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《野獣刑警》(1998/香港)

 いやぁ、『無間道』シリーズのアンソニーさんはホントにホントにカッコよかったなぁ…。10年前に人肉饅頭作っていた人と同じとは思えんわ。などと大ボケかましながら、5年前の金像奨最優秀作品賞受賞作『ビースト・コップス 野獣警察』を昔買ったVCDで観る。この映画ではアンソニーが最優秀主演男優賞、パトリック・タムが最優秀助演男優賞を受賞したのだー。

 尖沙咀・油麻地の下町一帯を仕切り、チンピラたちのいざこざを収めて回る顔役の刑事東(アンソニー)。ある日、SDU(特殊部隊)出身で中米ハーフの刑事マイク・チョン(マイケル)が東の地区の治安担当官になる。東はマイクを気に入り、弟分の若手刑事サム(サム)とともに夜の街を回る。マイクはナイトクラブのホステス、ヨーヨー(キャシー)と恋仲になる。しかし、ヨーヨーはかつてこの地区で悪名をとどろかし、面倒を起こしてしばらく姿を消していたチンピラの輝(ロイ)の昔の女だった。さらに、東が少年時代から気にかけていた輝の弟分のチンピラ釘華(パトリック)が、輝の不在に街をかき回すようになる。そして、輝の帰還により釘華は暴走し始め、街は一触即発の状態に…。

 中英ハーフのアンソニーと中米ハーフのマイケル。最初パッケージを見た時は「なんてバタくさい二人の共演なんだ…」と思ったもんだったが、広東語も英語交じり(しかも声がカン高い)で米国人の血がかなり濃そうなマイケルはほとんどアメリカ人(そーいやマイケルって、ケリーと共演した『世界の涯てに』も『冷静と情熱のあいだ』も非中華人役だった…)で、アンソニーは撮影当時まだ30代半ばだったのにかなーりオッサンくさい。この映画の冒頭で夜の街にアンソニーが出てきた時には「また古惑仔役かな?」なんて思ったせいで、物語の半ばまで刑事役だったとは信じられなかったもんだった。ついでにVCDだから日本語字幕なしだし、皆さんそろいも揃ってよく喋るので(各キャラとも画面のこちらに向かってモノローグ語りまくるし)、台詞がきちんと追えなかったのが厳しかったわ…。
 こわもてでオッサンくさくて夜の街に出るとどーしても刑事に見えない(おまけに半裸さらしてもカラダがぶよぶよしている…)東だけど、街の「顔役」のような存在として街と街の人々を愛し、義理に厚い人情派だ。まるで藤田まことが演じる安浦刑事みたい(大笑)。あっちが「はぐれ刑事純情派」ならこっちは「コワモテ刑事人情派」ってとこか。
 ただやっぱり香港映画のお約束で、最後は血なまぐさい対決が待っているんだけどね。それまでの東ことアンソニーは気のいい人情派のオッサンに徹していたので、キレまくった釘華と対決するシーンの、アンソニーの逆ギレした表情がかなーり怖すぎ。しかも刀振り回して対決するもんだから、このシーンだけ観てしまったら、やっぱ古惑仔か人肉饅頭かと思ってしまうんじゃないのよアンソニー。きっとこのシーンの演技だけで主演男優賞もらったに違いないぞ。(こらこら!)
 相方のマイケルは「殺人王」の異名を持つマイク刑事。いつもはフツーだが、凶悪犯罪が街で起こると拳銃で犯人を即射殺するからこっちも怖い。多少すさんだ過去を持っているようなんだが、ヨーヨーと出会い、彼女と愛し合うようになってからは心境に変化が起こる。…しかしマイケルって、演じるキャラが面白味に欠けるような感じを受けるんだが。やっぱいかにもアメリカ人~なルックスと演技が原因か?脇役に置けばそれなりにアクセントにはなるんだろうけど、主役だとインパクトに欠けるような気がする。
 この頃はまだ駆け出しだったサム。この後に出た『ジェネックスコップ』や『無問題2』にも見られるように、ここでも「どー見ても刑事には見えない今どきの若者刑事」役。この映画では彼がアクセントの役割を果たしている。デビューしたてでいろんな映画に出まくっていたこともあり、笑いも取れるなかなかかわいいキャラである。
 対して街のチンピラ側。輝役のロイは出番こそ少ないけど、兄貴の貫禄十分。最近観た《無間道2》でのロン毛は強烈だったけど、こっちは5年前の作品で角刈り。だからロイなのにあまり目立たないかも。なんでだロイ。この目立たなさが災いしたのか、殺され方があっけなかったぞロイ(-_-;)。
 狂気に走る若きチンピラ釘華を演じるパトリックは、ちょっと前に一部でプチブレイクした明星兼歌手。時をほぼ同じくして香港で放映された連続ドラマでブレイクした、まるでジョージ・クルーニーのような下積み経験を持つ。この映画で助演男優賞を受賞後『決戦・紫禁城』など何本の映画で主演や助演していたけど、最近映画では見かけない。…またTVドラマに戻ったのかしらん。顔の作りがレスリーに似ているんだけど、パトリックには独特の毒気(というのかなぁ?うまく表現できないけど)を感じるのであった。
 一応ヒロイン(でも目立たない…)のキャシーは、まず先に永瀬正敏と共演したJ-PHONEのCFにより日本で注目を浴び、『不夜城』などに出演していたことで有名。件のCFはオシャレだったけど、キャシー自身は結構地味?華がないのが気になった。

 この映画の監督は《公元2000》『恋戦。』のゴードン・チャンに『ツインズ・エフェクト』のダンテ・ラム。ゴードンさんといえばアクション派監督と認識している。だからこの映画にもハードなアクションを期待したんだけど、東が題名どおり“野獣”と化すクライマックスの対決シーンを除いては意外とアクション控えめ。そのかわりに映画内で印象的だったのは街の様子かな。若者が踊りまくるクラブやゴージャスなナイトクラブ、街で一夜を過ごしたあとの早朝飲茶に、チンピラたちがたむろする珈琲舗や街の事情を知り尽くしたおじさんのいるマガジンスタンド。旅行で見慣れた風景だけに、ホントにこういうことが起こってるかもしれないなぁと思うところがある。また、当時はなんといってもエッグタルトが流行っていたこともあり、エッグタルト好きのチンピラが出てきたり、ラストシーンにトレイ一杯のエッグタルトが並ぶシーンなどもあってちょっとほほえましい。ハードな対決シーンの後には、野獣刑事たちにもいつもの日常が戻ってくる。その穏やかさにほっとしたのだった。

英題:Beast Cop
監督:ゴードン・チャン&ダンテ・ラム
出演:マイケル・ウォン アンソニー・ウォン ロイ・チョン サム・リー パトリック・タム キャシー・チャウ ステファニー・チェー

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