…、思いっきり中華圏向けの星仔趣味大爆発な作品だった(爆)。
確かに2年ほど太極拳を学んではいるものの、なんといってもワタシは女子なので、いくら成龍さんの映画は通っても「心だけドラゴン(by大槻ケンヂ氏@パンフ)」な男子のように、李小龍への憧れなんてまーったく!持ち合わせていない。でも、この映画を面白いと思ったのは、これまでは成龍や李小龍、そして彼らのフォロワーによって日本でイメージ付けられた「カンフー映画」のようでそうじゃない、まさに冒頭に書いたような「この国はまだ、本当の『カンフー』を知らない。」とはっきり断言でき、もっとはっきり言えば『スウォーズマン』や『決戦・紫禁城』などの映画に代表される金庸や古龍の武侠小説を下敷きにした武功片や数多のカンフー映画や香港映画やハリウッド映画へのオマージュを捧げながら、この映画は星仔にしか作れない!と言う作品にちゃーんと仕上がっていたからなのだ。最近金庸の『碧血剣』を読んでいることもあって、映画の細部をいろいろ観ていくと「おっ、あの場面はあの小説の修行の場面だなー」とか、「このへんのストーリー構成、まさに金庸的だなー」などと感じるところが多かったもの。このギャグはこれとか細かく書いていると長くなるけど、わかりやすいところではシンが小刀を投げる場面は『十面埋伏』だし、琴奏者が出てきたり、槍の達人が槍を振り上げるのは『英雄』の長空を彷彿させる。このあたりのくだりでいちいち反応させていただいたわ。しかし、中にはワタシだけしか笑っていなかったと言うギャグもいくつか…(苦笑)。
ま、それはしょーがない。この映画は『少林サッカー』とは明らかに違うし(だからどっちが面白い?とワタシに聞くのは愚問よー。どっちも面白い!としか言えないからね)、前作からさらに星仔の趣味は大爆発しているし、それでもって中華圏の人間ならお約束な要素を取り入れているわけだから、「カンフー映画=李小龍or成龍&リンチェイ」という図式でしか認識していない日本人には、ちょっと厳しいところもあるかなぁ…。もしワタシが武侠片(『英雄』&『十面埋伏』含む)を観ていなくて、金庸の小説を読んでいなかったら明らかにのれなかったこと間違いないだろうしね。
そんな理屈はどーでもいいとして、楽しい映画には楽しいキャラが満載。『少林サッカー』組(ン・マンタ叔父さんがいないのが残念!)では李小龍似のGKのダニー君こと陳國坤の“踊る組長・大天使サム”がよかったなぁ~。クラシックスタイルがびしっと決まってて意外とダンディやんかダニー君。彼の恐ろしい変わりっぷりには脱帽。逆に全く変わらなくてもいい味出してたのが軽功のジーチョン君と鎧の肌のティン・カイマンさん。♪ドードシドシラ~の作曲家志望男ジャンパオ君(確かこーゆー愛称…)演じる言動と行動のギャップが激しいケツ出し理髪師や、知的で卑怯なチンピラ君(パンツにレンチを隠していた彼だ)が演じたシンを張り倒す金縁眼鏡のサラリーマンは男子中高生向けキャラやな。
往年の名優組ではやっぱり元華さん&元秋さんの“神鵰侠侶”ね。アパートでの寝巻き姿より斧頭会のカジノに乗り込んだときの「アンタら幾つやねん?」とツッコミたくなるカッコが好きだったなー。あと、先ほど書いたようにドラゴンな男子じゃないので梁小龍さんなんてホントにこれっぽっちも知らなかったけど、彼が演じる一見ただのしょぼいハ○オヤジ火雲邪神がラスト近くに見せる不敵な笑いと鋭いまなざしを見て、うう、こいつホンマに達人じゃあ!って思ったなぁ。
それでもやっぱりそんな濃ゆい奴らを引き連れた星仔、やっぱりキミが一番だわ♪
…なんか書いてて自分でも何言ってんだかわかんなくなってきたなー(苦笑)。とりとめのないまま終わりにすっか。以上。
原題:功夫
監督&製作&脚本&主演:チャウ・シンチー 製作:ジェフ・ラウ 撮影:プーン・ハンサン 武術指導:ユエン・ウーピン&サモ・ハン・キンポー
出演:ラム・ジーチョン ユン・ワー ユン・チウ ブルース・リャン チャン・クォックワン ティン・カイマン ラム・シュー ホァン・シェンイー フェン・シャオカン
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コメント
カンフーハッスル、一身上の都合で映画館見れなかったのが、やっとビデオで見れました。レスリーもやってるんですよね~「楊過と小龍女」(日本版DVD発売、私は買いません(爆)おかげで、そこめちゃウケましたけど。
投稿: わらし | 2005.07.19 21:12
わらしさん、どもどもー。
あのシーン、金庸の小説やドラマを知っている人には大ウケですよねー。
レスリーがやっていたのは『神鵰侠侶』ドラマ版でしたよね。この原作は日本でもなぜかアニメ化しているようで、とりあえず『射鵰』と『神鵰』をきちんと読了したあとで改めてどちらかをチェックしたいかなぁなんて思っています。
投稿: もとはし | 2005.07.19 22:38