MUSA 武士(2001/韓国)
今日は、昨日映画館で観てきた韓国映画『MUSA』のReview。…よく考えたらこの映画、ここで取り上げる初の韓国映画だったりするんだわこれが。でもここはあくまでも中華趣味なサイトなので、中華圏のキャストが絡まないと感想は書かないのであーる。今後ここで取り上げる韓国映画は、セシリア・チャン主演の『パイラン』くらいなので、大韓芸能ココログと化すことは決してないかな(爆)。
14世紀、明朝初期。若きチェ将軍(チュ・ジンモ)を先頭に南京入りした高麗国の使節団はスパイ容疑をかけられ、全員流刑にされる。突風吹きすさぶ荒野に生き残ったのは将軍を始め、経験豊かな隊正(アン・ソンギ)、将軍の父親の知己である副将、武力はからっきしの通訳官、新婚にも関わらず使命を帯びた若き通信使ほか数名の武士、そして旅の途中で命を落とした副使に使えていた、槍の達人である奴隷ヨソル(チョン・ウソン)。
ある飯屋でランブルファ将軍(干榮光)率いる蒙古軍と出逢った彼らは、囚われの身になっていた明朝の芙蓉姫(ツーイー)を見つける。彼女が助けを求めていることに感づいたチェ将軍は、姫を奪還して南京まで送り届ければ自分たちの名誉が回復するのではないかと思いつき、高麗出身の僧も仲間に加えて姫を強奪し、逃亡する。蒙古復興と明朝への復讐のため、姫を必要とする蒙古軍は大群をなして将軍一行を追撃する。途中、難民の漢族とも合流して海岸へと逃げるが、逃げれば逃げるほど事態は悪化していく…!
さて、この映画、韓国映画でありながらどうも韓国映画っぽくない雰囲気もある。それはこの映画が歴史映画であって、元から明に政権が移ったばかりの中国大陸を舞台に、当時はまだ高麗国(たぶん末期だったと思う)だった朝鮮半島からやってきた人々の苦難を描くと同時に、高麗国と明朝、そして政権を奪われた元軍(以下蒙古軍)の関係と駆け引きを広大な中国の大地に描いているからではないだろうか。
承知のように、中国大陸と朝鮮半島は陸続きでありながら、決して一つの国として統一されることはなく、お互いに緊張関係を保っていた(もちろん、その緊張関係に日本が加わることもあったが)。中国大陸はその雄大な歴史において、三国時代の昔からはもちろん、蒙古族支配の元や満族支配の清が成立したりと、常に不安定な情勢にさらされてきた。この映画の時代設定は高麗国も含めて不安定な中国大陸情勢が一目でわかるような作りをしていて、そのへんに感心したものだった。
韓国映画だから漢族も蒙古族も韓国語をくっちゃべるんだろーなと思ったら、ツーイーを始めとした漢族はちゃんと北京語を喋っている。蒙古族はこの場合モンゴル語でなければならないのかもしれないけど、言葉の問題を追求すると長くなりそうなので(そうか?)このへんは仕方ないか。この言葉の問題が映画の中ではスパイスとしてきいており、高麗人で北京語がわかるのが通訳官の他、将軍と隊正のみ。つまりこの3人が芙蓉姫とコミュニケーションできるのであるが、彼女に思いを寄せている奴隷が全く北京語ができないのである。それでも気持ちは伝わっているんだろうけど、うまい設定であった。
殺陣はワイヤーアクション一切なし。刀や弓、槍を使った肉体派アクションがメイン。アン・ソンギの隊正は『指輪物語』のレゴラスのように華麗な弓さばきを披露し、ザンバラ長髪に汚れた装束をまとった、どこか『楽園の瑕』を意識している衣裳の奴隷役ウソン(『上海グランド』のレスリーの同志役が有名)は槍をぶんぶん振り回して長身を躍らせ走る。『天地英雄』に似たアクションワークだったかな。…しかしこいつら、ガンガン人を殺していた。やはり劇中に中国(確か清朝が舞台だった)が登場する『飛天舞(アウトライブ)』を観ていても思ったけど、首を飛ばしたり一刀両断したりと、これでもかこれでもかとおもしろいように人(もちろんダミーだが)をガンガン殺していくのが韓国武侠片。いくら人がガンガン死んでいく香港映画を観ているとはいえ、これってやりすぎやん~と多少あきれながら観ていたりするのだった(大笑)。韓国映画ってやっぱりやりすぎ感があるよと、改めて思ったもんだった…。
