《哥哥的情人/三個夏天》(1993/香港)
夏休みが待ち遠しくなくなったのは、いつからだろうか…。梅雨時の今、この映画を観ながらふと思ったのは、そんなことだった。でも、台湾で“三つの夏”と名づけられたこの映画は、夏を待ち焦がれたい気分になりたい時に観たい作品かもしれない。
ランタオ島の隅っこにくっついているようにある島、大澳。この島を舞台に、この物語は綴られる。16歳の罔腰(チェリー)は香港帰りでドミトリーを営む兄の偉(トニー)と暮らしている。毎夏、ドミトリーにはアメリカ人研究者ベジー氏と中国人の夫人の引率による環境保護研究ゼミが合宿にやってきており、罔腰も彼らと行動を共にする。個性的な学生たちの中でも、罔腰は洗練されていて美しいフローラ(シンリン)とラム(サニー)、ショーンの3人の“ドリカム関係”に憧れる。バナナを植樹し、手製の気球を揚げ、彼らとの楽しい時を過ごす罔腰。それ以来、彼女は合宿がやってくるのを楽しみにしていた。
次の夏、大澳では大量のニワトリが何者かによって食い荒らされる事件が続発し、村の古老たちは「悪魔が出た」と恐れおののく。そんなある日、罔腰と偉は香港から来たギャングに襲われる。難は逃れられたものの、罔腰は島に見慣れない女性(ヴェロニカ)がやってきたのに気づく。その女性は偉の昔の恋人で、しかも黒社会の大物ボスの情婦だった。彼女の出現で、罔腰は兄が香港で何をしていたのかを知る。そして今年もベジー夫妻のゼミがやってきたものの、フローラは同期生のランと恋仲になっていた。聞けばラムはオーストラリアに留学したらしい。しかし、ショーンは彼女らと一緒には来なかった。…いや、彼は遅れてやってきたのだが、何かにとりつかれたかのようにどこか様子がおかしかった。彼はゼミと距離を置きながら、次々と面倒を起こすようになる。そしてゼミ生の連れてきた犬が消えたある夜、フローラが苦しみだした…。
悪魔にとりつかれたような事件が続いたその夏から1年が過ぎ、罔腰は高校を卒業した。彼女は香港で進学することを決意し、今までの世界の全てだった大澳と、大好きな兄に別れを告げる。
えーと、トニー主演のわりにはそんなに派手じゃないです、これ。印象としてはNHKがよく作る“地方発ドラマ”みたいな雰囲気。主役も兄のトニーではなく、多感な思春期を島で過ごす罔腰(またの名を“半尺”)ことチェリー嬢。そーだなぁ、ホウちゃんの初期作品やハイティーンが主人公になることが多い台湾映画の雰囲気があるかも、と思ったらプロデューサーは台湾出身のシルヴィアさんだし、プロデューサーの徐立功さんもやはり台湾映画人。うーむ、なるほろー。
舞台はビルが林立する香港中心部ではなく、緑あふれる郊外の田舎町、大澳。環境問題にも配慮しつつ、少女と人々の出会いが淡々と描かれる。大人の男女関係に憧れ、都会から来た少年となんとなく恋愛ごっこし、謎めいた「兄の恋人(香港タイトル)」の出現に苛立ち、人生の師と未来を語り合う。同じような思春期を過ごしたわりにはすっかりすれちまったワタシにはそんな彼女がまぶしい。やはり、人生においてティーンエイジはもっとも輝かしい時だ(だからその時の使い方には十分注意するのだ現役ティーンエイジャー諸君、って誰も読んでないってそんなこと書いても)。
そんな罔腰のお兄ちゃん偉。地味だけどトニーの持ち味をうまく生かした役柄。寡黙でやさぐれているようで妙に少年っぽい。その証拠にほとんどの場面で半ズボン(だからなんだと言われても困る)。でも相変わらず乳毛ボーン(またそーゆーことを書く…)だし、かわいい顔してやるときゃやる(それはヴェロニカとのラブシーン。でも、キレイだったわ~*^~^*)ので本来の意味での少年ではない。当たり前だって。…しかし、こんなお兄ちゃん持っちゃったら絶対離れたくないねアタシは(爆)。ヤバイねホント。収拾のつかないまま終わるー。
そうそう、最後に。シンリンと付き合うラム、どっかでみたことあると思ってエンドクレジットを見ていたら、《愈○○愈××》シリーズ(こらこら!)で御馴染サニー・チャンだった。あんま顔変わってないなー。
英題:Three Summers
監督:ローレンス・アモン 脚本・製作・主題歌:シルヴィア・チャン 撮影:ジングル・マー 音楽:タッツ・ラウ
出演:トニー・レオン チェリー・チャン ン・シンリン ヴェロニカ・イップ サニー・チャン
参考にしたのは毎度ながらのnancixさんのページ&『香港電影広告大鑑』です。謝謝。
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