姫を守るごとに、泥沼にはまっていく高麗人たち。その姿はあまりにも痛々しい。しかし、倒れても立ち上がり、蒙古軍に挑む。その姿は『ラストサムライ』の武士の生き残りたちに重なるところがある。生きた誇りを胸に、勝ち目のない戦いに挑む男たち。そこに人は胸をつかまれるのだろう。まぁ見方を変えれば「おいおいそれでいいのかよ~」という気分にもなるが(そう思ったのはワタシだけか)。そのへんは厳しく観たもんであった。ははは。
いろんな作品を観るたびにワイルドさが増していくウソン、ニコをごっつくしたような印象を持つジンモの両人も魅力的だが、個人的なひいきは韓国の国民的俳優アン・ソンギ。北京語も日本語より違和感ないし(彼は日本映画『眠る男』で主演の経験があり、一言だけ日本語を話すシーンがあった)、若者どもに負けじと戦地を駆け回る。いやー渋いよアンさん。ステキだアンさん。好きだわアンさん。さすが『黒水仙』では若者時代から老年を一人で演じきり、若者時代の姿はまるでトニーみたいだと言われていた(仲間内でなんだが)のがよくわかるよ。
あ、しまった。韓国俳優のことばかり書いてしまった。中華圏ではツーイーのほか、『風雲』の雲パパことユー・ロングアンが参加。彼が演じる蒙古軍将軍は不気味でも憎たらしくもなく、人間味を持ち合わせたキャラになっていたと思う。三つ編みを交えた長髪も似合っていた。カッコええわー。そして肝心のツーイー。ワタシは彼女を見るといつも「小娘キャラがハマり役」とかほざいている(暴言失礼!)のだが、今回も姫でありながらやっぱし小娘キャラだった。明朝の姫君ゆえの傲慢さと高潔さを持ち合わせた姿は、小鼻を膨らませてムッとしている姿と同じくらいハマっているのは言うまでもない。その姿はむっさい高麗国の奴らの中で唯一の花となっている。信念ももったいいキャラじゃないとか途中まで思ったのだが、蒙古軍に捕えられた理由を聞いてワタシは次のように心で叫んだ。
「おいおいオマエ、宮廷から飛び出したかったら男装して家出しなきゃだめじゃん!(参照:天下無双)オマエそんな気でいるからとっ捕まるんじゃねーか!自己責任云々とあれこれ言うならこの姫に自己責任を問うてくれよ、みんなぁ!(おもいっきし大暴言!)」…すんません、ついついアホなこと考えてしまいました。
監督こそ韓国人だけど、スタッフは3か国混成。美術のフォ・ティンシャオは中国人で『覇王別姫』や『英雄』も手がけている。日本人として注目すべきはアニメ『エヴァンゲリオン』の音楽でもしられる音楽担当の鷺巣詩郎氏。場面を盛り上げるエモーショナルな音楽(特にアクションシーン!)がマッチしている。同じ韓国映画では『殺人の記憶』の岩代太郎氏の音楽もよかったし、中華圏映画では『息子の告発』『kitchen』の大友良英氏や『戀之風景』《公元2000》の梅林茂氏など、アジア映画で活躍する日本人音楽家にはついつい注目してしまう。これは嬉しい。
そしてこの映画を観て思うのは、これくらいやれるのなら、香港や台湾も加えてアジアンテイスト満点なアクションファンタジー映画を作るのも夢じゃないのかもしれないよなぁ、ということだった。アジア映画の才能が結集し、いい感じで作られたエンタメ大作映画がカンヌやベネチアで上映される日がいつか来るかもしれないなぁ…。
なんか、ほめてんだかツッこんでるんだかよくわからない感想になってしまい、失礼しました。これだけ書いてもワタシはやっぱり中華電影が好きなのは変わりませんわ。以上。
監督:キム・ソンス 音楽:鷺巣詩郎 美術:フォ・ティンシャオ
出演:チョン・ウソン チュ・ジンモ アン・ソンギ チャン・ツーイー ユー・ロングァン
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